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映画『うつくしいひと サバ?』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『うつくしいひと サバ?』の概要:熊本県出身の行定監督が、地元の地域創生を目的として立ち上げた「くまもと映画プロジェクト」の一作。私立探偵の玉屋と田上が出会った外国人男性。彼が放つ言葉で唯一聞き取れた「サバ」という単語をヒントに彼がなぜ日本にやってきたのかを紐解くこととなる。

映画『うつくしいひと サバ?』の作品情報

うつくしいひと サバ?

製作年:2017年
上映時間:45分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:行定勲分
キャスト:高良健吾 etc

映画『うつくしいひと サバ?』の登場人物(キャスト)

玉屋末吉(高良健吾)
人情深い私立探偵。偶然出会ったマチューの手助けを買って出る。
田上(米村亮太朗)
玉屋とともにマチューの手助けをする。透子と明日香が働く書店兼カフェの常連。
明日香(中別府葵)
少しフランス語が話せるので、玉屋と田上に頼まれマチューの通訳をする。
マリエ(石橋静河)
マチューの妻・マリに瓜二つの少女。震災を機に夢を諦めていた。
マチュー(ロイック・ガルニエ)
病気で亡くなった妻のために、妻の故郷へと訪れたフランス人。

映画『うつくしいひと サバ?』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『うつくしいひと サバ?』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『うつくしいひと サバ?』のあらすじ【起】

熊本県を襲った大地震。瓦礫の積み重なる被災地を、大事そうな包みを抱えながらトボトボと歩く一人の外国人男性。再び余震が街を襲う。身をこわばらせている彼の元に田上が現れ、知人の玉屋の探偵事務所へ案内した。その玉屋の探偵事務所では、地震で迷子になった動物たちを一時的に預かっていたのだ。田上から託された外国人男性は、母国語しか話せずコミュニケーションが取れない。聞いたことのない言語に戸惑う田上と玉屋。唯一聞き取ることができた「サバ?」という単語を、魚の鯖だと思い込んだ二人は、すし屋の大将の元へ連れていくことにした。

玉屋と田上がマチューにしめ鯖をご馳走する様子を見ていた大将は、日頃から世界各国の人を迎え入れる機会が多いため、この外国人男性はフランス人だと助言する。

玉屋と田上はフランス語が話せる透子の元へ連れて行くことにした。あいにく透子は、地震で半壊してしまった自宅の改修工事のため休みを取っており、代わりに明日香が店番をしていた。フランス人と聞いた明日香は軽い挨拶を交わすが、その様子を見た玉屋と田上は話が聞けると舞い上がる。

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映画『うつくしいひと サバ?』のあらすじ【承】

店番の明日香がフランス人男性から事情を聞き出す。彼の名前はマチュー、そして熊本に来た理由は、亡くなった妻・マリの遺骨を義父の元へ届けるためだった。マチューは初めて日本に来ており、地震が起きていることすら知らずに来日したという。立ち往生するマチューを助けることにした玉屋。マチューが持っていた実家に関する唯一のヒントは、マリから生前に受け取った手紙だった。その手紙に記載された住所を基に、義父を訪ねることにした玉屋達だったが、手紙の住所は地震で莫大な被害を受けた町だった。

せっかくの来日なので、マチューを連れて夜の商店街に繰り出した玉屋と明日香。復興に向け活気づく商店街を抜け、マリが幼いころよく連れて行ってもらったという「熊本城の天守閣」を目指した。マリはいつも熊本城に関して大きくて美しい城だと、話していたと思い出話をするマチュー。地震でボロボロになった状態ではあるが、初めて本物の熊本城を目の前にしたマチューは、その場で明日香に教えてもらい「すごくかっこいい」という日本語を使って感動を伝えた。そして玉屋と明日香も倒壊せずにたたずむ姿に胸を打たれる。

玉屋は思い出したかのように、マチューがしきりに言っていた「サバ?」という言葉の意味を明日香に尋ねた。「サバ?」は「元気?」という相手を気遣う意味のフランス語だと、玉屋に教える明日香。

映画『うつくしいひと サバ?』のあらすじ【転】

翌日、玉屋は自分の愛車にマチューと明日香を乗せて、マチューの妻の実家へ向かった。道中、目に入る町は震災の爪痕が深く生々しい現状だった。眼を背けたくなるような現実に言葉をなくすマチュー。そして到着した妻の実家もまた、倒壊してしまっていた。その瓦礫の中からネコの鳴き声を聞きつけた玉屋は、1匹の仔猫を救い出した。さらに学生時代の妻と義父の写真を見つけ出した。そんな彼らの元にバイクを飛ばしてやってきた田上。義父の避難場所をリサーチしてきたのだった。

