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映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』の概要:世界的ヒットを飛ばしたオスカル・ブラックによるミステリー小説『デダリュス』。その完結編を各国同時発売するため、アングストローム出版のエリックは9人の翻訳家をフランスへ集めた。彼らは外部との接触を一切禁止され、地下シェルターに隔離されて仕事をした。ある時、エリックの携帯に「冒頭10ページを流出させた」と脅迫メールが届く。

映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』の作品情報

9人の翻訳家 囚われたベストセラー

製作年:2019年
上映時間:105分
ジャンル:ミステリー、サスペンス
監督:レジス・ロワンサル
キャスト:ランベール・ウィルソン、オルガ・キュリレンコ、リッカルド・スカマルチョ、シセ・バベット・クヌッセン etc

映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』の登場人物(キャスト)

エリック・アングストローム(ランベール・ウィルソン)
自身の出版社・アングストローム出版を立ち上げた経営者。恩師であるジョルジュから連絡を受け、彼が“オスカル・ブラック”名義で書いた小説『デダリュス』を世に送り出して巨万の富を得た。三部構成の『デダリュス』を翻訳するにあたり、第二部からは流出を恐れてフランスの山奥にある屋敷の地下シェルターに翻訳者達を隔離するようになる。
カテリーナ・アニシノバ(オルガ・キュリレンコ)
ロシア語の翻訳者。『デダリュス』の登場人物であるレベッカと同じ見た目、服装をし、彼女になりきることで物語を理解しようとする。他の翻訳者とは一切交流を持たず仕事に打ち込んでいたが、アレックスと意気投合したことで次第に周囲と打ち解けていく。『デダリュス』はただのミステリーでなく悔恨の物語だと解釈している。
ダリオ・ファレッリ(リッカルド・スカマルチョ)
イタリア語の翻訳者。『デダリュス3』に名前が載り仕事が増えることを期待してエリックに媚を売る。パリに降り立った際、SNSに「オスカル・ブラックと会う」と投稿し、エリックに削除を求められてしまう。
エレーヌ・トゥクセン(シセ・バベット・クヌッセン)
デンマーク語の翻訳者。夫と三人の子供がいる。一番下の息子は生まれたばかりだが、『デダリュス3』翻訳のため1ヶ月家を空ける。世界を旅して小説を書くことが夢だったが、夫が子供を欲しがるため彼を喜ばせたくて子供を産んだ。家族ができたことにより創作の時間と場所を奪われたことを激しく悔やんでいる。
アレックス・グッドマン(アレックス・ロウザー)
英語の翻訳者。イギリス人の母とフランス人の父を持つ。集められた翻訳者達の中で最年少ながら、『デダリュス』第一部にインターンで参加したという。作品の解釈を巡ってはアニシノバと意見が同じであり、耐えがたい喪失の物語だと解釈している。オスカル・ブラックに会いたいと願う。
チェン・ヤオ(フレデリック・チョー)
中国語の翻訳者。20年パリに住んでいる。
テルマ・アルヴェス(マリア・レイテ)
ポルトガル語の翻訳者。喫煙者で、煙草を一本吸うだけでもガードマンに同行・監視される仕事環境に嫌気がさしている。
ハビエル・カサル(エドゥアルド・ノリエガ)
スペイン語の翻訳者。吃音症。自転車で転んで怪我をしたと言い、左腕にギプスを付けている。
イングリット・コルベル(アンナ・マリア・シュトルム)
ドイツ語の翻訳者。成人した娘がいるが、もう何年も会っておらず疎遠になっている。
コンスタンティノス・ケドリノス(マリノス・マフロマタキス)
ギリシャ語の翻訳者。アテネの学生に『デダリュス』の解説を教えている。世界的にヒットした『デダリュス』を「もはや文学ではなく流行り物だ」と小馬鹿にしており、金のために仕事を引き受けたと言う。
ローズマリー(サラ・ジドロー)
エリックの助手。文学に携わる仕事がしたいと彼の下で働くが、編集の仕事に就くことが叶わないばかりか日々些細なことで怒鳴られている。

