映画『インヒアレント・ヴァイス』の概要:ホアキン・フェニックス主演の探偵コメディ。共演はジョシュ・ブローリン、オーウェン・ウィルソン。ポール・トーマス・アンダーソン監督の2014年米国映画。原作はトマス・ピンチョン「LAヴァイス」。
映画『インヒアレント・ヴァイス』 作品情報
- 製作年:2014年
- 上映時間:148分
- ジャンル:コメディ、サスペンス
- 監督:ポール・トーマス・アンダーソン
- キャスト:ホアキン・フェニックス、ジョシュ・ブローリン、オーウェン・ウィルソン、キャサリン・ウォーターストン etc
映画『インヒアレント・ヴァイス』 評価
- 点数:80点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『インヒアレント・ヴァイス』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『インヒアレント・ヴァイス』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『インヒアレント・ヴァイス』 あらすじ【起・承】
1970年。カリフォルニア州、ゴルディータ・ビーチ。
ヒッピーの探偵ラリー・ドッグ・スポーテッロ(ホアキン・フェニックス)のもとへ、元彼女のシャスタ(キャサリン・ウォーター・ストーン)が訪ねてきた。
シャスタは、不動産王ミッキー・ウルフマン(エリック・ロバーツ)の愛人なのだが、ウルフマンが妻スローン(セレナ・スコット・トーマス)とその愛人から財産目当てで精神病院に入れるつもりだと聞いたと言う。
シャスタを助けるため、探偵ドッグは不動産王ミッキー・ウルフマンの行方を探すことに。
そして、ミッキー・ウルフマンについて調べるため、宅地開発しているという建築予定地を訪れた。
ところが、建築予定地にある、“チック・プラネット・マッサージ”店でバンビという娼婦に会った。その後、チャンネルヒュー地区で殺人事件が発生した。
殺されたのは、不動産王ミッキー・ウルフマンの部下だったらしい。
探偵ドッグは、犯人ではないかと疑われ、友人である警官ビッグフッド(ジョシュ・ブローリン)と会う。ビッグフッドは、凍ったチョコバナナが大好きな男で、過去に殺された相棒の事件をずっと追いかけていた。
また、探偵ドッグは、並行して、ホープ・ハーリンゲン(ジェナ・マローン)から依頼された夫コーイ・ハーリンゲン(オーウェン・ウィルソン)の行方も探すことになった。
依頼者ホープは、元ヘロインの中毒者。夫コーイとの間に娘アメジストがいた。娘の誕生後に夫コーイが失踪したと言う。
失踪したコーイの預金口座に大金が振り込まれていたため、妻は不審に思ったようだ。
映画『インヒアレント・ヴァイス』 結末・ラスト(ネタバレ)
探偵ドッグは、連絡がつかない元恋人シャスタを探すため、不動産王ミッキー・ウルフマンの妻スローンに会う。
そこで、彼女の愛人でスピリチュアル・アドバイザーの存在も知った。加えて不動産王ミッキー・ウルフマンのネクタイ室で、シャスタの姿が描かれたネクタイを発見した。
次に現在の恋人で検事のペニー・キンボル(リース・ウィザースプーン)に会い、シャスタからの依頼内容を話した。恋人のペニーは、不動産王ミッキー・ウルフマンの部下チャーロックの死に関わっているのかとドッグを疑う。
すると、疑惑を聞きつけたのか、FBIの職員2人も尋問にやってきた。
ようやく、コーイの行方を突き止めた探偵ドッグは、あるパーティ会場でサックス奏者で今は潜伏捜査官をしているコーイに会う。妻と娘の無事を伝えると、彼は喜んだ。
“俺、死んだことになってるんだ!”と話し、ある船が港に入港していると秘密を漏らす。
その船にシャスタは乗っているのだろうか?
