この記事では、映画『海を感じる時』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『海を感じる時』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『海を感じる時』の作品情報
上映時間:118分
ジャンル:ラブストーリー
監督:安藤尋
キャスト:市川由衣、池松壮亮、阪井まどか、高尾祥子 etc
映画『海を感じる時』の登場人物(キャスト)
- 中沢恵美子(市川由衣)
- 高校時代から新聞部の先輩の洋が好きで、体目当てでもいいからと洋に尽くし続ける。洋の後を追って東京へ出て、花屋で働いている。唯一の理解者だった父親は早くに亡くなり、厳格な母親に育てられた。
- 高野洋(池松壮亮)
- 恵美子のひとつ上の先輩。自分に想いを寄せる恵美子に対し、体は求めるが愛情は注がない。大学進学のため、東京へ出る。その後、恵美子のことを大事に考えるようになる。
映画『海を感じる時』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『海を感じる時』のあらすじ【起】
※ あらすじは時系列に沿って書いています。
海辺の町に暮らす高校2年生の恵美子は、新聞部の部室で、先輩の洋からキスを求められる。以前から洋に片想いしていた恵美子は、洋の要求に応じてファーストキスを許す。
放課後、恵美子は洋を喫茶店へ呼び出し、自分の気持ちを伝える。しかし洋は女の人の体に興味があっただけで、誰でもよかったのだと言い放つ。
それでも恵美子は洋のことをあきらめきれず、しつこく洋につきまとう。例え体だけでも、洋に求められるのが嬉しかった。洋は、愛情もないのに性欲を感じる自分に嫌気がさしており、恵美子に冷たく接する。洋は正直に、大切にしてやりたくてもできないのだと恵美子に何度も伝える。それでも恵美子は洋をあきらめようとはしなかった。
2人は体の関係を続け、恵美子は妊娠する。恵美子は生むことを望んでいたが、洋は“金しか出せない”と彼女を突き放す。恵美子は、どうしても洋の子供が欲しかった。しかし、洋と一緒に乗ったバスの車内で出血してしまう。

映画『海を感じる時』のあらすじ【承】
高校を卒業した洋は、大学進学のため東京へ出る。恵美子は洋に何通も手紙を出していたが、それがまとめて送り返されてくる。勝手に手紙を読んだ母親は、その内容に愕然とする。
母親は恵美子に送り返されてきた手紙を突きつけ、書いたことは本当なのかと問い詰める。恵美子は全て事実だと認め、自分の体を好きな人に許して何が悪いのかと反抗する。恵美子は手紙の中で“体の関係だけでいいから、会ってほしい”と洋に懇願していた。夫と死別し、女手ひとつで苦労して恵美子を育ててきた母親は、娘の体が弄ばれていることを嘆き悲しみ、恵美子を激しく叱責する。
恵美子は母親に内緒で洋の下宿を訪ねる。洋は恵美子が来ることを予測しており、これで終わりにして欲しいと伝える。しかし恵美子は“あなたが好き”と言って、自ら服を脱ぐ。洋は我慢できず、再び恵美子と体の関係を持つ。
母親は、恵美子の大学進学を望んでいた。父親がいないことで、娘を進学させてやれないと思われるのが嫌だった。しかし恵美子は、洋のことしか頭になく、母親の言うことを聞かない。母親は感情的になり、娘を売春婦呼ばわりして折檻する。恵美子は母親のやりたいようにさせていた。母親は精神を病み、死んでしまいたいと亡き夫に訴える。恵美子はそんな母親に“私も女なのよ”と呟く。
映画『海を感じる時』のあらすじ【転】
大学受験に失敗した恵美子は、家を出ることにする。恵美子は洋に自分の気持ちをわかって欲しいと頼む。今の恵美子には洋への愛しかなかった。洋は、恵美子のあまりの一途さに困惑気味だった。
恵美子が東京へ出てきてからも2人の関係は続く。恵美子は花屋で働き、アパートでひとり暮らしをしていた。洋は気が向くと恵美子のアパートを訪ねてきて、体の関係を持つ。恵美子は洋に尽くし、彼の要求に応え続ける。洋は相変わらず気まぐれだったが、以前より優しくなっていた。
母親が土曜日にアパートを訪ねてくることになり、恵美子はその日は来ないよう洋に伝える。それを聞いて洋は不機嫌になり、夜中にアパートを出て行ってしまう。
土曜日。母親はもう洋の話はせず、自分の近況報告をする。親子は穏やかな会話を続けていたが、突然洋が訪ねてきて空気が一変する。母親は洋のことを完全に無視して、早く料理を続けろと恵美子を促す。洋はしばらく玄関に居座っていたが、そのまま何も言わずに帰っていく。
後日。洋の下宿を訪ねた恵美子は、洋が姉に恵美子の乳首の色について話したことを知り、不機嫌になる。洋も先日の恵美子の母親の態度に怒りを感じていた。2人は大喧嘩になり、恵美子は抑えてきた感情を爆発させて暴れ出す。洋は“一緒に暮らそう”と言って、恵美子を抱きしめる。恵美子も“好きよ”と答えて、洋にすがりつく。
映画『海を感じる時』の結末・ラスト(ネタバレ)
