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映画『欲動』のネタバレあらすじ結末と感想

この記事では、映画『欲動』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『欲動』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。

この記事でわかること
  • 『欲動』の結末までのストーリー
  • 『欲動』を見た感想・レビュー
  • 『欲動』を見た人におすすめの映画5選

映画『欲動』の作品情報

欲動

製作年:2014年
上映時間:97分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:杉野希妃
キャスト:三津谷葉子、斎藤工、コーネリオ・サニー、杉野希妃 etc

映画『欲動』の登場人物(キャスト)

ユリ(三津谷葉子)
千紘の妻。看護師。生きている内に妹の出産に立ち会いたいという千紘を支えるため、バリへ同行する。情緒不安定な千紘から別れを切り出され、自身も自暴自棄になってしまう。
千紘(斎藤工)
ユリの夫。心臓に重い病を抱えている。自らの死への恐怖と、人の死に慣れているユリの対応に腹が立ち情緒不安定になっている。元スキューバダイビングのインストラクター。
九美(杉野希妃)
臨月を迎えた千紘の妹。兄の体を心配しており出産への立ち会いには否定的だったが、不安に襲われている彼の意志を尊重する。

映画『欲動』のネタバレあらすじ(起承転結)

映画『欲動』のストーリーをネタバレありの起承転結で解説しています。この先、結末までのネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『欲動』のあらすじ【起】

バリに到着したユリと千紘は、千紘の妹である九美の夫、ルークの運転で彼らの自宅へ向かっていた。九美の元に着いた頃には、重い心臓病に侵され体が弱くなっている千紘は大いに疲弊していた。縁側で眠ってしまった兄を見て心配する九美に、ユリは「いつ何があってもおかしくないから二人に会っておきたいって」と彼の気持ちを代弁した。

目覚めた千紘は、妹の大きなお腹に驚くと同時に笑顔になった。ユリと千紘、九美とルークは4人で賑やかな夕食を摂り、それぞれの近況を語り合った。

千紘は、ルークが想像に反して優しい男だったため安心していた。ルークは故郷であるオランダの話や九美との馴れ初めを語る。その内に、九美は千紘とユリが出会った頃の思い出を聞いてきた。しかし、千紘はユリと出会った経緯やそれ以前のことは語りたがらなかった。ユリは「海で助けてもらった」とだけ答え、九美は兄がナンパしたのかとからかった。

千紘の体を気遣いながら食事していた彼らは、九美の出産について話した。九美は、助産師に来てもらい自宅で出産する予定だと言う。看護師のユリもいることから、九美は安心してバリで出産できると喜んだ。

食事を終え部屋に戻ったユリは、千紘に薬を飲ませた後一人リビングへ降りた。ユリは、眠れずプールサイドに腰掛けていた九美に、どうして病院で出産しないのか聞いた。彼女は病院を「命が人工的に扱われている場所」だと感じていると話し、看護師であるユリに謝った。兄も今は不安定で面倒くさいでしょうと気遣う九美に、ユリは「薬飲ませると微妙な空気になるのよね」と打ち明けた。

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映画『欲動』のあらすじ【承】

翌日、九美とルークの案内でバリ市内を観光したユリと千紘は、民俗音楽の演奏が聴けるカフェに入った。そこにはルークの友人である木村がおり、彼と挨拶を済ませた4人は音楽に聞き入った。千紘だけは、途中でどこかえ消えてしまった。

3人の元へ戻って来た千紘は、相談なしにバリでの出産を決めた九美に突然「お前おふくろの面倒見る気ある?俺がいなくなったら、状況考えて」と冷たく言い放った。さらに、千紘は月末まではバリに滞在すると語るユリの言葉を遮り「俺一人で残るから、お前先に帰ったらいいよ」と吐き捨てた。

千紘は、人の死に慣れているユリの態度に常々苛立っており、我慢の限界を迎え「もっと動揺しろよ!」と彼女に怒鳴った。続いて妹にもルークにも暴言を吐き当たり散らす千紘に、九美は「だから日本の男は嫌」と呟いたが、千紘は静かに「オランダ人だってバリの人に散々嫌なこと繰り返してきたじゃねえか」と返し、九美は閉口した。

