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映画『Vision ビジョン』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『Vision ビジョン』の概要:1000年に一度、現れると言われている幻の薬草ビジョンを探し、フランス人女性エッセイストが日本の吉野を訪れる。緑深い森に関わりのある人物たちと接し、女性はやがて山守の男性と恋仲になるが、彼女は過去にも吉野の森で悲しい体験をしていたのだった。

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映画『Vision ビジョン』の作品情報

Vision ビジョン

製作年:2018年
上映時間:110分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:河瀬直美
キャスト:ジュリエット・ビノシュ、永瀬正敏、岩田剛典、美波 etc

映画『Vision ビジョン』の登場人物(キャスト)

ジャンヌ(ジュリエット・ビノシュ)
フランス人女性エッセイスト。紀行文を掲載し人気を博している。伝説の薬草ビジョンを探し求め、研究を重ねている。20年以上前にも奈良の吉野を訪れたことがある。実は鈴の実の母親。
智(永瀬正敏)
20年前に吉野へやって来て、先代から山守を受け継いだ。独身で愛犬と暮らしている。アキと親交を深めており無口だが、心優しく情が深い。ジャンヌと恋仲になる。
鈴(岩田剛典)
森の中で行き倒れていた青年。智に拾われ山守としての仕事を教えてもらう。実はジャンヌの息子で、ビジョンの胞子放出のために必要な存在。不思議な感覚を持っており、森に引き寄せられている。
アキ(夏木マリ)
山奥にひっそりと暮らす老齢の女性。目が不自由で智の世話になっている。薬草に詳しく数々の薬草を集めて、薬を作っている。不思議な人物で山の意思を感じることができる。恐らくは、ビジョンの作り出す力を持つ存在。
岳(森山未來)
吉野の森を深く愛する青年。20数年前に猟師に獣と間違われ、銃殺されている。ジャンヌと出会い恋仲になる。恐らくは、ビジョンの壊す力を持つ存在。

映画『Vision ビジョン』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『Vision ビジョン』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『Vision ビジョン』のあらすじ【起】

1000年に一度、姿を現すという幻の薬草ビジョンを探し、紀行文で人気を博すフランス人女性エッセイスト、ジャンヌが遥々フランスから日本の奈良、吉野を訪れる。ジャンヌのファンだと言う通訳の女の子と2人で山深い神社に向かったところ、たまたま参拝に来ていた山守の智と出会うのだった。

智は山で暮らしながら薬狩りをする年齢不詳の好々婆アキに、神社への参拝を促され訪れていた。アキには得体の知れない面があり、まるで森と繋がっているかのような言動をする。彼女の言葉には嘘偽りなどなく、従わなければ良くないことがあるため、智はアキの言葉を注意深く受け止めている。

ジャンヌとの出会いは、まるでアキが予言していたかのようだった。薬草ビジョンについて聞かれた智だったが、吉野に来て20年にもなる彼も聞いたことがないと言う。2人を自宅に案内した智。すると、ジャンヌは彼の家を痛く気に入り、2、3日の滞在を申し込まれる。何が何だか分からない智だったが、流されるままに滞在を許すのだった。

フランス語での会話は難しいが、英語ならば智ともどうにか会話が成立する。
翌日、山守の仕事へ向かった智。彼についてジャンヌと通訳の女の子も薬草探しに山へと向かった。1000年もの間、生きてきた吉野の山には自然独特の不思議な魅力がある。智はジャンヌをアキに会わせることにした。すると、アキはジャンヌだったのかと予言めいたことを話し、自宅へと招待するのだった。

ビジョンはある特殊な状況下にて、胞子を放出する。故に珍しい薬草なのだと言う。ジャンヌの話を聞いたアキにはすぐに察しがついた様子。アキが言うには、1000年に一度の瞬間が迫っているらしい。故に、山はいつもと違った様子を見せ、智にもその違和感を教えていた。

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映画『Vision ビジョン』のあらすじ【承】

以前、アキは1000年前に胞子が放出された時に生まれたと話していた。その時は冗談にしか受け取らなかった智。だが、ジャンヌと会ったアキは、彼女を心待ちにしていたようだ。やっと会えたと笑顔を見せる。どうやら、ジャンヌは運命的に吉野へと呼ばれたようである。ジャンヌもまた涙を流し、どこかほっとした表情で笑みを見せるのだった。

数日後、通訳の女の子が帰省。ジャンヌとは辛うじて英語で会話できるので、何とかなるだろう。その日の夜から智とジャンヌの2人暮らしとなったが、智と幸せを共有したいと言うジャンヌ。2人は互いに何かを求めて、体を重ねてしまう。

翌日、アキの自宅を訪ねた智とジャンヌだったが、アキは不在。目が不自由な彼女はどこへ行ってしまったのだろうか。
その頃、アキは杖1本だけを持って山へ入っていた。彼女は山の息吹を全身に浴び、舞いながら体へと取り込む。そうして、地面へと身を横たえた。アキが落ち着くと山も落ち着く。彼女は1枚の落ち葉を手にし、こんなにも美しかったのだなと呟くのだった。

