映画『東京ゴッドファーザーズ』の概要:日本において最も有名なアニメーターといっても過言ではない、今敏氏の作品。ある日、3人のホームレスが可愛らしい赤ん坊を拾う。それが、全ての奇跡の始まりだった。
映画『東京ゴッドファーザーズ』の作品情報
上映時間:90分
ジャンル:ヒューマンドラマ、アニメ
監督:今敏
キャスト:江守徹、梅垣義明、岡本綾、飯塚昭三 etc
映画『東京ゴッドファーザーズ』の登場人物(キャスト)
- ギン(江守徹)
- 3人の中では一番ホームレス歴が長い。かつてギャンブルによる借金で家庭を壊した過去がある。
- ハナ(梅垣義明)
- ホームレス3人組の一人でオカマ。彼氏と別れ、生活がままならなくなった。家族という存在に誰よりも憧れを抱いている。
- ミユキ(岡本綾)
- 家出をしてホームレスとなった女子高校生。父親は刑事をしているが、娘との折り合いは悪かった。
- キヨコ(こおろぎさとみ)
- ゴミ捨て場に捨てられていた赤ん坊。ハナ達に拾われる。
映画『東京ゴッドファーザーズ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『東京ゴッドファーザーズ』のあらすじ【起】
街中がイルミネーションで彩られ、人々が浮き足立つ日、聖なる夜、クリスマス。そんな町の片隅で、ギン、ハナ、ミユキの3人はいつもと変わらずホームレス生活を続けていた。しかし、その夜はいつもと違うことが起きた。なんと、3人はゴミ捨て場で赤ちゃんを拾ったのだ。
ギンとミユキは赤ん坊を警察に届けることを提案するが、かねてより母親に憧れていたオカマのハナはそれを却下。1日だけ赤ん坊の面倒を見たいと言う。そして、3人はその赤ん坊にキヨコという名前をつけた。キヨコの両親を探したいというハナに、渋々ギンとミユキはついていく。
そんな彼らの唯一の手がかりは、捨てられた時にキヨコが入っていたカゴだった。そのカゴの中に、コインロッカーの鍵が入っていたのである。その鍵を使いコインロッカーを開けると、そこには鞄が入っていた。そして、その鞄の中には、おそらく親であろう人物の写真と、そしてスナックの名刺が入っていたのだった。
映画『東京ゴッドファーザーズ』のあらすじ【承】
その名刺が手がかりになるかもしれない、と3人はそのスナックを探し始めた。すると、街中を歩いていた3人は、途中トラブルに巻き込まれた男性に遭遇する。3人は慌ててその男を助け出す。すると、奇跡のような偶然が起きた。なんと、その男こそが探し求めていたスナックの経営者だったのだ。
しかし、写真の人物はどこにいるかは分からないという。再び手がかりを失った3人だったが、なんと男がお礼がわりにと、3人を自分の娘の結婚式に招待するのだった。あれよあれよという間に式場に連れていかれた3人。しかし、新郎の姿を見たギンの様子が急変する。なんと、その新郎は以前ギンを追い詰めた借金取りその人だったのだ。暴れ出したギンをハナは必死で抑え込む。
その直後、式場に発砲音が響き渡った。発砲したのはギンではない。ウェイトレスとして働いていた人物が、突如銃を取り出して発砲したのだ。その人物は新郎に向かって引き金を引くと、側にいたミユキを人質としてどこかへ消えていった。
映画『東京ゴッドファーザーズ』のあらすじ【転】
ミユキは訳も分からぬまま、逃走する犯人に連れ回される。その腕の中にはキヨコを抱いたままだった。そして、犯人はミユキを連れたまま、自分の家へと戻っていった。その家では犯人のパートナーと思しき女性が待っていた。しかし、その女性はとても心穏やかな性格の人物で、ミユキとキヨコにとても優しく接してくれたのだ。ミユキはその女性に母親の面影を見て、自分が人質ということも忘れ、少し安心感すら覚えるのだった。
一方、ギンとハナはミユキたちを必死で探していた。しかし、二人がどこに行ったか全く見当もつかない。すると、ギンが早々に諦めようと切り出す。そんなギンに怒ったハナはギンを見限り、一人で捜索を続けるのだった。偶然犯人やミユキたちを乗せたタクシーに遭遇したハナは、二人の居場所を突き止めた。そして、行き場をなくしたハナは、かつて自分が働いていたバーに助けを求めようと立ち寄った。すると、そこにはギンの姿があり、3人は再会を果たす。
映画『東京ゴッドファーザーズ』の結末・ラスト(ネタバレ)
しかし、なんとハナの体調が急変してしまう。ハナは病院へ運ばれるが、幸い命に別状はなかった。そして、なんとその病院ではギンの娘が看護師として働いていた。愛娘との久しぶりの再会。ギンをそっとしておいてやろうと、ミユキとハナはその場を後にするのだった。
