映画『50年後のボクたちは』の概要:14歳の夏休み。憧れの女子の誕生日に呼ばれなかったマイクは、転校生のチックと共にワラキアという場所を目指して旅をする。そして、彼との冒険は地味で臆病だったマイクを変えていくのだった。ドイツでベストセラーとなった小説を映画化した青春ドラマ。
映画『50年後のボクたちは』の作品情報
上映時間:93分
ジャンル:青春、ヒューマンドラマ
監督:ファティ・アキン
キャスト:トリスタン・ゲーベル、アナンド・バトビレグ、メルセデス・ミュラー、ウーヴェ・ボーム etc
映画『50年後のボクたちは』の登場人物(キャスト)
- マイク・クリンゲンブルク(トリスタン・ゲーベル)
- 14歳の少年。地味で目立たない存在だが、独特の感性を持っている。クラスで人気者の女子に憧れを抱いている。
- チック(アナンド・バトビレグ)
- ロシアから来た転校生。夏休みになり、マイクを旅に誘う。
- イザ(メルセデス・ミュラー)
- 旅の途中で出会った少女。プラハにいる腹違いの姉に会うため放浪している。
- マイクの母親(アニャ・シュナイダー)
- アルコール依存のマイクの母親。夫との関係は破綻している。
映画『50年後のボクたちは』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『50年後のボクたちは』のあらすじ【起】
14才のマイクは地味で目立たず、クラスでも変わり者扱いで友達は一人もいない。作文の発表では、アルコール依存症の母親について書いたことで、担任の教師からも不愉快だと言われてしまう。母親を侮辱したわけではない。マイクは母親が大好きだった。母親から教えてもらった大切なことは、1.何でも話してしまえ2.他人を気にするな。だが、クラスのみんなからも笑われてしまうのだった。
マイクが気にしていたのは、タチアナという学校中で人気の女子。彼女がもうすぐ誕生日だと知ったマイクは、プレゼントとして思いを込めて似顔絵を描き始める。
そんな時、クラスにロシアから来た転校生がやってくる。見るからに気だるそうでボロボロの靴を履いたチックという少年は、子供なのにウォッカの瓶を持ち歩き、初日から二日酔い。しかも、こともあろうかマイクの隣の席になってしまった。
チックはマイクと同様、変わり者と見なされ、彼に話しかける者はいなかった。だが、誰に媚びることもなく堂々とした様子で成績も優秀。一度からかった男子がいたが、チックが彼の耳元に何か一言囁いただけで相手が黙り込んだので、ロシアマフィアの子供ではないかと噂されるほどだった。マイクはできるだけ関わらないようにしていた。
タチアナの誕生日が近づき、彼女はクラス中に招待状を配っていた。マイクはドキドキしながら待っていたが、招待状をもらうことはなかった。それも、貰わなかったのは自分とチックの二人。次の日から夏休みだというのに、気分は最悪だった。
映画『50年後のボクたちは』のあらすじ【承】
家では母親が、アルコールのリハビリセンターに入ることになり、父親と見送った。しかし、父親はこれから2週間出張があるからと言い、200ユーロだけマイクに渡し出て行く。
父親の出張は嘘だということはバレバレであった。すぐに若い女が家にやって来て、二人が手を繋いで車に乗り込んでいたからだ。立ち去る父親の背中に向けて指鉄砲を撃つ。母親と自分を裏切った父親とその愛人なんか死んでしまえと思った。
マイクは広い家にただ一人残された。すると、どういう訳かチックが遊びに来る。彼は盗んだブルーのラーダ・ニーヴァというディーゼル車に乗って来ていた。彼と仲良くするつもりはなかったが、ズカズカと家に入り込まれ、何となくゲームを始めてしまったマイク。
そして、タチアナの誕生日パーティーの話になり、マイクが強がりで興味ないと言うと、ゲイかとからかわれてしまう。マイクはムキになって否定し、本当は彼女のことが好きでプレゼントに絵も描いたと、チックにそれを見せるのだった。
チックはそれを聞くと、渡しに行こうと言い出した。チックの車に乗り、パーティー会場に向かう二人。外から見るだけとチックの勢いを止めようとするが、彼はお構いなしに会場に入って行く。マイクもそれに続き、タチアナに絵を渡さないわけにはいかなくなった。マイクはありったけの勇気を振り絞り、彼女に絵を渡すのだった。