それきり、アキは自宅へと戻らない。言葉にはしないが、智は酷くアキのことを心配している様子。そこで、ジャンヌは彼に素数ゼミのことを話した。交配を繰り返した種がじきに絶滅する運命にあるという話である。ビジョンも素数ゼミと同じく素数の周期を持つため、次に胞子を放出するのは、今年の夏から秋。つまり、もうじきという計算になる。アキは恐らく、そのことを知っていたのだろう。彼女のこれまでの言動が真実だとするならば、アキはビジョンの胞子放出の準備をするため、山へ入り姿を消したと思われる。

ジャンヌの滞在期限が迫っていた。彼女は一旦、フランスへ帰国しなければならない。だが、すぐに戻って来ると言い、帰国の途に就くのだった。
しばらくして山が紅葉で色づく秋。智は山のざわめきを感じながら歩を進め、行き倒れていた青年、鈴を発見し救出する。

映画『Vision ビジョン』のあらすじ【転】

智は鈴に共感を覚え、彼に山守の大切な技術を教え込むことにした。智自身、人生に疲れ吉野へとやって来た経緯を持つ。恐らく鈴もそういった事情を抱えているに違いない。
男1人暮らしから2人暮らしへ。静かに夜は更ける。

それから数日後、再びジャンヌが来日。彼女は智の家に見知らぬ青年がいることに驚きを隠せず、何か得体の知れないものを感じていた。聞けば、鈴は1カ月前からいると言う。会わない間に智にも変化が訪れていたため、それにも驚くジャンヌ。

翌日、鈴が犬を連れて1人で山へ入ってしまう。たかだか1か月しか経験のない鈴が1人で山へ入るなど、言語道断。智はジャンヌと共に急いで山へ向かったが、鈴も犬も見つけられなかった。

その日の午後、死んだ犬の亡骸を抱き鈴が戻って来る。智は酷く嘆き悲しみ、何も語らない鈴へと不審を募らせるのだった。
ジャンヌ曰く、鈴がいなくなる前の晩、彼は月を眺め悲しそうな顔をしていた。もしかして、彼はこうなることを知っていたのではないか。ジャンヌは鈴にビジョンの話をすることにした。

帰国してから更に研究を重ねた彼女は、ビジョンの胞子放出を促すには1000℃の熱が必要だと言う。ビジョンには人の進化と似通っている面があるらしく、作り出す力と壊す力を同時に内包している。故に、生まれる時は破壊した後になる。その際、感じる者にしか分からないメッセージを送るかもしれないと言うのだった。

映画『Vision ビジョン』の結末・ラスト(ネタバレ)

かつて、ジャンヌは若かりし頃、吉野の森を深く愛する岳という青年と出会い愛し合った。だが、彼は猟師に獣と思われ撃たれてしまい、亡くなってしまう。ジャンヌは当時、彼の子を妊娠しておりその子を森の中の思い出の場所で、たった1人で産み落とした。森の精のような岳から授かった子を森に返そうとしたのかもしれない。赤子はアキによって拾われ、岳の両親の元で育てられた。それが、実は鈴だったのである。

アキが作り出す力ならば、恐らく岳は壊す力。岳の血を引く鈴もまた、壊す力を受け継いでいた。彼はアキと岳が森から力を得て身を投じた様子を目にし、とうとう森に火を放ってしまう。

森から煙が見えた智は急いで山へ向かったが、そこで亡くなった愛犬の声とアキの声を耳にする。辿り着いた先にはジャンヌもいたが、山火事を消そうともせず茫然と見守っている。今まさに1000℃の熱でビジョンが生まれようとしているのだ。1000年に一度の奇跡の光景を見守り、彼女は倒れ込む鈴を胸に抱きしめた。

森の一部は灰と化し、ビジョンの胞子が灰と共に放出される。智は愕然としてそれを見守った。ジャンヌはその時、森の奥に岳の姿を捉え彼が姿を消すのを見た。
再び、森に生命が戻って来る。智は空を見上げ、山は賑やかだと呟く。生まれ変わり、ビジョンの胞子が放出された森は非常に美しく、ジャンヌもまた美しいと呟くのであった。

映画『Vision ビジョン』の感想・評価・レビュー

河瀨直美監督による10作品目の記念すべき作品。世界最高峰の映画祭にて、ジュリエット・ビノシュと運命的な出会いを果たした監督が、彼女と永瀬正敏をダブル主演に迎え2人に当て書きでこの作品の脚本を制作したらしい。

河瀨監督の作品は、一貫して静かで美しい映像を映し出すものが多い。光の映し方や景色の切り取り方が天才的で、森の息吹と強い生命力、自然の音と美しさを存分に描き出している。その森で伝説の薬草ビジョンが生まれる様子が淡々と展開していく。まるで異世界へと踏み出したかのような、深く胸に響く作品。(MIHOシネマ編集部)

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