映画『グエムル 漢江の怪物』の概要:「殺人の追憶」のポン・ジュノ監督とソン・ガンボが組んだB級パニック・ホラー。ソウルの漢江で怪物が出現。娘ヒョンソを救うべく、家族が全力で立ち向かう!共演はペ・ドゥナ。大ヒットした2006年の韓国映画。
映画『グエムル 漢江の怪物』 作品情報
- 製作年:2006年
- 上映時間:120分
- ジャンル:ホラー、アクション、コメディ
- 監督:ポン・ジュノ
- キャスト:ソン・ガンホ、ピョン・ヒボン、パク・ヘイル、ペ・ドゥナ etc
映画『グエムル 漢江の怪物』 評価
- 点数:60点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『グエムル 漢江の怪物』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『グエムル 漢江の怪物』のあらすじを紹介します。
2000年2月。ある解剖室で、埃まみれのホルムアルデヒドが大量に下水道に流されてしまった。若い解剖医は漢江が汚染される事を危惧するが、アメリカ人医師に逆らうことが出来なかった。その後、漢江では生物の異変が起こり始めていた。
2002年6月。漢江の近くで屋台を営む、パク一家。1日中、うたたねしている店主カンドゥ(ソン・ガンボ)。13才になる娘ヒョンソ(コ・アソン)、カンドゥの父と穏やかに暮らしていた。ある日、漢江に魚に似た怪物が現れた。
周囲の人々が逃げ惑う中、カンドゥは娘ヒョンソの手を引いて逃げたつもりが別の子供だった。逃げ遅れたヒョンソは、カンドゥの目の前で、怪物に襲われ飲み込まれてしまう。
怪物の犠牲となった人々や遺族が1ヵ所に集められ、カンドゥの妹でアーチェリー選手のナムジュ(ペ・ドゥナ)や弟ナミル(パク・レイル)も訪れた。政府はその後、怪物に関わった者が伝染病などに感染している恐れがあると発表。パク一家も病院に隔離されてしまう。
病院で過ごすカンドゥの携帯電話が深夜に鳴った。それは死んだはずの娘ヒョンソからの着信!ヒョンソは生きているんだ!下水道に閉じ込められた、助けて欲しいという声をカンドゥは警察に話すが、取り合ってもらえない。
そこで、パク一家は病院を抜け出し、娘ヒョンソを助けようと動きだす。
映画『グエムル 漢江の怪物』 結末・ラスト(ネタバレ)
娘ヒョンソを捜すため、テソン防疫会社の車で逃げだしたパク一家。漢江近くの下水道に潜入するが、なかなかヒョンソの行方が掴めない。怪物が再び、動き出し、下水道近くの無人の売店に忍び込んでいた幼い兄弟の命を奪った。
その後、パク一家も無人の売店に立ち寄り、4人でカップラーメンを食べた。カンドゥの父は、子供達に兄弟仲良くするよう話した。するとまた、パク一家の前に怪物が現れた!銃やナムジュのアーチェリーで応戦するが、カンドゥの父は命を落としてしまう。
またカンドゥには、風邪に似た症状が出て、医療班によって隔離されてしまう。カンドゥは様々な検査を受けるが、原因は不明。アメリカ人の医師に、”前頭葉にウィルスがいるハズだ!”と言われてしまう。
ところが実際にはウィルスなどいないという事実が分かり、カンドゥは娘を助けるため病室を脱出。弟や妹ナムジュと連絡を取り、下水溝へ向かった。そこには、娘パク・ヒョンソの名札のついた上着が結び付けられていた!しかし、ヒョンソの姿はない。
政府によって、”第1級汚染地区”と指定された川岸で、パク一家にとって最後の闘いが始まった!怪物に対して、薬の散布をするらしい。カンドゥ達は、逃げる怪物の動きを封じると、その腹の中から2人の子供を助け出した。時既に遅く、ヒョンソは息絶えていたのだった。
映画『グエムル 漢江の怪物』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『グエムル 漢江の怪物』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
反米感情に訴えかける?!怪物ホラー
日本の怪物映画として有名なゴジラ。今も世界中の映像作家に影響を与えています。この映画を怪物映画として観ると、なんじゃこりゃ?と椅子から転げ落ちるような衝撃があります。なんてことない、巨大な魚に似た怪物が漢江を右往左往するのですから。
あまり難しく考えず、ポン・ジュノ流のホラー・コメディとして観ることをおすすめします。特筆すべきなのは、パク一家が一体、何を敵として闘っているのか?ということ。漢江の怪物?それとも大変な時なのに何も動いてくれない政府に対して?
