この記事では、映画『湯殿山麓呪い村』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『湯殿山麓呪い村』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『湯殿山麓呪い村』の作品情報
上映時間:112分
ジャンル:サスペンス
監督:池田敏春
キャスト:永島敏行、織本順吉、岩崎加根子、永島暎子 etc
映画『湯殿山麓呪い村』の登場人物(キャスト)
- 滝連太郎(永島敏行)
- 光華学園大学史学科講師。弥勒寺の住職である道海から、これまで存在を明かされていなかった幽海上人の即身仏について情報を得、学術論文作成のため発掘調査を計画する。スポンサーは不倫相手である慶子の父で、会社社長でもある淡路剛造だったが、彼が自宅で変死したことで計画は頓挫しそうになる。
- 淡路慶子(永島暎子)
- 滝の不倫相手。剛造の長女。滝が妻子を捨て自分と結婚することを願う。謡子から、本当の母親は剛造が孕ませた芸者だと打ち明けられ自暴自棄になる。
- 淡路剛造(織本順吉)
- 慶子の父。社長。秋田県大師村を治める御三家の一人。幽海上人の即身仏発掘調査に協力しようとしていたが、自宅に脅迫状が届いたため思い留まった。その夜、自宅の風呂場で不可解な死を遂げる。
- 相良道海(青木義朗)
- 弥勒寺の住職。謡子の兄。過去に、大師村へ疎開して来た末自殺した津島母娘の遺体を埋葬した。大師村御三家の一人。
- 淡路謡子(岩崎加根子)
- 剛造の妻。道海の妹。慶子は剛造と不倫相手の子供であり、能理子は自身とその浮気相手の子供であるという事実を隠して生活していた。睡眠薬と喘息の薬を服用している。
- 淡路能理子(仙道敦子)
- 剛造の次女。武というボーイフレンドがおり、13歳にして彼の子を身籠る。
- 相良信也(田中義尚)
- 道海の息子。慶子と能理子の従兄弟。能理子にはよく懐いているが、エアガンで彼女を撃つ乱暴な遊びに興じている。
- 伏原欣作(榎木兵衛)
- 大師村御三家の一人。かつては旅籠として村に貢献し裕福な暮らしを送っていたが、剛造にそそのかされ全ての財産を失い、現在はホームレスとしてその日暮らしをしている。
- 武(野上博司)
- 能理子のボーイフレンド。17歳。彼女の妊娠をきっかけに学校を辞め、アルバイトをして生計を立てている。オートバイが趣味。
映画『湯殿山麓呪い村』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『湯殿山麓呪い村』のあらすじ【起】
仏教系大学の講師である滝は、妻子を持つ身でありながら淡路慶子と不倫関係にあった。
これまでその存在を明らかにされていなかった幽海上人の即身仏があると知った滝は、学長へ発掘調査の計画を報告した。天命2年に書かれた書物の中に「幽海上人は秘仏である。語るなかれ、聞くなかれ」との文言があり、滝は、大飢饉に襲われていた最中にあって何故彼が崇拝の対象にならなかったのか興味を持ったのだ。学長は「苦行に耐えられず逃げ出したヤツでは」と嘲笑したが、滝はある仮説を立てていた。
幽海上人は、シノという女と駆け落ちしようとしていた。弥勒寺の僧達は逃亡を企てる彼を即身仏に仕立て上げ、大飢饉に乗じて宗派のPRに利用しようと考えたのだ。その結果幽海上人は無理やり入定させられ、シノは彼の後を追って首を吊った。
学長は「小説でも書くのか?」と滝を笑ったが、彼は正確な論文を書くため調査を進めようとした。滝は大学を出た足で道海住職とその息子、信也を駅まで迎えに行き、調査のスポンサーである淡路剛造宅へ向かった。
淡路剛造の家へ、行脚の僧が人知れず小包を置いて行った。滝と道海、剛造の三人は、小包と一緒に届いた手紙を確認した。差出人は、なんと幽海上人であった。手紙には「39年前に大師村御三家の男達が起こした忌まわしい罪を誅罰するため、180年ぶりに蘇った」と記されていた。剛造は、発掘を邪魔する者からの嫌がらせだろうと言い小包を開けたが、中にはミイラ化した右手首が二つ入っており青ざめた。
剛造と道海は女中に小包を燃やすよう言い付けると、滝に聞こえないよう「あのことを知ってるのは俺達二人と、あいつだ」と耳打ちした。

映画『湯殿山麓呪い村』のあらすじ【承】
その夜、剛造は発掘への援助を打ち切ると言い出した。慶子が「滝と結婚するかもしれないから助けて欲しい」と剛造へ願い出たため、不倫を知った剛造は「慶子と別れるなら資金を出す」と滝を煽り、彼は即座に承諾、剛造は「こういう男だぞ」と言い捨て風呂に向かった。
女中は、能理子から「焼却炉から火が出てる」と言われ鎮火に向かい、その後、入浴中の剛造へ水を持っていった。