恵美子は洋の姉に呼び出される。姉は洋から恵美子に謝るよう言われていた。当時の洋は、恵美子と体の関係はあるが好きにはなれないと悩んでいたので、“乳首が黒いのは遊んでいる証拠だ”と思いやりのつもりで言ったのだと、姉は恵美子に謝罪する。恵美子はその話を聞いて、やりきれない気持ちになる。
ひとりで酒を飲んでいた恵美子は、同じ店にいた男から声をかけられる。恵美子はそのまま男のアパートへ付いて行き、男と関係を持つ。恵美子は、自分がどうしたいのかわからなくなっていた。
それから数日後。洋は恵美子の手料理を喜んで食べていた。恵美子が子供のように甘えると、洋は優しく応じてくれる。しかし恵美子はなぜかそんな洋を素直に受け入れることができず、自分が他の男と寝たことを暴露する。
最初は信じなかった洋も、恵美子の様子から事実なのだと悟り、怒りを爆発させる。恵美子は、好きでもないのに自分を抱いていた過去の洋を責める。今の洋は心から恵美子のことを大切に考えていたが、恵美子は過去にこだわり、孤独を埋められないでいた。洋は激怒したまま、恵美子のアパートを出ていく。
恵美子は実家へ帰る。母親は会社の寮母となり、実家には誰も住んでいなかった。恵美子はひとりぼっちで幼い頃のことを思い出す。そして翌朝、家の前に広がる砂浜に出て、じっと海を見つめる。
映画『海を感じる時』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
なんと言うべきか、観なくてもよかったと思ってしまう作品である。こういう作品はどっしりとした重さがあってこそ成り立つものだと思うのだが、重厚にしようと頑張ったせいで色々とチープな部分が目立ってしまったという印象を受ける。
主演の池松壮亮はやはりうまい。この人は作品に恵まれない人だなと感じてしまう。市川由依は脚本の被害者とでもいうべきだろうか。そこまで体を張る価値は、この映画になかったかもしれない。製作者が作りたかったものはなんとなく伝わってくるが、明らかな力量不足だったと思う。(男性 20代)
池松壮亮ってこういうどうしようもない男を演じさせたら本当にピカイチですよね。自分のことを好きだと知りながら、その子の身体の関係を持つだけ。好きにならない、愛情は注がない。私はこんな男のどこがいいのか、何故そこまで執着するのか理解できないのですが、自分が相手を好きでいること、追いかけることで自分の存在意義を見出しているのかなとも感じました。
少しずつ変わっていくお互いの気持ちがとても分かりやすく描かれていて面白かったです。(女性 30代)
原作を読んでいたので内容は知っていましたが、映画で観るとまた違った印象を受けました。登場人物たちの繊細な心の揺れが、俳優陣の表情や間の取り方によってより強く伝わってきます。とくに恵美子の一方的な愛と、それを無自覚に踏みにじる洋の態度が切なく、観ていて苦しくなる場面もありました。(20代 女性)
観終わった後に心がざわつくような作品でした。青春というより、恋愛の痛みや女性としての目覚めを、容赦なく描き切っていて衝撃的でした。愛されたいと願いながらも、体だけの関係に縋る恵美子の姿が哀れでリアル。終盤の海の描写には救いのような静けさがあり、タイトルの意味がじわじわと響いてきました。(30代 女性)
ある意味で非常に日本的な恋愛観を突き詰めた作品だと感じました。直接的な愛の言葉や行動がない中で、体の関係だけが続いていくという関係性は、現代でも共感できる人は多いのではないでしょうか。洋の冷たさと無関心が、逆にリアルで、だからこそ観ていて胸が痛くなりました。(40代 男性)
思春期の女子高生が経験する身体と心のアンバランスさを、ここまで赤裸々に描いた映画は少ないと思います。共感する部分と理解が追いつかない部分が入り混じり、感情を揺さぶられました。母親との関係にもヒリヒリしたものがあり、女としての孤独を強く感じさせる作品でした。(50代 女性)
性描写が多いと聞いていましたが、それよりも人間の寂しさや承認欲求がテーマとして浮かび上がっていた印象です。決して明るくはない物語ですが、恵美子の不器用なまでの一途さには心を動かされました。映画としての完成度も高く、内省的な鑑賞体験でした。(30代 男性)
恵美子の「愛されたい」という叫びが、静かな演出の中に確かに響いていました。恋人でもないのに関係を持ち続け、洋に依存していく様子が痛ましくもリアルです。青春映画というよりは、女性の心の闇を描いた作品で、観る人を選ぶかもしれませんが、私は引き込まれました。(20代 女性)
10代の頃には理解できなかっただろうなと思える作品でした。社会の中で自分の価値を見出せず、愛されたいという思いだけで生きているような恵美子の姿は、どこか自分の若い頃にも重なる部分がありました。海の静けさがすべてを包み込むような、余韻の深いラストでした。(60代 女性)
恵美子の感情は理解できるけれど、洋のような人間はどこにでもいそうで、逆に現実的だなと感じました。誰かに愛されたいという気持ちは多くの人が持っているはずで、その思いが空回りしたときの結末がとてもリアルに描かれていて印象的でした。映像美も見どころです。(40代 男性)
映画『海を感じる時』を見た人におすすめの映画5選
愛の渦
この映画を一言で表すと?
