映画『月に囚われた男』の概要:SFにおける名作品は、と問われれば必ず名前が挙がるであろう超名作。殆どサム・ロックウェルによる一人芝居とも言える様な内容を、見事に演じきっているその演技力に脱帽。
映画『月に囚われた男』の作品情報
上映時間:97分
ジャンル:SF、サスペンス
監督:ダンカン・ジョーンズ
キャスト:サム・ロックウェル、ケヴィン・スペイシー、ドミニク・マケリゴット、カヤ・スコデラーリオ etc
映画『月に囚われた男』の登場人物(キャスト)
- サム・ベル(サム・ロックウェル)
- 任務の為、一人月で暮らす中年。もうすぐ任期を終え地球へ戻る予定である。
- ガーティ(ケヴィン・スペイシー)
- サムの体調管理などの一切を任されている人工知能。サムの唯一の話し相手。
映画『月に囚われた男』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『月に囚われた男』のあらすじ【起】
今より少し先の未来の話、物語は月の上で一人生活する男の姿から始まります。その男の名前はサム・ベル。彼は核燃料生産企業である「ルナ産業」に勤めていましたが、宇宙で取れるエネルギー、”ヘリウム3″を採掘する為に現在月へと出張中でした。派遣されたのは彼一人で、唯一の話し相手は人工知能であるガーディというロボットだけです。孤独な環境でしたが、地球の妻と娘からの定期的に届くメッセージを心の支えに、任期である3年間を耐え忍んでいました。
そして満期まであと2週間を切った頃のことです。彼はいつもの如く月にある採掘場で作業をしていました。しかしその時、急な落石に巻き込まれ作業車ごと採掘場へと落ちてしまいました。次に目を覚ましたサムは基地に横たわっていました。事故前後の記憶が曖昧なサムは、ガーディと本部に問い合わせをしますが彼らの答えは曖昧です。彼らの対応に不信感を覚えたサムは、一人で事故現場に戻りました。すると何とそこには、もう一人の自分が倒れていたのです。
映画『月に囚われた男』のあらすじ【承】
しかし、事故現場に横たわっているそのもう一人の自分の息はまだ耐えてはいませんでした。そこで、サムは移動車の中で意識を失っている自分(以下サム2と仮定)を基地まで連れ帰り、医務室で治療を施しました。そのあと何とか目を覚ましたサム2でしたが、目の前に立つもう一人の自分に同じくパニックを起こし、二人は口論へと発展します。
実はどちらのサムも知らないところで、万が一にも採掘が失敗しないようにとルナ産業がサムのクローンを勝手に作り出していたのでした。そしてサム2が移動車ごと落石に巻き込まれた時、その生死を確認しないままにクローンを起動したことによってサムが二人存在するという現在の状況が生じているのでした。
すると、なんとサム2の歯が急激に抜け落ち、血を吐き出したのです。実はルナ産業の作ったクローンの寿命は3年間と定められており、サム2はそろそろその寿命を終えようとしていた為体調に悪化が見られたのでした。
映画『月に囚われた男』のあらすじ【転】
そして定期的に届く娘と妻からのメッセージでしたが、とうとうサムは娘のイヴと直接通話することに成功します。すると何と、自分が月に旅立った時は3歳であった娘はすでに15歳で、更に妻のテスはすでに亡くなっているというのです。自分が赴任してから三年も経過していないはずのサムはパニックに陥ります。
そして、イヴは”父親”サムと既に同居しているというのです。今までサムが本物だと思い心の拠り所としてきたメッセージテープは、本部がサムに真実を知らせないための偽物でした。この事からサムは、自身もクローンであることに気がつきます。ルナ産業がクローンを作成していた理由として、採掘を成功させるのと同時にコストを削減する意味合いもあったのでした。
その頃サム2は、大量の予備のクローンがしまってある隠し部屋を見つけました。サム2はサムを地球に返そうと画策します。その作戦は新たなクローン、サム3を起動し、そして殺すことで本部の目を誤魔化し一番目のサムを地球に戻す、といったものでした。
