この記事では、映画『マジカル・ガール』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『マジカル・ガール』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『マジカル・ガール』の作品情報
上映時間:127分
ジャンル:サスペンス
監督:カルロス・ベルムト
キャスト:バルバラ・レニー、ルイス・ベルメホ、ホセ・サクリスタン、ルシア・ポリャン etc
映画『マジカル・ガール』の登場人物(キャスト)
- ルイス(ルイス・ベルメホ)
- アリシアの父。元、文学の教師。アリシアの治療費のために、古本屋に本を売るなど、厳しい生活を送っている。アリシアの願いを叶えるため、“魔法少女ゆきこ”のドレスを手に入れようとする。偶然知り合ったバルバラを脅し、“魔法少女ゆきこ”の購入資金に充てようと画策する。
- アリシア(ルシア・ポリャン)
- 白血病を患っている、余命わずかの12歳の少女。ルイスの娘。“魔法少女ゆきこ”という日本のアニメが好きで、友人たちからは「ユキコ」と呼ばれている。親友バネッサを「マコト」、パロマを「サクラ」と呼んでいる。メイコ・サオリが歌手のメグミ用にデザインした“魔法少女ゆきこ”のドレスを欲しがっているが、本当の願いは父と過ごすこと。
- バルバラ(バルバラ・レニー)
- 元売春婦。元締めのアダの元から逃げた後、何も知らない精神科医の夫アルフレドと結婚した。自分より不幸な人を見るため、テレビを見るという歪んだ性格。精神的に危うい。浮気がばれるのを恐れ、夫に秘密でお金を手に入れるために、再び売春に手を染める。
- ダミアン(ホセ・サクリスタン)
- 模範囚で、囚人たちに勉強を教えていた老人。元、数学の教師。バルバラは教え子で、彼女を守るために服役したらしい。バルバラの過去を知っている。
映画『マジカル・ガール』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『マジカル・ガール』のあらすじ【起】
ルイスが帰宅すると、白血病の娘のアリシアが倒れていた。
病院に運ばれたアリシアの状態を聞き、ショックを受けるルイス。
帰宅後、タバコを吸ってみたい、ジントニックを飲んでみたいというアリシアに、タバコやジンを飲ませたルイス。
アリシアの願いごとノートを見たルイスは、娘が1点ものの“魔法少女ゆきこ”のドレスを欲しがっている事を知る。
しかしそれは、7千ユーロもした。
ラジオから流れる、12歳の少女からのお便りの内容を聞かず、ルイスは家を出た。
それはアリシアが送ったもので、病院で目覚めると必ず父がいるから病院が好きだ、という内容だった。
古本屋に本を売っても、たいしたお金にはならなかった。
飲み屋を営む友人マリソルに事情を話し、雇ってほしいと頼むが、断られてしまう。
宝石店に盗みに入ろうかと思案するルイスの頭上から、何かが降ってきた。
精神科医の夫を持つバルバラは、精神的に危うかった。
その日、赤ん坊を見せに来た夫婦に、笑えない冗談を言った。
そして夫はバルバラに睡眠薬を飲ませ、出て行った。
荒れたバルバラは自分から鏡に頭を打ちつけ、お酒を飲みすぎ、窓から嘔吐した。

映画『マジカル・ガール』のあらすじ【承】
バルバラが吐いたものをかぶってしまったルイスは、バルバラの部屋に引き入れられる。
そして、ルイスとバルバラは性的関係を持つ。
翌朝、戻ってきた夫とバルバラはギクシャクしていた。
そこに、ルイスから電話がかかってくる。
関係をばらされたくなければ、7千ユーロ払うよう脅すルイス。
バルバラは、お金を集めるためにアダの元へ向かった。
かつてアダの元で売春をしていたバルバラは、お金を得るために客を取る決意をしていた。
夫に隠し通すため、挿入なし、1日限りという条件をつける。
紹介されたのは、金持ちのオリベル・ソコだった。
1枚のカードを渡され、そこに書かれた言葉を言えば終わりだと聞かされる。
言わずにいる時間分、お金を稼げる仕組みだと聞かされ、バルバラは部屋に入る。
そうしてバルバラは7千ユーロを稼ぎ、ルイスは大金を手に入れた。
そのお金で、アリシアに“魔法少女ゆきこ”のドレスを買い与えた。
