映画『パブリック 図書館の奇跡』の概要:大寒波の夜、ホームレス集団は凍死を避けるため、公立図書館を占拠した。彼らに協力した図書館員は、いつの間にか首謀者に仕立てられる。俳優エミリオ・エステヴェスが監督・脚本・製作・主演を兼任した感動のドラマ。
映画『パブリック 図書館の奇跡』の作品情報
上映時間:119分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:エミリオ・エステヴェス
キャスト:アレック・ボールドウィン、エミリオ・エステヴェス、ジェナ・マローン、テイラー・シリング etc
映画『パブリック 図書館の奇跡』の登場人物(キャスト)
- スチュアート・グッドソン(エミリオ・エステヴェス)
- シンシナティ公立図書館の図書館員。ホームレスの占拠に協力し、検事の陰謀で人質事件の首謀者に仕立てられる。かつてはホームレス生活をしていたが、本のおかげで人生をやり直せたという過去がある。家庭菜園が趣味。
- ビル・ラムステッド刑事(アレック・ボールドウィン)
- シンシナティ警察の交渉担当。図書館の占拠を担当。プライベートでは薬物中毒の息子が失踪中という問題を抱えている。
- ジョシュ・デイビス検事(クリスチャン・スレーター)
- 地方検事。次の市長選挙に立候補しているが、人望がないため圧倒的に不利。占拠事件に食い込んで、世間の注目を集めようとする。
- マイラ(ジェナ・マローン)
- たまたま占拠に居合わせた図書館員。エコ派でバス通勤、自然食品を愛好、愛読書はスタインベックの「怒りの葡萄」。
- アンジェラ(テイラー・シリング)
- 占拠前夜にスチュワートと恋人同士になるアパートの管理人。図書館の外から占拠の様子を見守る。アルコール依存症を克服中。
- ジャクソン(マイケル・ケネス・ウィリアムズ)
- 退役軍人で、ホームレス集団のリーダー的存在。大寒波の夜に凍死を避けるため、公共図書館の3階を占拠する。
- アンダーソン主任(ジェフリー・ライト)
- 図書館の主任。暴力的に解決しようとする警察に反発し、ホームレスの籠城に加わる。
- レベッカ(ガブリエル・ユニオン)
- 占拠事件を中継するテレビ局のリポーター。占拠事件の報道を千載一遇のチャンスと捉え、スチュワートを人質事件の容疑者のように伝える。
映画『パブリック 図書館の奇跡』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『パブリック 図書館の奇跡』のあらすじ【起】
冬のシンシナティ公立図書館はオープン時間が近づくと、多くのホームレスが暖を求めて集まっていた。図書館員のスチュワートは、彼らとすっかり顔馴染み。トイレで顔を洗ったり歯磨きをしたり、閉館ギリギリまで館内で過ごすことを容認していた。
スチュワートは上司のアンダーソン、警備員のエルネストと共に評議会に呼び出された。嫌味な地方検事のデイビスから、ある件で訴えられていることを聞かされる。それは以前、体臭を理由に退館させた男が起こしたもの。男はスチュワートたちから差別を受けたとして、75万ドルを請求しているのだと言うのだ。
その夜、スチュワートがアパートに帰ると、管理人のアンジェラが暖房器具を乱暴に修理していた。2人はスチュワートが育てたハーブとトマトをトッピングしたピザを食べながら、お互いの話をする。アルコール依存症だった過去があるなど、似たような境遇であることが分かり、惹かれ合って夜を共に過ごすのだった。
一方、市警で交渉人を務めているビル刑事は、別れた妻とホームレスのシェルターを回り、薬物中毒の息子の行方を探していた。
映画『パブリック 図書館の奇跡』のあらすじ【承】
翌朝、スチュワートはアンジェラと夕食の約束をして出勤した。図書館前で、前夜の寒波で顔見知りのホームレスが凍死したことを知る。
デイビス検事は次の市長選に立候補しているが、ライバルの黒人候補者に比べて明らかに不人気だった。秘書から何か事件で世間から注目を集めればいいと助言される。
その夜、ホームレスは図書館の閉館時間になっても帰らなかった。スチュワートはリーダー格のジャクソンから、シェルターが満杯でこのままでは凍死するため、このフロアを占拠すると宣言される。
