この記事では、映画『舟を編む』のあらすじをネタバレありで解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『舟を編む』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『舟を編む』 作品情報
- 製作年:2013年
- 上映時間:133分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、ラブストーリー
- 監督:石井裕也
- キャスト:松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー、黒木華 etc
映画『舟を編む』 評価
- 点数:85点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『舟を編む』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『舟を編む』のあらすじを紹介します。
とある出版社で、営業として働く馬締光也は、真面目すぎる性格から会社で浮いた存在であった。コミュニケーション能力が低く、元々営業の仕事に向いていなかったことと、言葉を表現する才能を持っていたため、辞書を編纂する部署に異動となる。新たな辞書は、若者が使うような新しい言葉や流行語も取り入れるというもので、取り上げる見出しは24万語を超え、大掛かりな作業となる。
そんな作業に追われる日々の中、馬締は下宿先の大家の孫娘、香具矢に恋をする。香具矢は、板前の見習いとして働く女性だった。そして、板前の修業を優先し、恋人とうまくいかずに別れた過去を持っており、恋愛と仕事の両立には悩んでいた。
馬締はなんとか香具矢に自分の思いを伝えたいと思い、ラブレターを渡そうと考える。しかし、思いを表現する言葉選びに悩み、とてつもなく長い、そして時代錯誤かというほど古めかしい方法で手紙をしたためる。
香具矢は、その手紙に驚き、呆れながらも馬締の思いを受け取り、二人は恋人になる。
一方で、辞書の編纂は難航していた。馬締を引っ張ってきた先輩、西岡の異動、辞書の監修を務めている国語学者松本の死など。このような問題を抱えながら少しずつ完成に向けて進む。
辞書が出版に至るまでは、編纂作業を始めてから15年もの月日が経過していたのだった。

映画『舟を編む』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『舟を編む』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
言葉を大切にしたくなる作品
辞書の編纂をメインとした本作は、普段の生活では知り得ないことをたくさん教えてくれる。辞書を一から作り出すという、想像するだけで気の遠くなるようなことは、なかなか考えようとも思わないのではないだろうか。
馬締らの言葉をピックアップする作業、そして言葉をどう表現するかという場面を観ると、私たちが日常で何気なく使っている言葉の一つ一つが大切に思えて、改めて考えてみたいとも思えてくるのである。
「右」「左」という、単純な言葉でさえ、その意味をどうわかりやすく伝えるかは難しいのである。今まで生きてきて、日常で使う大抵の言葉の意味は、わかっているようで実はわかっていないのだと痛感した。
辞書を作るって大変なんだろうな、と想像はつくけれど、実際こんなに長い年月をかけて、一つ一つの言葉を人の目で確認していく作業とは、驚きだった。
そういった、一般ではあまり知ることができない面白さをわかりやすく伝えてくれる作品だった。
静かな夫婦愛
辞書編纂とは別に、もう一つ別の軸のストーリーがある。馬締と香具矢の恋と、結婚生活である。
人とのコミュニケーションが苦手な馬締は、愛の告白ですら上手く口で言い現わすことができず、文字で表現する。
恋人関係になっても、交わす言葉は少ない。
結婚しても香具矢に対しては敬語で話し、香具矢もそれを静かに受け止める。相手に伝えるために必要な分だけしか言葉を交わさない、という印象。
だが、それでも二人はお互いのことを理解し、支え合っているのである。ものすごくキャラが立っているというわけでもなくて、本当に地味で面白みのない夫婦なのだが、こういう夫婦関係もいいな、としみじみ感じた。
原作も好きでしたが、映画も素晴らしかったです。
15年かけて辞書を作るというストーリーも感動的だし、それに携わる人々の人間模様にも心を打たれました。
特に良かったのは、馬締が香具矢に想いを伝えるシーン。馬締の書いたラブレターの文章が難しすぎて自分で読むことができなかった香具矢。怒りながら「言葉で言って欲しい」と訴えるときのもどかしい気持ちが伝わってきて、泣けてしまいました。
松田龍平と宮崎あおいの、派手な感情表現はないのに心の動きが伝わってくる演技がとても良かったです。脇を固める共演者もみんな素晴らしく、心に残る作品になりました。(女性 40代)
辞書づくりという地味なテーマなのに、こんなに胸が熱くなるとは思いませんでした。馬締の言葉への真摯な姿勢、そしてそれに引き寄せられるように集まる仲間たちの姿に感動しました。香具矢との恋愛も不器用でありながらとても丁寧に描かれていて、馬締の成長とリンクして胸に沁みました。ラストで『大渡海』が完成したとき、まるで自分も旅を終えたような達成感がありました。(20代 男性)
馬締のような静かで誠実な人物が主人公の映画は珍しく、最初から最後までとても好感が持てました。特に彼の不器用な告白のシーンは、思わず涙が出てしまうほど温かくて素敵でした。辞書を作るという作業がいかに人間的で、熱意が必要な仕事なのかを丁寧に描いてくれたことに感謝したい。静かな感動が余韻として長く残る名作です。(30代 女性)