そして、2人はとうとうキヨコを警察へ連れて行こうと考える。自分達では、キヨコの親は探せないと考えたのだ。しかし、ここで奇跡が起こる。なんと、キヨコの母親が現れ、彼女を引き取るというのだ。ようやく全てが解決した、と胸をなでおろす2人。しかし、事件は解決していなかった。病院で真実を知ったギンが、慌てて2人のもとにやってきた。なんと、写真の女性はキヨコの本当の母親ではないという。先程の女性が、本当のキヨコの母親からキヨコを盗んでしまったのだ。
3人は慌てて駆け出し、女からキヨコを取り返した。キヨコは無事に本当の両親の元に手渡される。お礼を言いたいというキヨコの両親を、一人の刑事が連れてきた。そして、その刑事こそミユキの父親だったのである。家出をしてホームレスとなったミユキは、久々に父親と再会したのだった。
映画『東京ゴッドファーザーズ』の感想・評価・レビュー
クリスマスらしい心温まる先品で、時期が近づいてくる度に鑑賞したくなります。
表情豊かな3人が魅力的です。それぞれ過去に事情があり、話しが進むにつれキャラクターにどんどん引き込まれます。赤ちゃんのお母さんを探しつつ、自分の過去を解決していく様子も面白いです。
何度も登場する不運なタクシーの運転手やヤクザの親分、オカマバーのママなど脇役達も個性的です。
エンディングのアレンジされたべートーベンの第九が最高で、気持ちよく観終われます。(女性 40代)
今敏作品の中で一番気になっていたものを鑑賞した。タイトルとあらすじを見た時から、ジョン・ウェインの西部劇の『三人の名付親』に似ていると思っていたら、本当にそれが元になっていたと知って驚きと親しみを覚えた。
綺麗事のような嫌味ったらしさは無く、むしろテンポのよいストーリー展開と、三人のキャラクターたちの魅力が分かりやすく描かれていてとても良かった。ぜひ寒い冬に観て温まって欲しいような作品だ。(女性 20代)
邦画には珍しい「クリスマスの奇跡」モノ。しかもそれが借り物ではなく、しっかりと「東京」という街だからこその話になっている。筋自体は単純明快。しかしそれが小さな奇跡、あるいは必然に近い偶然の積み重ねで展開されていく様が心地良い。ふとした台詞に言霊が宿るかのように、その台詞が現実のものとなる。伏線が回収されることに快感を覚える人には極上の一本だ。観ているだけである種の浮遊感のような不思議な気分を味わえる。多くの人に知っておいて欲しい傑作。(男性 40代)
みんなの感想・レビュー
①アニメとは思えないクオリティの高さ
この映画の見所は、なんといってもスムーズなキャラクターの動きである。
ジブリ映画やディズニー映画など、数多くのアニメがあるが、日本の巧みな技を余すこと無く使った作品という仕上がりだ。
また、オープニングやエンディングにもこだわりがあり、まるで実写の映画を見ているかのような作りが感じられる。
内容はアニメ版三谷幸喜映画というようなドタバタ劇が繰り広げられているが、アニメだから許させる。
トータルしてもアニメとしてはかなり上位にランクインするような質の良い作品だ。
②物語の繋がりの見事さ
アニメらしく奇跡や偶然の重なりが上手い。
自分を破綻させたヤクザとの再会、娘との偶然の再会、子供を受け渡した母親の人間違いやみゆきの父との再会。
どの再会や偶然も流れを邪魔しない違和感のないもので、心にすっと入ってくる。
やりすぎな感じも特にせず、嫌みにも感じさせない仕上がりになっているところも監督の手腕のすごさといったところであろうか。
ラストシーンの奇跡とも言えるシーン。
赤ん坊を守るためにビルから飛び降りたハナが、ビルの広告の垂れ幕に飛びつき地面まで無事に降りることが出来るシーン。
もちろん実写ではわざとらしく方向性がわからなくなりそうだが、アニメだと全てがほっこりさせられるし望んだ通りに進むから面白い。
ここでハナが死んだりすることは誰もが望んでいないオチなのだ。
③ドタバタ感が好き嫌いがわかれる作品
本作品はアニメだから良い。
これを実写で見せられていたら、ただのうるさい三谷映画にしか見えない。
とにかく走ったり追いかけたりしているわけで、アニメの平坦さが引き立てている。
ドタバタ感が押さえられているので大人が見ても楽しむことが出来るだろう。
本作品は良く出来た大人の娯楽アニメーション作品である。
子供が見ても楽しくないかもしれない。
捨てられた赤ん坊をホームレス達が自分のことのように大事にし、何とかして親元に返してやりたいと願うハートウォーミングなドラマだからだ。
あまりにスムーズな動きのキャラクターが魅力的でまるで生きているかのようなリアルさが非常に面白い。
このような作品を見ると日本のアニメの技術力の凄さを改めて痛感させられるというものだ。