映画『1917 命をかけた伝令』の概要:第一次世界大戦の最中である1917年のある日、ブレイク上等兵とスコフィールド上等兵は、最前線の味方へ作戦中止を伝えるよう命じられた。二人はどこに敵兵が潜むか分からない戦線を抜け、無事味方の命を救うことができるのか。
映画『1917 命をかけた伝令』の作品情報
上映時間:119分
ジャンル:戦争
監督:サム・メンデス
キャスト:ジョージ・マッケイ、ディーン=チャールズ・チャップマン、マーク・ストロング、アンドリュー・スコット etc
映画『1917 命をかけた伝令』の登場人物(キャスト)
- ウィリアム・スコフィールド(ジョージ・マッケイ)
- イギリス陸軍第8連隊所属の若き上等兵。ソンムの戦いを経験し勲章を貰ったが、喉が渇いていてワインと交換してしまったという。どうしても故郷に帰りたくないという理由から、今も尚戦線にいる。
- トム・ブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)
- スコフィールドと同じく、イギリス陸軍第8連隊所属の上等兵。スコフィールドよりも若く戦歴もない。作戦中止命令を届けるデヴォンジャー連隊第2大隊に、兄のジョセフが中尉として所属している。
- エリンモア将軍(コリン・ファース)
- 本部司令部の指揮官。航空偵察によりドイツ軍の計画的撤退を知り、敵を追うマッケンジー大佐を止めるためブレイクとスコフィールドに伝令を渡す。
- マッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)
- デヴォンジャー連隊第2大隊の指揮官。1600人の兵士を取りまとめている。目の前で撤退を始めたドイツ軍を追ってイギリス軍の勝利に王手をかけようとするも、自らの戦線に誘い込むことこそドイツ軍の策略だった。
- スミス大尉(マーク・ストロング)
- チェシャー連隊を率いる大尉。部下を想う上官であり、戦友を失い傷心のスコフィールドの面倒を見る上、「悲しみを引きずるな」と励ましの声を掛ける。
映画『1917 命をかけた伝令』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『1917 命をかけた伝令』のあらすじ【起】
1917年、4月6日の朝。ブレイク上等兵は軍曹に叩き起こされた。人を連れて司令部へ来るよう命じられたブレイクは、たまたま隣で眠っていたスコフィールド上等兵を起こすと、二人で司令部へと向かった。
司令部でエリンモア将軍と接見した二人は、エクースト町から南東へ2キロ進んだ場所にいるデヴォンジャー連隊第2大隊指揮官のマッケンジー大佐へ、ドイツ軍への突撃作戦を中止するよう伝えろと指示された。ドイツ軍は数ヶ月かけて戦力的撤退を計画しており、新たな戦線へイギリス軍を誘い込もうとしていたのだ。本部司令部は航空偵察によってこの計画に気付いたが、マッケンジー大佐は状況を見誤り、まんまとドイツ軍を追ってしまっていた。明朝までに伝令が間に合わなければ1600人の仲間を失うと言われたブレイクは、デヴォンジャー連隊第2大隊に所属している兄、ジョセフ・ブレイク中尉の身を案じた。
兄を心配し勇み足になるブレイクに対し、スコフィールドは夜間に移動した方が安全だと説得した。二人が進もうとしている無人地帯からドイツ軍は撤退したと説明を受けたが、スコフィールドは手榴弾を持たされたことが気がかりだった。そんな心配をよそに塹壕を進むブレイクは、ドイツ軍の前線を抜けるための道を尋ねるためスティーブンソン少佐を探した。
スティーブンソン大佐は、二日前の戦闘で死亡していた。代わりに指揮を執っていたレスリー中尉が戦場を突っ切ろうとする二人へ抜け道を教え、前線を渡り切れたら信号弾を撃つよう指示した。
映画『1917 命をかけた伝令』のあらすじ【承】