中々風呂から上がらない剛造を心配した女中は、様子を見に風呂場へ向かった。しかし、ガラス戸は内側から鍵がかかっており開けることができなかった。女中は慌てて家族を呼び、ガラスを割って確認してみると、剛造は額に三鈷杵が突き刺さって死んでいた。彼の首元には燃やした筈の手首が置いてあった。
現場を見た滝は、風呂場の小窓が開いていることに気付き外へ回った。窓の下には薬が落ちており、滝はそれを拾った。
警察は、剛造の胃から大量の睡眠薬が検出されたと報告した。淡路家で睡眠薬を服用しているのは妻の謡子だけであり、調べると、彼女の睡眠薬は異様に減っていた。
剛造の葬儀の最中、淡路邸へまたしても小包が届いた。しかし、今度の宛名は道海であり、小包の中には左手首が二つ入っていた。
怯えた道海は、御三家である剛造と自分、そして伏原欣也が、疎開してきて村八分にされた末自殺した津島母娘の遺体を埋葬したと吐露した。さらに、伏原は剛造のせいで全財産を失い路頭に迷っていると告白したため、容疑者は母と妹を村に殺された勘治と、剛造に恨みのある伏原の二人に絞られた。
映画『湯殿山麓呪い村』のあらすじ【転】
滝は、即身仏の発掘を実現させるため道海を説得したが、死の不安に駆られた彼は難色を示した。彼は次に新聞社を訪れ、調査のスポンサーになるようプレゼンを行った。
謡子は、子供達を大師村の実家に向かわせていた。信也は自殺未遂で入院したという。滝は憔悴しきった彼女へ、風呂場の外で拾った薬をダシに取引を持ち掛けた。滝は彼女こそ剛造殺害の犯人だと確信し、「警察へ持って行けば指紋が出ますよ」とけしかけると、謡子は発掘資金を捻出した。
滝に同行した取材班は道海住職の断食修行を取材しようとしたが、修行を終えた筈の道海は彼らの前へ姿を現さなかった。彼を探しに行くと、古井戸の中で死んでいるのが見つかった。そこへ、警察から津島勘治は13年前に死んでいたとの報告が入った。
滝は弥勒寺の床下を掘り進め、両手首が無くなった津島母娘のミイラを発見。さらに、その下から幽海上人の即身仏を掘り起こした。幽海上人は、やはりシノと駆け落ちしようとした末、寺の利益のため燻製にされたようだった。怨みを残して息絶えた彼の亡骸は、信仰の対象とするにはあまりに凄惨な姿をしていた。
滝は、秘仏であった即身仏の正体は理不尽に殺された男だったとの記事を新聞に売ったため、大学から解雇されてしまった。
一方で、ホームレスとなっていた伏原欣也は、剛造が死んだのと同じ睡眠薬を飲まされ道端で死んでいた。
仕事を失った滝は、新聞社から自身の発掘資料を買い戻すこともできなくなっており、謡子から金を借りるため淡路邸を訪れた。そこで謡子は、14年前に偶然会った津島勘治と不倫した結果能理子を身籠り、勘治のことは電車のホームに突き落とし殺害したと告白した。謡子は滝に出した酒へ睡眠薬を盛ると、家に火を放った。滝は命からがら逃げ出し、武と暮らしている能理子の元へ向かった。
映画『湯殿山麓呪い村』の結末・ラスト(ネタバレ)
滝は妊娠していた能理子へ、自宅が燃え落ちたことと謡子の死を告げた。滝は彼女が全てを仕組んだ真犯人だと気付いていた。それを受け能理子は、一連の事件の顛末を語った。
炊き出しのボランティアをしていた能理子は、伏原欣作に声をかけられ自身の出生の秘密を知った。さらに欣作は、かつて剛造と道海の三人で津島母娘を洞窟へ監禁し、彼女らをレイプした末自殺に追い込むと、その事実を隠蔽したことを明かした。
欣作を含めた三人を許せないと憤った能理子は、それぞれを殺害する計画を立てた。まずは欣作に剛造と道海を脅させ、自分に懐いていた信也を剛造殺害の実行犯として使った。剛造は、能理子によって仕込まれた睡眠薬入りの水を飲み昏倒したところを、小窓から侵入した信也に三鈷杵を突き刺され死んだのだ。道海は能理子が誘い出し、古井戸へ転落させ放置した。最後に、欣也へ睡眠薬入りのウィスキーを渡し殺害したという。
能理子は、武の名字は津島だと言った。彼は勘治が残した子供だったのだ。能理子は実の兄と知らずに武へ処女を捧げてしまい、彼の子を身籠っていた。大人達へのやり場のない怒りを抱えた彼女は、復讐のため殺人を計画したのだった。
能理子から慶子の居場所を聞いた滝は、山形へ向かった。慶子は売春婦になっており、酒に酔った滝が彼女を突き飛ばすと、打ちどころが悪く彼女は絶命した。同じ頃、能理子はバイクを運転する武の目を塞ぎ、二人は事故死した。
一人になった滝は雪山をふらつき、吹雪の中倒れてしまった。彼は通りかかった行脚の僧に助けを求めたが、僧は鈴を鳴らし不敵に微笑むと、滝の横を過ぎ去った。
映画『湯殿山麓呪い村』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
