映画『笑の大学』の概要:人生で一度も心から笑ったことのないクソ真面目な警官が喜劇劇団「笑の大学」の座付き作家の台本を検閲していくうちに、笑いと芝居の面白さに目覚めていく。三谷幸喜原作・脚本の二人芝居を星護監督が映画化。2004年公開。
映画『笑の大学』 作品情報
- 製作年:2004年
- 上映時間:121分
- ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
- 監督:星護
- キャスト:役所広司、稲垣吾郎、高橋昌也、小松政夫 etc
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映画『笑の大学』 評価
- 点数:80点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★★
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★★
[miho21]
映画『笑の大学』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『笑の大学』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『笑の大学』 あらすじ【起・承】
昭和15年秋の東京。戦時色が色濃くなる中、警察官の向坂睦男(役所広司)は警視庁保安課検閲係に配属され、演劇台本の検閲を始める。向坂は演劇や笑いに全く興味のないクソ真面目な男で、厳しい検閲で多くの台本を上演不許可にしていく。
浅草劇場街にある劇団「笑の大学」で座付き作家をしている椿一(稲垣吾郎)は、来月から上演予定の「ジュリオとロミエット」の上演許可をもらうため、向坂の検閲を受けに行く。椿の台本を読んだ向坂は、この喜劇は「ロミオとジュリエット」のパロディなのに、設定を日本に置き換え、さらに登場人物を全員日本人にして書き直せと無茶を言う。
2日目。椿はタイトルを「貫一とお宮」にし、全てを書き直してきた。舞台を日本に置き換えたことで台本はかえって面白くなっており、椿は向坂に感謝する。しかし向坂はまだ納得せず、台本の中に“お国のため”というセリフを3回繰り返す場面を作れと言い出す。
3日目。椿は確かに“お国のため”というセリフを3回入れてきたが、それは“お国ちゃん”という芸者の名前を呼んでいるという設定になっており、向坂を怒らせる。さらに向坂はこの場面でしか“お国ちゃん”が登場しないのは、彼女の人生を軽く考えすぎではないかとまで言い出す。椿はその場で台本を書き換え、今度は“お国のため”を“お肉のため”ともじる。向坂は次々と新しい笑いを作る出す椿の才能に感心しつつも、貫一とお宮の接吻場面を無くせと命じ、椿はまた台本を直すことになる。
4日目。結局“お国”は“お肉”で許可され、接吻場面には酔っ払いの邪魔が入る設定で落ち着く。向坂は自分からの直しはもうないが、警察署長の要望で登場人物に警官を追加してほしいと言い出す。椿は仕方なく再び台本を持ち帰る。
映画『笑の大学』 結末・ラスト(ネタバレ)
5日目。警官は酔っ払いの代わりに貫一とお宮のキスを邪魔する役で登場するが、向坂は警官の登場に必然性を感じないと言い出し、警官が泥棒を追っていることにしてはどうかと提案する。実際にそこを2人で演ってみると非常に面白い場面が出来上がり、椿は向坂には作家の素質があると言って褒める。
その夜、向坂はこっそり「笑いの大学」の舞台を見に行く。
6日目。向坂と椿は熱心に芝居までして台本をチェックする。そしてついに向坂から上演許可がおりる。
昨日劇場へ行き、椿が自分のせいで劇団員から裏切り者扱いされ、つらい目に遭っていることを知った向坂は、そのことを椿に詫びる。椿は、向坂の無理な要求を聞き入れ、さらに面白い台本を書くことは、権力に対する自分なりの戦いだったと本音を漏らす。これを聞いた向坂はさすがに怒り出し、一切笑いのない喜劇を書いてこいと言って上演許可を取り消してしまう。
7日目。椿が直してきた台本を読んだ向坂は“面白すぎる!”と吹き出しながら怒ったふりをする。どういうつもりかと椿を問い詰めると、椿は赤紙を差し出す。