塹壕を出て前線へ到達した二人は、ぬかるんだ地面に埋もれる死体の山を越え、もぬけの殻となったドイツ軍の塹壕を進んだ。ドイツ軍は撤退したばかりだったようで、まだ煙を上げている炭や銃火器が残されたままだった。二人が地下室を抜けようとした時、仕掛けられていた爆弾にネズミがかかり、スコフィールドは瓦礫の下敷きになった。ブレイクは慌てて彼を外へ連れ出し、信号弾を撃ち上げた。
エクーストを目指し再び歩き出した二人は、ドイツ軍はイギリス軍の連絡隊が通過することを想定して罠を仕掛けていたと確信していた。そうして草原を抜けた彼らは民家に差し掛かり、そこが廃屋かどうか調べた。
民家に人影はなかったが、僅かに生活の跡が残る室内を見たスコフィールドは「嫌な予感がする」と独り言ちた。彼はそのまま裏手の牧場に向かい、絞ってあった牛乳を水筒へ注いだ。その時、友軍機とドイツ軍が空中戦を繰り広げる轟音が響いた。ブレイクとスコフィールドは地上からイギリス軍の勝利を見届けたが、機体が損傷した敵の戦闘機が二人の元へ墜落した。ブレイクはパイロットがまだ生きていることを確認し、彼を助けるためスコフィールドに水を汲みに行かせた。しかし、言葉の通じないパイロットは錯乱の末ブレイクの腹部をナイフで刺し、スコフィールドは咄嗟にパイロットを撃ち殺した。
ブレイクは母へ手紙を出すようスコフィールドに頼み、息を引き取った。
映画『1917 命をかけた伝令』のあらすじ【転】
ブレイクの遺体を運ぼうと足掻くスコフィールドは、偶然通りかかったイギリス陸軍チェシャー連隊に声を掛けられた。彼らはトラックでニューファンドランド連隊の応援へ向かう途中だったのだ。チェシャー連隊を率いるスミス大尉は、戦友の死に放心しながらも急報を届けるため進もうとするスコフィールドをエクーストの近くまで送っていくと言った。
すし詰め状態のトラックの荷台に揺られるスコフィールドだったが、しばらくして、橋の崩落のためトラックは停車した。先を急ぐ彼は徒歩で街を通過することを決め、チェシャー連隊に別れを告げた。別れ際、スミス大尉は「マッケンジー大佐に会う時は第三者が必要だ。将軍からの直接命令とは言え、意地で戦う軍人もいる」と忠告した。
戦禍に飲まれた街を進むスコフィールドは、生き残っていたドイツ兵とかち合った。双方出会いがしらに発砲し、相手は死亡したがスコフィールドは気を失ってしまった。
スコフィールドが目を覚ますと、辺りは既に暗闇に包まれていた。街外れで建物が燃え盛る明かりと、時折撃ち上がる照明弾の明かりを頼りに走る彼は、またしてもドイツ兵に見つかり民家へ身を隠した。そこには、怯えた女性が身寄りのない赤ん坊と共に身を潜めており、スコフィールドは持っていた食料と牛乳を渡し再びエクーストへ向かった。
映画『1917 命をかけた伝令』の結末・ラスト(ネタバレ)
空が白んできた頃、ドイツの残兵に追われるスコフィールドは川へ飛び込み逃げきった。岸に打ち上げられた無数の死体を掻き分けて対岸へ渡った彼は、まばらになぎ倒された森の木々の間を進んだ。
森を抜けた先には、座り込んで歌に聞き惚れる大勢のイギリス兵がいた。スコフィールドは移動しようとする彼らに「D連隊を探している」と告げた。彼らこそまさしくデヴォンジャー連隊第2大隊であったが、マッケンジー大佐は新たな前線を築くため隊を4つに分割しており、彼らは最後尾の隊だった。第一波は既に攻撃準備を整えた後と知り、スコフィールドは慌てて最前線を目指した。
ドイツ軍からの攻撃は始まっていた。司令部を目指すスコフィールドは、敵陣に向かって走る第一波の兵達の間をくぐって進んだ。彼がマッケンジー大佐の元へ着いた時、第一波に次いで第二波による突撃が始まろうとしていた。スコフィールドは将軍からの命令を告げ、ドイツ軍の撤退が罠だったとし知ったマッケンジー大佐は作戦を中止させた。
役目を終えたスコフィールドは、ブレイクの兄を探して回った。死傷者選別所で指揮を執っていたジョセフ・ブレイク中尉は弟の死を知ると、「最期にいてくれてありがとう」とスコフィールドと握手を交わした。
