映画『人間椅子(1997)』の概要:1997年の日本映画。江戸川乱歩の原作小説を映像化した官能ミステリー作品。主演の潔癖な女流作家を清水美沙が演じ、セクシーで妖艶な演技を見せつけ話題になった作品。
映画『人間椅子』 作品情報
- 製作年:1997年
- 上映時間:86分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
- 監督:水谷俊之
- キャスト:清水美砂、國村隼、山路和弘、温水洋一 etc
映画『人間椅子』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『人間椅子』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『人間椅子(1997)』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『人間椅子』 あらすじ【起・承】
篠崎佳子は有名な女流作家だ。
しかも夫は外交官で稼ぎも良く、庭付きの邸宅に家政婦、運転手付きのリッチな生活を送っている。
彼女の短所と言えば極度な潔癖症。
夫との性行為はおろか、仕事も手袋をはめるほどだった。
彼女の仕事机の中には真新しい白い手袋がいくつも入っていた。
このことを夫の昭一郎も気にしていたが、妻を愛していることには変わらなかった。
そんな彼女の家に手紙が届いた。
貧しい家具職人と自らを名乗る人物で、名前は書いていない。
内容はこうだ。
椅子が好きでこだわり、材料や質にかけすぎて製作して販売をしても生活が楽にはならない。
いっそ死のうかと思ったが、脳裏にある考えがよぎったという。
椅子の形と座った自分の形が似ているということに気がつき、中に入ってみようと思ったのだ。
墓場のような椅子の中に感動を覚え、その様子を楽しんでいるのだという奇妙なものだった。
昭一郎は作家志望の戯言だと流した。
男の目的は椅子の中に入り盗みを働くことだった。
しかしそれは次第に変化し、椅子の女性主のぬくもりを楽しむようになった。
時がたつと座っている感触で誰が座っているかさえわかるようになったと言う。
映画『人間椅子』 結末・ラスト(ネタバレ)
そしてある時届いた手紙で、今自分が使っている椅子に家具職人が入っているということに気がつく。
恐怖から椅子に刃物を向ける佳子。
興味と気味の悪さが交差しながらも、佳子は男に惹かれていった。
ある時、手紙に会いたいと書いてあった。
悩んだあげく興味を持った佳子は会うことにし、指定された場所へ向かう。
そして自然に惹かれあうように床を共にする。
その男は顔が醜いと、顔を隠して行為に及んでいいたがそれが佳子の快楽度をあげた。
夫の間には感じることのなかったものだった。
男にはまってしまった佳子は一緒に駆け落ちをしようと考える。
しかしこの男とは、実は夫の昭一郎だった。
何故隠し通してくれなかったのかと嘆く佳子は、荷物を持ち出て行こうとする。
そんな佳子に昭一郎は俺も行くと、目をナイフで切りつけ盲目となる。
数ヶ月後。
自分を思い失明までしてくれた夫に心を通わせた夫婦。
前とはまた違う形の、愛の溢れる夫婦となったのだった。
映画『人間椅子』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『人間椅子(1997)』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
奇抜なアイデアで不気味さを狙う
本作品の見所は、人の心理状態を恐怖に陥れる作用を十分に発揮している原作・脚本にあると言える。
江戸川乱歩の作品は元々不気味なものが多く、霊的なものというよりは最終的に人間の仕業であることが多い。
今回もまさにその通り。
何より椅子職人が椅子の中に入り、当たり前に生活を送りそこにいる女性達を監視するという奇抜なアイデアには脱帽。
そのまさにタイトル通りの人間椅子が手紙書き、送られてくる恐怖もたまらない。
次第にその椅子が自分の座っている椅子だということが判明。
その怖さといったらない。
まさかそんなことが!という感じである。
人間の本当に恐いものは見える霊的恐怖では無く、どこにいるのか見えないものが近くにいるという怖さ、リアルに生きている人間の執着や発想の方が恐いものである。
まさかのラスト
どのようなラストに行くのか想像も出来ないあらすじで、椅子の中身は幽霊だったか、知り合いだったか。
すると人間椅子は旦那だったという衝撃的なオチ。
潔癖症すぎる妻を気にして何とかしたいと思い悩んだ末のことだった。
確かに夫の愛は凄い物だが、妻のために失明までするということは共感出来ない。
この夫の愛情は綺麗なものだけで片付けられない、何かいびつなものである可能性がある。
つまり変わり者同士の夫婦であり、極端な解決法が無い限り幸せになることが出来ない二人なのかもしれない。
究極の愛の形を人間の狂気を交えて描いた面白い作品である。
映画『人間椅子』 まとめ
江戸川乱歩の原作は読んだことが無い。
気味の悪い作風であることは何となく予想されるが、ここまで先の想像の付かない作品は初めて出会った。
どこに向かっているのかわからない恐怖感に苛まれていく。
最近では滅多に見なくなったが、清水美沙という女優も中々面白い。
静かで大和撫子の雰囲気を持ち合わせながら、目の奥に強い何かを隠し持っている役柄が上手なのだ。
97年の作品と言うことで古い昭和の臭いがするつまらない映画と見てみると、びっくりするほど想像力を掻き立てられる映画であった。
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