会場からの去り際、チックは車で派手なパフォーマンスをし、クラスメイトたちの注目を浴びた。マイクは彼女に絵を渡せたことと、かっこよくその場から去れたことで大成功だと興奮する。
次の日も会おうと約束する二人。しかし、チックは遠くに行かないかとマイクを誘ってきた。マイクも勢いでチックの誘いに乗るのだった。
二人は、チックが盗んだ車に乗って出発する。行き場所を尋ねると、チックはワラキアだと答えた。マイクが場所を調べようと携帯を取り出すと、チックは車から投げ捨てる。彼は居場所が特定されるからと訳のわからない言い訳をし、ただひたすら南に向かえば辿り着くと言い張るのだった。
彼らはとにかく南へ向かった。BGMはマイクの好きなリチャード・クレイダーマンの「渚のアデリーヌ」。彼らは、軽やかなクラシックに合わせて田舎道をひたすら進んで行く。
映画『50年後のボクたちは』のあらすじ【転】
途中で別の車の運転手に子供であることが見つかってしまったが、チックは黒いテープを口に貼ってヒゲを作り誤魔化そうとする。その後も、トウモロコシ畑の中に突っ込み、そのままトウモロコシをなぎ倒しながら名前を書いたり、牛の群れに囲まれたり、牧草地の男に追いかけられたり、旅は早々トラブル続き。
二人はその夜、風力発電機の下で眠ることにした。寝転がって空を見上げると一面星が輝いている。二人はきっと宇宙のどこかに他の生き物がいて、その生き物も自分たちと同じように他の生き物がいると信じているだろうと、語り合うのだった。
翌日、スーパーを探していた二人はある村に辿り着く。彼らはそこで幼い子供と出会い、彼の母親から食事をご馳走になった。一家は子沢山だが父親はいない様子だった。子供たちは、クイズに勝った者から大きな器のデザートを取っていく。皆物知りで、最後に残ってしまったマイクとチックは小さい器を貰った。彼らには当たり前の日常だろうが、素朴な子供達との触れ合いは二人の心を暖かくした。
彼らは家族と別れまた旅を始める。しかし、まだ子供であるチックが運転席に乗り込んだのを地元の警察に見つかってしまい、チックはマイクを置いて逃亡するのだった。そして、慌てたマイクも警官が乗っていた自転車を盗み、ひたすら遠くへ逃げた。
逸れてしまった二人。マイクは森の中でどうすればまたチックと合流できるか考える。彼は風力発電機まで戻った。すると、遠くから車がやってくる。ブルーだった車は黒く塗り替えられ、プレートナンバーも新しくなっていた。二人はお互い同じことを考え、またこの場所で再会できたことを喜ぶ。
その後、ついに車がガソリン切れになってしまった二人はホースを使って他人の車のガソリンを盗もうと計画する。ホースを探してあちこち歩いていると、広いゴミ捨て場に行き当たる。
すると、建物の方から女の子の怒鳴り声が聞こえて来た。どうもゴミ捨て場を縄張りにしている浮浪者の女の子らしい。口は悪いが、彼女はなんだかんだホースの場所を教えてくれた。
彼女はイザという名前だった。聞けばプラハにいる腹違いの姉に会いに行く途中だと言う。髪は伸び放題で、服はボロボロ、匂いも強烈で、最初チックは彼女を追い払ったが、彼女からガソリンの抜き方を教えてもらい、仲間に入れることにする。
そうして、旅はまた始まった。次に行き着いた場所はダム。彼らはダムの中で体を洗う。イザは裸を見られることを全く気にしてなかったが、マイクはドキドキしながら彼女を見ていた。
チックは食べ物を調達しに行ったので、マイクとイザは二人きりになる。彼女は、髪の毛を切ってとマイクにお願いした。髪を切り、綺麗になったイザ。イザは、ドギマギしているマイクにキスしようかと顔を近づける。しかし、その時チックが帰ってきてしまうのだった。
3人は観光名所である遺跡にたどり着く。石には訪れた者が名前と日付を掘っていた。古いもので100年前のものもある。それを掘った者はもう死んでるはず。イザは「100年後には私たちも」と呟くのだった。チックは3人のイニシャルと日付を掘った。
