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映画『シングルマン』あらすじ・ネタバレ結末と感想

映画『シングルマン』の概要:『シングルマン』は、世界的なファッションデザイナーとして知られるトム・フォードの初監督作。主演はコリン・ファース。最愛の恋人を亡くして数か月、死を決意した男の最後の一日を描く。

映画『シングルマン』 作品情報

シングルマン

  • 製作年:2009年
  • 上映時間:101分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ、ラブストーリー
  • 監督:トム・フォード
  • キャスト:コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、マシュー・グード、ニコラス・ホルト etc

映画『シングルマン』 評価

  • 点数:95点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★★
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

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映画『シングルマン』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『シングルマン』のあらすじを紹介します。

その日、ジョージ・ファルコナーは絶望とともに目覚めた。今日もいつもと同じ日常で、他の日となんら変わらない一日に過ぎない。
しかし、ジョージにとっては「最後の日」であった。

ジョージは、8カ月前に最愛の恋人ジムを交通事故で亡くした。それ以来深い悲しみに沈んだまま、生きることに絶望していた。だから、今日この日を以って人生を終わらせる決意をしたのである。

勤め先の大学の部屋を片付け、銀行の貸金庫を空にし、親しい人に手紙を残し、死ぬ準備は整った。
しかし、いざ最後と思うと日常は少し変わって見えるのだった。
最後の授業では、いつも通り生徒は好き勝手な意見を言い、まるで理解できていない。いつもならそのまま終わるのだが、この日のジョージは熱く自分の意見を語った。
普段世話になった人にはいつも以上に感謝し、見るもの、触れるものは最後だと思うと愛おしく、喜びすら感じる。

大学の教え子であるケニーは、その日ジョージをつけていた。
秘書から住所を聞き出し、授業の後話しかけて飲みに誘うが、ジョージは断る。古くからの友人で元恋人でもあったチャーリーとの約束があったからだ。
しかしこの約束は破るつもりだった。一人になったジョージは、ベッドの上で拳銃を手に、姿勢を変えたり場所を変えたりして死のうとするが、チャーリーからの電話で断念。

結局約束通り、チャーリーの家で二人は食事やダンスを楽しむ。チャーリーも孤独を感じているが、それはジョージとは全く異なるものだ。ジョージは誰にも理解されない絶望に苦しみ、出ていく。

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映画『シングルマン』 結末・ラスト(ネタバレ)

スコッチを買いに行ったバーで、その日ずっとジョージを追っていたケニーと会う。
ジョージはケニーと語り合う中で、なにか希望のようなものを見出す。
二人はジョージの自宅でビールを飲み、眠りにつく。

目覚めたジョージはケニーの寝顔を見ながら、自殺を思いとどまったのか、準備した手紙を暖炉で燃す。
人生に希望を見出した直後、なんと皮肉にも、心臓発作で死んでしまうのだった。死にゆく中で見えたのはやはり恋人ジムの幻だった。

映画『シングルマン』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『シングルマン』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

起伏のない淡々としたストーリー

この映画は、ストーリーの面白さを期待して観ると裏切られるし、そこにしか映画の面白さを見出だせない人にとっては山場も何もないつまらない映画であろう。

この映画の面白さはストーリーの表面上にはないのだ。
ジョージは自分の心情を多くは語らないし、ナレーションにも陳腐な説明はない。だから観客はジョージの表情やしぐさ、視線、そして音楽や画面の色調などから読み取るしかないのだ。
注意深く観てはじめて何かがつかめる。

世界への絶望

ジョージはジムの死から立ち直れず、この世のすべてに絶望している。
1960年代、キューバ危機の頃。核の脅威も感じつつ、世の中全体が恐怖を感じていた。それでもジョージの絶望は誰にも理解できない。それは、当時差別対象であった同性愛者だからというのもあるかもしれないが、ジョージの感じている絶望は実はそう特別なものではないのではないだろうか。
孤独と絶望、誰もが感じることがある感情である。
ジョージの抱えている絶望は、セクシュアル・マイノリティ故のものもあるかもしれないが、奥底にあるものは誰にでも持ちうる感情で、普遍的である。

ジョージにとって、理解されないことが苦しかった。長年の友人であるチャーリーにすらまったく理解されないのだと念押しするようなシーンの後、ケニーが登場する。
ケニーと打ち解けていく中で、ジョージは「彼なら、もしかしたら……」と感じたのではないだろうか。
だからこそ、自殺を思いとどまった直後の死はより哀しい。

トム・フォードの初監督作

誰が作ったにせよこの映画が素晴らしいのは変わらないのだが、それでもトム・フォードが初めて作った映画だ、として観ると本当にすごい。ファッション界でもまたとない人物なのに、映画を作らせても素晴らしいなんて、もうため息しか出ない。
文句の付けどころのない作品である。


コリン・ファースが凄く好きだと思った。常にジムという過去に生きていたジョージはケニーに出会うことで現実へと引き戻されて、それが自ら命を絶つことから救ってくれたのに、最後は凄く儚い運命で人生というものが切なく思った。

ケニーは気付いてたから銃からジョージを遠ざけるように寝てたんだろうな。ジョージは未来を少し実感しつつも、予期せず訪れた自然死という自分では選べなかった死というものがもどかしくて落胆するが、全体的に美しく丁寧な雰囲気とシーンは素晴らしい。(女性 20代)


才能を持った人は何をやっても「素晴らしい」ものを作り出すのだと、トム・フォードの多才に驚かされました。
生きることに絶望し自ら命を絶とうとする時、周囲に話せば止められてしまうし、誰かに話すことでもない。だからと言って最後の日を適当に過ごす訳ではなく、全てに感謝をし、最後の日を全うするコリン・ファースが物凄く良かったです。彼の自然体な演技と良い意味で派手さのない落ち着いた雰囲気がとてもリアルで引き込まれてしまいます。
ラストは思っていた展開と違いましたが、彼にとってはこれが幸せだったのかもしれないと思いました。(女性 30代)

映画『シングルマン』 まとめ

俳優の演技、カメラワーク、音楽、他も全て文句のつけようもない、素晴らしい映画である。特にいいなあと思ったのは、色調の変化によって主人公の心情を表しているところだ。
ジョージは多くを語ってくれないので彼の感じていることを理解するのはなかなか難しいのだが、そこをすこし補ってくれるのが色調だった。基本的にジョージは絶望しているので、画面は青みがかっている。だが、小さな喜びを感じたであろうシーンでは暖色、オレンジ色になるのだ。
また、瞳の虹彩の模様がくっきりと見えるほどのカットが多かった。どの人物に関してもそうで、会話もなく何かを感じ合うような印象だった。
コリン・ファースの演技自体、言葉ではなく目で語る。台詞で説明する演技ではなく表情で、目で、演技する。それだけで魅せることができるというのは本当に素晴らしい俳優だと思う。
一度観ただけでも深く感じ入ってしまう。もう一度観れば、一度観ているから今度は細部までじっくり観ることができて、より理解が深まるだろう。

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