映画『人生に乾杯!』の概要:生活に困窮した年金受給中のエミルとヘディ夫妻が、腰痛と糖尿病をこらえながら礼儀正しく連続強盗!老人版「俺たちに明日はない」として人気を博した、ハンガリー発のヒューマンドラマ。
映画『人生に乾杯!』の作品情報
上映時間:107分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:ガーボル・ロホニ
キャスト:エミル・ケレシュ、テリ・フェルディ、ユーディト・シェル、ゾルターン・シュミエド etc
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映画『人生に乾杯!』の登場人物(キャスト)
- エミル(ケレシュ・エミル)
- 81歳。腰痛もち。共産党時代に党の運転手を30年間勤め上げ、引退後に譲り受けた愛車チャイカと車中で見つけた銃を丁重にメンテナンスし続ける几帳面な男。礼儀正しいが、無口で人付き合いは悪い。
- ヘディ(フェルディ・テリ)
- 70歳。エミルの妻。資産家の令嬢だったが、エミルに助けられたことがきっかけで階級差を超え結婚する。糖尿病を患い、インスリン注射が日課。長年連れ添ったエミルとは口論もするが、誰かが彼について悪く言う事は許さない。
- アギ(シェル・ユディト)
- 警部補の女性。冷静で優秀。エミルとヘディの犯行を捜査する。アンドルの子を身ごもっているが、公私ともにだらしないアンドルとの将来が考えられず、一度は別れを決意する。
- アンドル(シュミエド・ゾルターン)
- アギの部下であり、恋人。アギと共にエミルたちを追う。昇進を焦り違反ばかりする警察の問題児。アギに好意を寄せる同僚の策略でストリッパーと遊んでしまい、アギにフラれる。
- ホアン(ジョコ・ロシック)
- キューバ人。エミルの古い友人。家の敷地を塀で囲ってキューバの旗を立て、キューバ領と言い張る変わり者。陽気で明るい過激派の老人。
映画『人生に乾杯!』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『人生に乾杯!』のあらすじ【起】
1950年代後半のハンガリー。共産党員を乗せたチャイカが、一軒の豪邸の前に停まる。党員たちは屋敷の家財を押収しに来たのだ。運転手の青年エミルは屋根裏の捜索を命じられるが、そこには屋敷の令嬢ヘディが潜んでいた。ヘディはエミルの手に自らのダイヤのイヤリングを握らせ、エミルは上官に噓をつき彼女を窓から逃がしてしまう。そしてこれが、その後何十年も連れ添う夫婦のなれそめだった。
時は移り、すっかり年老いたエミルとヘディ。年金生活は苦しく、家賃の催促が来ても居留守を使うしかない。ヘディがお隣さんとTVを楽しみたくても、電気すら止まってしまう。遂には借金のカタにエミルの大切な蔵書が狙われるが、ヘディは思い出のダイヤのイヤリングを外し、今度は督促人の手に握らせる。
その夜、ヘディの寝顔を見つめるエミル。彼はある決心をしていた。長年使われていない愛車のチャイカに給油し、夜の街に走り出す。明くる朝、エミルは郵便局の窓口にいた。手には袋で隠したトカレフ。窓口の女性を丁寧な口調で脅し、袋に金を詰めさせる。狭い局内には人が込み合うが、誰も犯行には気づかない。待たせてすみませんと声をかけ、後ろに並ぶ老婦人への気遣いも忘れないのが、エミル流強盗マナーだ。
所変わって、あるもう一組のカップルも危機的な状況にあった。若い警察官アンドルは昇進を焦り、管轄外で勝手な行動をして上から厳重注意を受けてしまう。さらに、彼がストリッパーと羽目を外した事が所内中に知れ渡り、職場恋愛の恋人アギから愛想をつかされていた。大人しく本来の交通違反取締に戻るアンドルだったが、無線で老人の郵便局強盗の知らせが入るなり、再び管轄外の事件ながら飛び出してしまうのだった。
