映画『21グラム』の概要:魂の重さは21グラムだという。心臓病を患い余命1カ月と宣告された大学教授。前科者だが、改心し信心深くなった男。突然、家族を失った女。1つの心臓を巡り、3つの家族がそれぞれに悩みを抱え、関わっていく様を描いている。命や魂の重さを考えさせられる。
映画『21グラム』の作品情報
上映時間:104分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
キャスト:ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ベニチオ・デル・トロ、シャルロット・ゲンズブール etc
映画『21グラム』の登場人物(キャスト)
- ポール・リヴァース(ショーン・ペン)
- 心臓病を患い、余命1カ月と宣告された大学教授。運良くドナーが見つかり移植に成功する。知的で穏やか。移植後はクリスティーナに惹かれていく。
- メアリー・リヴァース(シャルロット・ゲンズブール)
- ポールの妻で黒髪の女性。どんな手を使ってでも、夫の子供を妊娠しようと執念を燃やす。
- クリスティーナ・ペック(ナオミ・ワッツ)
- マイケルの妻。夫と2人の娘を持つ、金髪の女性。幸せな家庭を築いていたが、交通事故で夫と娘たちを亡くし、必要に迫られ夫の心臓を移植に提供する。薬に溺れており、情緒不安定。
- マイケル・ペック(ダニー・ヒューストン)
- クリスティーナの夫。建築家で良き父親であり夫だった。交通事故で死亡してしまう。
- ジャック・ジョーダン(ベニチオ・デル・トロ)
- 粗野で短気だが、信心深い。妻と幼い2人の子供を持つ4人家族。マイケルと娘2人を誤って轢き殺してしまう。前科者。
- マリアンヌ・ジョーダン(メリッサ・レオ)
- ジャックの妻。2児の母親でもあるが、夫を愛しており戻って来るよう再三、説得を試みる。
映画『21グラム』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『21グラム』のあらすじ【起】
心臓病を患い、余命1カ月と宣告されてしまった大学教授のポール・リヴァース。妻メアリーとの間に子供はなく、ドナーからの心臓提供を待つばかりであったが、突発的な事故でもない限り望みはほとんどないに等しかった。
メアリーは夫の余命宣告から急に子供を欲しがるようになり、人工授精をしてでも妊娠を望んでいる。ポールは幾ばくも無い命ならばと、彼女の好きなようにさせるつもりだった。
ジャック・ジョーダンは前科者だったが、妻マリアンヌと2人の子供のために改心し、真面目に働く信心深い男だった。粗野で顔つきも悪く、一目でゴロツキと分かる風貌をしていたが、酒もたばこも一切を止めて神に祈る日々を送っていた。
そんなある日、彼は仕事帰りに誤って男性と子供2人を、車で轢いてしまう。その日は教会の信者たちを集めて、自宅でホームパーティーをしていたため、急いで帰ろうとしていたのだ。
ジャックは動転してしまい、事故現場から逃走。帰宅してすぐ、マリアンヌにそのことを告げた。
クリスティーナ・ペックは夫マイケルと2人の女児の4人家族で、幸せな家庭を築いていた。彼女はその日、帰宅後に取った電話で夫と娘たちが交通事故に遭ったことを知った。
急いで病院へ向かったが、娘たちは死亡。辛うじて生き残ったマイケルも意識が戻らず、病院側から移植のためのサインを迫られる。一刻を争うと急かされたクリスティーナは、心臓提供の同意書にサインをした。
真夜中であるにも関わらず、病院からの呼び出しで急遽、心臓移植をすることになったポール。ドナーが現れたということは、どこかの誰かが亡くなったということである。ポールはドナーが誰かを知りたがったが、規制され明かされることはなかった。そうして、移植手術は無事に成功を収める。
映画『21グラム』のあらすじ【承】
マリアンヌは夫のため、車についた血痕を必死に洗い流すも、ジャックは信仰心から深い罪悪感を覚え警察へ自首。刑務所へ入ることになる。
なぜ、自分が人を殺すことになったのか、神の教えに疑問を覚えるジャックだったが、彼は額面通りにしか受け取れない、想像力に乏しい性質であったため、神父の言葉にも頑なに耳を貸さなかった。
クリスティーナは一度に家族を亡くし、絶望していた。幾日も酒に溺れ、自暴自棄になり行きずりの男と一夜を明かす。寂しさから逃れたいあまりに、彼女はやがて強い薬へと手を出すようになる。
