映画『三つ数えろ』の概要:娘をネタに脅迫されている資産家の依頼で、私立探偵のマーロウは悪党どもの黒幕を暴き出していく。次々と人物が登場し、新たな殺人事件が起こるので、鑑賞後にもいくつかの謎が残る。しかし軽快なテンポで進むストーリーは、娯楽作品として考えれば魅力的だ。
映画『三つ数えろ』の作品情報
上映時間:110分
ジャンル:ミステリー、サスペンス
監督:ハワード・ホークス
キャスト:ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール、ジョン・リッジリー、マーサ・ヴィッカーズ etc
映画『三つ数えろ』の登場人物(キャスト)
- フィリップ・マーロウ(ハンフリー・ボガート)
- 38歳の私立探偵。以前は地方検事の下で働いていたが、衝突して私立探偵になった。刑事とも親しく、探偵としての能力も高い。
- ビビアン・スターンウッド(ローレン・バコール)
- マーロウに仕事を依頼した資産家のスターンウッド将軍の長女。妹のカルメンよりはしっかりしているが、甘やかされて育ったお嬢様なので世間を知らない。
- カルメン・スターンウッド(マーサ・ヴィッカーズ)
- ヴィヴィアンの妹。セクシーな容姿をしているが、中身は子供のまま。爪をかむ癖がある。精神的に不安定で男グセも悪い。
- エディ・マース(ジョン・リッジリー)
- カジノを取り仕切るボスで、不動産も持っている。ヴィヴィアンに近づき、スターンウッド家から金を脅し取ろうとしている。
映画『三つ数えろ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『三つ数えろ』のあらすじ【起】
1940年代のロサンゼルス。最近地方検事の調査員を辞めて私立探偵になったフィリップ・マーロウは、有名な資産家のスターンウッド将軍の屋敷に呼ばれる。屋敷に入ってすぐ、この家の次女のカルメンの異常な姿を目にして、マーロウは少々面食らう。
スターンウッド将軍はすでに高齢で、車椅子生活をしている。そんな将軍の悩みのタネは2人の娘のことだった。長女のビビアンも次女のカルメンも美人で気が強いが、お嬢様育ちなので人に騙されやすい。将軍は1年前にジョー・ブローディという男から娘をネタに5000ドルを恐喝され、リーガンという用心棒を雇っていた。将軍は心からリーガンを信頼していたが、彼はひと月前に突然姿を消してしまう。マーロウもリーガンと友人だった。
将軍のもとには、古書商のガイガーから“博打の借金手形です お支払いください”というメッセージとともに、カルメンのサインが入った何通もの借金手形が届いていた。マーロウへの依頼は、ガイガーを追い払うことだった。
仕事を引き受けて帰ろうとするマーロウを、ビビアンが呼び戻す。ビビアンは、マーロウのことを警戒しているようで、あれこれと難癖をつけてくる。
マーロウは客を装ってガイガーの古書店を探りにいくが、ガイガーには会えない。向かいの本屋で待っていると、ガイガーが車で出かけるのを目撃する。マーロウもすぐに車で尾行を開始する。
ガイガーは、ラバーン・テラスにある一軒家に入っていく。しばらくして、別の車で到着した女が中へ入っていく。その女はカルメンだった。
マーロウが車の中で待っていると、家の中から女の悲鳴と銃声が聞こえる。その直後、2台の車が逃走していく。マーロウが窓から家の中へ入ると、酒で酩酊したカルメンの前に、ガイガーの射殺死体が横たわっていた。置物の中には隠しカメラが仕込まれており、フイルムは何者かに持ち去られていた。マーロウは室内を調べた後、カルメンを屋敷まで送り届ける。
屋敷の使用人とヴィヴィアンに詳しい事情は伏せ、“カルメンは家にいたことにしろ”と忠告して、マーロウは再び殺害現場へ戻る。
映画『三つ数えろ』のあらすじ【承】
マーロウが戻ってみると、ガイガーの死体が消えており、血痕の上には絨毯が敷かれていた。
事務所へ戻ったマーロウを、殺人課のバーニー刑事が訪ねてくる。今夜波止場に転落した車の中から、男の死体が発見されたらしい。マーロウはバーニーとともに波止場へ向かう。
車内で死んでいたのはテーラーというスターンウッド家の運転手で、首が折れ、左のこめかみに打撲傷があった。
翌日。ビビアンがマーロウの事務所を訪ねてくる。どうやら死んだテーラーは、カルメンに求婚していたらしい。スターンウッド家には昨晩カルメンがあの家にいたという証拠になる写真が届き、女の声で“ネガとフイルムで5000ドル払え”という脅迫電話がかかっていた。その写真が公になれば、カルメンは逮捕され、スターンウッド家の家名にも傷がつく。ビビアンは父親を頼らず、エディ・マースというカジノを取り仕切っている男から、金を借りる手配をしていた。行方不明のリーガンは、マースの妻と駆け落ちしたらしい。
マーロウはガイガーの店から出た車を尾行する。車が到着したのは、ブローディのマンションだった。
マーロウはガイガー殺害現場へ行き、偶然カルメンと会う。カルメンはブローディがガイガーを殺したと言う。カルメンを帰した直後、この家の大家を名乗る男がやってくる。それがマースだった。ビビアンはマースを信用しているようだったが、マースは明らかに裏社会を生きる物騒な輩だった。
