映画「真夜中のゆりかご」謎に満ちたスサンネ・ビア監督の北欧サスペンス

真夜中のゆりかごの概要:スサンネ・ビア監督と脚本アナス・トーマス・イェンセンの北欧サスペンス。刑事アンドレアスは死んだ赤ん坊と他人の子をすり替えてしまう。人として刑事として許されるのか?ニコライ・コスター・ワルドー主演作。

真夜中のゆりかご みどころ

真夜中のゆりかご
映画『真夜中のゆりかご』の見どころを紹介します。

世界一幸せな国の悩み

北欧に対する、日本人のイメージは福祉国家やアンデルセン、ムーミン、北欧デザインなど温かい印象が多いと思いますが、この映画を観ると世界一幸せな国の裏側を覗くことになります。近年、離婚率の高さや夫婦間での暴力などが問題になっています。

福祉が充実しているはずなのに何故なのか?その問いを考えるためにみていきましょう。

映画の原題に注目せよ

「真夜中のゆりかご」の原題は、デンマーク語なので、英語に訳すと「A second chance」。2度目の機会ですね。まるで人生の分岐点を暗示しているかのようです。この映画のテーマは、「善と悪」です。物語は、警察官の夫アンドレアスが、亡くした赤ん坊の代わりに薬物依存のカップルの子供を奪い、自分の子として育てようとします。

育児放棄されていた子供だからまともな俺たちが育てたほうがいいんだと考えますが、大きな問題へ発展していきます。2組の夫婦はどうなるのか?最後にどんな結末が待っているのか?

前々作の「未来を生きる君たちへ」(10)を観た人は気づいていると思いますが、物語の大筋は原題そのものです。(原題:「復讐」)この作品は、母親をガンで亡くした少年が友人と共に爆弾を作り、暴力でしか表現できない大人をこらしめようとする復讐劇です。

北欧独特の閉塞感が画面にあふれ、淡々と2組の家族の物語が綴られていきます。家族の対比として、アフリカの難民キャンプで医師として働く父親といじめに悩む少年、母の死でロンドンからスウェーデンの生活をはじめた父と少年が描かれています。しかし、時系列のあいまいさでどちらの家族の事か分かりづらい点があり、映画の表現をもう少しはっきりさせてほしいです。

ただ、日本語の題名の付け方が素晴らしく観たい気持ちにさせてくれます。

北欧映画の楽しみかた

北欧映画と知らずに観ている人も多いのではないかと思いますので、ここで代表的な映画と監督について紹介します。日本でカルト的な人気を誇るアキ・カウリスマキ監督です。
フィンランド出身で、代表作は「浮雲」(1996)や「過去のない男」(2002)です。

特に、「過去のない男」でカンヌ国際映画祭グランプリを撮ったことは記憶に新しいです。小津安二郎監督のファンでもあり、兄とともに映画制作をしています。
次に、感動を呼ぶヒューマンドラマとして、ラッセ・ハルストムの「ギルバート・グレイプ」(93)や「ショコラ」(2000)です。「ギルバート・グレイプ」は、ジョニーディプとレオナルド・デカプリオが共演した話題作でした。

最後にデンマーク出身のラース・フォン・トリアーの「ダンサーインザダーク」(2000)。
ビヨークが主演したミュージカル仕立ての映画で、ラストが死刑の場面という強烈な印象を残しました。やはり作品に共通しているのは、「死と北欧独特の空気感」です。
スサンネ・ビア作品で北欧映画にはまったらぜひ観たいおすすめの映画です。

ニコラス・コスター・ワルドーの魅力満載

ハリウッドでの活躍めざましい俳優です。本作では、刑事役で善と悪のはざまで悩む主人公を繊細に演じています。出世作は、「ゲームオブスローンズ」で歴史ファンタジー物です。王殺しのあだ名を持つ、ジェイミー役を演じ、甘いマスクで女性ファンを虜にしています。

おすすめは、「おやすみなさいと言いたくて」(13)での夫役の演技です。家族の絆を問う物語で、夫役を繊細かつ存在感を持って演じました。イケメン俳優として有名になりましたが、彼の演技力に大注目です。次回作は、ハリウッドの大作「ゴッズオブエジプト」で主役を演じます。

スサンネ・ビア監督の魅力

アカデミー外国語映画賞を受賞した「未来を生きる君たちへ」(10)や「愛さえあれば」(12)など女性目線で社会の問題点を冷静に見つめる作品を描いています。家族関係が多様化していくなかで離婚や死別で孤独感ばかり増しているように思います。それは日本でも同じですが、やはり北欧の風土がよりメランコリーにさせるのではないでしょうか。

救いのない現実で懸命にもがいている人間の姿を彼女はうまく捉えています。人間観察力があります。

ただ、人物の造形が単調であり、映像として強さがない点が惜しいところです。

アナス・トーマス・イェンセンの魅力

スサンナ・ビア監督と長年、仕事し、自身でも映画を撮っています。代表作は、「ある愛の風景」(04)や「アフターウエディング」(06)などです。彼の作品に多く出演し、「ハンニバル」シリーズのレクター博士役を演じているのが、マッツ・ミケルセンです。アナス・トーマス・イェンセンの次回作に出演しています。
「悪党に粛清を」(2015年6月公開)で、妻子を殺され復讐に燃える男の役を演じています。イェンセンは脚本家として参加しています。映画は技術ではなく、登場人物をいかに演じるのかが大切というシンプルな答えを教えてくれます。

まとめ

幸せな夫婦を突然襲った悲劇。刑事であり、夫のアンドレアスは同僚の刑事と共に踏み込んだ麻薬中毒者の夫婦のもとで育児放棄の現場を見てしまう。そして彼は、死んだ赤ん坊と他人の赤ん坊を取り換え、自分の子として育てようとします。その行動は果たして正しい行動なのか?

最後までどう転ぶか分からない展開と社会の重い問題を突きつけたサスペンスの秀作です。人気俳優、ニコラス・コスター・ワルドーの繊細な演技が光ります。

スサンネ・ビア監督のテーマは一貫として、社会の重い問題と死について扱っています。北欧独特の空気感とシリアスな視点が特徴です。救いはあるのですが、あぁ、良かったという感じではなく、変わらない現実がずっと続く虚無感を感じます。映画は社会を映す鏡です。これまで北欧映画を観たことのない人にこそおすすめです。

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