またドッグは、パーティ会場で偶然会った、マッサージ店の娼婦バンビから、“チャンネルヒュー地区の殺人事件では、あなたはハメられたのよ!”と聞く。
一方、ビッグフッドは、いつものようにチョコバナナを食べながら、コーイ・ハーリンゲンが写った写真を見ていた。こいつもチャンネルヒュー地区の殺人事件に関わっているのかもしれない。死んだ奴が生きていたなんて!
喫茶店では、甘いパンケーキを何枚もおかわりするスイーツ好きという側面を見せた。
次に探偵ドッグは、相棒のデニスと共に“黄金の牙”エンタープライズという歯科医の組合本部へ行った。
そこで、ドラッグまみれの女性ジャポニカ・フェンウェイ(サーシャ・ピーターズ)に会う。
彼女は以前、家出した際、父親の依頼で探したことがあった。
彼女をドラッグ漬けにした張本人が、歯科医のルーディ・ブラッドノイド(マーティン・ショート)だった。
そして、“黄金の牙”がただの税金逃れの団体ではなく、犯罪に手を染めている集団であることが分かるのだ。
探偵ドッグは、ついに不動産王ミッキー・ウルフマンが入所しているという精神病院へ潜入した。そこには、“シャスタ”と書かれ、彼女の絵入りのネクタイを着用していた鉤十字のタトゥーが彫られた男がいた。
不動産ミッキー・ウルフマンは、カウチで寝ていた。彼は、“住宅は無料であるべきだ!”という考え方に変化したらしい。
ドッグは“シャスタはどこにいるんだ?”と聞くが、彼は答えなかった。
ある晩、テレビを見ていると、突然、シャスタが現れた。
“タイムマシンで戻ったのか?”
“奥さんと子供のところに戻ったわ。”と答えた。すると、電話がなり、ビッグフッドから、“お前の女、戻ったらしいな!黄金の牙について調べたのか?”と聞かれた。
探偵ドッグは、殺し屋エイドリアン・プロシャーについて調べ始めた。
プロシャーは、ビッグフッドが長年、捜査している相棒殺しの犯人だった。
ところが、プロシャーのアジトを訪ねた時、返り討ちに遭い、監禁されてしまう。
なんとか脱出を試みているところへ、ビッグフッドがやってきた。
“黄金の牙”が流していた20キロ分の麻薬が見つかり、車に乗せて隠した。
しかし、この事件の黒幕であるジャポニカの父親から、“返せ!”と脅迫されてしまう。
そこで、探偵ドッグは、コーイを解放することを条件に麻薬を返すことを約束した。
受け渡し場所に現れたコーイに、“自分の人生だ!しっかり生きろ!”と励ます。
事件解決後、探偵ドッグの家をビッグフットが訪れた。
草入り煙草を見たビッグフッドは俺にもよこせと言う。
“悪かったな。”とビッグフッドは謝った。そして、去っていった。
映画『インヒアレント・ヴァイス』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『インヒアレント・ヴァイス』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
トマス・ピンチョンの難解小説を初映画化!アメリカ社会における、インヒアレント・ヴァイス(内在している欠陥)とは
トマス・ピンチョンの原作小説「LAヴァイス」は、未読なのですが、映画化された「インヒアレント・ヴァイス」は文句なく面白いです!
