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映画『浮草』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『浮草』の概要:浮草のように不安定な人生を送る旅役者の嵐駒十郎は、ひとり息子の清の将来を楽しみにしていた。しかし思わぬところから親子関係に亀裂が入る。小津安二郎監督が1934年に制作した「浮草物語」をセルフリメイクした作品。カラッとした気質の旅役者を、中村鴈治郎が好演している。

映画『浮草』の作品情報

浮草

製作年:1959年
上映時間:119分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:小津安二郎
キャスト:中村鴈治郎、京マチ子、若尾文子、川口浩 etc

映画『浮草』の登場人物(キャスト)

嵐駒十郎(中村鴈治郎)
嵐駒十郎一座を率いる旅役者。座員からは“親方”と呼ばれている。お芳との間に一人息子の清がいるが、清の将来を考えて、別々に暮らしている。清は駒十郎をお芳の兄だと教えられ、“おじさん”と呼んでいる。
すみ子(京マチ子)
温泉芸者をしていたが、駒十郎に惚れて一座に加わる。一座の花形であり、駒十郎の内縁の妻のような存在。気性が激しく、嫉妬深い。
本間清(川口浩)
駒十郎の息子。2年前に高校を卒業し、大学進学を目指して郵便局でアルバイトをしている。健康的でまじめな青年。駒十郎やお芳にとっては自慢の息子。
お芳(杉村春子)
志摩半島の小さな港町で、一膳飯屋を営んでいる。駒十郎とは20年以上の付き合いで、強い信頼関係で結ばれている。清を立派な人間に育てるため、女手ひとつで頑張ってきた。
加代(若尾文子)
駒十郎一座の座員。死んだ父親も駒十郎一座の旅役者だった。すみ子に頼まれ、純情な清を誘惑する。

映画『浮草』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『浮草』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『浮草』のあらすじ【起】

夏。志摩半島の小さな港町にある相生座に、嵐駒十郎一座が興行にくる。駒十郎がこの土地を訪れるのは、12年ぶりだった。

座員たちは町を練り歩き、今晩からの芝居の宣伝をする。相生座の旦那は酒を持ってお祝いに駆けつけ、駒十郎と昔を懐かしむ。旦那は小さかった加代が立派な娘に成長しているのを見て、時間の流れを感じる。

駒十郎は、ひとりで町の一膳飯屋を訪ねる。店の主人のお芳は、喜んで駒十郎を奥の部屋へ通す。2人は20年以上前に男女の関係となり、お芳は清という男の子を生んでいた。駒十郎は清に旅役者の暮らしをさせるのが嫌で、お芳に清の養育を任せてきた。清は駒十郎のことをお芳の兄だと思っており、実の父親は死んだと聞かされていた。

清は2年前に高校を卒業し、大学進学を目指して郵便局でアルバイトをしていた。立派な青年に成長した清を見て、駒十郎は目を細める。清は、駒十郎にとって、たった一人の血を分けた息子で、離れて暮らしてはいたが、駒十郎は清を溺愛していた。

その夜、初日の芝居は7割ほどの客入りで、すみ子は初日にしては少ないと興行の心配をする。機嫌のいい駒十郎は、これから尻上がりになるはずだと楽観的に考える。

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映画『浮草』のあらすじ【承】

翌日、駒十郎は清と釣りに出かけ、楽しい時間を過ごす。すみ子は、駒十郎が若い男と釣りに出かけたと聞いて不審に思う。

すみ子は、帰ってきた駒十郎に、郵便局の若い男とは誰なのかと詰問する。駒十郎のそぶりから、何か隠し事をしていると感じたすみ子は、古い座員の六三郎から事情を聞き出す。六三郎は仕方なく、お芳のことを教えてやる。

ある日、駒十郎がお芳の家で清と将棋を指していると、店にすみ子がやってくる。お芳からお迎えが来たと聞いた駒十郎は、すみ子の姿を見て驚く。感情的になったすみ子は、店で騒ぎ始め、駒十郎はすみ子を外へ連れ出す。

降りしきる雨の中、駒十郎とすみ子は大喧嘩をする。清にまでからんだすみ子に、駒十郎は本気で腹を立てていた。駒十郎は清に近づかないよう、すみ子を厳しく叱る。

すみ子は加代に金を渡し、郵便局にいる清という青年を誘惑して欲しいと頼む。加代は一度は断るが、すみ子の剣幕に押されて、その話を引き受ける。

翌日、加代は郵便局を訪れ、清を誘い出す。加代に、芝居が終わる時間に相生座まで来てほしいと言われ、清はのこのこ出かけていく。加代からキスされ、清は加代に夢中になっていく。

