映画『グローリー 明日への行進』の概要:1965年、キング牧師は黒人の選挙権を保証する連邦法の制定を求め、アラバマ州のセルマから州都のモンゴメリーまでデモ行進する計画を立てる。しかしこの行進は「血の日曜日」と呼ばれる大事件に発展してしまう。公民権運動の指導者として生きたキング牧師の闘いと苦悩を描いたヒューマンドラマ。
映画『グローリー 明日への行進』の作品情報
上映時間:128分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:エヴァ・デュヴァネイ
キャスト:デヴィッド・オイェロウォ、トム・ウィルキンソン、カーメン・イジョゴ、ジョヴァンニ・リビシ etc
映画『グローリー 明日への行進』の登場人物(キャスト)
- マーティン・ルーサー・キング・Jr(ジュニア・デヴィッド・オイェロウォ)
- 公民権運動の指導者として、黒人差別撤廃の活動をしている牧師。妻のコレッタと子供たちと共にアトランタで暮らしているが、多忙なためほとんど家にいない。ジョンソン大統領とは、直接会談ができる関係。
- リンドン・B・ジョンソン(トム・ウィルキンソン)
- 第36代アメリカ合衆国大統領。貧困の根絶を目指し、政治改革を進めている。黒人の選挙権を求めるキング牧師の話に理解は示すが、なかなか具体的な動きを見せない。
映画『グローリー 明日への行進』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『グローリー 明日への行進』のあらすじ【起】
1964年、ノーベル平和賞を受賞したキング牧師は、“道半ばで倒れた人々の代わりにこの賞を受け取る”と演説する。これまでの道のりも険しいものだったが、平等な世界を求めるキング牧師には、まだまだやるべきことがあった。
当時のアメリカは、憲法上は人種に関係なく国民の選挙権を認めていたが、人種差別の激しい南部では、黒人が選挙に参加することは不可能に近かった。選挙に参加するためには有権者登録を申請する必要があり、役所は黒人の申請を理由もなく却下する。さらに、申請をした人の名前は新聞に記載され、その人は不当な解雇や暴力を受けるという現実があった。
南部では黒人の隔離政策が続き、多くの黒人が殺されていた。しかし裁判で黒人を殺した白人が有罪になることはない。有権者登録ができない黒人には陪審員になる資格もなく、陪審員が白人ばかりの裁判では、公平な判断が下されないからだ。黒人は常に泣き寝入りを強いられ、不当な差別に耐え続けていた。
キング牧師はジョンソン大統領と直接会談し、黒人の選挙権を保証する連邦法の制定を求める。しかし、ジョンソン大統領は、他にも多くの難題を抱えており、その中でも貧困の根絶が政治的には最重要課題であると考えていた。そのため、なかなか具体的に動こうとはしてくれない。
キング牧師は次の闘いの場所をアラバマ州のセルマと決め、仲間と一緒に現地へ向かう。キング牧師が主導する公民権活動は、FBIからも警戒されており、特に長官のフーヴァーは、キング牧師を嫌っていた。
映画『グローリー 明日への行進』のあらすじ【承】
キング牧師のアトランタの自宅には、毎日のように子供の命を狙うような脅迫電話がかかっており、妻のコレッタは不安な日々を送っている。コレッタは、夫の身を案じ続ける日々に疲れ切っていたが、多忙なキング牧師とは、ゆっくり話をする時間もなかった。
南部キリスト教指導者会議の仲間とともにセルマ入りしたキング牧師は、集会で演説する。集会には約700名の聴衆が集まり、キング牧師の演説に賛同する。黒人たちは、“我々に選挙権を!”をスローガンに、団結していく。