術後の経過も良く、無事に退院したポールだったが、メアリーは妊娠を諦めていなかった。夫婦の間にはすでに愛情はなく、別居していた期間もある。産婦人科へ2人で行った折、メアリーが中絶していたことを知ったポールは、メアリーとの結婚生活にピリオドを打とうとする。そして、心臓提供のドナーが誰であったのか、調査を頼むことにした。
調査の結果、移植された心臓の持ち主とその妻クリスティーナを見つけ出したポール。彼はクリスティーナの動向を数日見守り、彼女に心を惹かれ接触するようになる。
そして、事故の犯人であるジャックの身辺調査も進め、彼の動向も探ることにした。
クリスティーナとデートの約束ができた日、帰りの車中で嘔吐してしまったポール。診察にて、移植した心臓がじきに動かなくなることを知らされる。薬を変えても心臓そのものが拒否反応を示しているため、結果的に新たな心臓を移植しなければならないと言われてしまうのだった。
映画『21グラム』のあらすじ【転】
数か月後、ジャックが出所する。彼は自宅へ戻り以前の生活を続けようとするも、自分の子供と同じ年頃の子供を殺してしまった罪が今になって胸に圧し掛かり、苦しさに家を出て行ってしまう。そして、寂れた町のモーテルを定宿とし、生活を始めるのだった。
クリスティーナとの逢瀬を続けていたポールは、彼女の自宅へとようやく招かれる。だが、自宅にはクリスティーナの家族写真が飾ってあり、ポールは胸の苦しさに襲われ帰ろうとする。その際、クリスティーナに好きだと告白。しかし、彼女は既婚者であることを理由に、彼の好意を断るのだった。
その日の夜中、クリスティーナから電話があり、ポールはメアリーの制止も聞かずに彼女の元へ向かう。そこで、クリスティーナから愛の告白のような言葉をもらうも、彼は自分の心臓がマイケルのものであることを明かした。すると、彼女は酷いショックを受け、ポールを家から追い出してしまう。
翌朝、家の前で夜を明かしたポールがいることを知ったクリスティーナは、彼と話をすることで理解を示した。マイケルの心臓により導かれ、出会うべくして出会った2人は、惹かれ合う心のままに身体を重ね数日間を過ごすのだった。
その後、自宅へ戻ったポールだったが、メアリーが荷物を抱えて出て行ってしまう。
映画『21グラム』の結末・ラスト(ネタバレ)
深い罪の意識を抱え苦しみ続けるジャックは、その辛さに耐えかねて止めていた酒とたばこに手を出し、度々警察の世話になるようになる。自傷行為も繰り返し、ただれた生活を送っていた。
その頃、独り身になったポールは、クリスティーナの家で同棲を開始。しかし、彼女が様々な苦痛から逃れるため、薬を常用していることを知り度々、注意するようになる。クリスティーナは不安定な精神状態へと陥り、ある夜、ポールにジャックを殺せと叫ぶのだった。
ジャックが定宿としているモーテルへやって来た2人。部屋を借りてジャックの動向を探ることにした。
翌早朝、ポールは恐怖と罪悪感に震えるジャックを銃で脅して殺そうとするが、どうしてもできずに立ち去る。
人殺しなど人の好いポールにできるはずもなく、そのせいで過度のストレスに晒され、心臓が悲鳴を上げる。彼はクリスティーナに怒鳴られるも、体調不良となりしばらくベッドで休むことにした。
その夜、クリスティーナとポールが泊まる部屋へジャックが訪れる。彼は罪の意識から逃れたいあまりに、ポールへ自分を殺せと迫る。ポールはジャックに気負され、グラスを踏んで転倒してしまう。その隙にクリスティーナがジャックへと攻撃。
このような結末を望んではいなかったポールは、自らに銃を向け引き金を引くのだった。
その後、クリスティーナとジャックは車でポールを近くの病院へ運んだが、輸血のために採血した際、クリスティーナの妊娠が判明する。ポールは辛うじて命を繋ぐも、彼は集中治療室で死を待つばかり。
ジャックはその後、家族の元へ戻り、クリスティーナはようやく娘の部屋へ入ることができるようになる。そして、ポールは病院のベッドで1人、寂しく最期を迎えるのだった。
映画『21グラム』の感想・評価・レビュー
人間の魂の重さを21グラムとして、そこにまつわる生と死に対する認識を改めさせられる映画となっている。断片的に映像が続いていき、最初はなかなか不思議に思うのだが、ラストにそれが全て繋がってくるというかなり凝ったストーリーとなっている。命の重さを題材にした作品であるため、多少ディープな部分も出てくるが、人間関係の描写も集中して観ておくと、その分全てが一本の線として繋がる感覚が楽しめる。(男性 30代)
観終わった後どっと落ち込む。
と思ったら、「アモーレス・ペロス」「バベル」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督だった。