映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』のあらすじ【起】

フランス、ノルマンディーのバルフルールにあるフォンテーヌ書店は、ある夜炎に包まれ焼け落ちた。

ドイツのフランクフルトで開催されたブックフェアにて、エリックは『デダリュス』完結編の出版権を得たと発表した。タイトルは『デダリュス3 死にたくなかった男』に決定し、彼は世界同時発売を実現すると謳った。

『デダリュス3』翻訳に際し、販売部数の多い国から9人の翻訳家が集められた。フランスの山奥にある要塞然とした豪邸へ集められた彼らは、エントランスで全ての通信機器と貴重品を取り上げられた。外部との連絡手段を断たれローズマリーに屋敷を案内される間、アレックスとチェンは出身地や仕事を受けた経緯など他愛ない会話を交わした。

分厚い鉄の壁やいくつもの階段を下った最下層、コンクリート壁の資料室に通された9人は、1分1秒まで細かに設定された時間割での仕事を説明された。ケドリノスは、「翻訳のために生き埋めか」と皮肉った。

資料室に集まった彼らの前に、エリックが新作の原稿を持ってやって来た。彼は480ページの『デダリュス3』を1ヶ月かけて小分けに翻訳させると言い、情報漏洩への対策に余念がないことを念押しした。

フランスのボワ・ダルシー刑務所で何者かと面会するエリックは、「君が攻撃したのは莫大な金を生む産業だ、ここに答えがあるはずだ」と言って製本された『デダリュス3』を渡した。エリックは、オスカル・ブラックの原稿は全て自分の手元にあり、彼と自分以外の人間に渡るはずがなかったと回想した。

新作の原稿に目を通したアシニノバは、静かに涙を流していた。そこへ翻訳を終えた原稿を回収しにエリックがやって来た。アレックスをはじめチェンやイングリットは、「オスカル・ブラックに会いたい」と申し出たが、彼は「オスカル・ブラックは自分の言葉が誰にどう訳されるかなど興味はない」と吐き捨てた。

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映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』のあらすじ【承】

エリックに呼ばれ彼のオフィスを訪れたアニシノバは、彼が電話している隙に次の原稿が入ったアタッシュケースに手をかけた。彼女は結末を知るために原稿を盗もうとしたが、エリックが戻って来たため未遂に終わった。

フォンテーヌ書店を訪れたエリックは、『デダリュス』を書き終えたと言う恩師・ジョルジュから原稿の原本を受け取ろうとした。しかし、彼は「もう君とは仕事をしない」と言い出し「初めて連絡したアングストローム出版は誇りを持って作品を世に出していたが、今は利益を上げることしか考えていない」とエリックの在り方を批判した。

クリスマスを迎えたシェルターで、一人食事をするエリックの携帯に一通のメールが届いた。そこには『デダリュス3』の冒頭10ページを流出したとあり、500万ユーロ支払えば損失を止められると脅迫された彼は翻訳家達を資料室へ集め犯人捜しをした。ケドリノスは「終わりだ」と言って高らかに笑い出し、屈強なガードマン達に連行された。

各人の部屋を捜索したエリックは、手書きの原稿を隠していたトゥクセンを尋問した。デンマーク語で書かれた原稿は彼女の処女作であり、8年前から構想を練っていてこの場で本腰を入れたものだと言う。エリックはそんなトゥクセンを才能がないと罵った。

ダリオとテルマは、ギプスを付けているハビエルが「携帯を分解して隠し持っている」と疑ったが、彼は何も持っていなかった。仲間内でも犯人探しが始まった矢先、アレックスの部屋を訪れたアニシノバは、彼が『レベッカの傷痕』と『毒の口づけ』の翻訳に関わったと自称しているのは嘘だと暴いた。

映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』のあらすじ【転】

犯人を捜すエリックは、アレックスが翻訳に参加したいと言いコンタクトを取ってきた時、翻訳に関して全くの素人である彼が新刊の冒頭の文章を一言一句的中させたことを思い出していた。クリスマスも過ぎた頃、エリックはまたしても同じ人物から脅迫メールを受け取った。犯人を特定できず業を煮やした彼は、シェルターの暖房と電気を止め翻訳者達を監禁した。