向坂は密かに椿の召集令状差し止めの指令を出していたが間に合わなかった。“お国のために立派に死んできます”という椿に、向坂は“必ず生きて帰ってこの芝居を上演しろ”と言い出す。それは警官として許される発言ではなかったが、椿のおかげで笑いの素晴らしさに目覚めた向坂は本気だった。“死んでいいのはお肉のためだけだ!”と言って自分を見送る向坂に、椿は深々と頭を下げ、去っていく。
映画『笑の大学』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『笑の大学』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
転んでもただでは起きぬ三谷幸喜
三谷幸喜という人は自分の経験を作品に組み込んでいくのが非常にうまい。本作も喜劇専門の座付き作家・椿一が厳しい検閲係の向坂に無理難題を突きつけられながら、ひたすら台本を直していく物語であり、本人の実体験が反映されていることは容易に想像がつく。
プロの脚本家としてやっていけるかどうかは、いわゆる“直し”ができるかどうかだとよく言われる。あちこちから無理難題を言われ、何度もへこたれずに直し続けて、ようやくオッケーが出た時には、脚本が原型をとどめていないということも普通にある。
三谷幸喜は「ラジオの時間」でもそのへんの脚本家のつらさをコメディにしている。しかし本作でも描かれているように、ダメ出しを食らうことは悪いことばかりではない。さらに三谷幸喜のように、その経験を笑いに変えて脚本が一本書けるようになれば、それこそ理想的。“転んでもただでは起きぬ”という三谷幸喜のしぶとい姿勢は、何をするにしても見習いたいものだ。
密かな反戦映画
そもそも椿の台本が検閲を受けるのは、これが昭和15年秋の話だから。この頃は日中戦争が始まって3年、翌年の12月に日本が真珠湾攻撃を仕掛け太平洋戦争が始まるので、まさに日本国内でも戦時色がどんどん濃くなっていた時期だと言える。
本作はあくまでコメディなので深刻に考える必要はないが、芝居という庶民の娯楽にまで介入してくる国家権力と、椿は笑いを武器にして戦っており、向坂という国家権力の象徴のような人間をどんどん笑いの世界に巻き込んでいく。
笑いにも芝居にも無縁だった向坂が、実は天性のお笑いセンスを持っており、大まじめに的確なことを言うのがおかしい。さらに芝居の中でその場しのぎの人物を作った椿に“君は人の人生を軽く考えすぎている”と注意するあたり、もっともなのでじわじわくる。自ら警官役までして走り回り、すっかり向坂は椿の味方だと安心していたら、そこは一筋縄ではいかない。椿の本音を聞いて厳しい警官の顔に戻った時の役所広司は本当に怖い。
しかし最後には戦地へ向かう椿へ“生きて帰ってこい”と本音をぶつける。これがバレたら、向坂本人が逮捕されてしまうのに、彼は大声で“生きて帰ってこい”と叫ぶ。このラストの向坂のストレートなセリフが結構胸にくる。あくまで作品全体を笑いというベールに包み、決してむき出しにはしていないが、これも一つの反戦映画だと個人的には思う。これがただのコメディなら、戦争を理由に向坂と椿を引き離す必要などないのだから。
映画『笑の大学』 まとめ
ほぼ役所広司と稲垣吾郎の二人芝居なのだが、見応えは十分にある。特に役所広司のツボを押さえた芝居は、笑いとシリアスのメリハリが素晴らしく、迫力満点だ。「ひたすら台本を直す」という、それだけのことをここまで膨らませて物語にしてしまうあたり、三谷幸喜はやっぱりすごいとしか言いようがない。さらに星護監督の演出も良かった。
あらすじやレビューを読んだぐらいで、この作品の面白さはわからない。表面的なストーリーには書きようがない細かいやり取りが一番の見所なので、とにかく見る一手。人を傷つけたり、馬鹿にして笑いをとるのではなく、人間の持つ滑稽さを優しい視点で面白がるという三谷流の笑いを、ぜひ堪能してほしい。
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