タイトルの印象からホラー映画かと思ったが、サスペンス映画だった。終盤まで息を潜めている能理子の苦悩や葛藤が、もう少し詳細に描かれてもよかったかもしれない。
探偵的な位置付けである滝の考察や推理をもっと掘り下げて欲しかった。突然思い付いた犯人に当てずっぽうで脅しをかけているようで、最初に犯人だと感じた謡子への強請りも、最終的になぜ能理子に辿り着いたかも詳しい経緯は明らかにされていない。
警察が滝や謡子を真っ先に疑うような場面があったが、結局警察の介入もそれ以降は無かった。謎解きものとして見るには緊迫感が足りなかったように感じる。(MIHOシネマ編集部)
古い日本映画特有の陰鬱な雰囲気がたまらない一本でした。村社会の閉鎖性や、土地に根付く信仰と呪いの絡みがじわじわと不気味で、派手な演出はないものの背筋が寒くなります。犯人が“祟り”に乗じて人を殺していたという展開には納得しつつも、最後までどこか超常的な何かがあるような不安が残り、それが逆に魅力です。金田一耕助シリーズらしく、静かながらも深く印象に残るミステリーでした。(30代 男性)
本作はホラーというより、“日本的な呪い”が漂う怪奇ミステリーでした。湯殿山という舞台の神秘性と、村の人々の異様な空気がとてもリアルで、現代とは異なる価値観がゾクッとさせます。特に、犯人の動機が復讐ではなく、ある種の“正義”であるという点が印象的。金田一が事件を解き明かしたあとも、どこか割り切れない不穏さが残っていて、良質な余韻を味わえる作品でした。(40代 女性)
昭和の土着的ホラーの魅力が詰まった一本。山の中の寒村という設定だけで十分に怖く、そこに「祟り」「古い掟」「村の因習」が加わると、もう逃げ場がない感じがします。金田一耕助の落ち着いた推理が、この混沌とした空気を少しずつ整理していく過程が気持ちいい。ラストには、解決したはずなのに「それでも何かが残っている」ような感覚が残り、見終わってからが本番のような作品でした。(50代 男性)
村人の沈黙と不自然な態度が、序盤から異様な空気を醸し出していて、見ているこちらまで息苦しくなるようでした。事件の背後にあるのが怨念や因習といった“目に見えない圧力”で、それが人間の恐怖や差別と結びつく展開に鳥肌。金田一の語りもどこか淡々としているのに、すごく鋭くて、物語の暗部を冷静にえぐっていくのが印象的でした。静かな恐怖が好きな人におすすめです。(20代 女性)
物語のカギが“祟り”にあるという展開は、現代的なミステリーとは一線を画していて新鮮でした。湯殿山という実在の信仰地が物語にリアリティを与え、単なるフィクションでは終わらせないような力がありました。犯人の正体と動機が明かされるシーンは、悲しみと怒りが混ざり合っていて、完全な悪人がいないのも特徴的。観る側の倫理観を問われるような重みがありました。(30代 男性)
日本の風土に根付いた“祟り”や“血の因縁”を描いたこの作品は、まるで日本版『シャイニング』のような狂気を感じました。金田一シリーズの中でも特に陰惨な空気が強く、ホラーとミステリーの境界線を絶妙に揺さぶってきます。ラストの展開で、事件の裏にあった深い悲しみに触れた瞬間は、ただの恐怖だけでは済まされない感情が湧きました。見応えのある名作です。(40代 男性)
正直、最初は地味な印象だったけど、観ていくうちにじわじわと怖くなってくるタイプの映画。村の沈黙、祟りの伝説、そして連続する死。すべてが一本の線で繋がったときのスッキリ感と同時に、なんとも言えない後味の悪さが残る。金田一のキャラが明るすぎず、静かに物語を引っ張っていくバランスも良かった。昭和ミステリーの空気感を味わいたい人にはうってつけの一本。(20代 男性)
湯殿山という舞台の設定がとても秀逸でした。宗教や土着信仰が絡むと、どこまでが現実でどこからが幻想なのか分からなくなる。そういった曖昧さが、この映画の恐怖を生んでいます。登場人物たちの誰もが何かを隠していて、その沈黙が一層の不気味さを醸し出している。犯人の背景にある悲劇にも同情の余地があり、一筋縄ではいかない人間ドラマとしても優れた作品です。(50代 女性)
金田一耕助シリーズの中でも、特に“呪い”というテーマを強調した異色作だと感じました。推理ものとしても面白いけれど、それ以上に村の文化や人々の心に根付いた恐れが描かれていて、心理的な怖さが大きいです。特に、終盤の祠の場面や、殺人の動機が明かされるシーンでは、理屈だけで片付けられない哀しみがあり、胸に迫りました。静かながら、心を揺さぶられる作品です。(60代 男性)
映画『湯殿山麓呪い村』を見た人におすすめの映画5選
八つ墓村(1977年版)
この映画を一言で表すと?
