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映画『海と毒薬』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『海と毒薬』の概要:終戦末期、米軍の捕虜8名に対して行われたのは「戦争医学」のためと称した生体解剖による臨床実験だった。医療に対して正反対の考えを持つ、2人の若き研究生の目を通して描く医学ドラマ。

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映画『海と毒薬』の作品情報

海と毒薬

製作年:1986年
上映時間:123分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
監督:熊井啓
キャスト:奥田瑛二、渡辺謙、岡田真澄、成田三樹夫 etc

映画『海と毒薬』の登場人物(キャスト)

勝呂(奥田英二)
F市の大学病院の医学部生。真面目な性格で、医学というものを真摯に捉えており、純粋に目の前にある人命救助を優先しているような考え方を持っている。
戸田(渡辺謙)
勝呂と同じF市の大学病院の医学部生。勝呂とは根本的に考え方が違い、医学が発展するためなら多少の犠牲もやむを得ないと判断している。
橋本教授(田村高廣)
勝呂が指示する教授。第1外科部長。大杉医学部長の急死から第2外科部の権藤教授と医学部長の座を巡って椅子の取り合いをしていた。
大場看護婦長(岸田今日子)
橋本の指示には忠実に従う、無口で冷たげな印象もある看護婦長。
上田(根岸季衣)
とある事情で休職していた看護婦。不幸な結婚と離婚を繰り返した挙句、子供を流産し子宮を摘出した過去を持つ。
柴田助教授(成田三樹夫)
治療というよりは、実験対象として患者を手術している教授。
浅井助手(西田健)
橋本教授の助手。看護婦の上田と性的関係を結ぶ。
おばはん(千石規子)
勝呂の初めての患者。末期の結核患者であるのをいいことに、柴田により実験手術の対象になっていたが手術前に衰弱死する。

映画『海と毒薬』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『海と毒薬』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『海と毒薬』のあらすじ【起】

第二次世界大戦後の日本。留置所では勝呂という医師が何かの事件について調べられている。促され、事件の当時について話し始める勝呂。

昭和20年5月。日本には敗戦の匂いが立ち込めつつあった。勝呂は九州にあるF帝大の医学部第1外科研究生として病室に通いながら、短期現役の身分を持っている。九州のF市には、毎夜のように空襲が繰り返されていて病院には物資も薬品も少ないため、できることは限られていた。勝呂は医療というものを非常に真面目に考えている青年で、純粋に多くの患者を救いたいと思っている。もう1人、戸田という研究生はどちらかといえば諦観したような思いが強く「患者一人哀れんでてもどうにもならん。病院で死なない奴は空襲で死ぬ。それよりも肺結核を治す新方法を考えや」と、実にドライな考えの持ち主だった。

1ヶ月前、F帝大医学部で大杉医学部長が亡くなり、教授の椅子を巡って取り合いが始まっていた。そんな中で最有力候補に挙がっていたのが第1外科の橋本教授であったが、それが覆り第2外科の権藤教授の名も挙がってきたとのこと。権藤教授は足固めとして、噂ではあるが自分が医学部長になれば傷痍軍人を収容するという内約を政府軍に与えたのだという。それで焦り始めた橋本教授は、功績を残そうとする。

橋本教授の第1外科では主に肺結核の患者を取り扱っていた。当時、結核といえば不治の病と言われるほど致死率の高い病であった。勝呂の患者でもある「おばはん」は重度の肺結核であり、本人も納得した上で手術(と、いう名の人体実験でもある)を受けたいと言う。助教授の柴田も執刀したいと名乗り出ており、予備検査を勝呂に任せた上で橋本教授に決定が委ねられた。おばはんは「手術を受ければ助かりますじゃろか?」と勝呂に尋ねるが、その顔色はどこか浮かない。心臓への負担が重く、手術をしても両肺摘出で95%の確率で死亡してしまい、オペをしなくても半年以内には確実に衰弱死してしまうのだという。そしてもう1人、手術の候補として田部夫人の名が挙がる。彼女は名のある一族・大杉一家の親戚で、比較的軽度の患者で手術の成功率も高いとのことであった。彼女の手術が成功すれば、大杉家へ恩が売れ権藤教授への牽制にもなるだろう。勝呂と戸田は屋上で語り合う、「おばはんは実験台やし、田部夫人は出世のためのもんなんか」――勝呂の言葉に戸田は「当たり前やないか」と一蹴する。そして「それが何故悪いねん」とも。戸田は何故勝呂がおばはんに執着するのか気になり問いかけるが、勝呂自身もよく分からないと言う。そして戸田は言う、「おばはんかて空襲で死ぬより病院で殺された方が意味がある。オペで殺されるんなら医学のためや。大勢の患者を救うことになるんならおばはんだって持って瞑すべしやないか」。その言葉に複雑そうな顔のまま「お前は強かな」としか答えられない勝呂。

