映画『藍色夏恋』の概要:17歳の淡い恋心をノスタルジックに描き、高い評価を得ている台湾作品。2003年の日本公開当時も話題を呼んだが、2018年にデジタルリマスター版でリバイバル公開されるほど長きに渡り愛されている一作。
映画『藍色夏恋』の作品情報
上映時間:84分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ、青春
監督:イー・ツーイェン
キャスト:チェン・ボーリン、グイ・ルンメイ、リャン・シューホイ etc
映画『藍色夏恋』の登場人物(キャスト)
- モン・クーロウ(グイ・ルンメイ)
- 活発で少し男の子のようなさっぱりした性格の女子高校生。親友のユエチェンから片思いの相手に関する話を聞き、協力するが本音は言えずにいた。
- チャン・シーハオ(チェン・ボーリン)
- クーロウの同級生。水泳部に所属しはつらつとした少年。ユエチェンに代わり手紙を届けに来たクーロウに想いを寄せるようになるが、ある事実が関係を変えてしまう。
- リン・ユエチェン(リャン・シューホイ)
- クーロウの親友。シーハオに好意を持っているが、踏み出せずにいる。いつもクーロウに手伝ってもらいシーハオとの接点を作っている。
映画『藍色夏恋』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『藍色夏恋』のあらすじ【起】
娘を連れた将来の自分の姿が見えるという親友のユエチェン。少し先の自分の姿も想像できずにいたクーロウは、チャン・シーハオに想いを寄せるユエチェンが眩しく見えて仕方なかった。ただ引っ込み思案なユエチェンは、クーロウの前では好意を口にするもシーハオに声すらかけられずただ妄想の世界に浸っているのだった。
水泳部に所属するシーハオは、時折夜のプールに忍び込み個人練習をしていた。そのことを知ったユエチェンはクーロウを誘い、プールに向かう。クーロウは大胆にも声をかけユエチェンを紹介しようとしたが、怖気づいてユエチェンに先に帰られてしまった。この日を境に、シーハオはクーロウが自分のことを好きなのではないかと勘違いを起こし始める。
そんな状況とは知らず、ユエチェンはシーハオへの想いを膨らませていく。隠れて写真を撮るだけでは飽き足らず、シーハオの使ったバスケットボールや靴、日誌を集める日々を送る。その反面、行動に移せない自分に惨めさを募らせていくのだった。
映画『藍色夏恋』のあらすじ【承】
ある日ユエチェンは意を決してラブレターを書いた。しかし、シーハオに自分で渡す勇気はなく、クーロウに託したのである。同じ通学路を自転車で通うシーハオとクーロウ。ふざけるシーハオに飽き飽きしながら、ユエチェンから預かった手紙を乱暴に渡し、クーロウは家路につくのだった。
翌日、学校ではユエチェンのラブレターの存在が知れ渡っていた。シーハオの友人がイタズラし、校門の前に捨てられていたのである。さらにラブレターの差出人はユエチェンでなくクーロウになっていたのだ。
ユエチェンとの仲が険悪になっていく一方で、クーロウに対するシーハオの気持ちは大きくなっていく。クーロウの母親が営む露店に通うようになったシーハオは、ある夜「君と付き合いたい」と正直に告白するのだった。ユエチェンのことが頭によぎりはっきりした答えは出さないクーロウだが、シーハオと一緒に過ごす時間を作るようになった。
学校では気づかなかったシーハオの誠実さやシャイな一面に惹かれ始めるクーロウ。一緒に出掛けるたびに、その時間を大切に思うようになっていたのだった。
映画『藍色夏恋』のあらすじ【転】
自分の感情の行き場を失ったクーロウは、ある夜担任に相談をした。「年頃」のせいだと言われ、納得のいかないクーロウは翌日から担任を無視してしまう。一方でユエチェンは何もなかったように話しかけてくるようになった。そして少しだけ続いていたクーロウに対する嫌がらせはユエチェンの仕業ではなく、シーハオを好きな同学年の女子によるものだと分かる。
