この記事では、映画『ノルウェイの森』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『ノルウェイの森』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『ノルウェイの森』 作品情報

- 製作年:2010年
- 上映時間:133分
- ジャンル:青春、ラブストーリー
- 監督:トラン・アン・ユン
- キャスト:松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子、高良健吾 etc
映画『ノルウェイの森』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『ノルウェイの森』 あらすじネタバレ(起承転結)
映画『ノルウェイの森』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『ノルウェイの森』 あらすじ【起・承】
安保反対を訴え加熱する学生運動のさなか、上京してきたワタナベは孤独な学生生活を送っていました。学生寮に住み、顔見知りや気に入った場所を見つけても、生来の内気な性格と、故郷での苦い体験から、毎日を鬱屈した気持ちのまま過ごしています。
ワタナベにはかつて親友と呼べる男がいました。故郷での同級生キズキ。彼の恋人直子と三人で青春を過ごしますが、キズキは高校三年生のある日突然、自殺してしまいます。その経験が、彼の中では尾を引いていたのでした。
そんな大学生活の中、偶然直子と再会します。彼女との再会を喜び、何度かデートを重ねますが、直子の心は徐々に不安定になっていきます。
そしてついに、ワタナベが直子と肉体関係を持った直後に、彼女は姿を消しました。しばらくして届いた手紙には、京都のとある療養所に入ったと書かれていました。
直子を失った傷心の日々を過ごすワタナベにも、いくつか新しい出会いがありました。同じ寮の先輩の、秀才で女遊びの激しい永沢とその恋人のハツミと、同じ科の少女・緑です。彼らとの日々にそれなりの充実を感じ始めていたころ、直子から再び手紙が届きます。
それは、ワタナベが待ち望んでいた、「会いに来てほしい」と書かれたものでした。

映画『ノルウェイの森』 結末・ラスト(ネタバレ)
京都の山奥の療養所を訪れたワタナベは、数か月ぶりに直子に再会します。療養所での友人だというレイコも交え、しばし歓談する三人でしたが、直子はまたも不安定になります。死んでしまったキズキとの関係を上手く結べなかったことを深く後悔している彼女は、それでもワタナベに惹かれる心を無視できず、苦しんでいました。療養所近くの霧深い森の中で、彼女はその気持ちをワタナベに吐露し、絶叫します。そんな彼女を、ワタナベは抱きしめることしかできませんでした。
その夜、レイコは直子のリクエストでビートルズの「ノルウェイの森」を弾き語ります。
「わたし、この曲を聞くと、深い森の中を迷っているような気持になるの。」
東京に帰ったワタナベのもとに、緑から連絡が入りました。彼女の父親が病床で死に至ったのでした。
さらに半年後、ワタナベは再び直子とレイコのもとを訪れますが、直子の病状は悪化していくばかりでした。
そして夏のある日、直子は自殺します。それを伝えるため東京を訪れたレイコを招き、ふたりは彼女の死を悼みます。
ワタナベは直子を失った心を癒すためあてのない旅に出ます。一人で放浪する中で、彼は彼なりの答えを見つけようとします。
そしてある冬の日、彼は緑の元に戻ります。緑はそんな彼を優しく迎え入れ、抱きしめるのでした。
映画『ノルウェイの森』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ノルウェイの森』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
モノローグ
主人公ワタナベによるモノローグの多い今作は、映画ながら読み物のような作りが意識されています。モノローグがいわゆる描写の部分を担当するため、原作ファンにも親しみやすく、違和感も少なく楽しめます。またこのモノローグは、台詞も含め、原作の中と同じ表現が多用されており、これも原作ファンの心を掴む仕掛けとなっているのです。
キャスト
松山ケンイチ、菊地凛子など、演技派の若手俳優が多く起用されていますが、原作ファンの熱い支持はなかなか突破できないようです。また、登場人物の年齢設定が二十歳前後なのに対し、撮影当時のキャストの年齢が上回っているのも、敗因のひとつとして挙げられるように思います。