スチュワートは主任に相談するが、開放する権限はないと言われ、さらに評議会は君の解雇を望んでいるとも言われた。スチュワートはホームレスの側につくことを決意。同僚のマイラも成り行きで立て籠もりに加わった。
70数名のホームレスは、本棚で入り口にバリケードを築く。間もなく警察が到着し、ビル刑事やデイビス検事もやって来た。リポーターのレベッカによるテレビ中継も開始。アンジェラは図書館の前で騒動を見守った。
スチュワートはビルとの電話に応じる。ここをホームレスに開放するか、他の施設を用意するよう求め、さらにデイビスには、路上で5分横になれと要求した。
映画『パブリック 図書館の奇跡』のあらすじ【転】
デイビスが冷たいコンクリートの上に横たわる様子は、テレビで生中継された。彼はその後の取材で、図書館員を精神病だと非難。さらに武器を所持しているかのように伝えたため、スチュワートは容疑者扱いされてしまう。アンジェラはスチュワートに電話をし、真実を知らせるためにも館内の様子を動画で送るように言った。
ホームレスに病人が出たため一時休戦。マイラは占領フロアから退出し、スチュワートはビルにピザの配達を要求する。その際ビルは、息子が中にいないかと尋ねるのだった。
スチュワートには万引きや不法侵入の前科があり、ホームレスだったことも判明。その後、酒を断ち学位を取っていた。主任は全て承知で彼を雇ったと証言する。
スチュワートは篭城するホームレスたちの様子を撮影した。それは暴動などではなく、暖房の効いた室内で寛ぐ姿。ジャクソンは俺たちの存在を世に知らせたいと言い、声を上げろ!と仲間に呼び掛けた。
ホームレスにピザが届くが、膠着状態は依然続いていた。デイビスが力ずくで制圧すると言うと、主任は反発。「公立図書館は民主主義の最後の砦だ」と言い、立て籠もりに加わった。
映画『パブリック 図書館の奇跡』の結末・ラスト(ネタバレ)
アンジェラから館内の動画を渡されたレベッカは、まるで強行突入を待ちわびている様子。人質事件としてスチュワートに電話取材をするが、彼は扇動者であることを否定し、スタインベックの「怒りの葡萄」の一節を読み上げた。まともなインタビューにならなかったと憤るレベッカに、マイラは「怒りの葡萄」は10代の必読書だと指摘。この件を人質事件と扱うなんてお天気リポーターも無理ねと揶揄するのだった。
ホームレスの多くは退役軍人だった。ある男は、失業を機に転落したのだと嘆く。ビル刑事の息子はホームレスの中に紛れており、スチュワートを殴ったことで連行された。
黒人市長候補がホームレスに支援物資を届けに現れ、その後も市民から続々と支援物資が届いた。図書館前は和やかな雰囲気に包まれるが、間もなく機動隊が到着。緊張が高まった。
機動隊が突入しようとすると、ホームレスたちは全員素っ裸で待ち構え、「I Can See Clearly Now」を合唱する。機動隊員はすっかり拍子抜け。彼らを裸のまま歩かせてバスに乗せた。
全裸のニュースはテレビで流せないため、レベッカは彼らの友人のホームレスを取材。スチュワートは逮捕され、アンジェラから服を拘置所に届けることを約束される。ジャクソンは声を上げたことに満足し、バスの中でずっと歌い続けるのだった。
映画『パブリック 図書館の奇跡』の感想・評価・レビュー
ある公共図書館が実質ホームレスの避難所となっているという実話から着想を得て作られた作品。エミリオ・エステヴェスの代表作の青春映画「ブレックファスト・クラブ」と同じく図書館(室)が舞台だが、こちらはホームレス問題を絡めた社会派の群像劇。レポーターのレベッカが言う通り、篭城事件のラストは機動隊が突入して悲劇で終わるのが一般的。本作は素っ裸という意表を突いた作戦により、負傷者ゼロで終わるという奇跡が起きる。実際にこんな事件が起きたら、全員無傷という訳にはいかないだろう。映画だからできるハートフルな物語だった。(MIHOシネマ編集部)
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