映画『人生に乾杯!』のあらすじ【承】
何も知らず、いつもと同じ朝を迎えるヘディ。ふと夫の不在に気が付く。車も無い。エミルは郵便局に続き、ガソリンスタンドの売店に押し入っていた。
郵便局へ調査に向かったアンドルはやはり罰則を受けていた。そこへスタンドから通報が入り、ようやくアンドルも正式な捜査官として任命される。しかし、ペアとして組む上司は既に破局した元彼女のアギ。やりにくさを感じながらも、二人はスタンドへ事情聴取に向かう。犯人はどうやら素人で、防犯カメラには銃を構えた老人が映っている。そして、路肩に残る古めかしいタイプのタイヤ痕。アンドルが交通違反取締中に見かけた旧ソ連の公用車チャイカが捜査線上に浮上した。
車のナンバーからエミルの身元を突き止めたアンドルとアギ。ヘディに捜査協力を請い、老人の錯乱による犯行にすれば裁判にも有利だとアドバイスさえしてあげる。しかしヘディは、夫は正気だと取り合わない。それでも、エミルからの電話で翌朝に鉱山で待ち合わせをすると、警察の同行を受け入れるのだった。
翌朝5時。タクシー運転手に扮した警官に送られるヘディ、そして隠れて追跡するアンドルとアギ。待ち合わせ場所の鉱山には、エミルのチャイカが待っていた。再会にほっとするエミルとヘディ。薄れかけていた夫婦愛を確かめる。自首しようとするエミルだが、ヘディの決断で逃避行が始まった。共産党お抱え運転手だったエミルの古い相棒チャイカは、今時のタクシーには登れない砂地の斜面も物ともせず走り去っていった。
映画『人生に乾杯!』のあらすじ【転】
老夫婦の強盗としてニュースになっているなどツユ知らず、エミルとヘディはまるでドライブデートを楽しむかのように車を走らせる。次の標的に銀行を選ぶが、昼時の偶然で銀行内は無人だった。強盗らしく声を荒らげてもみるが反応はなく、拍子抜けして銀行を去る二人。今度は人が多い時間にしようと約束する。近所の住民がチャイカと銃を持った老夫妻を見かけ通報するが、不在だった銀行員は証言もできず、警察が監視カメラで二人の姿を確認する頃にはすっかり手遅れだった。
次に、エミルは宝石商に入る。ここでようやく、差し押さえられたヘディのダイヤのイヤリングを取り戻した。さらに、ヘディのために、ブティックで上質なツーピースと大きなクマのぬいぐるみまで買ってやる。そして、スパ付きのホテルスイートにチェックインし、思わず笑みが溢れる二人。ひとりマッサージサービスに行ってしまったエミルにヘディが機嫌を損ねるが、それもディナーで運ばれてきた70歳マイナス1日を祝うケーキに心を許す。
一方、アンドルはアギの家から私物を持ち帰らされるまでになっていた。アギに妊娠の兆候がある事には気づかない。そのうえ、老夫婦の指名手配ニュースを見たホテルのフロントマンから通報が入ると、アンドルひとり勇んで駆けつけるものの二人を取り逃がしてしまう。アギのサポートですぐさま追跡するが、カーチェイスでもエミルの機転が一枚上手なのだった。
エミルの次なる目的地は、古い友人のドン・ホアンの元だった。キューバ人の彼はカストロとデモに参加したような過激な男で、今も家を塀で囲い、バリケード付きの小型バスを隠し持っている。ホアンの提案で現金輸送の現場を襲う三人。首尾よくカバンいっぱいの札束を手に入れるが、どこの国の通貨とも知れず、さらに初めて警備員にケガ人を出してしまった。分け前をクマのお腹に詰めながらも、浮かない表情のエミルとヘディ。
さらに悪い事は続き、元々地域の要注意人物だったホアンはすぐに警察から目を付けられ、あっという間に家を包囲されてしまう。バリケード付きバスで勢いよく堀を蹴破り逃走するが、その衝撃で職務中のアギを撥ねてしまった。しかたなく気絶したアギをバスに乗せ、図らずも人質までとってしまう三人。
