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映画『サード』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『サード』の概要:関東少年院にて生活する少年達の、不安や成長をドキュメンタリータッチで描いた作品。殺人を犯して収監された主人公の経緯と共に、十代の危うい均衡と未熟さが見事に描かれている。

映画『サード』の作品情報

サード

製作年:1978年
上映時間:102分
ジャンル:ヒューマンドラマ、青春
監督:東陽一
キャスト:永島敏行、吉田次昭、森下愛子、志方亜紀子 etc

映画『サード』の登場人物(キャスト)

妹尾新次(永島敏行)
通称サード。殺人の罪で少年院へ収監されている。本来は優しく真面目で礼儀正しい。体格が良く高身長であるため、喧嘩も強い。将来に不安を抱き、ホームを求めてひたすら走り続けている。
ⅡB(吉田次昭)
本名、色川明夫18歳。窃盗の罪で収監。サードと同級生でクラスメイト。仕事仲間でもあった。軟弱で喧嘩も弱いが、頭は回るほう。
新聞部(森下愛子)
サードのクラスメイト。新聞部所属であるため、新聞部と呼ばれている。可愛らしい女の子で、サードが初めての相手。売春で金を貯め、町を出ようとしていた。金庫番。
テニス部(志方亜紀子)
サードのクラスメイト。テニス部所属であるため、テニス部と呼ばれている。素朴な容貌をした女の子で、ⅡBが初めての相手。世俗的で仕事中に喘ぎ声を出すという演技もする。

映画『サード』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『サード』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『サード』のあらすじ【起】

関東朝日少年院。収監されている少年達は、いずれも窃盗や婦女暴行などの常習犯ばかりであった。彼らの朝は早く、点呼から始まり施設内の掃除の後に身支度を整える。生活する居室内も整理整頓が義務付けられており、布団のたたみ方や重ねる順番まで詳細に渡り決められているのだった。

殺人の罪で収監された妹尾新次は18歳。野球でのポジションがサードだったことから、通称サードと呼ばれている。同室の少年は19歳で傷害の罪で収監されていた。2人は重罪であるため、部屋から出ることは許されず居室内で食事を摂ることになっている。

朝食後は運動服に着替え、グラウンドで適度な運動を行う。当然、そこにサードの姿はなく、彼は1人部屋の単独寮で外から聞こえる声をじっと聴いているのだった。サードは時々、野球部で練習している時の夢を見る。ヒットを打ってベースを走るが、何周回ってもホームベースがないというものだ。彼は走り疲れ、ホームとは何なのだろうと絶望する。

サードはかつて、女性に売春をさせて金を稼いでいた。最終的にそれが殺人へと繋がるわけだが、彼は自らが犯した罪を真っ向から認めており、周囲が思うよりもよほど潔かった。その態度はむしろ全てを承知の上で、裁かれることを望んでいるようにも見えた。

そうして、関東朝日少年院へやって来たサード。始めのうちは他の少年達とも食事していたし、運動もしていた。だが、どこにでもある新入りいびりが発生。サードは主犯格の少年と取っ組み合いの喧嘩をしてしまう。

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映画『サード』のあらすじ【承】

施設内で問題が発生した場合、収監中の少年達で会議を開き徹底的に原因究明を行い、対処法を話し合う。結果、悪い点は双方にあるということで、互いに認め合い行動を改めることとなった。

少年院では日中、職業訓練も兼ねて溶接工や大工作業がある。入浴後は自由時間。勉強をしたり読書をしたり、それぞれに思い思いのことをして過ごすのだった。

3か月に1回、社会奉仕団体SBCが訪れる。その場にて思い思いの話をするのだが、サードには何が楽しいのか理解できない。参加は強制的であるため、くだらない話を時間いっぱいまで聞かされる。時には彼らと野球をしたりするが、こういう時とばかりに女性との接触を主に楽しむ。その日の夜は大概、全員が女性との行為を想像して自慰に耽るのだ。

そんなある日、新たに色川明夫という少年が窃盗の罪で収監される。ⅡBというあだ名の彼は、かつてサードの仕事仲間で学校のクラスメイトだった。

映画『サード』のあらすじ【転】

ⅡBとサード、新聞部というあだ名の女の子とテニス部というあだ名の女の子4人はある日、寂れた町から出るために金を稼ごうと悩んだ結果、売春を思いつく。
しかし、新聞部とテニス部は体を売るということが、どういうことか良く分かっていなかった。先に言い出したのは彼女らの方で、性行為を一度もしたことがないと言うため、サードとⅡBとでそれぞれ体を重ねることに。学校の人気がない場所でどうにか事を成した。