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映画『海と毒薬』のあらすじ【承】

来週の金曜日に、まず田部夫人からのオペが決まる。1週間後、おばはんのオペが行われる。勝呂も戸田もいずれのオペにアシスタントとして入ることとなる。

橋本教授自らが田部夫人を手術の執刀をすることとなるが、初めは順調だったオペも終盤に差し掛かり大量出血を起こし亡くなってしまう。しばし呆然としていた橋本教授だったが、患者は手術で死んだのではなく手術後の明朝6時に死んだということにする、と話し始める。家族たちには明後日まで面会不可と話し、完全な隠ぺい工作を図る橋本教授ら。勝呂はそんな自分たちの行動を「これが医者というものなのか。これが医学というものなのか」と心の中でなじるが答えは出そうにもなかった。

アメリカ軍が沖縄全土を占領した頃。勝呂はおばはんに会いに行き、薬用ブドウ糖という砂糖菓子に似た菓子を差し入れしてあげる。それから、大部屋の患者らを交えて会話を始める。おばはんは子どものために手術を受け、病気を治したいのだと言う。「おばはん、子どもおったと?」「満州にいっとる。勝呂先生も息子さんのために、何か書いてつかあさい」と日本国旗に寄せ書きを頼まれ、「必勝」の2文字を筆で書いた勝呂。

そんな中、おばはんの手術が延期されることに決まった。手術死が2度も重なるのは橋本教授にとっても体裁が悪いからだ。ちょうどその時、空襲が起こり病院内は未曽有の混乱に陥る。避難のため、おばはんを迎えにいこうとするがおばはんはブドウ糖を握りしめたままベッドの中で安らかに息を引き取っていた。翌日、棺に入れられおばはんの遺体はどこかへ埋葬される。それを眺めながら勝呂は思う、「自分がどうしておばはんに執着していたのかが初めて分かった。唯一たった一人、死なせまいと思った人だったからだ」。

そんなある日、勝呂と戸田、柴田助教授、浅井助手が橋本教授に呼ばれ部屋に集められる。それはある極秘の計画の相談のようで、第2外科ではその計画への参加が既に決まっている、との話だった。そして橋本教授の口から聞かされたその計画の内容は、あまりにショッキングなものであった――「アメリカ人の捕虜8名を生体解剖することなんだ」

映画『海と毒薬』のあらすじ【転】

捕虜の8名はB29で先日無差別爆撃した者達であった。政府軍では銃殺と決まっていたようで、どうせ殺すのならば医学の役に立てたらいいということである。「麻酔はかけてもらえるんやから眠っとる間に死ぬようなもんだ」。政府軍の命令は絶対であったが、勝呂はやはり生きた人間を解剖するなどとは、と抵抗を持つ。秘密裏に行われる実験なので、メンバーも限られた人員で行わなくてはいけない。看護婦から選ばれたのは大場看護婦長、そしてもう1人として参加が決まった上田は、何故このような実験に参加したのかを語り出した。それは、橋本教授の夫人・ヒルダとの出会いがあったからだという。ある時上田は、指示されてもうすぐ亡くなりそうな患者を安楽死させろと言われる。その時ヒルダに咎められ、「死ぬのが決まっていても殺せる権利なんかありません。あなたは神様の罰が怖くないのですか」と言われ反論できずに終わる。ある日、上田は帰り道に浅井助手から田部夫人の手術が失敗したことを聞かされる。そのまま2人は成り行きと口止めも兼ねてなのか肉体関係を持つ。上田の夫は外に女を作って出て行ったようである。情事の後で上田は語る。「あん時、子供ができとればもうちょっとうまくいっとったかもしれない」――上田は子供を腹の中で失くしており、且つ母体の危機から子宮も摘出している過去を持っていた。