しかし、街の声はどんどんこの年老いた強盗達に好意的になっていき、特に同世代の年金受給者たちにとってはヒーローだった。デモが起こり、模倣犯まで現れる。かつて旧ソ連の圧政に抵抗したハンガリーの若者達は、年老いてもなお尊厳を守る戦いに挑んでいくのだ。
映画『人生に乾杯!』の結末・ラスト(ネタバレ)
停職処分中のアンドルは、ニュースでアギが人質に取られたことを知る。番組では、強盗夫婦が30年前に一人息子を亡くしていたことも紹介した。軍用トラックに轢かれたのだ。あと3日で30回忌。何か心に引っかかるものを感じ、エミルのアパートへ向かうアンドル。部屋で見つけた息子の写真にヒントを見つけた。“ヴィーグテレクにて”。地図で犯行現場との位置関係を確認すると、すぐさま道路封鎖現場に駆け付ける。そこでは、すでにチャイカを捕獲していたが、乗っていたのはホアン一人。バスで逃げ延びたエミルとヘディを追うため、アンドルも捜査に加わることを許された。
アンドルの推理通り、写真の場所であるキャンプ場にエミルはいた。ロッジで足を怪我したアギの看病をしてやるヘディ。エミルは息子の墓参りをする。アギは逃亡しようとするが、夫妻に見つかり揉めているうちに警察のヘリが追いついた。これで決着かと誰もが思うも、エミルはアギを使ってチャイカを取り戻し、クマとガソリンを積んで最後の逃避行が始まった。
しかし、車を少し走らせると、森の中で突然アギを解放するエミル。もう人質は必要ないという。ヘディはお腹の子を大切にして、と言い残し、再びチャイカに乗り込み走り去る二人。解放されたアギを見つけた警察は路封鎖を再開し、いよいよお縄の時が来た。ところが、森から一直線に走って来るチャイカのスピードは増すばかり。あっという間に封鎖用のロードローラーに突っ込むと、チャイカは大炎上して老夫妻も盗んだ金も燃え尽きた。
数十年前、屋根に逃がしたヘディを毛布でくるみ、渡されたダイヤのイヤリングをもう一度その手に返してやったエミル。没収されたイヤリングを取り返すため始まった連続強盗。エミルが強盗を働き、売春婦と会っていたと聞かされても動ぜずついていったヘディ。二人と過ごした時間がアギを変え、彼女はようやくアンドルを許し妊娠を告げる事が出来た。アンドルも喜びに泣き崩れ、後日病院でエコー写真を見つめる仲睦まじい二人の姿があった。待合室のTVでは、あの老夫妻の追悼番組が流れている。彼らの犯行は、確実に年金生活者に対する国の意識を変えつつあった。
ふと、アギは最後に二人と過ごした時間を思い出す。警察に包囲されながらも、エミルは現金をクマから小さいカバンに詰め替えていた。これから自爆するという車中で、ヘディはインスリンの注射を打っていた。チャイカの運転席に座っていたのは、大きなクマのぬいぐるみではなかったか。ヘディは海が見たいと言っていた。騙されたのかもしれない。そうだとしても、アギは笑顔がこぼれるのを止められなかった。
映画『人生に乾杯!』の感想・評価・レビュー
社会問題を浮き彫りにした正統派な作品かと思いきや、老夫婦の愛や彼が抱える「老人」ならではの悩みなど、リアルが描かれた作品でとても面白かったです。
年金生活を送る老夫婦が強盗を起こすストーリーなのですが、何故そうなったのか、どうして夫婦で犯罪を犯すのかなど全てのことに理由があり、その理由が優しさや愛に溢れたものだったので私は夫妻を責めることはできません。
コメディチックでありながら、しっかりと人間ドラマや社会問題を描いているので見てよかったなと思える作品でした。(女性 30代)
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