カフェを飛び出し田園の中を歩いていたユリは、木村に声を掛けられた。夫と喧嘩したと言うユリを気晴らしに誘った木村は、自分はゲイであると告白し彼女を安心させた。

木村に連れられてクラブを訪れたユリは、木村のセックスフレンドであるイキを紹介された。ユリが二人に伴われフロアで踊っていると、千紘に似た髪型をしている地元の男と目があった。じりじりと距離を詰めてくる男を警戒に二階に逃れたユリだったが、暗がりで木村とイキが激しく交わっている場面を目撃し動揺してしまった。慌てて階下へ向かったユリは先程の男に無理矢理トイレへ連れ込まれ、あわやレイプされるという寸前で逃げ出した。

映画『欲動』のあらすじ【転】

千紘は、ユリが朝帰りしたことは特に咎めず、話があると言って彼女を庭へ連れ出した。

スキューバダイビングのインストラクターをしていた千紘は、ユリと出会う前、海中の崖の陰に差し掛かった時にパニックを起こしてしまった。同僚が助けに来てくれたため一命は取り留めたが、自分がしがみついて離れなかったせいで同僚は死んだ。千紘はこの時のことを振り返り、「あの時みたいに一番近くにいる人間を引きずり込むのが怖い」とユリに別れを切り出した。死に別れるよりお互い一人の方が絶対に良いと嘆く千紘に、ユリは言葉を掛けなかった。

木村と闘鶏場を見学したユリは、戦わされる鶏を見て可哀そうだと言った。木村は「本能剥き出しで落ち着く。人の理性は、生き物としては濁ってる」と自分の考えを述べたが、抑えきれない感情を持たないユリには理解できなかった。

イキの経営するカフェで、木村はワヤンを紹介した。彼こそ昨夜ユリをレイプしようとした男だった。ワヤンは昨夜の非礼をユリに詫びると、彼女を海へ誘った。ワヤンはスキューバダイビングのインストラクターだと言った。渋々ワヤンと浜辺を歩くユリは彼を無視し続けたが、ついに彼を受け入れてしまった。その夜、二人は幾度となく互いを求め合った。

映画『欲動』の結末・ラスト(ネタバレ)

浜辺で朝を迎えてしまったユリは、慌てて外していた結婚指輪を指に付け直すと家路についた。マーケットに差し掛かった彼女は新しい服を購入し、イキの店で着替えさせて貰った。

ユリは、イキに淹れて貰ったコーヒーを飲みながら「いなくなるって、どんな感じなんだろう」と誰にともなく呟いた。イキは、お土産にコーヒー豆を買って帰ろうとする彼女に「いなくなる、は自然なことだよ」と声を掛け、彼女を見送った。

帰宅したユリは、落ち着かない様子の千紘から九美が産気づいていると知らされ、急いでリビングに向かった。助産師とルークが苦しむ九美に声を掛けていたので、ユリも彼女の手を握って励ました。部屋の外でうろうろしていた千紘もついに覚悟を決め、彼らの元に駆け寄った。九美は無事に赤ちゃんを産んだ。

全てが落ち着きユリが部屋へ戻ると、千紘は死んだように眠っていた。ユリは彼の呼吸を確認しおもむろに自身の下着を脱ぎ捨てると、眠っている彼の体にまたがった。我に返ったユリは嗚咽を漏らしたが、目を覚ました千紘は彼女を抱き締め、二人は激しく互いを求め合った。

夕暮れを迎えた二人は、浜辺を散歩した。千紘はユリの遥か前を歩き、波打ち際へと進むと海の中へ入って行った。千紘は大きな声で「こっちに来て」と叫び、繰り返し彼女の名前を呼んだ。ユリは視界から消えた千紘の声を聞きながら、ただ立ち尽くした。

映画『欲動』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)

女性監督らしい、非常に儚く美しい描写が映えていたと感じた。ユリと千紘のベッドシーンなどとても生々しく、抱き合うべくして抱き合っている男女のすがるような画が印象的だ。

恐らく、千紘の不安も、ユリの死に対する事務的な態度も、どちらも正しい。若くして死んでしまう不安や未練も想像できるし、かと言って、死ぬと分かっている人間に対し感情的に「死なないで」と叫んでも無意味なのだ。「誰も悪くなかった」というのが結論だろう。

唯一怒りを覚えたのは、出産直後にスタスタと歩く九美である。産後数時間でひらひらのワンピースを着て、赤ちゃんを抱っこしたまま真っすぐスタスタ歩くなど現実離れしている。ましてや医療設備が整っていない自宅である。彼女のお股事情を想像したら集中できなかった。そもそも「シャツが無いんだけど」などという理由で出産直後の妻を呼び付けるなよ、とルークにも腹が立った。(MIHOシネマ編集部)