原作と同様、難解な展開はありますが、少しだけ紐解いてゆきたいと思います。
ヒッピー文化を体現している探偵ドッグをはじめとする登場人物にとって、エロや麻薬、殺人は日常生活の一部です。劇中には、一部卑猥な表現も多く出てきますが、どうか笑って観て下さい。
なんでもありの社会で一見、全ての悪が許されているように見えるけれど、それが個人もしくは集団の“陰謀”だとしたら?と考えるのが、トマス・ピンチョン流の思考のようです。実にアメリカ人らしい考え方だと思います。
また、主人公は探偵ドッグですが、彼を上手く使って自分の目的(元同僚殺しの復讐)を果たす刑事ビッグフッドのしたたかさに圧倒されます。
劇中で、“愛という言葉を誰もが使いすぎている・・”と呟く台詞がありますので、私は、インヒアレント・ヴァイス(内在している欠陥)は、“愛と孤独”なのではないかと考えました。
愛は得ようとしても得られず、また得たとしても長くは続かないものだから。
人は、“孤独”に耐え切れず、“麻薬”など中毒にはまってゆく。
なんだか、この映画も不思議と何度も観たくなる“中毒性”がありますよ。
ポール・トーマス・アンダーソン監督×トマス・ピンチョンのカオスな世界
ポール・トーマス・アンダーソン監督は、「ハードエイト」という作品で監督デビューして、
現在まで7作品が製作されています。
今回は、カンヌ映画祭など世界の三大映画祭で監督賞を受賞した作品と「インヒアレント・ヴァイス」についてみてゆきたい。
まず、カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した、「パンチドランク・ラブ」(02)。
アダム・サンドラー主演のラブコメディです。シリアスな演技に注目して下さい。
次に、2008年にベルリン国際映画祭で銀熊賞に輝いた、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(07)。石油王を演じた、ダニエル・ディ・ルイスの演技に魅了されます。家族の絆など普遍的なテーマを追求しています。
3作目は、「ザ・マスター」(12)。ホアキン・フェニックスが主演し、濃厚な人間ドラマを展開しています。(ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞受賞作。)
また、「マグノリア」(99)でも、同じ賞を頂いているのだからスゴイ!本当に才能の豊かな監督です!
「インヒアレント・ヴァイス」では、難解なトマス・ピンチョンの原作「LAヴァイス」を映画化し、アメリカの内面的な問題をあぶり出すことに成功しています。
特に登場人物の多さと複雑に絡み合うストーリー展開が、色々な解釈を可能にしているのも魅力のひとつではないでしょうか。
ぜひ、原作小説を読むのもおすすめします。
この作品、私には全く理解できませんでした。特にあらすじやネタバレも見ずに鑑賞したので余計な先入観はなかったと思いますが、それにしても難しく一度見ただけではストーリーの半分も理解出来ていないと思います。
全体的にタトゥーやドラッグ、犯罪と言ったハードなシーンが多く、登場人物もファンキーな見た目をしています。そのため、カラフルで明るく分かりやすい作品かと思いきや、ストーリーはかなり緻密で繊細なサスペンス。
至る所に散りばめられる一見下品にも取れる世界観は「芸術」と呼ぶべきなのでしょう。もう一度しっかり見直して理解したい作品です。(女性 30代)
キャストがとにかく豪華、さらに突飛な衣装に目を奪われます。また、全編を通して退廃的な雰囲気が漂いますが、同時に突き抜けた明るさも持ち合わせており、未知の世界を感じました。ホアキン・フェニックスのオーバーすぎるリアクションには何度も爆笑してしまいます。主人公が麻薬中毒だからか、夢か現か判断し難いシーンが多くぼんやり眺めるだけでも大変面白いです。メッセージ性の有無や謎解き等、難しいことは考えず、大音量にしてもう一度鑑賞したいです。(女性 30代)
映画『インヒアレント・ヴァイス』 まとめ
アメリカの映画やドラマに、“陰謀説”や“侵略説”を絡めたサスペンスが多いことに気づいているだろうか?
その魅力にハマる理由が、「インヒアレント・ヴァイス」を観るとなんだか納得できるように思います。難解なストーリー展開や複雑な人間ドラマに翻弄させられますが、とても骨太でスリリングに満ちています。
見どころは、警官ビッグフッドの凍ったチョコバナナを食べるシーンやスイーツ好きや恐妻家といった設定などが魅力!ジョシュ・ブローリンのファンにはたまりません。
全体的にファンキーでかなりエロ色が濃いですが、そこも魅力なのではないでしょうか。
ポール・トーマス・アンダーソン監督、3大映画祭制覇なんて恐るべし!
これを知ったら、1度は彼の作品を観ないと、あなたの人生、ソンをしますよ!
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