そうして、4人は客を求めて都会へ。サードとⅡBが客を厳選し、新聞部とテニス部へ斡旋する予定だった。しかし、白昼堂々と客が見つかるはずもなく。それでもどうにか客を見つけて新聞部へ。行為に及んでいる間、サードは近くで待機。同じくⅡBとテニス部も客を見つけて、行為に及んだ。その日だけで結構な額を稼いだ4人。稼いだ金は新聞部が全額預かることにし、その日は解散した。

その後も休日を利用して仕事に励む。だが、その日は新聞部が雰囲気の怪しい男を自らが選び、行為は3時間にも及んだ。サードは入れ墨を入れた男に、時間なので終わりにして欲しいと言ったが、男は話を聞きもせず暴力を振るって来る。サードは取っ組み合いの後、衝動的に相手の男を殴り殺してしまうのだった。

映画『サード』の結末・ラスト(ネタバレ)

ⅡBに対する新人いびりが始まった。彼はサードへと助けを求めたが、ここではチームを組んで助け合うことは禁じられている。
拒否されたⅡBは所内でも素行が悪く、手が付けられない状態へとなりつつあった。

そんなある夜、サードの元へテニス部が潜んで来る。彼女は新聞部が結婚してしまったため、4人で稼いだ金がどこにあるのか分からなくなってしまったと言う。テニス部はかつての客と恋仲になり、町を出ずにスーパーで働くことにしたらしい。

新聞部の裏切りに歯噛みするサード。だが、彼はまだ少年院から出ることはできない。そうしているうちに、サードをいびった少年が出所。その後、ⅡBの脱走騒ぎと続き院内は騒然となる。サードもまた脱走を視野に入れたが、自分はどこへ逃げようかと考えたところで、逃げ場はないと気付くのだった。

密かに無事に逃げ切ればいいと思っていたが、ⅡBは昼頃に捕縛され戻って来てしまう。サードは思わず彼を殴ってしまった。捕まるくらいなら、逃げなければ良いのだ。
もう1人の脱走者はそれっきり戻らず。サードは、彼は別の世界へ逃げたのだと思った。案の定、脱走者は裏山で首を吊っているのが発見される。

以来、サードの生活態度が徐々に悪化。落ち着きを失い、逃げることばかりを考えるようになる。彼はホームベースを求めて、ひたすら走り続けていた。ホームベースのないランナーは、ただそこを走り過ぎるだけ。彼はとうとう単独寮へ入ることになり、運動も他の少年達とは別々になった。しかし、その日ばかりはⅡBとトラックを走ることに。

サードは友人を励ましつつ、黙々とトラックを走り続けるのだった。

映画『サード』の感想・評価・レビュー

脚本が寺山修司だけあって、どこか詩的でセリフの言葉遣いが素晴らしい。主人公は母親による無意識の束縛や寂れた町に対して、鬱屈した思いを抱えていた。十代ならば、抱える当然の思いだと思う。ただ、町を出るために稼ぐ方法が良くない。理解力や想像力に乏しい、十代ならではの安易さである。

主演は若かりし頃の永島敏行。主人公の不安や鬱屈さなど、朴訥ながら複雑な演技を見事に演じている。印象的なのは、ホームベースがないから、ひたすら走り続けているというセリフ。様々な意味に捉えられるが、彼にとって母親がいる実家すらも、落ち着ける場所ではないのだと思わせ、居場所を求め続ける寂寥を感じさせる。(MIHOシネマ編集部)


大人になりきれない若さの残るサードの自分の進む道が見えず、もがいている様子が物凄くリアルに描かれていました。普通の高校生では無く、少年院で生活する「犯罪者」としたことで外の世界に出ることへの希望と、不安が入り交じる複雑な心境を上手く表現しています。
一般的には理解できないような行動ばかりでしたが、ラストのシーンは自分の生き方を決心したかのような表情をしたサードに「頑張って生きろ」とエールを送りたくなりました。(女性 30代)

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