ユリ(三津谷葉子)が夫・千紘(斎藤工)の病と向き合いながら、バリ島で妹・九美(杉野希妃)の出産に立ち会う状況が、徐々に愛欲と生と死のあわいで揺れる展開を見せる。本作のクライマックス、ユリがワヤン(コーネリオ・サニー)との一夜を過ごしてしまう場面が、ただの不倫の描写ではなく、千紘の不安定さ・死への恐怖がユリの中にある“欲動”を引き出すきっかけになる構造が見事。千紘が妹の出産を見届けず亡くなっていく中で、ユリが自身の肉体と感情をどう扱うかの揺らぎが、観客にも痛みとして伝わる。映像美やバリの自然・儀礼・音楽が、ユリの内面の葛藤と重なって情感豊かに響いた。(30代 女性)


「生きるとは何か」「性とは何か」という重いテーマに真正面から挑んだ作品。ユリは、夫の病が重くなるにつれて、看護師として、妻として、そして一人の女性としての自分の欲望に気づかされる。ワヤンとの関係は衝動的であると同時に、ユリにとって慰めとも自己確認ともなるが、結果的には千紘の死が全体の重みを決定づける。ユリが千紘の妹・九美を見守るラストのシーンで、自分の選択の代償を静かに受け入れる姿に涙が止まらなかった。(50代 女性)


映像の質感、特にバリ島の自然、ガムランやケチャの音、夜のナイトクラブの灯りなどが、ユリの内面の欲望や不安を可視化する装置として機能していた。千紘が心臓病で苦しみ、出産が近づいた妹を抱えてユリが感じる「生死のはざま」が、「肉体と性愛」へと彼女を引き寄せる流れに納得感があった。ワヤンと過ごした夜がユリにとって一時の解放だったこと、しかしそれが罪悪感と後悔を伴うことが描かれていて、おそらくこれがこの映画の核心だと思う。(20代 男性)


物語が進むにつれて、ユリと千紘の距離が「病」「恐怖」「期待」という三つの重みで刻々と変化していくのが見応えあった。特に千紘が妹の出産を見届けるために無理を重ねるあたりの痛々しさ、ユリがワヤンと出会い、自身の欲を知るあたりの戸惑いがリアル。最後、千紘の死が確定し、ユリが妹と新たな生命を見つめ直すラストは、観客に「愛と責任と自由」の曖昧さを考えさせる。(40代 女性)


不治の病を抱える千紘の存在が、この映画では“死の影”として常にユリの感情を揺さぶる。そしてユリがナイトクラブでワヤンに誘われたとき、“病と死に向き合う妻”としての自分だけではなく、「女としての自分」に気づく瞬間がある。その選択が彼女にとって救いか、それともさらに苦悩を呼ぶかは曖昧なまま終わるけれど、それが正直で深い。テーマの重さを映像と音でしっかり支えている作品だった。(30代 男性)


この映画の最大の魅力は、性愛描写が単なるエロティシズムにならず、主人公ユリの心の混乱と救いの探求に深く関わっていること。ワヤンとの夜、千紘が妹の出産を待つユリの不安、夫婦間の言葉にならない距離。それらが積み重なってラストでユリが選ぶ「生の側」を選ぶ態度は、苦しみの末の覚悟を感じさせた。ただ、物語後半でユリの葛藤が急に集中するため、もう少し日常の積み重ねがあればより共感できたと思う。(20代 女性)


千紘の心臓病という設定が、ユリとの関係・欲動・死への恐怖というテーマを機能させる起点になっていて、その脚本の構造がよく練られている。妹・九美の出産に立ち会うという旅が、ユリにとって外界からの逃避でもあり、自己を見つめ直す試練でもある。終盤、千紘が苦痛の中で病状に倒れ、ユリが彼の手を握るシーンにこそ、「生きてほしい」という感情と、それでもやがて訪れる喪失の両方が凝縮されていた。(50代 男性)


ただし、全てがうまくいっているわけではない。ユリとワヤンの関係の描き方に唐突さを感じる部分があり、特にクラブでの出会いから夜を共にするまでの心理描写がもう少し丁寧ならば、物語の重みがもっと増したと思う。また、千紘の病に関しても途中説明が足りない部分があり、ユリの不安や怒りが何処から来るかが掴みにくい場面もあった。(40代 女性)


観たあとにしばらく、ユリと千紘の関係、またユリの選択が正しかったのかを反芻してしまう。彼の妹の出産、死への恐怖、性愛という欲動、それらが混ざりあったあの夜の出来事…ユリが千紘の死後、新たな生命を間近で体験する中で、自分自身の生と性的な衝動をどう折り合いをつけるかを選ぼうとするラストは、優しさを含んだ切なさがあって心に残る。(30代 女性)

映画『欲動』を見た人におすすめの映画5選

累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『欲動』を見た人におすすめの映画5選を紹介します。

『誰も知らない』

この映画を一言で表すと?