ブローディのマンションに戻ったマーロウは、ビビアンが建物内へ入っていくのを目撃する。マーロウは彼女を尾行し、ブローディの部屋をつきとめる。室内には、ブローディとガイガーの店の女店員のアグネス、そしてビビアンがいた。マーロウはブローディに“ガイガーを殺しただろう”と聞くが、ブローディはそれを否定する。2人が押し問答していると、銃を持ったカルメンがやってくる。マーロウは隙を見てブローディとカルメンの銃を奪い、証拠写真を取り上げる。そしてビビアンがカルメンを連れて帰る。
ブローディからガイガー事件の真相を聞き出していると、また誰かが呼び鈴を鳴らす。ドアを開けた瞬間、ブローディは訪ねてきた男に射殺される。マーロウは男を捕まえ、バーニー刑事に引き渡す。どうやらガイガーを殺したのは、ブローディではないようだった。
映画『三つ数えろ』のあらすじ【転】
しかし、ガイガー殺しはブローディの仕業ということにされ、ビビアンはマーロウに報酬を渡す。ビビアンはマーロウに仕事の終了を告げるが、マーロウは納得しない。マーロウは、ビビアンがマースと取引をしているのではないかと疑っていた。
マーロウは自らマースに連絡して、彼のいるカジノへ向かう。そこにはビビアンもいた。マーロウは“リーガンの情報が欲しい”とマースに頼んでみるが、マースはシラを切り通す。
ビビアンはカジノで勝ちまくり、家に送って欲しいとマーロウに頼む。マーロウは銃を持って彼女を待つ。案の定、ビビアンの後ろから強盗を装った男が付いてきて“金をよこせ”と彼女を脅し、それをマーロウが救う。マーロウは一連の出来事が、マースとビビアンの仕組んだ芝居だと読んでいた。ビビアンとマーロウは惹かれあっていたが、ビビアンはなかなか本当のことを話さない。
マーロウは地方検事に呼び出され、この事件から手を引くよう命令される。どうやらビビアンが検事に相談したらしい。マーロウは、黒幕がマースであることに気づいていた。
マーロウはスターンウッド将軍に会いたがるが、ビビアンはどうしても会わせてくれない。そしてリーガンがメキシコで見つかったという嘘までつく。
道で2人の男に暴行され、事件から手を引くよう脅迫されたマーロウに、ジョーンズという男が声をかけてくる。ジョーンズはアグネスの命令で、マーロウにリーガンの情報を売りにきていた。マーロウはアグネスから情報を買う約束をして、1時間後に待ち合わせする。
指定場所の事務所に着くと、ジョーンズはマースの部下のカニーノというギャングに銃をつきつけられていた。アグネスの居場所を教えるよう脅され、ジョーンズはアパート名と部屋番号を告げる。マーロウは物陰に隠れ、2人の様子を見ていた。
カニーノは、ジョーンズに酒を飲ませて去っていく。その酒には毒が入っており、ジョーンズは絶命する。マーロウはジョーンズが語ったアパートに連絡してみるが、そこにアグネスは住んでいなかった。ジョーンズは、嘘をついて婚約者のアグネスを守っていた。
映画『三つ数えろ』の結末・ラスト(ネタバレ)
アグネスからマースの妻の居場所を聞き出したマーロウは、車でその場所へ向かう。マーロウは目的地の前でわざと車をパンクさせ、ガレージにいる男に声をかける。そこには、カニーノの姿もあった。カニーノはマーロウを殴り、裏の家に監禁する。
ガレージの裏の家には、アグネスの言った通り、マースの妻がいた。しかし、彼女とリーガンが駆け落ちしたというのはマースの偽装工作だった。そしてその家にはビビアンまでいた。ビビアンはマースの言いなりになっていたが、ようやくマーロウの話を信用し、彼の逃亡を手伝う。
縄を切ってもらったマーロウは、20数えたら悲鳴をあげるようビビアンに指示を出し、外へ出て車の中の銃を手にする。そしてビビアンの悲鳴で駆けつけたカニーノを銃殺し、ビビアンとガイガー殺害現場の家へ行く。そこへマースを呼び出す。
到着したマースは、四方に部下を配置し、最初に飛び出してきた男を撃ち殺すよう指示を出して家の中へ入る。待ち伏せしていたマーロウは、マースに銃を突きつけ、真実を明らかにしていく。
行方不明になったリーガンは、彼に惚れていたカルメンによって殺された。しかしカルメンはその時のことを何も覚えていない。マースはリーガンの死体を処分し、それをネタにビビアンをゆすり始める。殺されたガイガーやブローディも、スターンウッド家の資産目当てで娘たちに近づき金を巻き上げていたが、一連に事件の黒幕は、やはりマースだった。
マーロウは“助かりたければ三つ数える間に外へ出ろ”とマースに告げ、カウントを始める。マースは“俺だ!”と叫びながら外へ出るが、部下に蜂の巣にされる。マーロウは悪党どもに利用されていた姉妹に同情し、“リーガン殺しはマースだ”とバーニー刑事に報告する。そして、ビビアンにカルメンを病院で療養させるよう忠告する。
映画『三つ数えろ』の感想・評価・レビュー
ボギーとローレンの行動の一つ一つがスタイリッシュで癖が強く、物語の本筋が何度も分からなくなります。何というか”粋”なんです。とても魅力的で美しい映画です。事件の展開の仕方は、どれも悲鳴や銃声といった”音”からということも”粋”です。ボギーのぶれないキャラクターが感じられます。
登場人物も多く、話も非常に練られていて複雑です。1度見てボギーに惚れこむも良し、何度も見て物語を理解するも良し、これぞ不朽の名作だと思います。(男性 20代)
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