しかしルイスは、ステッキを買い忘れていた事に気付く。
それはあまりにも高額だった。
映画『マジカル・ガール』のあらすじ【転】
バルバラを脅し、2万ユーロを手に入れる事にしたルイス。
前と同じ条件で、アダを通して客を得ようとするが、時間が足りない。
そこでバルバラは、よくない噂がある“トカゲの部屋”に入ることにした。
アダは止めるが、バルバラはオリベル・ソコに、“トカゲの部屋”に入ると連絡してしまう。
そしてオリベル・ソコの屋敷へ向かうが、部屋の前にあったカードは白紙だった。
刑務所に入れられているダミアンは、カウンセラーに出所したくない、と頼み込んでいた。
ダミアンは、バルバラの存在が怖いのだという。
アパートの階段の踊り場に倒れていたバルバラは、出所したダミアンに助けられた。
ダミアンに、ルイスへ渡すお金が入った辞書を図書館に戻すよう頼んだバルバラは、救急車で運ばれていった。
翌日、バルバラの夫アルフレドから感謝の電話がかかってくる。
そして、バルバラに会ってほしい、と頼まれる。
包帯でぐるぐる巻きになった顔で、バルバラはダミアンにだけに真相を話したいと告げる。
そして、図書館でよく見かける男にレイプされた、と嘘をついた。
映画『マジカル・ガール』の結末・ラスト(ネタバレ)
刑務所で勉強を教えていたダミアンは、教え子同然のペポに会いに行った。
ダミアンは、ペポに助けを求めた。
そして、ルイスの事を突き止める。
飲み屋でルイスに近づき、銃で自分を撃ち殺すよう脅すダミアン。
バルバラの名前を出すとルイスは怒るが、強姦はしていないと言う。
浮気し、その場の録音を盾にバルバラを恐喝したことは認めた。
バルバラが自ら夫を裏切ったと聞かされ、ダミアンはルイスの頭を撃ち抜いた。
そして店にいた他の客も殺し、ルイスの携帯を手に入れるために、ルイスの家へと向かった。
家には、“魔法少女ゆきえ”のドレスを着てステッキを持ったアリシアがいた。
ルイスから、携帯を持ってきてほしいと頼まれた、と言い分けするダミアン。
しかしアリシアの視線に耐え切れず、アリシアを撃ち殺した。
携帯を持って、バルバラの病室に向かったダミアン。
バルバラが強姦されたと嘘をついたこと、本当は脅されていたことを知ったうえで、ダミアンはバルバラに携帯を見せた。
しかし証拠は存在しなかったと告げ、手の中にあった携帯を手品で消してみせた。
映画『マジカル・ガール』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
かなり不穏な空気が漂い何が何やらわからないままストーリーが進む本作。可愛らしいタイトル、そして劇中の可愛らしいアニメとは裏腹にラストの展開含めて不条理で衝撃的である。劇中で多く説明が与えられるわけではないため、登場人物たちの背景や心情に思いをはせる必要があり、その辺が、見る人を選ぶかもしれない。何かの解説で、魔法使いとその使い魔たちのバトルの映画だというものを見たが、筆者はその説を支持する。(男性 20代)
説明が本当に少ないため、とにかく観る人の想像力頼みの映画になっている。内容もタイトルから感じられるようなテンション高めの物語ではなく、いったいどこから間違えてしまったのかという負の連鎖が止まらない鬱々としたものである。魔法なんて奇跡は微塵も感じられないラストは強烈な後味の悪さが残る。日本のアニメへのリスペクトは非常に感じられる演出が多々あり、恐らく監督の好きなアニメは某鬱アニメである魔法少女の作品であろう。(男性 20代)
タイトルに反してファンタジーではなく、冷酷で皮肉に満ちたサスペンスでした。白血病の少女アリシアの夢を叶えようとする父の行動が、思わぬ連鎖を生み、悲劇へと転がっていく展開に言葉を失いました。登場人物が誰も完全な善人でも悪人でもなく、欲望や罪、過去が複雑に絡み合っていく構成が見事。特にバルバラの選択とその結末には強い余韻が残ります。観終わった後、何とも言えない虚無感に襲われました。(30代 男性)
全体的に静かで淡々とした空気なのに、どんどん心がざわついていく不思議な映画でした。最初は娘のために無理をする父親の物語かと思っていたのに、途中から不穏さが増していき、バルバラの過去やダミアンの存在が明らかになるにつれ、完全に予測不能な世界に引き込まれていきました。最後にすべての登場人物が不幸になる結末には衝撃を受けましたが、それでも美しさすら感じさせる演出が印象的でした。(20代 女性)
