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映画『隠し剣 鬼の爪』あらすじネタバレ結末と感想

映画『隠し剣 鬼の爪』の概要:『隠し剣 鬼の爪』は、藤沢周平原作の時代小説の映画。『たそがれ清兵衛』に引き続き、監督は山田洋次。「隠し剣」シリーズはいくつかの短編小説でまとめられており、「鬼の爪」はその一つ。

映画『隠し剣 鬼の爪』 作品情報

隠し剣 鬼の爪

  • 製作年:2004年
  • 上映時間:131分
  • ジャンル:時代劇、アクション、ラブストーリー
  • 監督:山田洋次
  • キャスト:永瀬正敏、松たか子、吉岡秀隆、小澤征悦 etc

映画『隠し剣 鬼の爪』 評価

  • 点数:80点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★☆
  • 映像技術:★★★☆☆
  • 演出:★★★★☆
  • 設定:★★★☆☆

[miho21]

映画『隠し剣 鬼の爪』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)

映画『隠し剣 鬼の爪』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

映画『隠し剣 鬼の爪』 あらすじ【起・承】

幕末。東北の小国、海坂藩の下級武士・片桐宗蔵は、母と妹の志乃、そして女中のきえと共に小さな家で暮らしていた。
志乃は片桐の友人の島田に嫁ぎ、やがてきえも商家に嫁いでいった。

それから三年の後。母は亡くなり、使用人二人とひっそり暮らしていた片桐は、ある寒い雪の日にきえと再会する。久しぶりに見たきえは、やせ細り青ざめ、変わり果てていた。
それからしばらくきえのことが気になって仕方なかった。春になり、志乃から嫁いでいったきえがどんな扱いを受けているかを聞いた片桐は、居てもたってもいられず嫁ぎ先の伊勢屋に乗り込み、病で臥せっているきえを自宅まで連れ帰って看病しはじめる。
嫁いでからというもの、姑にこき使われていたきえは、流産してもなお休むことを許されずについに体調を崩してしまったのだった。

片桐や志乃の看病によってきえは回復し、みるみる元気を取り戻していった。快復してからは以前のように片桐の家で彼の世話をし、寂しかった家には明るさが戻った。

このまま幸せな生活が続くかに思われたが、世間は許してくれない。商家の嫁を奪い妾同然に囲っているとの噂が城中で広まり、片桐はきえを実家に帰すことを決断するのだった。

その頃、江戸藩邸で大事件が起こる。謀反の罪で多くの藩士が切腹を命じられ、片桐や島田の旧知の友である狭間は郷入りの刑で藩に護送されていた。

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映画『隠し剣 鬼の爪』 結末・ラスト(ネタバレ)

郷入り、つまり武士として切腹も許されず、山中で座敷牢に幽閉されていた狭間は、とうとう牢を破って逃亡し、百姓を人質に民家に立て籠もった。
狭間とは同じ剣術の師に教わった仲である片桐は、藩随一の一刀流の使い手とされる狭間に御前試合で勝ったこともある腕利きだ。家老は片桐に討っ手を命じた。
藩命に逆らうことはできない。討っ手を引き受けた片桐は、かつての師である戸田を訪ね、教えを請うた。以前片桐は戸田家秘伝の隠し剣である「鬼の爪」を授かったが、今度はそれとは別の剣を授かる。それは、相手から一瞬目をそらし、そこを狙ってきた所でがら空きになった相手の胸を斬るという剣だ。

その夜、狭間の妻が片桐を訪ね、夫の命乞いをしたが、片桐は断った。自分の身体を売ってでも夫の助命を願う妻を不憫に思ったが、どうやっても逃すことなどできない。狭間の妻はこの後さらに家老に助命を求めると言って帰って行った。

翌朝、片桐は狭間との果し合いに挑んだ。狭間は「鬼の爪」を授かれなかったことを恨みに思っており、さらに新しく片桐が授かった剣も卑怯な手だと罵った。最後まで片桐は「武士として切腹しろ」と説得したが、ついに狭間は鉄砲隊に撃たれ死んだ。

帰り道で会った狭間の妻は「家老は助命すると約束してくれた」と言った。しかし片桐はそのような話は聞いていない。家老は身体を売って夫の命乞いをする狭間の妻を騙したのだ。
狭間の妻はすぐに夫を追って自害し、それを知った片桐は家老の暗殺を決意する。
「鬼の爪」とは、果し合いのような場で使う剣ではない。掌に隠せるほどの小さな刀で、一瞬の一突きで相手を殺す技だ。心臓を一突き。血も噴出さず、何による傷なのかもわからないまさに鬼の爪にやられたかのような技。

