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映画『チェイサー(2008)』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『チェイサー(2008)』の概要:韓国で実際に起きた凄惨な連続殺人事件を基にして作られた衝撃作。この作品で長編映画デビューを果たしたナ・ホンジン監督の名は、一躍世界に知れ渡った。巧みな脚本とキャストの熱演も素晴らしく、壮絶な暴力描写を含めて完成度の高い作品。

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映画『チェイサー』の作品情報

チェイサー

製作年:2008年
上映時間:125分
ジャンル:サスペンス、アクション、フィルムノワール
監督:ナ・ホンジン
キャスト:キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ソ・ヨンヒ、チョン・インギ etc

映画『チェイサー』の登場人物(キャスト)

ジュンホ(キム・ユンソク)
ソウル機動捜査隊に属していた元刑事。あることがあって警察をクビになり、現在はデリバリーヘルスの経営者をしている。店の女の子が次々と行方不明になり、ヨンミンのことを調べ始める。
ヨンミン(ハ・ジョンウ)
連続殺人鬼。男性機能が不能で女性と性行することができず、そのストレスを発散するため、残虐な方法で次々と女性を殺害していく。過去にも容疑者として検挙されたことがあるが、証拠不十分で釈放されている。
ミジン(ソ・ヨンヒ)
ジュンホの店で働くデリヘル嬢。7歳になる娘を女手ひとつで育てているが、そのことは周囲に伏せている。ヨンミンのもとに派遣され、事件に巻き込まれる。
ギル刑事(チョン・インギ)
ジュンホの先輩刑事。今でもジュンホと連絡を取り合っており、ジュンホの力になろうとする。

映画『チェイサー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『チェイサー(2008)』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『チェイサー』のあらすじ【起】

デリバリーヘルスを経営する元刑事のジュンホは、店の車で客を迎えに行ったまま行方不明となった女の子の行方を捜していた。店の車は住宅街の路上に放置されており、ジュンホは女の子が手付金を持ち逃げしたのだと思い込む。女の子が突然行方をくらますのは、これで2度目だった。

客に暴力を振るわれたベテランのデリヘル嬢を迎えに行ったジュンホは、彼女から“あの子たちは逃げたりしない、捜してやってほしい”と頼まれる。しかしジュンホは聞く耳を持たず、デリヘル嬢は怒って店をやめてしまう。

店からは“客が待っている”と催促の電話があり、ジュンホは“風邪で休む”と連絡のあったミジンを呼び出す。ミジンは本当に具合が悪かったが、ジュンホに怒られ、無理して仕事へ向かう。ジュンホには内緒にしていたが、ミジンは7歳になる娘を女手ひとつで育てていた。

ジュンホは、行方不明になっている女の子の携帯を見つける。履歴には、「4885」のナンバーが入った客の電話番号が残っていた。店の従業員は、今日ミジンを呼んだのが「4885」の客だと説明する。「4885」は、ヨンミンという名の若い男だった。

ミジンはヨンミンを車に乗せ、彼の自宅へ向かっていた。ジュンホはミジンに電話をかけ、“家に着いたら住所をメールしろ”と伝言する。ジュンホは、ヨンミンに店の女の子が売り飛ばされたのだと思い、刑事時代の先輩であるギル刑事に電話する。市長の護衛中だったギル刑事は、不審者が市長に汚物を投げたのを目撃し、ジュンホの電話を切ってしまう。

ヨンミンの自宅はマンウォン町の豪邸だった。ミジンはシャワーを浴びると偽って浴室に入り、ここの住所をメールする。しかし携帯は圏外で繋がらない。浴室の排水溝には、血みどろの髪の毛が落ちていた。

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映画『チェイサー』のあらすじ【承】

ミジンは恐怖におののき、“車にあるコンドームを取ってきます”と言って、玄関を出ようとする。しかし玄関は厳重に封鎖されていた。

手足を縛られ、浴室の床に寝転がされたミジンは、ヨンミンに“助かりたい理由を説明しろ”と言われる。ミジンは震えながら“7歳の娘がいる”と訴えるが、ヨンミンは冷酷に笑い、ミジンの頭にノミを打ち込もうとする。体をくねらせて必死で逃げるミジンの頭を、ヨンミンは金槌で殴りつける。