この映画は人間の欲望がいかに暴走し、周囲を巻き込んでいくかを見せつけるような作品でした。アリシアの“夢”という無垢な願いが、父ルイスの焦りや罪悪感を刺激し、そしてその善意が巡り巡ってバルバラという女性の人生を壊してしまう。彼女の選択の裏にある絶望や覚悟が痛ましくて、苦しくなりました。映像は美しく詩的である一方、内容は残酷で、何度も考え直させられる映画でした。(40代 男性)
「マジカル・ガール」という可愛らしいタイトルとは裏腹に、非常にダークで冷徹な物語。特にバルバラというキャラクターの深みには驚かされました。表面上はミステリアスで冷静に見えて、内には深い傷と怒りを抱えている。そしてラストの選択には心底震えました。正義も悪も曖昧な世界で、人が人を支配したり、壊したりしていく構図が本当に怖い。スペイン映画の底力を見せつけられた一作です。(50代 女性)
少女の死期が迫る中で繰り広げられる人間関係の崩壊と連鎖。どこか寓話的でありながら、リアルに胸に刺さる物語でした。父の思いが純粋であるがゆえに、誰かを傷つけてしまうこともあるという皮肉。それぞれのキャラクターの選択に善悪の区別がつけられないところも、この映画の怖さでした。観終わってもしばらく放心してしまい、自分の中に重く残るものがありました。(30代 女性)
最後まで結末が予想できず、思わず身を乗り出して観てしまいました。登場人物たちの間に交差する“過去”がじわじわと明かされていく構成が秀逸で、静かな映像の中に張り詰めた空気が常に漂っていました。バルバラがダミアンにしたこと、それをルイスが知らずに巻き込まれていく展開には震えました。静かだけど強烈な映画。スリルを求める人にもおすすめです。(20代 男性)
心理的な不安と緊張感がずっと続く、非常に巧妙な映画でした。特にバルバラという女性が象徴する“トラウマと支配”の構造がリアルで、社会の中に潜む暴力の形を強く意識させられます。少女の純粋さが皮肉な形で使われてしまう展開には胸が痛みました。静かな演出の中で暴力が語られることで、かえって衝撃が強まっていたと思います。万人向けではないけど、深い作品です。(40代 女性)
終盤、何かが崩れていくような感覚がありました。最初は淡々としていた物語が、人物たちの秘密と過去によって、じわじわと狂気へと変化していく。そのギャップがとても印象的でした。バルバラの行動は到底理解しがたいものの、彼女なりの理由があることが終盤で分かり、単なる悪役とは言えないところがこの映画の深さ。悲劇的だけど、強烈な印象を残す傑作です。(50代 男性)
映画『マジカル・ガール』を見た人におすすめの映画5選
歓びのトスカーナ
この映画を一言で表すと?
心に傷を負った2人の女性が、現実と幻想の間で奔走する痛快かつ切ないロードムービー。
どんな話?
精神病院で出会った二人の女性が、思いがけず施設を抜け出して旅に出ることに。笑いと涙を交えながら、それぞれの心の傷や過去と向き合っていく姿が描かれます。軽やかなテンポながら、心の深層に触れてくるような繊細な人間ドラマです。
ここがおすすめ!
コメディとシリアスが絶妙に融合した空気感は、『マジカル・ガール』のように“笑えないけど美しい”世界観が好きな人にぴったり。登場人物のバックグラウンドや心理描写の細やかさも魅力です。観終わったあと、心が少し軽くなるかもしれません。
ドッグトゥース
この映画を一言で表すと?
常識の崩壊を静かに見せつける、異常で不気味な家庭ドラマ。
どんな話?
外の世界を一切知らずに育てられた3人の兄妹。彼らの生活は“教育されたウソ”でできており、支配的な父の存在のもと、徐々にその異常さが露わになっていきます。日常的な映像の中で描かれる狂気が、じわじわと効いてくる不条理劇です。
ここがおすすめ!
『マジカル・ガール』同様、日常に潜む狂気や、家族という名の閉じた関係性に鋭く切り込んだ作品です。観る人によって解釈が大きく分かれる点も魅力の一つ。衝撃的な展開とラストは強烈な余韻を残します。
オールド・ボーイ
この映画を一言で表すと?