学生非暴力調整委員会の代表として、現地で有権者の登録運動を進めてきたジョンとジェームスは、キング牧師の活動に参加するかどうかでもめていた。キング牧師は、大規模なデモ行進をしてマスコミに取り上げてもらい、白人の意識を変えるのが合理的な方法だと彼らを説得する。ジョンはこの意見に賛同し、活動への参加を決める。
キング牧師は、有権者登録の窓口がある郡都庁前を抗議活動の場所に決め、そこまでデモ行進して座り込みを開始する。ここのクラーク保安官は暴力的な差別主義者で、無理矢理黒人たちを排除しようとする。保安官に反撃したアニーという女性は酷い暴力を振るわれ、キング牧師も逮捕される。新聞は、殴られているアニーの姿を一面に掲載する。
面会へ来たコレッタは、マルコムXがキング牧師に協力したがっていたことを伝える。しかしマルコムは非暴力を貫こうとするキング牧師を痛烈に非難したことがあり、キング牧師はその話に不快感を示す。キング牧師は、感情的になってコレッタまで疑うような発言をしてしまい、彼女を傷つける。
黒人たちが夜にデモ行進をするという情報を掴んだ州知事のジョージ・ウォレスは、州警察に彼らの取り締まりを命じる。マスコミがいないのをいいことに、警察は暴力の限りを尽くし、無抵抗のジミーという若者を射殺する。
映画『グローリー 明日への行進』のあらすじ【転】
キング牧師は、ジミーが殺されたことに強い怒りを感じ、彼の死を無駄にしないためにも、絶対に諦めないと心に誓う。キング牧師は大統領を動かすための具体的な戦術として、セルマから州都のモンゴメリーまで80キロの距離をデモ行進するという計画を立てる。
キング牧師は大統領と会談し、新法を提出してくれないならデモ行進を決行すると迫る。しかし大統領はやはり行動することを躊躇し、話し合いは決裂する。
キング牧師の自宅には、FBIの策略で、彼の浮気を匂わせるような脅迫電話が入っていた。コレッタの心労もピークに達し、夫婦間に亀裂が入る。キング牧師は2日目から行進に参加することにして、コレッタと話し合おうとするが、夫婦の溝は埋められなかった。
デモ行進初日。525名の参加者は、カバンや寝袋を抱え、教会を出発する。セルマ市の入り口となるエドモンド・ペタス橋の向こうには、州警察や騎馬隊が隊列を作り、その後ろには民兵隊も待ち構えていた。
橋の上へやってきたデモ隊に、警察は2分以内に解散するよう命じる。代表者は責任者と話したいと申し出るが、警察は聞く耳を持たず、催涙ガスを噴射し、黒人たちに一方的な暴力を振るい始める。この様子はテレビで生中継され、7千万人の国民が、その放送を見ていた。多くの黒人が酷い怪我を負った「血の日曜日事件」の発生である。
それでもキング牧師は最後までやり抜くことに決め、“人は皆平等と信じるなら橋へ来て欲しい、一緒に行進しよう”と国民に呼びかける。この呼びかけに応じ、聖職者を中心とした賛同者が全国から集まり、その中には多くの白人の姿もあった。
政府は、“今回の行進をやめれば、政府は次回の行進を保証する”とキング牧師を説得するが、キング牧師はデモ行進を決行する。参加者の3割は白人だった。
デモ隊が橋の上までくると、州警察は黙って道を開ける。これを見て先頭のキング牧師は座り込み、神に祈りを捧げる。そして、デモ行進を中止する。
映画『グローリー 明日への行進』の結末・ラスト(ネタバレ)
キング牧師の判断に、多くの黒人が腹を立てていた。しかしキング牧師は、もしあの警察の態度が罠ならば、前回よりもさらに多くの犠牲が出ると判断し、自ら憎まれ役を務める覚悟で、後戻りしたのだった。
キング牧師はコレッタに手紙を書き、“君と息子が必要だ”と訴える。キング牧師はずっと苦悩の中にいた。
