この記事では、映画『月に囚われた男』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説し、この映画の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。
映画『月に囚われた男』の作品情報
出典:Amazonプライムビデオ
製作年 | 2009年 |
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上映時間 | 97分 |
ジャンル | SF ミステリー |
監督 | ダンカン・ジョーンズ |
キャスト | サム・ロックウェル ドミニク・マケリゴット カヤ・スコデラーリオ ベネディクト・ウォン |
製作国 | イギリス |
映画『月に囚われた男』の登場人物(キャスト)
- サム・ベル(サム・ロックウェル)
- 任務の為、一人月で暮らす中年。もうすぐ任期を終え地球へ戻る予定である。
- ガーティ(ケヴィン・スペイシー)
- サムの体調管理などの一切を任されている人工知能。サムの唯一の話し相手。
映画『月に囚われた男』のネタバレ・あらすじ(起承転結)
映画『月に囚われた男』のあらすじ【起】
今より少し先の未来の話、物語は月の上で一人生活する男の姿から始まります。その男の名前はサム・ベル。彼は核燃料生産企業である「ルナ産業」に勤めていましたが、宇宙で取れるエネルギー、”ヘリウム3″を採掘する為に現在月へと出張中でした。派遣されたのは彼一人で、唯一の話し相手は人工知能であるガーディというロボットだけです。孤独な環境でしたが、地球の妻と娘からの定期的に届くメッセージを心の支えに、任期である3年間を耐え忍んでいました。
そして満期まであと2週間を切った頃のことです。彼はいつもの如く月にある採掘場で作業をしていました。しかしその時、急な落石に巻き込まれ作業車ごと採掘場へと落ちてしまいました。次に目を覚ましたサムは基地に横たわっていました。事故前後の記憶が曖昧なサムは、ガーディと本部に問い合わせをしますが彼らの答えは曖昧です。彼らの対応に不信感を覚えたサムは、一人で事故現場に戻りました。すると何とそこには、もう一人の自分が倒れていたのです。
映画『月に囚われた男』のあらすじ【承】
しかし、事故現場に横たわっているそのもう一人の自分の息はまだ耐えてはいませんでした。そこで、サムは移動車の中で意識を失っている自分(以下サム2と仮定)を基地まで連れ帰り、医務室で治療を施しました。そのあと何とか目を覚ましたサム2でしたが、目の前に立つもう一人の自分に同じくパニックを起こし、二人は口論へと発展します。
実はどちらのサムも知らないところで、万が一にも採掘が失敗しないようにとルナ産業がサムのクローンを勝手に作り出していたのでした。そしてサム2が移動車ごと落石に巻き込まれた時、その生死を確認しないままにクローンを起動したことによってサムが二人存在するという現在の状況が生じているのでした。
すると、なんとサム2の歯が急激に抜け落ち、血を吐き出したのです。実はルナ産業の作ったクローンの寿命は3年間と定められており、サム2はそろそろその寿命を終えようとしていた為体調に悪化が見られたのでした。
映画『月に囚われた男』のあらすじ【転】
そして定期的に届く娘と妻からのメッセージでしたが、とうとうサムは娘のイヴと直接通話することに成功します。すると何と、自分が月に旅立った時は3歳であった娘はすでに15歳で、更に妻のテスはすでに亡くなっているというのです。自分が赴任してから三年も経過していないはずのサムはパニックに陥ります。
そして、イヴは”父親”サムと既に同居しているというのです。今までサムが本物だと思い心の拠り所としてきたメッセージテープは、本部がサムに真実を知らせないための偽物でした。この事からサムは、自身もクローンであることに気がつきます。ルナ産業がクローンを作成していた理由として、採掘を成功させるのと同時にコストを削減する意味合いもあったのでした。
その頃サム2は、大量の予備のクローンがしまってある隠し部屋を見つけました。サム2はサムを地球に返そうと画策します。その作戦は新たなクローン、サム3を起動し、そして殺すことで本部の目を誤魔化し一番目のサムを地球に戻す、といったものでした。
映画『月に囚われた男』の結末・ラスト(ネタバレ)
しかし、一番目のサムは既に自分の寿命が限界に近づいていることに気づいていました。そこで彼は2番目のサムに、自分の代わりに地球へ帰って欲しいと頼み込みます。そこでサム2は、息絶える寸前のサム1の身体を使用し、元々の計画を実行しようと動き出しました。
そんなサム達の行動を一部始終観察していた者がいました。長年サムと共にいた人工知能、ガーディです。するとガーディは自ら、自身の電源を落とすようにサム2に訴えます。電源を落とすことで、彼らの企みが録画された記録を消去しようとしたのです。どうしてそこまでしてくれるのかとサムが問うと、「私はあなたを助ける為に存在する」と満足げに言うのでした。ガーディだけが、長年サムの側に寄り添い、そして彼を真に支えてきた存在だったのでした。
サム2はその要望に応え、そしてとうとう月を後にしました。地球へと無事にたどり着いたサムはルナ産業を告発し、そしてルナ産業の株価が大きく暴落するのを、サムは満足げに見届けるのでした。
映画『月に囚われた男』の考察・解説(ネタバレ)
映画『月に囚われた男』のサムのクローンの寿命は、本当に3年だったのか?