イザはプラハ行きのバスを見つけ、マイクからお金をかり、姉のいる場所に向かうことにした。彼女は、マイクにお別れのキスをした。出会ったばかりだが、仲良くなった3人。思いがけず、別れは寂しいものだった。
旅はまた二人になったが、出発早々また警察に追われ、逃げる途中で沼地に行き当たった。丸太でできた古い橋を強引に前へと進む二人。しかし、途中丸太が抜けていて、それを直そうと沼に降りたチックは、足に木が刺さり運転できなくなってしまう。
運転を代わってくれとチックに、マイクは弱虫な自分に運転なんてできるはずがないと泣き言を言い出す。タチアナだって自分のことを退屈だと思ってるんだ。
チックはそんなマイクに、イザに比べたらタチアナはカスだと慰めた。そして、自分はゲイだからそれがわかるんだと打ち明けるのだった。それは、いつも堂々としているチックが、不安そうな顔を見せた瞬間だった。
マイクはチックに助けられながら、運転を始める。車はなんとかまた走り出した。
映画『50年後のボクたちは』の結末・ラスト(ネタバレ)
マイクの運転する車が夜道を走っていると、前を行く車に煽られる。抜かそうとするが、トラックは意地でも抜かれないように邪魔をしてきた。ところが、次の瞬間トラックはスリップしてしまい、横転するのだった。後ろを走っていたマイクたちもそれにぶつかり、事故を起こしてしまう。
二人の旅は終わった。マイクとチックの怪我は大したものではなかったが、チックは捕まれば施設送りになると、逃げることにする。マイクは自分が着ていた上着をチックに着せて彼を見送った。
マイクの父親は激怒する。裁判で弁護士は、チックが首謀者でマイクは脅されて付いて行っただけであり、事故当時も運転していたのはチックだったと主張した。
しかし、マイクははっきりと違うと言う。二人の思いつきだったと正直に話した。後ろに居た父親は大声を出すが、母親は正直に話したマイクに優しく微笑んだ。
父親はマイクを一発殴り、その後愛人と共に家を出る。母親は元通り酒を飲んでいた。二人は父親が残した家具をプールに投げ捨て、自分たちも飛び込みふざけあう。マイクは思った。母の依存や父の不在なんて対したことはないと。
新学期になり通学していると、警察に呼び止められた。警察は未だチックを追っていたが見つかっていなかった。警察は今朝盗まれたラーダが大破していた事件をチックの仕業だと見ていた。マイクはそれがチックから送られた自分へのメッセージだと気づく。
マイクはクラスでも、もう空気のような存在ではなかった。雰囲気が変わったマイクにタチアナは授業中手紙を回してくる。とうとう彼女が自分を見てくれたのだ。しかし、マイクはもうタチアナに対してなんの感情も抱いていなかった。
マイクはチックとイザと遺跡に登った日のことを思い出す。それは最高の夏だった。彼らは、あの場所で「50年後ここで会おう」と約束していた。それは遠い未来の話だが、マイクはそれを楽しみに生きるのだった。
映画『50年後のボクたちは』の感想・評価・レビュー
破天荒な物語だが、幼い日を思い出して胸が熱くなるような作品だった。チックのような存在がいたとしても、自分だったら尻込みをして旅に行かないと思う。何かを変えようと思ったら、少しの勇気が必要なのだろうなと思った。誰にも真似できない特別な旅をしたチック、マイク、イザが羨ましかった。
マイクの母親も素敵な女性だなと思った。親としてマイクのことを心から大切に思っているのが伝わってくる。マイクへの教えも素敵だと思った。(女性 30代)
子供なのに子供らしさが全くないチックのキャラクターがかなり衝撃的でしたが、そんなチックと出会ったことで新しい世界を見て、新しい自分と自分らしさを見つけられたマイクがとてもかっこよかったです。
新しいことに挑戦するのが苦手な私は、チックに誘われてもきっとついて行かなかったでしょう。しかし、タイミングが良かったにせよ、チックについて行く決断をしたマイクはとても強かったと思います。そこからマイクの成長が始まっていたのだと感じ、大人になって学校に戻ってきたマイクの姿はとても凛々しく見えました。(女性 30代)
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