映画『ヴィクトリア(2015)』の概要:言葉もうまく通じないベルリンで暮らす孤独なヴィクトリアが、偶然知り合った青年たちの犯罪に巻き込まれてしまう様子を全編ワンカットで描いた。ベルリン国際映画祭などで多くの賞を受賞し、注目を浴びた。
映画『ヴィクトリア』 作品情報
- 製作年:2015年
- 上映時間:140分
- ジャンル:サスペンス、フィルム・ノワール
- 監督:ゼバスチャン・シッパー
- キャスト:ライア・コスタ、フレデリック・ラウ、フランツ・ロゴウスキ、ブラク・イーギット etc
映画『ヴィクトリア』 評価
- 点数:90点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『ヴィクトリア』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『ヴィクトリア(2015)』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『ヴィクトリア』 あらすじ【起・承】
スペインからベルリンに引っ越してきたばかりのヴィクトリアは、言葉もうまく通じなければ友達もいない。
深夜に1人でクラブから出てきたヴィクトリアは、ゾンネ、ボクサー、フース、ブリンカーと名乗る4人組に話しかけられ、友達になる。
路上ではしゃぎまわり、ビールを盗んで4人の溜まり場の屋上でふざけあう。
しかしボクサーは、刑務所に入っていた過去があるという。
時間は明け方になり、ゾンネに送ってもらって職場のカフェに向かうことになったヴィクトリア。
そしてカフェで飲み物をおごり、音楽院で勉強してきたピアノを披露する。
ゾンネは褒めるが、競争の厳しい音楽院で才能を見限られ、ピアニストの夢を諦めてベルリンにやってきたヴィクトリアは複雑。
そこにボクサーのことで急用の呼び出しがかかり、また会う約束をして、ゾンネは仲間たちと車で出かけた。
しかしゾンネたちはすぐに戻ってくる。
刑務所にいた頃のボクサーの恩人のために4人でやる事があるのに、酔い潰れてフースが動けないから、ヴィクトリアに手伝ってほしいというのだ。
何をするのかは教えられなかったが、手伝うことに決めたヴィクトリア。
映画『ヴィクトリア』 結末・ラスト(ネタバレ)
ギャングから大金を借りていたボクサーは、ブリンカーとゾンネを巻き込んで銀行強盗するよう命令される。
ヴィクトリアは、運転手として最後まで付き合うことにした。
ボクサーたちが強盗に入った直後、車が動かなくなるというハプニングはあったものの、なんとかすべて上手くいく。
そして、クラブで大はしゃぎするヴィクトリア、ゾンネ、ボクサー、ブリンカー。
どさくさに紛れて、ヴィクトリアとゾンネはいいムードになる。
騒ぎすぎた4人はクラブから追い出され、フースの存在を思い出すと車に向かう。
しかし車の周りにはパトカーが止まっていて、4人は警察から追われる身となってしまう。
逃げる途中でブリンカーとボクサーは銃で撃たれ、盗んだ大金をゾンネとヴィクトリアに託した。
警官に囲まれたアパートの住人を脅して部屋に入り込み、赤ん坊を借りて脱出したヴィクトリアたち。
赤ん坊は路上に置き去りにして、タクシーで逃げてホテルの部屋をとる。
しかしゾンネはお腹を撃たれていた。
ニュースで親友たちがどうなったかを知り、自分は助からないと悟ると、大金をヴィクトリアに渡した。
友達を失った代わりに大金を得たヴィクトリアは、ホテルから出て行った。
映画『ヴィクトリア』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ヴィクトリア(2015)』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
本当のワンカット撮影
2014年のアカデミー賞4部門を受賞した話題作「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」と同じく、全編ワンカットという撮影方法にスポットを当てた作品。
しかしこちらは本当に140分カメラを回しっぱなし。(「バードマン」のほうは、ワンカットに見えるように編集している。)
脚本はたったの12ページ、ほとんどがキャストのアドリブで構成されていて、オールロケ撮影のため一般人が話しかけてきたシーンもそのまま使ったという、驚きのチャレンジ作品。
強盗に入ったゾンネ、ボクサー、ブリンカーを追うのではなく、運転手として車に残されたヴィクトリアのハプニングを映したり、ヴィクトリアがホテルの受付を済ませる様子よりもゾンネを見守ったりと、空気感をカメラに納めることに徹底している。
ヴィクトリアと同じ140分を共有することには成功しているが、クラブの中の過度な照明やカメラの手ブレ感もそのままで、目がチカチカしたり映像酔いする可能性もある。
クライムサスペンスではない
サスペンス映画というよりも、ヴィクトリアという人間の成長を描いた映画といったほうが正しい本作。
悪いことじゃないと言われて内容のわからない手伝いを引き受ける、ヴィクトリアの不注意と無防備さが、彼女自身を追い込んだようにも見えるストーリー。
しかし、彼女がゾンネにピアノを披露し過去を話すシーンを見ると、今まで音楽一筋で友達がいなかったことが明らかになる。
車の運転中のシーンで「ヴィクトリアはドイツ語がわからない」という理由から、本人を目の前にドイツ語で言いたい放題のゾンネやボクサーたちの姿も描かれている。
新たな人生を送ろうとして躓いていたヴィクトリアが、何かを得て町の中に消えていくように見えるラストシーンは印象的。
全編ワンカットで撮影された今作。それ以外にもシナリオは大筋しか決まっておらず、役者はアドリブで演じていたり、撮影中に映り込むのも日常生活をしている一般人だったりと、他の映画では感じることの出来ないリアリティや臨場感を様々な角度から感じられる作品でした。
友達がいないヴィクトリアの視点で描かれているので彼女に感情移入しながら見てしまいましたが、人付き合いが苦手で頼まれると断れないなど自分と似ているところがあり、他人事には思えませんでした。
決して正しい行いではありませんが、ヴィクトリアの成長を感じられる素晴らしい作品です。(女性 30代)
映画『ヴィクトリア』 まとめ
全編ワンカット、しかもオールロケ撮影というのが話題になった作品。
前半でヴィクトリアとゾンネたちが夜中の街を歩いているときに、話しかけてボクサーに追い払われたのが映りこんだ一般人と言われている。
それほどリアルな空気感を演出しながら、音楽一筋で育ち挫折して逃げてきたヴィクトリアという変わったキャラクターが主人公で、いい味を出している映画。
12ページの脚本から140分の作品を演じあげたヴィクトリア役のライア・コスタ、ゾンネ役のフレデリック・ラウなど、キャストの演技力の高さも魅力的な作品。
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