『月に囚われた男』において、主人公サム・ベルは月面基地で一人で働いていますが、実は彼自身がクローンであり、寿命が3年に設定されていることが明らかになります。サムのようなクローンたちは、わずか3年間だけ働くように作られているのです。その理由は、3年を経過すると身体的・精神的な異常を来たし、任務遂行が困難になるからです。
映画の中で、サムは契約期間の終了が近づくにつれ、体調不良や幻覚といった症状を呈します。このことから、クローンの寿命が本当に3年であることが裏付けられるのです。さらに、基地内には寿命を迎えたクローンを処分し、新しいクローンを目覚めさせるための設備が整えられており、企業がクローンを使い捨ての道具として扱っていることが浮き彫りになります。
つまり、サムの寿命は3年という短い期間に限定されており、次々と新しいクローンが目覚めては使い捨てにされるという非人道的なサイクルが繰り返されているのです。この設定は、クローンが人間として尊重されず、企業の利益のための消耗品として扱われている現実を強調しており、映画が問いかける「人間性」や「倫理」のテーマを深く考えさせる重要な要素となっています。
映画『月に囚われた男』のサムのオリジナルは、本当に死んでいるのか?
『月に囚われた男』の中で、サム・ベルがクローンであることを知り、自分のオリジナルであるサムの運命を気にかけるシーンがあります。映画の終盤、彼は地球にいる本物のサムとの通信を試み、そこで衝撃的な事実を知ることになります。
実は、オリジナルのサムは死んでおらず、地球上で家族と共に生活していたのです。しかし、すでに歳を取っており、クローンのサムたちが記憶する「妻」とは離婚し、娘も成人しています。つまり、オリジナルのサムは生きてはいるものの、クローンたちが持つ記憶や過去の出来事は、すでに遠い昔のものとなっており、現実とは大きくかけ離れているのです。
このことから、クローンのサムたちはオリジナルのサムの人生を追体験するために作られた存在であり、自分自身の真の過去やアイデンティティを持たないことが浮き彫りになります。オリジナルのサムが生存していることを知ったクローンたちは、自分がただの「コピー」に過ぎず、自分の記憶も全て虚構であるという悲しい現実を突きつけられるのです。
映画『月に囚われた男』が怖いと言われる理由とは?
『月に囚われた男』が「怖い」と評される理由は、作中に描かれる極度の孤独感と、アイデンティティの崩壊にあります。主人公サムは月面基地で完全に一人きりで働いており、彼が会話できるのは人工知能のロボット「ガーティー」だけです。この極限状態の孤独感は、観る者に強い不安を呼び起こします。
加えて、サムがクローンであることを知り、自分の存在や記憶の全てが偽物だと気づいた時、彼は自分のアイデンティティが根底から覆される恐怖に襲われます。自分の過去や家族への思いが全て作り物であり、自分自身が企業の利益のために生み出された存在だと知ることは、非常に衝撃的な体験なのです。
また、映画が描く企業の冷酷な行動や、クローンを使い捨ての道具として扱う非人道的な姿勢も、観客に不安や恐怖を抱かせます。人間の命や感情が完全に無視され、単なる「作業用の資源」として扱われる様子は、現実社会の問題やテクノロジーの発展がもたらしうる負の側面への不安を喚起するのです。こうした要素が重なり、『月に囚われた男』を「怖い」映画として印象づけているのです。
映画『月に囚われた男』がなぜつまらないと言われているのか?