怒りと復讐が生む想像を絶する結末に、言葉を失う衝撃作。
どんな話?
突如監禁され、15年後に解放された男が、自らの過去と監禁の理由を探る復讐劇。次第に明かされる真実と、そこに隠された人間の深い業。緻密に構築されたプロットと暴力性が観る者を圧倒します。
ここがおすすめ!
『マジカル・ガール』と同じく、登場人物の行動がすべて“過去”に根ざしており、それが複雑に絡み合って悲劇へと収束する点が共通しています。暴力の描写は過激ですが、強烈な心理ドラマとしても非常に完成度が高い一作です。
ファニーゲーム U.S.A.(またはオリジナル版『ファニーゲーム』)
この映画を一言で表すと?
暴力の不条理と観客の無力さを突きつける問題作。
どんな話?
平穏なバカンスに訪れた一家が、突如現れた若者二人により理不尽な暴力の世界へ引きずり込まれていく。なぜ、彼らはこんなことをするのか?という問いに、決して明確な答えは与えられません。
ここがおすすめ!
『マジカル・ガール』のように、「なぜそうなったのか」が曖昧なまま観る者の精神を揺さぶる作品。観客の視点を逆手に取る演出や、暴力の冷たさが強く印象に残ります。観る人の道徳観や価値観に問いを突きつける映画です。
アンダー・ザ・スキン 種の捕食
この映画を一言で表すと?
人間性を持たない“存在”が人間に触れることで壊れていく、静かな恐怖と美しさの融合。
どんな話?
人間の姿をした“彼女”がスコットランドを彷徨いながら、男たちを誘惑し捕食していく。不気味な沈黙と抽象的な映像が続く中で、彼女が次第に“人間性”に目覚めていく変化が描かれます。
ここがおすすめ!
一見ミニマルで難解な構成ですが、心の奥に何かを残す不思議な映画です。『マジカル・ガール』のようにセリフよりも“空気”で語る映画が好きな人に強くおすすめします。映像も音楽も美しく、芸術的な魅力にあふれています。
みんなの感想・レビュー
娘のために尽くすルイス。だが彼はアリシアの真の願いを知らなかった。劇中ではパブの店員から、そしてアリシアが書いた手紙から、彼女の心の拠り所は何よりも父親にあることがはっきりと示されている。
バルバラはともかく不安定な女性である。彼女は夫を何よりも愛していたが夫をなくしたと思った時、少しだけ間違いを犯してしまった。そしてそのままそのツケを払うことになる。
ダミアンはバルバラのためならばと献身する。結果的に彼はルイスだけでなく、パブの店員そしてアリシアの娘までも殺してしまう。
それぞれが、自身の愛する者のためにとった行動が結果として思わぬ方向へ転がって行ったのであった。
マジカル・ガールでは劇中常に言い知れぬ不安がこちらを見つめている。それは例えばバルバラが夫を失ったとき静かに己の顔に傷をつけた時であったり、あるいは物語のラストでアリシアがダミアンを黙って見つめていた時にとりわけ強く感じる。
本作品のキャスト陣が素晴らしい理由はそこにある。彼女ら彼らが演じるシーンから私たちは、劇中以外のストーリー・心情を想像することができる。
アリシアの本当の望み、バルバラの夫への愛情、ルイスの誤解、そしてダミアンの心情。何が、そしてなぜそこまで彼らを突き動かすものがあったのか考え込んでしまう。
マジカル・ガールは後味の悪い作品と言えるか。そうではないと思う。ドミノ倒しのように1つ倒れたものが、絶大な波及効果を及ぼしただけなのだ。
一度動き始めればそれを途中で止めることは不可能である。いわば止まるはずのないものを諦観し見つめる以外ない。ゆえにこれほどブラックコメディの名が相応しい映画もないであろう。
ある意味ではそれぞれが自分にできるベストを尽くしたであろうに、ラスト30分はあまりにも理不尽な展開であった。
マジカル・ガールという題名からも連想できるが、近年可愛らしい題をつけながらも現実の残酷さや不条理を突きつける作品が増えたような気がする。
本作品の監督、カルロス・ベルムト氏も日本のアニメといったサブカルチャーから強く影響を受けており、劇中でいくつか細かく散りばめられているそれらの要素を見つけるのも楽しいと言える。