「血と呪いに翻弄された村に潜む、戦慄の連続殺人ミステリー」
どんな話?
戦国時代からの因縁が残る山村「八つ墓村」で起きる奇怪な連続殺人事件。主人公が自らの出生の秘密と向き合いながら、金田一耕助が村に渦巻く呪いの謎に迫っていく。ドロドロとした因習とスリリングな展開が魅力の名作。
ここがおすすめ!
『湯殿山麓呪い村』と同じく、土着信仰や村社会の閉鎖性、血の因縁をテーマにした作品で、映像の重厚感と不気味な雰囲気は圧巻。市川崑監督の演出も秀逸で、日本ミステリー映画の金字塔と言える一作です。
鬼畜
この映画を一言で表すと?
「人間の愛と罪が壊れていく瞬間を描いた、社会派サスペンスの傑作」
どんな話?
愛人との間にできた3人の子どもに追い詰められ、生活が崩壊していく男が、ついには犯罪に手を染めるまでを描いた物語。“家族”という枠組みの中で人が追い詰められていく様子に背筋が凍るリアルな人間ドラマ。
ここがおすすめ!
『湯殿山麓呪い村』が因習と呪いを描いたのに対し、こちらは現代的な倫理と家庭の崩壊を描く作品。静かで淡々とした描写が逆に恐ろしく、見る者に心理的な恐怖を残します。ラストの余韻も非常に強烈です。
遠野物語
この映画を一言で表すと?
「日本の原風景と幻想が織りなす、静謐で妖しい映像詩」
どんな話?
柳田國男の民俗学的名著を原案に、岩手の山里に伝わる不思議な話や伝承を映像化した作品。明確なストーリーではなく、土着的信仰や昔話の世界を追体験するような構成が魅力の幻想ドキュメンタリー風映画。
ここがおすすめ!
『湯殿山麓呪い村』に通じる、土地に根付いた目に見えない“何か”を感じたい人におすすめ。派手な展開はないものの、日本古来の霊性や民間信仰の美しさと怖さを静かに体験できます。異世界を歩くような感覚に浸れます。
哭声/コクソン
この映画を一言で表すと?
「呪いか、病か、それとも信仰か──混沌に呑まれていく村と警察の迷走」
どんな話?
韓国の山奥の村で起きた連続殺人事件。警察官ジョングは原因を追ううちに、祟りや悪霊といった非科学的な存在に次第に飲み込まれていく。観る者に何度も価値観の裏切りを突きつける、恐ろしくも深いサスペンススリラー。
ここがおすすめ!
日本の“呪い村”と非常に共鳴するテーマと空気感を持ち、村社会の不気味さ、土着信仰への恐怖、人間の狂気が複雑に絡み合います。何が本物で何が偽物か分からない構成で、終盤は呆然とする衝撃の展開が待っています。
犬神家の一族(1976年版)
この映画を一言で表すと?
「遺産と血筋をめぐる家族の地獄絵──ミステリーの美学が詰まった傑作」
どんな話?
巨大財閥・犬神家の当主の死をきっかけに始まる連続殺人。遺言に翻弄される家族と、次々に死んでいく相続人たち。金田一耕助が、家に隠された秘密と血の因縁に切り込んでいく。ミステリー映画の代表格。
ここがおすすめ!
『湯殿山麓呪い村』と同じく、市川崑×金田一耕助のコンビが生み出した傑作で、陰影の効いた映像や不気味な静寂が見事。ドロドロとした人間関係、因習の怖さ、そして最後のどんでん返しも見どころです。
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