刑務所でエリックが面会している相手はアレックスであった。「一つ大事なことを忘れてる。刑務所にいるのはあんただ」と言い放つアレックスは、看守に連れて行かれるエリックへ「オスカル・ブラックに会いたい」と告げた。

再び面会をしに来たアレックスは、エリックに一連の犯行のタネを明かした。彼はフランスでの仕事が始まる以前、自分と仲間達とで協力し、エリックがジョルジュから受け取った『デダリュス3』の原本をコピーしたと打ち明けた。エリックには遂に明かさなかったが、アレックスはチェンとハビエル、テルマとイングリットを説得し、原本のコピーに加えシェルターでの会話も全てシミュレートしていたのだった。

極寒と暗闇に支配されるシェルターで、才能のなさと子供達への不敬に苛まれたトゥクセンは首を吊った。

彼女の死を受け、ハビエルは「もう終わりだ」と喚いた。そこへさらなる脅迫メールを受け取ったエリックが訪れ、全員へ銃を向けた。皆がパニックに陥る中、エリックはアニシノバを撃ってしまった。

混沌とした状況に耐えられなくなったアレックスは、遂に自分が脅迫メールの送り主だと白状した。エリックはロンドンに向かわせたローズマリーに電話し、アレックスの隠れ家へ向かわせた。しかし、彼の隠れ家に入ったローズマリーは、ブックフェアの舞台袖で自分がエリックに怒鳴られている写真を見つけると、積年の恨みが込み上げエリックからの指示を無視した。

証拠発見の希望を断たれたエリックは出版社へ連絡し、脅迫メールに記載された金額を全額振り込むよう伝えた。総額8000万ユーロが入金された瞬間、「『デダリュス3』は全て流出した」とのメールが届いた。

映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』の結末・ラスト(ネタバレ)

刑務所でレックスと面会するエリックは、原稿を盗む前にも関わらず冒頭の文章を言い当てたのは何故かと彼に尋ねた。アレックスはエリックのネクタイに仕込まれた警察の盗聴器を手で覆うと、「僕が書いた」と告白した。

幼いアレックスは、夏休みに訪れたフォンテーヌ書店で本を万引きしようとした。ジョルジュは彼に店で働くよう告げ、アレックスは毎年ジョルジュの店を訪れるようになった。

アレックスが書いた『デダリュス』を見たジョルジュは、「英国的な劇作法と美しいフランス語表現の融合だ」と絶賛し、世間に公表するよう勧めた。「どうしても出版するならあなたの名前で」というアレックスへ、ジョルジュはペンネームを作ろうと提案した。

アレックスは『デダリュス』の第二部が発行された際、翻訳家をシェルターへ閉じ込め家畜のように扱うエリックへの怒りをジョルジュへ打ち明けていた。それからアレックスはエリックの周辺を調べ尽くし、自ら第三部の翻訳へ参加するよう仕向け、エリックが入金した会社の金8000万ユーロを彼の口座へ入金し、全て彼の自作自演に見せた。

それを聞いて取り乱したエリックは「オスカル・ブラックは私がこの手で殺したんだ」と叫び、盗聴器から手を離していたアレックスは「それを聞きたかった」と呟いた。

ジョルジュから「出版社を変える」と言われた当時、エリックは、衝動的に彼を階段から突き落として殺害していた。エリックは彼の吸いかけの煙草で店に火をつけ証拠隠滅を図ったのだった。盗聴器からエリックの自供を聞いていた警察は、彼を面会室から連行した。

アレックスは、ジョルジュとの思い出を振り返り刑務所を後にした。

映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』の感想・評価・レビュー

最後まで興味を失うことなく鑑賞でき、後味のスッキリした映画だった。

愉快痛快というわけではないが、高圧的で利己的な守銭奴がまんまと出し抜かれる様は見ていて小気味良い。アシニノバが撃たれたことに動揺したアレックスが、自らメールを送信した犯人だと自白する場面には面喰らったが、それすら彼のシナリオ通りだったと仮定すると恐ろしい。絶対に敵には回したくない。

エリックのアタッシュケースから原本を盗むのに、チェンやハビエルが関与していたと明かされた場面には興奮した。初見では重要でないと思っていた会話や描写も、全てシュミレーション通りだと判りシビレた。(MIHOシネマ編集部)

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