『月に囚われた男』が「つまらない」と感じる人がいるのは、映画の展開がかなりゆっくりとしており、派手なアクションシーンが少ないからだと考えられます。物語のほとんどが月面基地という閉鎖された環境の中で進行し、主人公サムの心理的葛藤や孤独感、クローンとしてのアイデンティティの問題が中心となります。そのため、スリリングな展開や刺激的な場面を期待していた観客には、退屈に映ることがあるのです。
また、この映画はSF作品としての設定やテーマが非常に深く、クローン技術や人間の存在意義、倫理的な問題など、哲学的な問いかけが多く含まれています。物語のペースが遅く、一つ一つのセリフやシーンをじっくりと考えながら観ることが求められるため、わかりやすい娯楽作品を期待していた人には、内容が難解でつまらなく感じられるかもしれません。
さらに、登場人物がほぼサム一人に限られ、彼の心情の変化や置かれた状況が物語の中心となるため、感情移入しにくい人にとっては、ストーリー展開が単調に感じられる可能性もあります。こうした要因が重なって、一部の観客から「つまらない」という評価を受けることがあるのです。
映画『月に囚われた男』で、サムが見る現実の妻と娘を追い求める幻覚の意味とは?
『月に囚われた男』の中で、サムが見る妻と娘の幻覚には、彼の孤独感と本物の愛情への渇望が表れています。サムは月面基地で3年間一人で過ごす中、地球にいる妻と娘の存在を心の支えにしていました。しかし実際には、サムはクローンであり、その記憶や感情は全て人工的に作り出されたもので、現実の妻と娘は存在しないのです。
サムが幻覚を見るのは、自分のアイデンティティを守ろうとする無意識の反応であり、現実とのギャップが彼の精神に大きな負担をかけているからです。自分が誰なのか、何のために生きているのかという問いに直面したサムは、自分の中にある「本物の自分」を見出そうとします。だからこそ、彼は幻覚の中で妻と娘を追い求め、再会を望むのです。
この幻覚は、たとえクローンであっても、サムの抱く愛情や人間らしさが本物であることを示唆しています。幻覚の中で幸せな記憶を追体験しようとするサムの姿は、彼の人間性を表すと同時に、自分が単なる「コピー」に過ぎないという悲しい現実を浮き彫りにしているのです。
サムが見る幻覚は、彼の葛藤と、人間らしい生活への願望を象徴しており、物語全体を貫く重要なテーマを描き出しています。それは、たとえ人工的に作られた存在であっても、感情や愛情を持つことができるという、人間性の本質を問いかけているのです。
映画『月に囚われた男』に散りばめられた伏線とは?
『月に囚われた男』には、物語の展開を予感させるいくつかの伏線が巧みに散りばめられています。中でも最も重要なのは、サムの体調の変化です。映画の序盤から、彼は体調不良や幻覚に悩まされるなど、普通ではない症状を示しており、これがサムがクローンであることを示唆しているのです。こうした体調の異変は、クローンの寿命がわずか3年しかないことを暗示しており、後にサムがクローンだと明かされる伏線として機能しています。
また、基地内のさまざまな細部描写も伏線として効果的に使われています。例えば、クローンを保管する設備や、役目を終えたクローンを処分する装置などは、サムが単なる「作業用の資源」として扱われている現実を物語っています。さらに、人工知能のロボット「ガーティー」がサムに親切に接する一方で、企業の指示には忠実に従う様子も、ガーティーの存在が単なるプログラムの一部であることを示唆しているのです。
これらの伏線は、観客に真相を少しずつ明かしながら、サムが自分の存在の真実に気づいていくプロセスをスムーズに描き出す役割を果たしています。そのおかげで、この作品は単なるSFではなく、人間性やアイデンティティという深遠なテーマを持った映画として成立しているのです。監督の巧みな伏線の使い方が、物語に奥行きと説得力を与えていると言えるでしょう。
映画『月に囚われた男』に続編があるのか?
『月に囚われた男』には直接の続編はありませんが、同じ世界観を共有するスピンオフ作品『ミュート(Mute)』が2018年に製作されました。この映画も『月に囚われた男』と同じくダンカン・ジョーンズ監督によるもので、近未来の地球を舞台にしています。
『ミュート』は、未来のベルリンを背景に物語が展開されますが、『月に囚われた男』とは直接のつながりはありません。ただし、いくつかの共通点やオマージュが見られ、例えば『月に囚われた男』に登場した企業や人工知能技術などが、『ミュート』の世界にも存在していることから、両作品が同じ世界観を共有していることがわかります。
また、ダンカン・ジョーンズ監督は、『月に囚われた男』と『ミュート』に続く三部作の構想を持っていることを示唆しており、今後、さらにこの世界観を拡張する作品が生まれる可能性もあります。『月に囚われた男』の直接的な続編ではありませんが、同じテーマや設定を共有する作品が存在するため、もしこの世界観に興味を持ったなら、『ミュート』をチェックしてみるのもおもしろいかもしれません。それによって、『月に囚われた男』の物語世界をより深く理解することができるでしょう。
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