職業映画としても人間ドラマとしても完成度が高く、まさに大人のための映画という印象でした。馬締と西岡という対照的な二人が互いに影響し合い、辞書作りという大きな目標に向かっていく流れが素晴らしかったです。香具矢との関係や、上司の林さんの退職シーンも含めて、それぞれの人生が丁寧に描かれていたのが印象的でした。(40代 男性)
まるで1冊の本を読み終えたような満足感がありました。言葉に対してこれほどまでに真剣に向き合っている人たちがいることを、この映画を通して初めて知りました。馬締の目の奥の静かな情熱と、香具矢の強さと優しさに心打たれました。映像も柔らかくて美しく、語られない余白にも感情が詰まっていたと思います。(50代 女性)
とにかく馬締のキャラクターが愛おしくて仕方ありませんでした。人付き合いが苦手でも、言葉というフィルターを通して他者とつながっていく様子がとても人間的でした。香具矢との関係や、西岡との友情など、派手さはないけれど心がじんわりと温かくなる描写ばかり。言葉の持つ力や重みを改めて考えさせられる映画でした。(30代 男性)
最初は「辞書って地味じゃない?」と思っていたのですが、気づけば涙していました。人生をかけてひとつの本を作り上げることの尊さや、日々の積み重ねが持つ意味を教えてくれる映画です。馬締と香具矢の恋愛も、とても自然で好印象でした。言葉を愛するすべての人に観てほしい作品だと思います。(20代 女性)
図書館司書という仕事柄、ことばや辞書に対する愛着がもともとありましたが、この映画を観て改めて「ことばって生きている」と実感しました。馬締の地道な姿勢と、周囲の支えに支えられながら完成した『大渡海』には、まるで自分も関わっていたかのような感動がありました。しみじみとした感動をくれる、素晴らしい日本映画です。(40代 女性)
言葉の力と、人と人とのつながりをこんなにも丁寧に描いた映画はなかなかないと思います。馬締のような人が主人公になることで、日常に埋もれてしまいそうな感情や想いが鮮明に浮かび上がっていました。派手な演出に頼らず、登場人物たちの内面と時間の積み重ねを描き切ったこの映画に、深い敬意を感じます。(50代 男性)
普段あまり映画を観ない私でも、最後まで引き込まれました。特に、馬締が「恋」という言葉の意味を真剣に考えるシーンが印象的でした。恋愛や仕事を通して、人がどれだけ変われるか、そして言葉がその背中を押してくれることが丁寧に描かれていて、心に沁みました。人生に疲れた時、また見返したい一本です。(20代 男性)
映画『舟を編む』を見た人におすすめの映画5選
しあわせのパン
この映画を一言で表すと?
パンと人と静けさが心をほぐす、北の小さな宿で紡がれる癒しの物語。
どんな話?
北海道・洞爺湖のほとりにある小さなパンカフェを営む夫婦と、そこに訪れる人々の交流を描いた群像劇。四季折々の自然の中で、パンとともに人の心が少しずつほぐれていく温かなストーリー。静かな感動がじんわりと広がる作品です。
ここがおすすめ!
『舟を編む』のように、丁寧に暮らす人々の姿や、言葉よりも心で伝わる優しさが印象的。ナレーションや風景の映像美も静かで心地よく、余韻を大切にする人にぴったりの映画です。観終わったあと、パンの香りが恋しくなります。
博士の愛した数式
この映画を一言で表すと?
記憶は失っても、愛と知識が人をつなぐ感動の数学ドラマ。
どんな話?
記憶が80分しかもたない数学者と、家政婦親子の交流を描く感動作。数学を通して人とのつながりを築いていく博士と、その静かな日々の中で育まれる小さな奇跡に心温まる作品。原作は小川洋子の同名小説。
ここがおすすめ!
「ことば」と同じように、「数式」も人と人を結びつける手段として描かれており、感性を大切にする人に響く内容です。日常の尊さや、他者への敬意を持って丁寧に接することの大切さが詰まっており、『舟を編む』に感動した方には必見です。
百万円と苦虫女
この映画を一言で表すと?
逃げることは、ダメなことじゃないと教えてくれる自分探しの旅。
どんな話?
ちょっとした事件で前科がついた主人公が、百万円貯めるごとに新しい土地へ移り住みながら、自分自身を見つめ直していくロードムービー。自由を求めて旅する彼女の姿は、痛々しくも清々しい。主演は蒼井優。
ここがおすすめ!
馬締のように「不器用だけどまっすぐな主人公」が、違った形で描かれています。人間関係の距離感や、自分の居場所を探す過程は、『舟を編む』と同様に共感を呼ぶはず。心の旅を続けている人へ、そっと寄り添う一本です。
そして父になる
この映画を一言で表すと?
血か、育ちか――家族の本質に迫る静かで深い人間ドラマ。
どんな話?
6年間育ててきた子供が実は他人の子だった――病院で取り違えられていた事実が判明し、二つの家族がそれぞれの“本当の親子”について葛藤する物語。是枝裕和監督が繊細な視点で描く、家族と愛のかたち。
ここがおすすめ!
静かな語り口で心の深い部分に触れてくる点は『舟を編む』と非常に近いです。人と人の関係性にじっくり向き合う姿勢、そして登場人物が成長していく過程を丁寧に描いており、観終わったあとに大切な人の顔が思い浮かぶような作品です。
キツツキと雨
この映画を一言で表すと?
不器用な大人たちが映画を通じて心を通わせる、笑いと感動の人間ドラマ。
どんな話?
木こりの男と映画監督の青年が、偶然の出会いからゾンビ映画の撮影に巻き込まれながら、互いの人生を少しずつ変えていく物語。仕事と人間関係に疲れた大人たちへ贈る、じんわりとした癒しの一作。主演は役所広司と小栗旬。
ここがおすすめ!
『舟を編む』が言葉を通して人をつなぐなら、この作品は“映画づくり”という共通体験を通して人が変わっていく様子を描いています。不器用な主人公たちが、他者との関わりの中で自分を取り戻す姿がとても温かく、静かな感動を与えてくれます。
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