映画『浮草』のあらすじ【転】

長雨にも祟られて客足が伸びず、芝居は中止となる。しかし次の興行先へ話をつけに行った先乗りからは何の便りもなく、一座は足止めを食らう。座員たちは海で暇を潰しながら、一座の行く末を心配する。

あの晩から、加代と清は毎日のように会っていた。郵便局のアルバイトをサボってまで自分と会いたがる清を見て、加代は罪の意識を感じる。そして、すみ子の依頼で清を騙すつもりだったのだと打ち明ける。自分のような女を相手にするべきではないと何度諭しても、清は加代を離そうとしない。加代も、そんな清に本気で惹かれていく。

お芳は、最近清の帰りが遅い理由を、郵便局で勉強しているからだと思い込んでいた。しかし、駒十郎が父親であることが、すみ子の口から清に伝わるようなことはないかと心配していた。お芳は、駒十郎が父親であることを自分から清に話してもいいと思っていたが、駒十郎は“今のままでいい”と言い続けるのだった。

お芳の家で清を待っていた駒十郎は、清が一向に帰らないので相生座へ戻る。帰り道で、清が加代と会っているのを目撃し、2人がただならぬ関係であることに気づく。駒十郎は、戻ってきた加代を怒鳴りつける。駒十郎に“金目当てか!”と罵られ、加代は傷つく。そして、すみ子から頼まれたのだと打ち明ける。

駒十郎はすみ子を呼び出し、いきなり殴る。気の強いすみ子は歯向かってきたが、駒十郎が本気で自分を捨てる気なのだと知って、急に気弱になる。駒十郎は、清を巻き込んだすみ子が許せず、一座から出ていくよう告げる。

映画『浮草』の結末・ラスト(ネタバレ)

この一座にいても将来はないと感じた3人の座員は、金目のものを盗んで逃げようかと相談する。しかし、吉之助という座員が反対し、他の2人も自分たちの不義理を反省する。

ところが、偉そうに説教をしていた吉之助が、一座の金や座員たちの私物を盗み、逃亡してしまう。先乗りにも裏切られ、駒十郎一座は解散するしかなくなる。今回の芝居の稼ぎも微々たるものだったが、駒十郎はそれを座員たちに足代として渡し、別れの宴会を開く。座員たちの気遣いで、すみ子もその輪に加わる。駒十郎は、散り散りになる座員たちに“再起するときは知らせるから”と約束し、愛着のある一座を解散する。

駒十郎は、とりあえずお芳のところへ行く。お芳は、“これを機に親子3人水入らずで暮らせばいい”と言ってくれる。そして駒十郎もその気になる。ところが、清が加代と一緒に出て行ったことがわかり、駒十郎の顔色が変わる。

清は、貯金まで下ろして加代と駆け落ちしていた。駒十郎は清に失望するが、お芳は息子のことを信じていた。

清は加代に諭され、すぐに帰ってきた。駒十郎は、清と一緒に帰ってきた加代をいきなり殴る。それをかばった清も駒十郎に殴られ、力任せに駒十郎を突き飛ばす。お芳は、駒十郎が清の父親であることを打ち明けるが、清は“オヤジなんかいらない”と反発する。お芳は、清の将来を考え、金を送り続けてきた駒十郎の親心を話して聞かせるが、清は折れない。

清から“出て行ってくれ”と言われた駒十郎は、寂しそうに笑って旅支度をする。加代は自分の過ちを心から詫びる。駒十郎は、お芳に加代のことを頼んで旅立っていく。

加代に呼ばれ、清も駒十郎を追おうとするが、お芳がそれを止める。お芳には、駒十郎の気持ちが痛いほどわかっていた。清も加代も、そしてお芳も、駒十郎を想って涙を流す。

駅の待合所へやってきた駒十郎は、すみ子と再会する。知らん顔をする駒十郎に、すみ子は“2人で一からやり直そう”と頼む。駒十郎はそれもいいかと考え直し、すみ子と夜汽車に乗りこむのだった。

映画『浮草』の感想・評価・レビュー

男は寡黙で多くを語らない。女はしなやかに艶っぽく。男らしさ、女らしさを目に見えるように描いた、ものすごく人間らしいリアルな作品でした。
親と子、夫婦、家族、同僚など様々な形の絆や愛が描かれています。今とは違う時代背景ですが、共感できる部分も多かったです。最初は客観的に見ていましたが、だんだんと感情移入してしまい、自分の事のように感じてしまうような作り方は素晴らしいなと感じました。(女性 30代)

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