「女子同士」の問題に少しだけ解決の兆しが見えたクーロウは、再び夜のプールで自主練習をするシーハオに会いに行く。「好きになれない」とはっきり伝えに行くためである。実は水泳が嫌いだという秘密を明かしたシーハオだが、クーロウは心の内を明かそうとはしない。さらに誰にも言っていなかった秘密を明かしたシーハオに対して、本当は女の子が恋愛対象でありユエチェンが好きだということをクーロウも明かすのだった。
男の子とキスできたら、自分は同性愛者ではないと確信を持てると思っていたクーロウ。しかし、実際に試してみても自分の心の奥底に抱いた感情は動じなかったのである。
映画『藍色夏恋』の結末・ラスト(ネタバレ)
クーロウは放課後ユエチェンとシーハオを引き合わせた。クーロウの行動の意味が読めないシーハオは悶々としてしまう。クーロウもまた、好きになってはいけない相手への好意をどうしていいかわからず葛藤しているのだった。
ユエチェンはシーハオにフラれてしまったが、まだ片思いを続けていた。クーロウも感情を抑えきれず思わずキスをしてしまう。最悪のシナリオとなってしまい落ち込むクーロウに、シーハオは大会を見に来て欲しいと連絡をしてみるのだった。
離婚を経験している母親に失恋の乗り越え方を聞くクーロウ。「気づいたら立ち直っていた」という母親の言葉に背中を押され、試合終わりのシーハオに会いに行った。「いつか男を好きになれたら、一番に連絡しろ」というシーハオの言葉に元気をもらったクーロウは、並んで自転車を走らせながら少し先の未来に胸を躍らせるのだった。
映画『藍色夏恋』の感想・評価・レビュー
青春に自転車はよく似合う。主人公・クーロウの心情は最初のシーンではなかなか読み取れず、シーハオの存在により徐々に打ち解けていく中で見る者にも伝えられていく。何とも言えないグン・ルンメイの表情がとても印象に残る作品であった。17歳という大人でも子供でもない時間は、限りあるからこそ貴重だ。この頃の失敗は案外根深く、人生の手荷物になりうる。親友との関係と自分の感情のバランスに葛藤するという題材は決して軽やかなものではないが、不思議と爽やかな夜風が似合うような展開であった。今やよく見かけるチェン・ボーリンとグン・ルンメイのデビュー作は。手を取ってみて損はないだろう。(MIHOシネマ編集部)
本作は、17歳の少年少女の淡い恋心を描いた台湾の青春ヒューマンラブストーリー作品。
純粋無垢でキラキラとした爽やかな雰囲気や台湾の街並みの美しさ、心情の繊細な描写に心奪われた。
特に、蒸し暑い夏の夜のプールの水面がゆらゆらと揺らぐシーンが印象的だった。
大人になってすっかり忘れていたあの頃の気持ちを思い出させてもらえ、懐かしくて儚い気持ちになり、かけがえのない一瞬が凝縮された宝石のような心に響く作品だった。(女性 20代)
17歳という最も多感な年頃の男女の恋愛模様を描いた今作。爽やかで明るい世界観が学生時代の甘酸っぱい恋を思い出させてくれる素敵な作品でした。
好きな人にラブレターを渡すのが恥ずかしいから友達に代わりに渡してもらうってよくあることなのかも知れませんが、大概代わりに渡してくれた友達と好きな人がくっついてしまうんですよね。そして友情が拗れてしまう。
そんなことも含めて青春って本当に素敵だし、一生忘れられない時間だと思うので青春時代を思い出したい時にぜひ見てほしい作品です。(女性 30代)
甘く切ない三角関係。しかも、そのトライアングルには同性愛も含まれていて、胸がキュンキュン鳴りっぱなしでした。恋愛の冷酷さや身勝手さも綿密に描かれていますから、青春を再度擬似体験できるでしょう。劇中の空気感が艶っぽく、新鮮な息吹に満ちています。そしてどことなくノスタルジーです。チャン役のチェン・ボーリンは、こちらが小っ恥ずかしくなる程、初々しい演技を魅せています。見終わる頃には、彼のファンになっていました。(女性 30代)
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