そんな上田であったが翌日、大部屋での件でヒルダから解雇の話が持ち上がってくる。結果、解雇ではなく休職という形に落ち着く。そしてその間に再び、病院へ戻るように達しが来る上田。内容は例のアメリカ人捕虜の生体実験計画への参加要請であった。彼女はそれを了承するが、その思いは教授や先生のためでもなく、国のためでもなく、医学が進歩しようがしまいがどうでもいい。ヒルダこと橋本夫人へのあてつけのつもりであった。

次は戸田の心中へと場面が変わる。戸田は自分で書いた日記曰く「僕は他人の苦痛や、その死に対しても平気なのだ」――医学生としての数年間、戸田は多くの患者が死ぬのを見てきた。誰かが死んだ時は気の毒そうな表情をするが、外に出てしまえばもうその時のことは心にはない。彼は自分が言うように不思議な程、人の死にあまりに慣れすぎていた。前日になり解剖予定が知らされ、1日目は彼らの所属する第1外科が担当することになった。

当日の午後2時半過ぎに軍部の人間達が捕虜を待って集まっていた。笑い交じりに「貴重な写真を是非とも撮ろうと思って」などとカメラを取り出したり、解剖後の会食について悪趣味な冗談を述べたり、非常に露悪的な人間ばかりがいるようだった。ちなみにこの計画の表向きの名目は「大分の収容所に入れるための体格の検査」というものだそうだ。

一同の準備が整い、カリフォルニア出身だという1人の捕虜が入ってくる。ごく普通のオペだと思えばいい、と浅井助手が言い捕虜に対してもごく普通の身体検査のようなことを行う。心臓を調べるので、と捕虜を横にし、麻酔マスクを用意するよう頼まれた勝呂が「僕はできません。この部屋から出して下さい」と訴え始める。大場看護婦長が無言で扉を閉めそれを拒絶する。怖気づいた勝呂に代わり戸田がマスクを準備し始めるが、不穏な空気を察した捕虜が暴れ出してしまう。勝呂を除いた4人がそれを取り押さえ、無理やり麻酔マスクを装着させるのだった。

映画『海と毒薬』の結末・ラスト(ネタバレ)

勝呂は「やっぱり断るべきやった」と後悔するが、戸田は「断る時間なら昨日も今朝もたっぷりあった。お前はもう、半分を通り過ぎてる」とそれを一蹴する。やがて軍部の人間達も手術室に入ってきて、興味津々に捕虜の身体を覗き込み始める。写真を撮ってもいいかと尋ねる者もいる。第1外科の解剖目的は、まず「肺の切除がどの程度まで可能なのか。人間の肺はどれだけ切り取れば死んでしまうか」ということを調べること。結核治療にも、戦争医学にとっても重要な事柄であるからだという。右肺を全摘した後、左肺の上葉部を切除することと、心臓を停止した後、マッサージによる鼓動再開も試みるとのこと。

解剖開始は午後3時8分。勝呂はオペ室の隅で立ち呆けたまま手術には参加しない。右肺の摘出が開始された時、軍部の人間達はそれぞれ覗き込みながら顔を顰めたり興味ありげに目を凝らしたり様々な反応を示す。戸田はそれを内心で「アホな奴らや。けど、そしたら俺は何や?」とどこか埋まらない自分の内心に困惑する。すると、捕虜が少しだけ呻き始める。コカインを使うか問われ、橋本教授は「使わなくていい、こいつは患者じゃない」と却下する。茹だるような暑さの中、各々疲弊の色が見え始める中解剖は続く。左肺の上葉の摘出も無事済み、更に心臓へ伸びる血管を摘まんで血流を止め心停止の状態にする。その後、心臓を直接マッサージし蘇生措置を行うと、心臓は再び自発的に鼓動を始めた。捕虜は蘇生し、自ら呼吸をし始めたのである。完全なる蘇生だった。捕虜が呻き声のようなものを漏らし始め、勝呂は耐え切れず耳を塞ぐ。橋本曰く、従来の医学では左肺を2分の1以上同時に切れば即死だと言われていた。そしてその通りに、半分まで切った所で捕虜の瞳孔反応がなくなる。終わったのは午後4時28分。手術を開始して、1時間20分で捕虜は死亡したのだった――。勝呂は真っ先に手術室を後にする。外では赤ん坊の泣く声が聞こえ、いつも通りの病院での日常がそこにあるだけだ。勝呂は何を思い、その足を動かし続けているのだろう。

