映画『29歳問題』の概要:偶然にも同じ生年月日の2人の女が30歳を目前に人生を交差させる様子を描く一作。一人芝居の舞台劇として、同物語を約12年間演じてきたキーレン・パンが監督としてメガホンを取っている。
映画『29歳問題』の作品情報
上映時間:111分
ジャンル:ファンタジー、コメディ、ヒューマンドラマ
監督:キーレン・パン
キャスト:クリッシー・チャウ、ジョイス・チェン、ベイビージョン・チョイ、ベン・ヤン etc
映画『29歳問題』の登場人物(キャスト)
- クリスティ=ラム・ヨックワン(クリッシー・チャウ)
- 化粧品会社で大きなプロジェクトを任されたキャリアウーマン。規律正しく安定した生活を送っているように見せているが、恋人との距離や親との関係に悩みを抱えている。
- ウォン・ティンロ(ジョイス・チェン)
- 家を退去しなければならなくなったヨックワンが、急遽身を寄せることになった部屋の家主。天真爛漫な姿をビデオメッセージに残し、自分の過去を振り返る日記をヨックワンに託していた。
- ヨン・チーホウ(ベン・ヤン)
- ヨックワンの恋人。長年付き合っているが、生活の基準が合わずなかなか同棲に踏み切れずにいる。出張が多く、家を空けがちなので飼っている猫の面倒をヨックワンに見てもらっている。
映画『29歳問題』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『29歳問題』のあらすじ【起】
分岐点と呼ばれる「30歳」を目前に不安を抱いてしまったヨックワン。規則正しく起床し、丁寧にお肌の手入れをする。仕事内容に合わせた洋服を選び、バランスの取れた食事とサプリメントを摂取。そして化粧をして身だしなみは完璧な朝のルーティンをこなす彼女だったが、「やるべきこと」に追われる一方である。
偶然にも大学の講師と通勤中のバスで再会した。久々に会ったにも関わらず「女性は歳を取るごとに価値が急下降する」と失礼な発言を受ける。誕生日3日前のヨックワンの日常は最悪なスタートで幕を開けるのだった。
仕事で重要なポストを任されたヨックワン。一方で同じ年の同僚は、妊娠計画を立て昇進など興味の無いように振る舞う。仕事終わり女友達との集いでも、結婚生活や婚活の話題でもちきりであった。しかし帰り道に結婚間近で浮かれていたドリスの婚約者が、他の女性と肩を組んで歩いていたという話を聞いてしまい、複雑な心境に苛まれるのだった。
映画『29歳問題』のあらすじ【承】
ヨックワンの父親は認知症が進み、時間を問わず連絡してくることが多くなった。夜な夜な恋人・チーホウの飼っている猫・ムイの世話をするヨックワン。恋人は出張が多く家を空けがちなのである。チーホウと電話中に管理人が訪ねてきた。相談していた水漏れの状態を見に来たという口実であったが、実は部屋の売買が決まり引っ越して欲しいと伝えに来たのだった。
昇進して忙しさに拍車がかかったヨックワンに、父親の対応だけでなく部屋探しの負担も増えてしまった。チーホウと会っても喧嘩が絶えず部下にも強く当たってしまうことが多くなるのだった。
退去を迫られているヨックワンは急遽管理人に紹介されたティンロの家に仮住まいをすることになる。「零から開始」を実行するためにパリに飛び立ったというティンロの女性からのビデオメッセージを見たヨックワン。そして彼女が残した「自分の記録」に目を通し、自分とは対照的な人生観を持つ彼女に興味を持ち始めるのだった。
映画『29歳問題』のあらすじ【転】
大事なパーティーを控えている中、父が倒れ脳の主事術を受けることになった。しかし、用意したゲストは機嫌を損ね仕事をキャンセルしたいとわがままを言い出す始末である。父親の言葉を思い返し、ぐっと堪えたヨックワン。すぐに病院に戻り、昏睡状態の父親に昔話を繰り返しし続けるのだった。
父親はヨックワンの目の前で息を引き取った。プロジェクトから身を引こうと上司に相談したヨックワン。そこで上司は自分の経験談を聞かせてくれた。「選択は自由だが、選択後100%の力を注げるかが人生を分ける」という上司の言葉に、30歳の分岐点を迎えたヨックワンは人生について考え直すのだった。
仕事や友人との食事と、「予定」に依存していたと気づかされるヨックワン。上海に出張で出ていたチーホウが戻って来た。仮住まいの家に興味を示すチーホウだが、出張について聞こうとすると機嫌を損ねてしまう。3週間も離れていながら会話のない二人。ヨックワンはチーホウと出会った日のことを思い返す。女の直感は当たり、チーホウは出張になど行っていなかったのだ。「ごめん」とだけ言い残し部屋を去ったチーホウ。父親が亡くなったことも話せず、ヨックワンはただ泣き明かすのだった。
映画『29歳問題』の結末・ラスト(ネタバレ)
ティンロの日記を読みながら、これまで感じたことのない劣等感や孤独に苛まれるヨックワン。しかしビデオメッセージに移り込んでいた男性から「裸眼じゃ見えないだろ?」と声をかけられた。日記で見ていた出来事が目の前に起こり始める。そして、ティンロはステージ3の乳がんを患っていたことを男性に伝えてしまうのだった。
ティンロが一人でパリに旅行に出る決意をしたのは、後悔のない日を送るためであった。必ず帰国し、一緒に完治を目指すと約束していたティンロと男性。ティンロはパリで30歳の誕生日を迎え、男性宛てに1通の手紙を送った。その中にはこれまでの人生を振り返り感謝していること、そしてこの先の未来への期待が綴られていた。
実はこれまで何度も同じ時間を共有していたヨックワンとティンロ。ヨックワンはティンロが働く店でポスターを買い、ヨックワンがバスに乗り遅れそうなときにはティンロが運転手に声をかけ止めたこともあった。そして二人は同じタクシーをよく使っていたのである。不思議な縁の二人は共に30歳を迎え、「零から」歩み始めるのだった。
映画『29歳問題』の感想・評価・レビュー
全世界共通の「29歳問題」。実に秀逸な邦題であると思う。30代に乗るという人生の分岐点はどんな風に迎えるのだろう、まだ想像の範疇である女性や既に超えた女性にも共感の多い作品ではないだろうか。キャリアウーマンほど、周囲に「順調な人生」を演じて見せてしまう傾向にある現実。偶然にも繋がった真逆の価値観を持つ二人の交流は、とても心温まるものであった。ポップな表情で魅せてくれたジョイス・チャンに今後も注目してみたい。(MIHOシネマ編集部)
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