ポルトガルの鬼才ジョアン・ペドロ・ロドリゲスによる2009年のドラマ映画。ドラァグクイーンとして働く中年が恋人や息子たちと交流し、男として死ぬ決意をするまでを描く。2010年度カイエ・デュ・シネマ誌ベスト7位。
映画『男として死ぬ』 作品情報
- 製作年:2009年
- 上映時間:133分
- ジャンル:ヒューマンドラマ
- 監督:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
- キャスト:フェルナンド・サントス、チャンドラ・マラティッチ etc…
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映画『男として死ぬ』 評価
- 点数:65点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★☆☆☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『男として死ぬ』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『男として死ぬ』のあらすじを紹介します。
ドラァグクイーンとして働くトニア(フェルナンド・サントス)には悩みの種が多かった。薬物依存症で自分のものを勝手に売ってしまう恋人のロザリオに、軍隊で仲間を射殺して逃げ出した息子のゼ・マリア。仕事でも若手に居場所に奪われつつあり、唯一の癒しは飼い犬の存在くらいだ。そんなある日トニアはロザリオと飼い犬、そしてどこからともなくやってきた野良犬と一緒に小旅行に出かける。そこで出会ったのが隠遁生活を送る女装癖のある男マリア・バッカーだ。人生の不安をぶつけるトニアに彼は、自分に自信があるのなら生きたいように、女として生きろと伝える。一同はその後森の中で静謐な時間を過ごすのだった。そして家に帰ってくると、今まで無くしたりロザリオが売ったと思っていた品が飼い犬によって土に埋められていたことを知る。懐かしい品を前にこれまでの人生を振り返るのだった。
しかしトニアにはもう時間が残されていなかった。彼の身体はすでに病に蝕まれていたのだ。胸のシリコンを摘出されたトニアの元をかつての友人や仕事のライバルたちが見舞いに来る。そして女として生きた自分の人生に満足し、死ぬ時は男として死ぬことを決める。しばらくして死を迎えたトニアは男としてスーツ姿で埋葬されるのだった。そしてその隣には後を追って自殺したロザリオの姿もあるのだった。
映画『男として死ぬ』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『男として死ぬ』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
男と女の間で揺れる心
主人公のトニオは女装で生活し、胸にはシリコンを入れている。心も女性でロザリオというボーイフレンドもいる。しかし未だに唯一男性器だけは手放せずにいるのだ。これは彼(彼女)の中で母性と父性が共生していることを示す。子供っぽいロザリオに対しては母性が働くが、実の息子のゼ・マリアに対しては無理と知りながらも父親でありたいと思う。彼(彼女)が初めて自分の身体の異常に気づくシーンではこのことが視覚的に描かれている。豊かな胸からシリコンが漏れ出てくるということは女性性の危機であるはずなのだが、一瞬その白い液体は母乳に見えてしまうのだ。
死に際して選択される性
しかしその直後胸から漏れでてくるのは赤い血、即ち死の象徴だ。ここから物語はラストの死へと向かって動き出す。旅の途中に出会ったマリア・バッカーはトニオに対して、ありのままの自分を信じて女性として生きるように諭す。しかしならば死ぬ時はどうすればいいのだろうか。トニオは男として生まれ、女として生きながらも男を捨てきれなかった。人生最期の死を迎えるにあたって、彼(彼女)は初めて自分の意志で自分の性を決定することになるのだ。そしてその決断を経たからこそ、自分の死体を見下ろす死後のトニオの表情は清々しくも見える。
どんな生き方も最後は自分自身が決めれば良いのだと感じる作品でした。セクシャルマイノリティについて様々な議論がされていますが、全員が納得出来る結果なんて絶対に無いと思っています。だからこそ「理解」が必要なのです。女性として生きてきたトニオが、何故死ぬ時は男でいようとしたのか。解釈の仕方は人それぞれですが、その決断の中にはトニオにしか分からない苦悩や葛藤があったのでしょう。そして、自分自身で生き方を決めたのであれば本人以外の誰かが口出しすることではありません。それくらいの覚悟をして彼らは決断をしているのだろうと思います。
少数派を非難するのでは無く、自分の考え方とは異なる考えや歩み方をしている人のことを理解してあげられる広くて優しい心を持って生きたいと感じました。(女性 30代)
映画『男として死ぬ』 まとめ
セクシャルマイノリティーの抱える苦悩を、直接な性表現も交えながら描いている。ペドロ・アルモドバルの『オール・アバウト・マイ・マザー』などを彷彿させる作品だ。登場人物の殆どがゲイやその理解者であり、外部からの差別などは描かれない代わりに、主人公トニオの内面の葛藤が静かに描かれている。演出のスタイルも独特なもので、固定での長まわしや強烈な色使いを用いて心の揺らぎをすくいとっていく。
一方でキャラクターの設定が特殊なため感情移入をするのは難しいかもしれない。物語もエピソードを重ねていくタイプのもので、大きな流れでは描かれない。ただ何気ないエピソードの中にトニオの不安や孤独が描かれているので、是非見逃さないでもらいたい。
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