設定年齢とキャストの年齢が適合しないことはよくあることですが、特に今作では年齢が大きなファクターとなっています。監督には、追及してほしかった点です。
映像効果
トラン・アン・ユン監督といえば、デビュー作の「青いパパイヤの香り」から印象的な色と女性を映す監督として世界からも高い評価を受けていますが、今作でも、その作風は顕著に表れています。
序盤の、直子との出会いの公園でのシーンから、自然光で映し出される木々の緑と彼女の危うげな美しさが画面に映ります。また、全編にわたり青みがかったフィルターが用いられているため、人物の肌や髪から血色や艶が取り払われ、自然の緑は濃く、闇は深く映し出され、清潔で冷たい印象を受けます。また、こうすることで、直子の部屋でのキャンドルの灯りや、レイコの弾き語りシーンの焚火の光など、光がより印象的なシーンとして映ります。
キーとなるシーンを映像の効果により明確にすることで、一見緩急のない物語にメリハリをつけようとする監督の意図がうかがえます。
静かで、痛々しいほどに美しい映画だった。直子の繊細な心の崩壊と、ワタナベの孤独が、雪の中や静寂の風景に重なり合っていた。死と喪失を淡々と描くその冷たさが、逆に心に深く残る。緑との対比も鮮やかで、「生きること」を選ぶ彼女の存在が、物語全体の救いとなっていた。音楽と映像の余韻が長く続く、魂に染みる作品。(20代 男性)
村上春樹の世界をここまで映像化できたこと自体が驚き。トラン・アン・ユン監督の感性が、原作の空気をそのままスクリーンに閉じ込めている。静けさの中に潜む激情が美しく、特に直子が「もうだめ」と崩れるシーンでは息を呑んだ。ワタナベの孤独と彼女の不安定さが、音と光で交わる瞬間が圧巻。観終わってもしばらく心が動けなかった。(30代 女性)
この映画を「恋愛映画」と呼ぶのは少し違う。もっと深く、人間の“生”と“死”を描いた作品だと思う。直子の存在が消えていく過程が痛々しく、それを見つめ続けるワタナベの無力さが胸を刺した。緑の明るさに救われながらも、結局どちらも孤独の中に生きている。美しいのに、どうしようもなく切ない。(40代 男性)
映像がとにかく詩的で美しい。風、光、木々の揺れ、全てが登場人物の心情と呼応していた。ワタナベの中で死と生が交錯する描写は静かで、だからこそリアルだった。直子が消え、緑と向き合う終盤で、やっと彼が「自分の生」を掴み取るように感じた。どこまでも静かで、どこまでも深い、まさに文学の映像化。(30代 女性)
原作を読んでいたが、映画ではより“感覚的”に孤独が伝わった。トラン監督の映像は、説明ではなく“余白”で語る。音楽もビートルズの「ノルウェイの森」が絶妙に使われており、時代の儚さを感じさせた。直子と緑、二人の女性が象徴する“死と生”のコントラストが美しくも残酷。静かな傑作。(50代 男性)
観終わった後、深い孤独に包まれる映画。直子の死は悲しいが、それ以上に「生き残った人間の苦しみ」を描いている点が印象的。松山ケンイチの繊細な演技と菊地凛子の脆さが、心に残る。緑役の水原希子が見せる生命力が、まるで春のような光だった。暗くて美しい、大人のための恋愛映画。(20代 女性)
愛する人を失うこと、それでも前へ進むこと。その難しさを丁寧に描いた作品。直子の「壊れていく姿」は観ていてつらいが、ワタナベが彼女を“救えなかった”という現実こそが人間の限界を示していた。彼の中で死と再生が静かに繰り返される様が美しい。ラストシーンの“曖昧さ”も含めて、余韻が深い。(40代 女性)
映像の静けさが印象的だった。セリフよりも、表情と沈黙で語る映画。直子が抱える闇は誰にでもある“心の傷”の象徴で、彼女を愛しながらも支えきれないワタナベの姿が現実的だった。緑との出会いがまるで“希望の芽”のようで、最後の夜のシーンには涙した。人の弱さを優しく描いた名作。(30代 男性)
人生で一度は観るべき作品だと思う。若さの中にある“痛み”と“生の実感”を、これほど繊細に描いた映画は少ない。ワタナベの孤独、直子の儚さ、緑の強さ――それぞれが一枚の絵画のように配置されている。映像の静寂と音楽の響きが、まるで時間そのものを止めてしまう。観るたびに感じ方が変わる。(50代 女性)
「愛しているのに救えない」――このテーマが心に刺さった。直子が選んだ“死”は悲しいが、それが彼女にとっての唯一の安らぎだったのかもしれない。ワタナベは彼女の死を通して、自分が“生きること”を選ばざるを得なくなる。緑の存在がその希望の象徴。観る者に静かに問いかける、成熟した作品。(20代 男性)
映画『ノルウェイの森』を見た人におすすめの映画5選
海辺のカフカ
この映画を一言で表すと?