欲望と孤独が交錯する、匿名の夜を描いた人間ドラマ。
どんな話?
舞台は都内のラブホテル。名前も知らない男女が集い、一夜限りの関係を持つ“乱交パーティー”の一室で展開する会話劇。性を通じて見えてくる人間の本音や寂しさ、自己承認欲求が赤裸々に浮かび上がる作品。
ここがおすすめ!
濡れ場が多いながらも下品さはなく、人間関係の機微を見事に描いています。『海を感じる時』と同様に、“体だけのつながり”が人の心にどんな爪痕を残すのかを真っ向から問う作品で、観終わったあとに静かな余韻が残ります。
ストロベリーショートケイクス
この映画を一言で表すと?
都市に生きる女性たちの“心の孤独”と“性”を静かに描いた群像劇。
どんな話?
東京で暮らす4人の女性たちが、それぞれの愛や孤独、性に向き合いながら生きていく姿を描く。恋愛、風俗、仕事、家庭など、現代女性が抱える葛藤を繊細に描写。日常のリアリティと、かすかな希望が交錯する作品。
ここがおすすめ!
美しい映像と静かな語り口が特徴で、心の奥に染み入るような演出が魅力。『海を感じる時』のような、誰にも見せられない想いや女性特有の心の揺れを描いた作品を好む方におすすめです。感情を言葉にできない人に響きます。
ナラタージュ
この映画を一言で表すと?
許されない関係に惹かれ合う、抑えきれない感情の波。
どんな話?
大学生の泉は、かつて高校時代に心を救ってくれた教師・葉山との再会により、抑えていた想いが再燃する。教師と元教え子、過去と現在の狭間で揺れ動く感情を描いた、切なくも美しい恋愛ドラマ。
ここがおすすめ!
映像と音楽が織りなす繊細な空気感が、登場人物の感情を優しく包み込みます。『海を感じる時』と同様に、言葉にできない“好き”や“寂しさ”を抱えた女性の心の旅を丁寧に描いており、心の奥に静かに残る作品です。
軽蔑
この映画を一言で表すと?
激しく愛し合いながらも、すれ違っていく若い男女の情熱と崩壊。
どんな話?
地方都市で出会った水商売のヒロインと、純朴な青年。惹かれ合い、東京での新生活を始めるが、社会の壁や過去の影が2人の関係を歪めていく。熱く求め合うほどに心が離れていく愛の皮肉を描いたラブストーリー。
ここがおすすめ!
性と愛の境界を見つめるような、濃密な人間関係が展開されます。『海を感じる時』のように、“求めても得られない愛”に身を焦がす主人公の姿が印象的で、若い感情のもろさと、抗えない現実が心に刺さります。
ヘルタースケルター
この映画を一言で表すと?
美しさにすべてを捧げた女の、儚くも激しい転落劇。
どんな話?
全身整形で“完璧な美女”として脚光を浴びるモデル・りりこ。しかしその裏には精神の崩壊や業界の闇が潜み、やがて自らの存在をも見失っていく。欲望と自己破壊を描いた衝撃的な女性の物語。
ここがおすすめ!
極彩色の映像とエリカ様の怪演が強烈な印象を残します。『海を感じる時』と同じく、“他者に認められたい”という欲求が中心にある作品で、女性の孤独と痛みを描いた作品を探している方に強くおすすめです。
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