他の2作品を観た後も同じように落ち込んだ。
悪人が出てこないので虚しさの落とし所もない。
つまりは見応えたっぷりなヒューマンドラマということには間違いありません。
あんなに可愛かった、なまいきシャルロットことシャルロット・ゲンズブールが薄幸の中年女性を演じきっていたのが衝撃的で印象的。(女性 40代)
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作品とは知らずに観た映画だった。どうりで深く考えさせられる。今作を観終わった後、深いため息を吐いてしまったほど。
淡々と映し出されるそれぞれの人々の事情が、最終的に繋がり一つにまとまるという構成が素晴らしい。ただ、観ていればそれぞれの人間性や事情が把握できるという演出も凄いし、命の重みを考えさせるストーリーもよくできている。ただ、時系列はバラバラなので、確かにちゃんと観ていないと混乱する可能性は高い。主演の3人の演技に深みと渋みがあり、印象的だった。(女性 40代)
本作は、一つの心臓を巡って引き合わされた3家族の運命を描いたヒューマンドラマサスペンス作品。
21グラムとは死ぬ瞬間に魂が人体から抜ける重さの事。
誰も救われない重めの内容で一見複雑で難解なイメージだったけれど、集中して時間軸さえしっかり追えればストーリーが入ってきて分かりやすかった。
それぞれの物語が終盤に向かうにつれて連結していく感覚に高揚し、主演3人の演技も見応えがあった。
たった一つの事件で崩れゆく人々の人生。余りにも衝撃的で観終わった後にも深い余韻を残していた。(女性 20代)
重くてシリアスな作品で、観た後は頭を非常に使った感じがして疲れます。
誰かが100%悪いと言い切れないところが悲しいですが、クリスティーナ・ポール・ジャックの心情描写が丁寧でどのキャラクターにも感情移入できます。3人ともに感情移入ができるのになぜか印象的なのは、ジャックの妻が車に残った証拠を泣きながら拭いているところ、ジャックが子供の寝ている間に欲しがっていたハムスターを置くところです。
役者の演技が光る作品です。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
「バベル」で注目を浴び、独特のカメラワークの「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」でアカデミー賞主要4部門を受賞し、レオナルド・ディカプリオ主演の「レヴェナント 蘇りし者」で再びアカデミー賞主要3部門を受賞した、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の作品。
名前を連ねるキャストの豪華さや、手の込んだ演出とストーリー構成には度肝を抜かれる。
しかし凝りすぎていて、少々難しい印象を与える作品にもなっているのがもったいない。
①凝ったストーリーと演出
心臓の重さで、命の重さとも言われることがある「21グラム」をめぐる作品。
時系列や登場人物のつながりなど何も関係なく、ただ映像が流れるだけだが、次第にそれが1人の人間の話を形づくり1つの映画になっていくという凝ったストーリー。
最初は意味が分からず集中力が必要になるが、徐々にポール、クリスティーナ、ジャックの人物像が見えてくる様子は面白い。
ポール、クリスティーナ、ジャックの3人のラストシーンでようやくストーリーの全容がわかるので、何度見ても楽しめる珍しい作品。
だがバラバラの時系列で始まる世界観は入り込みにくく、前知識無しで見たり、何かのついでに見ると意味の分からない作品になってしまう。
また、時系列がバラバラなことが原因で、時間の経過がわかりにくいという困った点もある。
モーテル暮らしをするジャックは一気に老け込んだように見えるが、どれくらい程度服役したのか、弁護士をつけるなどという話もうやむや。
ポールの妻が妊娠にこだわる理由も描かれず、取ってつけた設定にも見える。
②主演3人の高い演技力に脱帽
Jホラーのハリウッドリメイク版「ザ・リング」の主演ナオミ・ワッツは、突然家族を失うクリスティーナを大胆に演じた。
アカデミー賞にノミネートされることも多く、監督としても活躍するショーン・ペンは、心臓移植を受けて提供者の妻クリスティーナに尽くすポール役。
ショーン・ペン監督作品「インディアン・ランナー」、「プレッジ」にも出演しているベニチオ・デル・トロ演じるジャックは、作中で一番見た目の変化が大きい。
主演の3人の演技と知名度が高く、他のキャストの印象が残らないほどだ。