その直後チャイムが鳴り、この屋敷の本当の主人と連絡がつかないことを心配した夫婦が訪ねてくる。夫婦とここの主人は、同じ教会に通っていた。ヨンミンは愛想よく夫婦を家に招き入れ、金槌で撲殺する。この家の主人もヨンミンに殺され、庭に埋められていた。

ジュンホはミジンの携帯が圏外になっていることに気づき、マンウォン町内を捜し始める。撲殺した夫婦の車を移動させていたヨンミンは、ジュンホの車と事故を起こし、ジュンホに声をかけられる。ヨンミンの様子を不審に思ったジュンホは、こいつが「4885」だと直感する。

ジュンホは逃げるヨンミンを追い詰め、ボコボコに痛めつける。観念したヨンミンを連れて車に戻ると、警察が来ていた。2人はそのままマンウォン署に連行される。

ジュンホは、“そいつが店の女の子を売り飛ばした”と警察に訴えるが、警察はジュンホの話を信じない。しかし、ヨンミンの話にも矛盾点が多く、警察はヨンミンのことも疑い始める。“女の子を売ったのか”と聞かれたヨンミンは、“売っていない、殺しました”と答え、今までに9人もの人間を殺したと白状する。

事情を聞いたギル刑事は、同僚の女刑事とマンウォン署へ向かう。署内は、ヨンミンの身柄をどうするかで大騒ぎになっていた。最終的にギル刑事達の所属するソウル機動捜査隊の隊長が駆けつけ、ヨンミンを本部に連行する。

ジュンホは後から行くことにして、ヨンミンの運転していた車を調べる。車内からは鍵の束が出てくる。ジュンホは車内の書類から割り出した車の持ち主の家を訪ね、夫婦が不在であることを知る。夫婦の家には、教会のカレンダーがあった。

ジュンホは店の従業員に鍵束を渡し、ミジンの車が発見された住宅街の家を調べるよう命じる。ジュンホは、自分がミジンを無理やり呼び出したことに責任を感じていた。

警察署へ行ったジュンホは、逮捕状なしに捕まえた容疑者は、12時間以内に検事の承認が取れなければ釈放されることを知る。

映画『チェイサー』のあらすじ【転】

ヨンミンは刑事の取り調べに対し、具体的な殺害方法の供述を始めていた。ヨンミンは、被害者の頭部に金槌でノミを打ち込んで殺し、死体を壁に吊るして血抜きをしてから切断して埋めるのだとぬけぬけと話す。しかし、殺害現場や死体を埋めた場所については、決して口を割らない。ヨンミンは過去にも同じ経験をしており、証拠がなければ12時間で釈放されることを知っていた。

DNA鑑定に必要なミジンの髪の毛を採取するため、捜査員と彼女の自宅へ向かったジュンホは、そこでミジンに娘がいたことを初めて知る。ジュンホは、行き場のない娘を連れて帰る。娘は母親に何かあったのだと察し、母親を呼び出したジュンホを憎む。

ジュンホは、ヨンミンの姉夫婦の家を訪ね、ヨンミンの自宅を聞き出そうとする。姉夫婦の子供は、ヨンミンと留守番をしている時に頭にひどい怪我を負い、今でも障害が残っていた。それ以来姉夫婦はヨンミンとの連絡を絶っていた。その子のひどい傷跡を見て、ジュンホは、ヨンミンの供述が全て事実なのかもしれないと思うようになる。

ヨンミンは、相変わらずのらりくらりと時間稼ぎをしていた。警察は近くの山を掘り返して証拠となる死体を探すが、死体は一向に見つからない。

その頃、浴室のミジンが意識を取り戻していた。ミジンは頭にひどい怪我を負っていたが、死んではいなかった。隣には夫婦の撲殺死体が転がっており、ミジンは恐怖に怯えながら、ここから脱出する方法を考える。

ジュンホはあちこちのデリヘルを訪ね、「4885」の情報を集める。ようやくヨンミンに呼ばれた女の子と会うことができ、ヨンミンが性的不能者であることを知る。その後、ヨンミンが一時期居候していた男の家を見つけ、男を暴行してミジンの居場所を聞く。しかし男は本当に何も知らなかった。男の家の壁には、キリスト像らしきヨンミンの絵が残されていた。