復讐を成し遂げた片桐は、それでも気持ちは晴れなかった。そして二度と人を殺さないと決意し、禄を返上して武士を辞めることを決めた。
一介の町人となった片桐は、ひそかに想いつづけていたきえを訪ね、結婚を申し込むのだった。

映画『隠し剣 鬼の爪』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『隠し剣 鬼の爪』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

武士、そして剣の終焉

今回の映画も、『たそがれ清兵衛』と同様にいくつかの短編が合わさっている。舞台も藤沢周平の小説におなじみの、架空の小国・海坂藩だ。そこに映画オリジナルとして付け足された要素は、これまた『たそがれ清兵衛』と同じく幕末という時代設定。
平侍である片桐は、江戸からやってきた教官に新式の銃や大砲など、西洋式の兵術を学ぶ。この時代の流れに異を唱えるのは凝り固まった古い考えのご隠居たちなのだが、片桐も心から恭順しているわけでもない。
時代は剣や槍で真っ向から相手に立ち向かう戦い方から、飛び道具で戦う時代に移り替わっている。
一刀流の使い手である狭間は武士として誇りをもって切腹することもかなわず、騙し討ちのように新式の銃で撃たれて死んでしまった。片桐も、正々堂々と狭間を討つことすらできなかった。
武士の時代が終わっていくような悲しさのあるこの話は、原作の「隠し剣 鬼の爪」にはない設定だ。

武士と百姓の身分違いの恋

原作「隠し剣 鬼の爪」に足されたのが、きえとの身分違いの淡い恋だ。これもまあある短編を原作としてはいるのだが、やはり違うストーリーの小説を二つ組み合わせるとどこかおかしく感じてしまう。この二つを混ぜ合わせる意味がわからないのだ。
映画では、家老を暗殺して武士に嫌気がさし、きえを伴って町人として蝦夷へ旅立つラストだが、原作では違う。武士のままだ。二つを合わせた整合性はここで一応とれているが、必要だったかと言われると違う。


武士の世界はこんなにも理不尽なものなのかと、今を生きている私にはなかなか理解できませんでした。良い人が損をする世の中なんて許されるべきではありませんが、今作で永瀬正敏が演じる主人公はとにかく良い人で、それが故に葛藤する姿を見ていると胸が苦しくなってしまいます。
最後に登場する「隠し剣」。いつ出てくるのだろうと楽しみにしていましたが、ここでか!と痺れてしまいました。理不尽さとかっこよさにモヤモヤしながらも最後まで楽しめる作品です。(女性 30代)


山田洋二監督の日本アカデミー賞授賞作品です。時代劇ですが、所々にクスっと笑える場面があったりして、とても観やすい作品でした。役者さんも揃っていて、特に松たか子さん演じる女中のきえが、永瀬正敏さん演じる主人公で主人の片桐宗蔵を慕う健気さがとても可愛らしかったです。きえの「旦那様のご命令ですか?」という言葉が、最初は悲しく響き、最後はほっこりとした気分にさせてくれました。小澤征悦さんの迫真の演技も凄みがありました。

剣の師匠との場面で「逃げるのは身体で、心は攻め続ける」という言葉が印象に残りました。(女性 40代)


流石、藤沢周平の作品です。おしなべて穏やかな話の流れ、丁度良いユーモア、相手を思いやる言葉や視線、どれも滋味があります。最後の一瞬間に『隠し剣 鬼の爪』が出る点、そしてそれをタイトルにする所に心を打たれました。また、庄内地方の訛りが心地良く、癒されます。永瀬正敏の深い部分の魅力が垣間見え、慕わしい気持ちがそそり立ちました。下級武士の理不尽さには納得がいきませんが、貧しい生活がやけに清く美しいものに思えました。丁寧に実直に毎日暮らしたいです。(女性 30代)

映画『隠し剣 鬼の爪』 まとめ

山田洋次監督の前作『たそがれ清兵衛』が、これもいくつかの短編を組み合わせたものにも関わらずいい一つの作品に仕上がっていたのに対して、今回の映画はそこのところがよくなかった。どう考えても、きえとの恋のストーリーと、狭間との戦いそして家老暗殺の「隠し剣 鬼の爪」のストーリーとは上手く結びつかない。
そこの整合性がとれたならばよい作品になっていたと思う。こうなるくらいなら原作をそのまま一つの作品にしてくれた方が良かった。

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