スコフィールドは喧騒の外へ歩き大木の麓に腰を下ろすと、家族の写真を取り出し、朝陽を浴びて目を閉じた。
映画『1917 命をかけた伝令』の感想・評価・レビュー
全編ワンカット映像という衝撃の売り文句で非常に楽しみにしていたが、実際は「ワンカットに見える」というだけで、驚きなのはその編集技術である。
この作品のカメラワークは、まるで悪夢を再現しているかのようだった。画面越しに伝わる緊張感と臨場感はこの上ない。腐臭まで感じ取れそうな程だった。ブレイクが刺殺される場面もまた、現実的なあっけなさが悪夢のそれだった。人って簡単に死ぬよな、と再確認させられた。死に際に偉業を成したり、華々しく散ったりするのはそれこそ映画の中だけなのだ。(MIHOシネマ編集部)
ワンカット風に撮影した戦争映画だ。視聴直前まで全編ワンカットと勘違いしていたので、どれだけ撮影が大変だったんだろうと想像を膨らませていたのだが、それ風に編集したというのが正解。
けれど、シーンとシーンは綺麗なつなぎ目で、あたかも実際の戦争に同行しているかのような臨場感は確かにあった。
助けようとした敵に致命傷を負わされたり、塹壕戦の悲惨さを垣間見れるので、戦争を知らない世代としてはその残酷さをから心にくるものがあった。(男性 30代)
なんといってもこの映画の一番の見どころはノーカット撮影です。全てのシーンを一発撮りしているとのことです。正直なところ、ノーカットかな?と思う部分はあるもののカット数が極端に少ないことは確かです。それでいて演出にマンネリで味気のない、ということは一切なく手に汗握る圧巻の映画でした。
MARVEL作品でお馴染みのベネディクト・カンバーバッチやキングスマンのコリン・ファースなど錚々たるキャストが出演しています。主演であるジョージ・マッケイの体を張るシーンが多い中盤からの勢いは、国を守るために最後まで諦めず我が身を捨てる覚悟で伝令を届ける勇姿によって心を打たれました。(男性 20代)
RPGゲームのようで、グイグイ物語に引き込まれました。ワンカット風の撮影技法は、主人公らと共に自分もミッションを遂行しているような気分を味わえます。始まりにはコリン・ファース、ラストにはベネディクト・カンバーバッチが数分だけ出演していて、思わず感嘆の声をあげました。生きて兄に会わなければならないブレイクが、思いもよらぬ出来事により呆気なく亡くなり、余りに予想外の展開だったため軽く放心しました。どの場面も淡々としており、それがなぜが胸に深く響きます。(女性 30代)
きっとトムは先に死んじゃって、巻き込まれたスコが一人で頑張るんだろうななんて思っていたらまさにその通りで、必死にスコを応援しながら鑑賞していました。
臨場感が半端なくて見ていて痛いし、熱いし、怖い。こんなにも作品の世界観にのめり込んでしまったのは初めてかもしれません。
死体に手がズボっと入ってしまう描写はかなり衝撃的でしたが、実際の戦場ではそんなこと気にしている暇なんて無いのだろうなと思ったし、納得できなくても従わなければならない理不尽さと、使命をやり遂げた達成感、友を亡くした喪失感など様々な感情が入り交じり、複雑な気持ちになりました。(女性 30代)
全編ワンカット「風」の編集のおかげで始めから終わりまで臨場感が途切れない。背景や大義等は脇に置いて、主人公(?)の冒険が楽しめる。画像がリアルなゲームを操作している感覚に近いものを感じた。
どこまでが実際にあり得た話なのかが分からないので「まさかそんなこと」と思ってしまう部分もなくはない。しかし1人の若者に起きたことに思いを馳せることはできる。ここで「○○の為」という大義はあまりしっくりこない。死なせたくない、死にたくない、というところならば伝わるか。(男性 40代)
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