義父の義晴は仮設住宅で独り暮らしていた。ちょうど戻ってきた義晴に「あなたを助ける」と声をかけた玉屋。しかし、義晴は何がわかるのかと怒号を上げる。家の中に入ろうとする義晴に声をかけ、事情を伝えたマチュー。明日香が通訳をして娘の死と最期の希望を伝えるが、義晴はマリという娘はいないと突き返した。家の中に入ろうとする義晴になんとかマリからの手紙だけを渡すことができたマチュー。落ち込むマチューに「サバ?」と声をかける玉屋。ふと思い立ったように、マリとの出会いを語り始めたマチュー。そんな話の最中に自転車で通り過ぎた黒髪の女性を見つけたマチューは「マリだ」と勘違いして追いかけていく。哀しみから抜け切れず、重なるものがあったのだろうと同情する玉屋と明日香。

映画『うつくしいひと サバ?』の結末・ラスト(ネタバレ)

偶然、玉屋の学生時代の後輩・ケンタと遭遇した3人。マリがよく話していたという「ぐるぐる」をマチューにご馳走するために、復興市場までケンタに案内させる玉屋。初めての熊本料理に箸を進めるマチュー。すると復興市場に先ほどの黒髪の女性が訪れる。マチューはすぐに声をかけフランス語で話しかけると、その女性はマリエと名乗りフランス語で自己紹介をした。少し勉強していたというマリエ。さらに、マチューの妻・マリはコンテンポラリーダンスのためにフランスへ渡っていたが、マリエも同じくコンテンポラリーダンスをやっており、本当であれば地震のあった日フランスへ行く予定だったという。見た目が似ているだけではなく共通点が多い出会いに感動した玉屋とマチューはマリエに踊ってほしいとお願いをする。マリエはマチューの妻・マリのために踊ってくれることに。複雑な環境に立たされながらも、必死に地元を守ろうとする人たちの思いを鎮魂するように舞うマリエ。そこへ義晴が訪れ、亡き自分の娘と姿を重ね合わせるかのように立ちすくんでいた。

マリエのダンスを介して、全てではないが心の浄化がされたような感覚になったマチューと義晴。周りで見ていた人たちは皆、心を動かされ拍手が鳴り響いた。妻のために踊ってくれたマリエに感謝を伝えるマチュー。そしてマチューは義父・義晴へマリの遺骨を渡すことができた。義晴は泣きながら「メルシー」と、マチューは「ありがとう」と互いに寄り添って感謝を伝え合った。その様子を見たマリエは玉屋に熊本でダンスを続けることを宣言し、二人は「サバ?」と言い合い、笑い合った。

映画『うつくしいひと サバ?』の感想・評価・レビュー

監督の地元を元気づけるべく立ち上がったプロジェクト中に重なった未曾有の大震災。復興を前面に出すことはせず、人間の再生を描いた一作。しかし、震災後のチャリティー上映など被災地に対しての貢献度も高い部分も持ち合わせるあたり秀逸だと感じた。見応えある、儚い色味が溢れる夕方のシーン。対比するかのように、決して美しい街並みではないがリアルな現状を残すことは、大いに意味を感じる50分だった。(MIHOシネマ編集部)


本作は、熊本地震によって全てを失った人々が立ち上がっていく様子を描いたヒューマンドラマ作品。
震災を大きく描いているわけではいないが、映像に映る被災した街並みが震災の悲惨さを物語っている。
しかし一方で、熊本の美しい部分が際立って見えた。
親しんだ街並みや親しい友人、大切な家族といつ離ればなれになるか分からない。
突然目の前から消えてしまうかもしれない。
今当たり前のように過ごしている毎日を見直したい。
震災を多くの人に伝えるために作品化することは素晴らしいことだと思った。(女性 20代)


熊本の復興のために作られたこの作品。今もまだ震災の爪痕が残る熊本のリアルな現状を写したシーンもあり、ストーリー以上に心に残るものがありました。
「コンテンポラリーダンス」というものを知っていますか?最近では中学生の体育の授業の一環として使用する学校もあるそうで、私も中学時代に経験しました。当時は感じたものや自分の心の中、または指定されたテーマを身体を使ってダンスで表現すると言う行為がとても恥ずかしかったのですが、今作で描かれる「コンテンポラリーダンス」はとにかく素晴らしくて、自然と涙が出てきてしまいました。(女性 30代)

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