死体を発見できなかった警察は、ベテラン刑事に来てもらい、ヨンミンの取り調べを開始する。ベテラン刑事に“インポだから、ノミを自分の性器に見立てて、女性の頭に打ち込んだのだろう”と言われ、ヨンミンが初めて取り乱す。警察はヨンミンが連続殺人犯だと確信するが、タイムリミットの12時間が迫っていた。

一方、ジュンホを車で待っていたミジンの娘は、母親に似た女性を見かけて後を追い、交通事故にあってしまう。道で倒れているミジンの娘を発見したジュンホは、病院に駆け込む。ジュンホは激しい怒りを感じ、警察署へ向かう。

映画『チェイサー』の結末・ラスト(ネタバレ)

ジュンホはヨンミンを半殺しにして、死体を埋めた場所を吐かせようとする。警察はジュンホの暴行を見逃し、ヨンミンの自供に期待する。そしてついに、ジュンホが死体を埋めた住所を聞き出す。

警察はすぐにヨンミンが供述した石堀の作業場を掘り返すが、死体は出てこない。ジュンホは、ここではないと訴え、ギル刑事と喧嘩になる。朝を迎え、警察署には検事が来ていた。検事はヨンミンの腫れ上がった顔を見て、隊長を責める。検事は暴力を振るったジュンホを逮捕し、ヨンミンを釈放するよう命じる。

浴室のミジンはタイルの破片で縄を切り、窓から外へ脱出する。同じ頃、ヨンミンは釈放され、女刑事が尾行を開始する。ミジンは近所のタバコ屋に助けを求め、警察へ通報してくれるよう頼む。タバコ屋の奥に保護されたミジンは、ジュンホに電話する。しかし逮捕されそうになっていたジュンホは、必死で走って逃げており、電話に気づかない。

タバコが切れていたヨンミンは、ミジンのいるタバコ屋へ入っていく。ヨンミンと顔なじみだったおばさんは、殺されそうになった被害者をかくまっているから、警察が来るまでここにいてくれとヨンミンに頼む。ヨンミンは笑顔でおばさんから金槌を受け取り、おばさんとミジンを撲殺する。外で見張っていた女刑事は、店の異変に気付けなかった。

事件現場まで走ってきたジュンホは、強引に中へ入ろうとするが、警察に止められる。ジュンホはミジンの娘のことを従業員に頼み、独自でヨンミンを捜し始める。ミジンが殺された現場で、彼女からの留守番電話を聞いたジュンホは、復讐の鬼と化す。

ヨンミンは豪邸に戻り、撲殺した夫婦を土に埋める。ジュンホは夫婦の家で見た教会のカレンダーとヨンミンの絵を思い出し、近所の教会を訪ねる。そこで、パク執事という人物が腕のいい職人としてヨンミンを連れてきて、教会の十字架像を作らせたことを知る。あの豪邸は、パク執事の家だった。

ジュンホはパク執事の家に向かい、逃亡しようとしていたヨンミンと鉢合わせる。ジュンホはヨンミンを室内に連れ込み、殴り倒す。ヨンミンも反撃してきて、2人は死闘を繰り広げる。室内の水槽には、悲しい顔をしたミジンの頭部が沈められていた。

ジュンホは執念でヨンミンを倒し、金槌を振り上げて最後のトドメを刺そうとする。そこへ、ようやくこの家を突き止めたギル刑事たちが踏み込んできて、ジュンホを止める。家の庭からは次々と無残な死体が掘り出され、地獄のような光景に警察も言葉を失う。

重傷を負ったヨンミンは救急車で搬送され、ジュンホは血まみれのままミジンの娘のところへ行く。ジュンホは、まだ意識を取り戻していない娘の手を優しく握る。

映画『チェイサー』の感想・評価・レビュー

金づちでの殺人シーンは、グロくて生々しくて見ていられず、目をそらしてしまった。
警察が全く頼りにならず、これ実話がもとだよね?と疑ってしまう。本当に観ててイライラする。
キャスト達の演技は素晴らしく、ハ・ジョンウの不気味さにすごく恐怖を感じた。
バッドエンドで終わり、鑑賞後の何とも言えない絶望感。疲れた・・・
こんなに疲れてしまうほど集中して観ていたのかと驚いた。ストーリーではなく、ハ・ジョンウやキム・ユンソクの演技力に惹きこまれた。(女性 40代)