映画『月に囚われた男』の結末・ラスト(ネタバレ)
しかし、一番目のサムは既に自分の寿命が限界に近づいていることに気づいていました。そこで彼は2番目のサムに、自分の代わりに地球へ帰って欲しいと頼み込みます。そこでサム2は、息絶える寸前のサム1の身体を使用し、元々の計画を実行しようと動き出しました。
そんなサム達の行動を一部始終観察していた者がいました。長年サムと共にいた人工知能、ガーディです。するとガーディは自ら、自身の電源を落とすようにサム2に訴えます。電源を落とすことで、彼らの企みが録画された記録を消去しようとしたのです。どうしてそこまでしてくれるのかとサムが問うと、「私はあなたを助ける為に存在する」と満足げに言うのでした。ガーディだけが、長年サムの側に寄り添い、そして彼を真に支えてきた存在だったのでした。
サム2はその要望に応え、そしてとうとう月を後にしました。地球へと無事にたどり着いたサムはルナ産業を告発し、そしてルナ産業の株価が大きく暴落するのを、サムは満足げに見届けるのでした。
映画『月に囚われた男』の感想・評価・レビュー
SF世界の中で繰り広げられる、SF的な内容のストーリーです。
広大な中でも閉鎖された空間で、登場人物は終始ひとりだけ、という他ではあまり観ない設定です。低予算で制作された事でも話題となりました。だからこそ、派手な映像技術に頼ることが無く、宇宙空間でも倫理に訴えかける内容がしっかりと入ってきます。ラストは腑に落ちる展開で、感動もありました。(女性 20代)
ほぼサム・ロックウェル演じるサムの密室一人芝居。
サムが月でエネルギーを採掘するという契約期間三年の任務の最中、契約終了二週間を切ったある日、もう一人の自分が倒れているのを発見するという話。
思っていたほど未来っぽさやSF感がなく、シンプルかつストレートでメッセージ性のあるところが哲学的で良かった。
クローンは使い捨てなのに家族の記憶がある、という点が何とも辛辣で腑に落ちない。
もう一人の自分に会った時、自分ならどうしただろうか。(女性 20代)
初めて観た時は思わず二回観てしまった。SF好きなら絶対に見逃せないタイトルにビジュアル、それを裏切ることのない面白さだった。
97分という短さだが、内容は非常に濃厚で、鑑賞後は出来の良いSF小説を一冊読み終えたような気持ちになった。
終始一人芝居のようなものなのに、最後まで飽きることなく魅せられるサム・ロックウェルの演技も流石である。
どことなく『2001年宇宙の旅』を彷彿とさせるので、人工知能のガーティには終始不安にさせられたが、最後まで主人公を助けようとしてくれる、とっても良い奴だった。(女性 30代)
サム・ロックウェル一人でここまで面白くなるのか。『グリーンマイル』でクレイジーな役を演じたかと思いきや、時にはアウトローの一味になったり、そしてここでは月に囚われた男を切なく演じていて、演技派のますます目が離せない俳優の一人だ。
再び聴きたくなる音楽と息を呑む展開がとても印象に残った。想像を超えた事実を知った時、人間はどうするか。サムを通して、そんな状況に直面した人物描写を表現し切った巧妙な脚本も凄い。なかなか他には無さそうな結末なので続きがあってほしいと思った。(女性 20代)
閉鎖的な空間を舞台にサム・ロックウェルの一人芝居が繰り広げられる今作。地味な雰囲気ではありますが、その異様なまでの静けさのおかげで作品の世界観に集中して入り込むことが出来ました。
ストーリー的にはかなり独特です。現実の世界にいる人間の記憶をコピーして作られたクローンが、地球にいる家族の元へ早く戻りたいと指折り数えている姿は切なすぎました。彼の記憶の元になっている人間は既に地球に存在しているため、クローンは地球に行くことは出来ないのです。
記憶だけ植え付けられて現実にはどうすることも出来ないもどかしさに胸がぎゅっと締め付けられる思いでした。(女性 30代)
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