イェ、実は米国と闘っているのではないでしょうか。冒頭と治療シーンに出てくる、米国の医師たちに注目して下さい。感染者として隔離された主人公が、米国の医師に”前頭葉にウィルスが見つかるハズなんだ”と言われ検査をしますが、ウィルスが見つからないのです。
また怪物と対峙するシーンでは、米国人の旅行者と協力して、倉庫に閉じ込められた人々を助け出しますが、その米国旅行者だけ死んでしまうという展開!これはポン・ジュノ流のギャグなのかも。韓国映画には、恨み節が多いけど、この映画は明るい。
家族の絆を試す側面もあり、最後には”嫌な事は全て漢江に流してしまえ”という事なかれ主義も見えてくるのです。
ヒロインになりそこねた、ペ・ドゥナ
息を止めて、的を狙う。矢が放たれるまでの一瞬は、まるで時が永遠のようだ。この映画で、アーチェリー選手ナムジュ役を演じるペ・ドゥナに注目してみたい。姪のヒョンソを助けるため、矢を放つが実戦では矢は外れてばかり。
何故だか分からないが、ポン・ジュノ監督は女性をかっこよく描くのが苦手なようだ。ペ・ドゥナの失速感がそのまま、パク一家の迷走に流れてしまう。それは、ペ・ドゥナが動というより、静の表情を持つ女優だからではないか。
もし、「ハンガーゲーム」の主人公みたいな活躍が出来ていたら、この映画はもっと面白くなっていたかもしれない。たとえ、国家が国民を怪物から救えなくても、家族で救う事が出来るのだから。
しかし、ポン・ジュノ作品にハッピー・エンドは訪れない。あるのは、深い後悔と闇だけだ。
まず、怪物が出来上がった原因がアメリカの化学工場の廃棄ということで、作中から漂う反米意識。そして、描かれる貧困層と政府の横暴な行動。ポン・ジュノ監督の当時の政府に対する反感が作品を通じて描かれているので、それを踏まえてみるとしっかりした主張のある映画だなと感心する。
CGがやや粗いのと、登場人物が誰もかれも小狡くてイマイチ感情移入しにくいのが玉に瑕だった。ソン・ガンホの存在感は、この頃から健在。ただのB級映画と言い切ってしまうにはもったいない映画だ。(男性 30代)
緊迫した空気の中で突然シニカルな笑いの部分が出てくるのがポン・ジュノ監督作品の特徴ですね。人を食ったような演出も、センスが良くてさすがだと思います。
怪物も恐ろしいですが、それ以上に恐ろしいのは人間だと思わされました。
娘は生きていると訴えても誰も耳を貸してくれない。被害者なのに悪者扱いされてしまう。物語は非現実的でも、人間社会の理不尽さみたいなものは非常にリアルに描いているのが面白いです。
映画ならここで奇跡的に成功!となりそうな場面でも、そうは上手くいかない展開が多々あり、なんとも切なくなりました。(女性 40代)
かっこよくなりそうな、活躍しそうなキャラクターは沢山いるのに結局一番頑張っていたのはお父さん・カンドゥでした。
娘は早々に怪物に飲み込まれてしまい、その後は全く活躍の場がありません。カンドゥの妹でアーチェリー選手のナムジュはかなりの戦力になると思っていましたが、なかなか矢が当たらず不発。
特別な能力を持っていないカンドゥが娘への愛の力だけで怪物や政府と戦っていた印象です。
助け出せたと思ったラストの展開は清々しいほど胸糞でした。(女性 30代)
社会問題を奇想天外な方法で描き続けるポン・ジュノ監督の作品。本作も水質汚染をテーマにしており、社会問題を掛け合わせたパニック映画としても見応えがある。
監督特有のブラックジョークは毎回興味深いし、ドキッとする。そして、「パラサイト」と同様、家族をメインに立てた映画であり、一家族が対面するアメリカという国の権力による支配のような描き方が面白い。少し物足りなさはあるが、監督らしさを味わえる作品だ。(女性 20代)
映画『グエムル 漢江の怪物』 まとめ
「グエムル 漢江の怪物」(06)は、韓国で大ヒットした怪物ホラーです。しかし、日本でのヒットは難しいでしょう。なぜなら、日本のゴジラを超える作品はこれまで作られていないから。
この映画はポン・ジュノ流のギャグや家族で怪物に立ち向かう姿が見どころです。怖くなく、適度に笑えます。ポン・ジュノ作品には、必ず対立構図があり、怪物との闘いを描きながら、VS国家、VS米国というように構図が広がってゆきます。
やはり、反米精神を強く感じます。韓国人にとって、米国は憧れの国です。近年、その考えは恨みや反米感情に傾いているのでしょうか。怪物ホラーとはいえ、色々な角度から観ることのできる不思議な映画です。
ポン・ジュノ作品の常連であるカンドゥ役のソン・ガンボや国際派女優のペ・ドゥナなど役者が揃っています。いつもとは違う、ホラーが観たい時におすすめです!
みんなの感想・レビュー
ペドゥナの、打った矢が、怪物に、突き刺さるシーン格好良かったです