静かに胸を締めつける“喪失と生”の物語。

どんな話?

母親に置き去りにされた4人の兄妹が、東京の片隅で人知れず生き抜いていく姿を描いた実話ベースの物語。長男の明が幼い兄妹を支えながらも、社会の目から隠れるように過ごす日々に、切なさと静かな絶望が滲み出る。

ここがおすすめ!

リアルな描写と抑えた演出が、子供たちの孤独と成長を深く掘り下げる。台詞の少なさが逆に感情を豊かに伝える作品で、『欲動』と同様に“見えない痛み”を抱える人物の心情をじっくりと描いている。柳楽優弥の演技は必見。

『愛の渦』

この映画を一言で表すと?

欲望と孤独が交錯する一夜限りの群像劇。

どんな話?

匿名の男女が集まり、性欲のみを目的とした“乱交パーティー”で一夜を共にする。その中で交わされる本音、虚勢、孤独、そして人との距離感が浮き彫りになっていく。

ここがおすすめ!

登場人物全員が裸なのに、心の内はむしろ着込んでいる。性愛を題材にしつつも、本質は人間関係の皮肉や不器用さを描いた人間ドラマ。『欲動』のように“性”が深層心理を炙り出す点で共通している。会話劇が好きな人にもおすすめ。

『スカーレット・ディーバ』

この映画を一言で表すと?

芸術と狂気、女性の欲望と自由を描いた衝撃の私映画。

どんな話?

イタリアのアーティスト、アジア・アルジェントが主演・監督・脚本を務め、自身の体験をもとに、ショービジネスの闇や女性の生きづらさを赤裸々に描く。破滅的な生き方を貫く女性の内面に迫るドラマ。

ここがおすすめ!

自分の身体も感情もさらけ出しながら、生と死、芸術と現実のあいだで揺れる主人公が『欲動』のユリと重なる。極端な表現も多いが、それが本物の“痛み”や“欲動”として伝わるパワーがある。アート系映画が好きな人にぴったり。

『マリア・ブラウンの結婚』

この映画を一言で表すと?

戦後ドイツを生き抜いた、強く哀しい女性の生き様。

どんな話?

第二次大戦後、混乱するドイツ社会のなかで生き延びるために知恵と美貌を武器に上昇していくマリア。愛する夫との再会を夢見つつも、運命は残酷な結末へと向かう。ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督作。

ここがおすすめ!

『欲動』が描いた“女としての生き方と欲望”を、戦後の混乱を舞台により大きなスケールで描いている。社会と女、愛と欲の間でもがく姿に普遍的な力がある。力強くも哀しい、女性の人生を描いた傑作。

『ラストタンゴ・イン・パリ』

この映画を一言で表すと?

性愛の中でむき出しになる孤独と喪失感の極地。

どんな話?

舞台はパリ。妻を亡くした中年男性と若い女性が、名前も素性も明かさないまま肉体関係を持ち続ける。だが、関係は次第に変化し、破滅的な結末へ向かっていく。ベルナルド・ベルトルッチ監督による問題作。

ここがおすすめ!

過激な性愛表現の裏にあるのは、喪失と再生、そして人間のどうしようもない寂しさ。『欲動』のように、性の描写を通じて内面の傷や欲求をあぶり出す演出が光る。大人のためのラブストーリーを求める人にこそ観てほしい一本。

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この記事の編集者
影山みほ

当サイト『MIHOシネマ』の編集長。累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家です。多数のメディア掲載実績やテレビ番組とのタイアップ実績があります。平素より映画監督、俳優、映画配給会社、映画宣伝会社などとお取引をさせていただいており、映画情報の発信および映画作品・映画イベント等の紹介やPRをさせていただいております。当サイトの他に映画メディア『シネマヴィスタ』の編集長も兼任しています。

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