さすが韓国のノワール作品、その一言に尽きる。
実話を基にしているとはいえ、日本の映画ならきっと結末は変わっていただろう。
命からがらになんとか逃げ込んだ先で犯人に遭遇、そのまま呆気なく殺されてしまうという容赦ない展開に鳥肌が立つ。
そして、この物語は犯人を特定し捕まえることが全てではない。犯人が特定されてからがこの映画の本編なのだ。2時間を感じさせない迫力で、恐怖を煽る雰囲気、殺害方法の残虐性、全てにおいてレベルの高いサスペンス映画だと思う。韓国映画をあまり観ない方にも自信をもってオススメしたい一作である。(女性 20代)


韓国映画と言えばの復讐や残酷で残虐なシーンの連続に、見終わった時の喪失感や疲労感が半端じゃありませんでした。こういう作品を見ると日本の映画は、エンターテイメント性を重視して作られているというのがよく分かります。
今作は実話を元に作られているそうですが、ラストの展開は実話だからこその衝撃。こうなってしまったら嫌だな…と観客が想像する最悪の展開が待っているので目を覆いたくなってしまいました。
正直、内容が辛すぎてもう一度見たいとは思えません。それほど衝撃的な作品でした。(女性 30代)

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みんなの感想・レビュー

  1. 匿名 より:

    社会的病理を暴力的に描いた作品だと思う。犯罪を心理学的観点から考えると、フロイトがいうようにほとんど”性的な原因”から発生すると言われるがそれだけではない。殺人を繰り返すと脳が快感を覚えて何度も体験してみたくなるのだ。
    だからこそ、殺人犯を早く見つけなくてはならない。本作には、教会の存在がちらりと出てくるが、宗教の役割は語られず、救いがないままです。

  2. 匿名 より:

    本作は、ナ・ホンジン監督のデビュー作で韓国社会の暗部を強烈すぎる光で捉えています。その世界は暴力と底知れぬ不気味さをはらみ、見てはならぬとにらんでいるかの様です。この闇が韓国映画の魅力であり、原動力でもあります。

  3. 匿名 より:

    2000年代の韓国映画では、群を抜く衝撃作であったと思う。社会的病理を暴力的に描いた作品として成功していると思うが、凄惨な殺人シーンは観ることを時に拒否させるくらいのきつさがあります。オノによる殺人シーンはサイコ・キラーの再来を思わせ、グロさにかけては世界一であろう。
    韓国映画特有の元刑事でデリヘル経営者のおっさんのギラギラ感や坂道・民家を全速力で走りまわる姿はコメディ感があって笑えます。走ってまわって走る、の繰り返し。もし、教会を出したいのなら、キム・ギドク監督の様に深い意味を持たせて欲しかったと思う。
    観客が知りたいのは、殺人の動機はもちろんのこと、その人物の生活や背景です。その点が描かれれば、より不気味さが増すと思います。次作「悲しき獣」(10)も秀作であったが、また180度違う犯罪映画を期待したい。本作で、猟奇殺人鬼ヨンミンを演じた、ハ・ジョンウのへらへらした青年像は不気味で本当に恐ろしい。

  4. 匿名 より:

    「チェイサー」では、残虐性を全面に出したアクション・サスペンスを描いていましたが、「悲しき獣」(10)では、中国と韓国の境に住む朝鮮族の男が韓国で犯罪に手を染めるという物語です。しかも、主演の2人が「チェイサー」と同様、キム・ユンソクとハ・ジョンウ。
    1度ヒットすると同じ流れに乗りたいという気持ちは分かりますが、配役が少し安易なのでは?次回作は、趣向を一新するという考えはなかったのでしょうか?それでも残虐性は本作をはるかに超えています。この追求精神はすごい!内部から見た犯罪と朝鮮族(外部)から見た犯罪ではより作品に深みが増している点はさすがです。

  5. 匿名 より:

    殺人犯が、オノと金ズチで女性を殺すシーンが並のホラー映画よりもリアルで恐ろしい。もっと恐ろしいことに、猟奇殺人犯のヨンミンは何度も逮捕されているにもかかわらず、その度に証拠不十分で釈放されています。一体、何故なのか?
    それは警察がまぬけだからです。今はそうでないと考えたい。本作では、教訓として、警察のまぬけっぷりを1番伝えたいのではないでしょうか。後半では、恐怖よりもむしろ警察に対する怒りのほうが観ていて強く感じます。