軍医が笑いながら橋本教授に「捕虜の肝臓をくれんかね」と頼む。解剖開始前に、この後会食があると盛り上がっていたのだが、その際にそれを試食するという話が出たためだろうか。冗談なのか本気なのか、いずれにせよ悪趣味な話で肝臓は軍医の元へ運ばれるが実際にどうしたかは語られない。

宴会をしながら盛り上がる軍部の人間達と、1人で惚けている勝呂。それを見つけた戸田が彼に話しかける。勝呂が問う、「俺達はどうなるんやろうか」。戸田は変わった様子もなく一笑しながら「どうもならん。何も変わらん」と言うだけである。勝呂は惑い、「でも今日のことお前苦しくはないのか?」と聞けば「何が苦しいんや。あの捕虜を殺したことで何千人もの患者が救えると考えたらあれは殺したんやないで。生かしたんや。人間の良心なんて考え方1つでどうにでも変わる」――、戸田の言葉に勝呂は答える。「けど、いつか俺達は罰を受けるんやろ。罰を受けても当然や」。戸田は笑みさえ浮かべながら答えた、「罰って?世間の罰か?世間の罰だけやったら何も変わらへんで。俺もお前もこんな時代の医学部におったから捕虜を解剖しただけや。俺達を罰する連中だって同じ立場に置かれたらどうなるか分からへんで。世間の罰なんて、そんなもんや」。しかし勝呂は「そうやろうか?」と腑に落ちない顔のままでしかない。彼の求めていた答えはそうではないのだろう。医療に対し良くも悪くも最後まで真っ直ぐだった勝呂は、人間の命そのものを救う筈の医者という立場の人間が、このように粗末に命というものを扱っていいのか――恐らくそれ以前の話だっただけのことだろう。

『極東国際軍事裁判において、生体解剖関係者25名は絞首刑5名を含む有罪判決を受けた。しかしその後彼らは朝鮮戦争をはじめとする、国際情勢の急激な変化にともない、全て釈放された――』

映画『海と毒薬』の感想・評価・レビュー

原作も読んだがあの退廃感が見事に再現されている。白黒映像が織りなすひたすらおぞましくて怖い空気。皮肉にも医学と言うものは犠牲の上に進歩していくものだが、現在の医学の発展の土台にはこういうものがあったのかと考えると言葉を失う。勝呂の考え方も戸田の考え方も医療という観点からすると間違いではないし、何が正しいのか?平成生まれの私でも知っている大物俳優が名を連ねているだけあって、全員見事なまでの演技力。監督の演出力も相まって、とにかく名作だ。(MIHOシネマ編集部)


本作は、終戦末期の日本を舞台に、米軍捕虜8名を「戦争医学の為」と称し、「生体解剖による臨床実験」を実行した医師たちを新米研究生2名を通して描いた医療ドラマ作品。
遠藤周作の原作小説を映画化したもの。
動いている心臓を鷲掴みにしたり、捕虜の肝臓を宴会で食そうとしたり、ショッキングなシーンが多かった。
これが実在の事件を基に描かれているという事実と戦時中の狂気に、同じ日本人として非常に考えさせられた。
本当に当時撮影されたような雰囲気と、鮮血や臓器が生き生きとしたリアリティーのあるモノクロ映像が印象的な作品。(女性 20代)


毎日のんびり好きなことをして生きている私には、想像も出来ないような世界でした。医師というのは人の「命」や「死」というものと1番近くで関わっていて、医師の判断1つで一人の人間の生死や将来を決めてしまうものすごく責任のある仕事だと思っています。
しかし医師である彼らも一人の人間であり、自分自身の「選択」によって他人の未来を変えてしまうことは彼ら本人が最も強く感じているのだとわかりました。
生きるとは何なのか、幸せはどこにあるのか様々なことを考えさせられる作品でした。(女性 30代)

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