デモ行進に参加した白人の牧師が、差別主義者の怒りを買い、複数名の白人に暴行されて死亡するという事件が起こる。これをきっかけに国中で怒りのデモ行進が始まり、大統領は追い詰められていく。キング牧師は、自分を叱責する大統領に、“公民権法は忘れても、セルマを見捨てた大統領を民衆は決して忘れない”という言葉を残す。
とはいえ、これ以上不法なデモ行進を続けると、死者が出るかもしれないと考えたキング牧師は、アラバマ州を相手に行進を認めるよう訴訟を起こす。判事は南部指導者会議の訴えを聞き入れ、モンゴメリーへの5日間の行進が正式に認められる。
この行進には、多くの有名人も参加を表明してくれ、世論がキング牧師の活動に味方する。ついに大統領も重い腰をあげ、ウォレス州知事を呼び出して、アラバマ州でも黒人に選挙権を与えるよう命じる。しかし極端な差別主義者のウォレス州知事は、それを認めようとしない。大統領は、“君の同類として歴史に残る気はない”と知事に告げ、自ら動く。
大統領はセルマの問題はアメリカ全体の問題だとして、早急に選挙権の制限を撤廃する法案を議会に提出すると国民に約束する。
キング牧師は、仲間たちとセルマからモンゴメリーまで行進し、ウォレス知事のいる州都庁の前で演説する。この演説から5ヶ月後、ジョンソン大統領はキング牧師の横で投票権法に署名し、黒人も堂々と選挙に参加できるようになる。
13年間非暴力を貫き、公民権運動を引っ張ってきたキング牧師は、1968年に暗殺される。享年39歳という若さだった。
映画『グローリー 明日への行進』の感想・評価・レビュー
事実が素晴らしければ、それの映画化はたいがい賞賛されがちだが、私はこの風潮がすごく嫌い。映画の出来不出来と描いている内容がイイコトかは本来切り離して考えるべきだろう。と言い訳を書いたうえで、この映画はただ冗長な事実の羅列でしかなく、その事実も良い所取りでしかなくちょっと公平性に欠ける。差別に反対するのは結構だが、その論説が公平でないのはいただけない。(男性 30代)
マーティン・ルーサー・キング・Jrが何よりも凄いところは、非暴力を貫いたところだと思う。暴力を振るわれ命の危険に晒されたら、普通だったら反撃することを考えると思う。でも、もし手を出していたら、多くの国民がキング牧師の味方にならず、黒人が選挙権を持つことはなかったかもしれない。キング牧師の行いは素晴らしいものだと思う。だがその一方で、彼の妻と子供のことを思うと複雑な気持ちになる。特にキング牧師を支えた妻は、苦しかっただろうなと思った。(女性 30代)
本作は、暴力反対を掲げ貫いたキング牧師と仲間たちのデモ行進を描いたヒューマンドラマ作品。
実際のデモ行進の様子も流れていてドキュメンタルで臨場感があった。
特にデモ隊と警察官たちの衝突シーンで、何も悪くない人を非常に暴力的な力で押さえつける描写がショッキングだった。
中でもキング牧師の演説シーンは印象的で、熱い思いや説得力があって胸に響き、苦悩と戦いの中でも非暴力を貫き人々を動かしたキング牧師の素晴らしさに、選挙権を大事にしたいと感じた。(女性 20代)
「キング牧師」は勉強が大嫌いな私でも何となくは知っている有名な人。彼が何をしたのか、どんな功績を残したのか、なぜ今も尚語り継がれているのかがとてもよく分かりました。
彼より前に生きた人たちの中にも「こういう世の中にしたい」と明確なビジョンがあった人は多くいたでしょう。しかし、多くの人が実現できなかった事を実行し、実現させたからこそ今の時代にも名を残す人なのだと思いました。彼についてもっと知りたくなる作品です。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
キング牧師のノーベル平和賞の受賞シーンの直後に爆破されたのは教会ですか?
少女たちの後ろにいた少年がさっと別行動して直後に爆破なので、
どういうことなのかわからずにいるのですが…