現実と幻想が交錯する、孤独と成長の寓話的ドラマ。
どんな話?
15歳の少年カフカが、家を飛び出して向かった四国の町で奇妙な出会いを重ね、自分の過去と向き合っていく物語。夢と現実、愛と喪失の境界があいまいに混ざり合い、観る者を不思議な世界へと誘う。村上春樹の小説らしい「現実の中の夢」を描く幻想的な作品。
ここがおすすめ!
『ノルウェイの森』のように、孤独・喪失・愛といった普遍的テーマを深く掘り下げている。映像表現が詩的で、静寂の中に哲学的な問いが潜む。登場人物たちの“生と死の狭間にいるような存在感”が心に残る、観る者を内省へと導く映画。
リリィ・シュシュのすべて
この映画を一言で表すと?
思春期の痛みと幻想を描く、音と孤独の叙情詩。
どんな話?
中学生の少年・雄一は、ネット上で崇拝する歌手リリィ・シュシュの音楽に救いを求めながら、暴力と絶望の渦中で心を閉ざしていく。音楽だけが現実の逃げ場であり、希望でもある。青春の儚さと痛みを鮮烈に描いた異色の青春映画。
ここがおすすめ!
『ノルウェイの森』と同じく、繊細な感情と“生きる痛み”がテーマ。岩井俊二監督の映像詩のような演出が美しく、音楽と心情が一体化している。青春の孤独をリアルに、そして幻想的に表現した傑作で、観る者の心に深く突き刺さる。
さよなら渓谷
この映画を一言で表すと?
罪と赦しを描く、重くも人間的なラブストーリー。
どんな話?
渓谷の町で暮らす男女。彼らの過去には、決して消えない“ある事件”が隠されていた。愛と罪の狭間で揺れる2人の姿を通して、「赦し」と「再生」の意味を問いかける。愛するとは何か、許すとは何かを静かに突きつけてくる作品。
ここがおすすめ!
『ノルウェイの森』のように、愛と死が紙一重の関係で描かれる。真木よう子と大西信満の生々しい演技が圧巻で、痛みの中に宿る愛の形を見せてくれる。人間の弱さと優しさが同居する、心に残る重厚な人間ドラマ。
ブルーバレンタイン
この映画を一言で表すと?
愛の始まりと終わりを切り取った、リアルで痛ましい恋愛映画。
どんな話?
かつて深く愛し合っていた夫婦ディーンとシンディ。時間の経過とともにすれ違い、関係は崩壊していく。過去と現在が交錯し、恋の始まりの輝きと終わりの虚しさを交互に見せる構成が胸を打つ。
ここがおすすめ!
『ノルウェイの森』の「愛の儚さ」をよりリアルに描いた作品。ライアン・ゴズリングとミシェル・ウィリアムズの演技は痛いほど生々しく、観る者の心をえぐる。恋愛の美しさと残酷さ、その両方を静かに見つめ直したくなる映画。
風立ちぬ
この映画を一言で表すと?
愛と夢、そして死の狭間を描く、大人のためのジブリ作品。
どんな話?
零戦設計者・堀越二郎の半生をモデルに、夢を追い続ける男と病に倒れる妻・菜穂子との愛を描く。時代の荒波の中で、“生きねば”と願う人々の儚い生を映し出す。
ここがおすすめ!
『ノルウェイの森』のように、美と死、夢と喪失を繊細に描く。宮崎駿監督の哲学的なアニメーション表現が深く、音楽と映像の調和が心を震わせる。生きることの痛みと尊さを静かに語る、大人が泣ける名作。






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