この記事では、映画『百円の恋』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『百円の恋』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『百円の恋』 作品情報
- 製作年:2014年
- 上映時間:113分
- ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ、スポーツ
- 監督:武正晴
- キャスト:安藤サクラ、新井浩文、稲川実代子、早織 etc
映画『百円の恋』 評価
- 点数:85点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★★☆
映画『百円の恋』 あらすじネタバレ(起承転結)
映画『百円の恋』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『百円の恋』 あらすじ【起・承】
32歳になっても実家に引きこもっていた斎藤一子(安藤サクラ)は、母親が営む弁当屋も手伝わず、何もない日々をダラダラと過ごしていた。
ある日、離婚をして実家に帰ってきていた妹の二三子とささいなことで喧嘩になり、一子は家を出ていく。
安アパートで一人暮らしを始めたのはいいものの、働かなければ生活ができないことに気づいた一子は、食料品なども扱う100円ショップでアルバイトを始める。だがその店には社会的に問題のある従業員が多く、特に中年店員の野間明は何かにつけて一子にしつこく話しかけてくる男だった。
人見知りをしながらも何とか働けるようになってきた一子は、近所のボクシングジムでいつも見かける狩野祐二(新井浩文)に興味を持っていた。
そんな折、100円ショップの常連客でもある狩野から「試合を見に来い」と突然チケットを渡される一子。戸惑いながらも狩野の試合を見に行った彼女は、初めて見るボクシングに魅了される。
試合観戦の帰り、野間と食事に行った一子はそのまま帰ろうとするが、無理矢理ホテルに連れ込まれ、そこで性的暴行を受ける。
心身ともに傷つけられた一子だったが、非力な彼女にできるのは警察に通報することだけだった。

映画『百円の恋』 結末・ラスト(ネタバレ)
その後、付き合うことになった一子と狩野は、一子の部屋で同棲を始める。
プロボクサーの定年でもある37歳を迎えた狩野は引退して豆腐屋で職に就くが、そこで出会った女性と浮気をして部屋を出て行ってしまう。
怒りのぶつけどころのない一子は引き込まれるようにボクシングジムに入り、なぜかボクシングを始める。
これまでろくに運動もしてこなかった一子は思うように体を動かせなかったが、その反面、練習をすればするほどボクシングにのめり込んでいった。
我を忘れたように練習を重ねた一子は短期間で上達し、いつしか目標となっていたプロテストを受け、見事合格する。
ついに迎えた初試合。会場には一子の家族、そして狩野の姿があった。
これまで避けてきたもの、見て見ぬふりをしてきたものと初めて向き合い、自分の全てをボクシングにぶつける一子。だが対戦相手との実力の差は大きく、結果は惨敗に終わる。
試合後、会場の前で狩野と会った一子は、泣きながら「勝ちたかった」と告げる。
映画『百円の恋』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『百円の恋』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
安藤サクラと斎藤一子の魂
映画には、演技というものが必ず付随してくる。俳優や役者と呼ばれる人たちは、映画の中で他人を演じなければならない。どんなに自分とかけ離れた人物でも、試行錯誤しながら演じる。それが仕事だからだ。
だが稀に、演技という概念にとらわれない人がいる。彼らは誰かを演じるのではなく、誰かとして生きている。それも、たぶん無意識に。
安藤サクラも、そのうちの一人だと思う。
この映画の中にいるのは、斎藤一子を演じる安藤サクラではなく、斎藤一子本人だ。
自堕落な生活を送り、社会から見放され、自分自身と向き合うことを避けて生きてきた。だが、一人の男と出会い、ボクシングと出会い、変わっていく。どんなに殴られようと、血を流そうと、叫び、立ち上がる。そこにあるのは、紛れもなく斎藤一子の魂。そして、斎藤一子に人生の一部を捧げた安藤サクラの魂だ。
安藤サクラは演技力や短期間でのカラダ作りが評価され、第39回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞したが、今作で見られるのは彼女の演技ではない。今作で見られるのは、安藤サクラと斎藤一子の魂だ。
観察眼が発揮された脚本
今作は、『第1回松田優作賞』を受賞した足立紳の脚本を基に製作された。
足立紳が生み出す物語には、日常にいそうでいない、風変わりな登場人物が多い。彼自身は口数が少なく内向的な印象を受けるのだが、実は鋭い観察眼を持っている。だから、作中の登場人物や環境は彼の経験が反映されていることが多い。
斎藤一子は彼の知人がモデルになっているし、100円ショップの店員たちも、恐らく彼自身が以前働いていた100円ショップで出会った人物がモデルになっているのだろう。その、日頃から周囲を見渡す観察眼が、設定にうまく活かされている。
引きこもりを卒業したと思ったら、今度は社会の「つまはじき者」たちと働くことになり、屈辱を受け、傷つけられ、男と出会っても裏切られる。だがそんな一子に、一筋の光が見える。ボクシングだ。ボクシングをしている時だけは、自分と向き合うことができる。
こういった設定の妙が、物語に現実味を持たせ、観客を惹きつける。その設定を生み出しているものこそが、彼の観察眼なのだ。
安藤サクラでなければここまでクールな作品にはならなかっただろう。
上手く言えないのだが、そこにいるのは女優ではなく、ほんとうにただの引きこもりのだらしのない女にしか見えなかった。それを表現できることがすごいと思う。
ボクシングに出会ってからの一子は、体型も顔つきもどんどん変わり、凄みを感じた。
リングで戦う姿にはただただ圧倒される。
物語としてはそれほど好きなタイプではなかったのだが、安藤サクラの本気を感じる、魂のこもった作品だった。(女性 40代)
荒野でのひと試合で人生が変わるわけじゃない、でもそこには確かな再生の光があった。主人公・一子の中年女子が、腐りきった自分を殴りつぶし、新たな自分に目覚めるボクシングへの挑戦は痛快そのもの。グローブを握る指に込められた〈100円の覚悟〉の重さが、画面を超えて胸に響いた。観終わった後、自分も一歩踏み出せる気になりました。(20代 男性)
主人公の一子には最初、全く期待できませんでした。ダメ女すぎて感情移入も難しいのでは…と思っていたのに、気づいたらスクリーンに釘付け。着実に小さな進歩を積み重ねていく姿は眩しく、ラストで試合に臨む彼女の表情が本当にかっこよかった。夢や可能性に年齢は関係ないと思わせる、深くて優しい青春映画だと感じました。(20代 女性)
自分と一子、年齢は近いのにまるで他人事のようだった。仕事も恋も失敗続き、でも「変わりたい」という小さな炎を持てたことに救われた。彼女の気持ちがパンチに変わる瞬間、私も頑張らなきゃという気持ちになりました。最後、自分を信じてリングに立つ一子の姿には、思わず涙が溢れました。(30代 女性)
“人生が終わっていると思ったその瞬間から変われる”。見た目以上に心の変革が込められた作品だと感じました。百円ショップでグローブを買うシーンすら、彼女の再起の象徴のようで印象深い。自己肯定できずに消えそうだった彼女が、格闘技という手段で自分を取り戻すプロセスが丁寧で、胸を打ちます。(30代 男性)
中年の再出発映画かと思ったら、パンチの音や血色に胸が熱くなる青春映画だった。二階堂ふみさんの全身全霊の演技に圧倒され、自分の人生を言い訳してきた弱さが痛いほど刺さった。ラストシーン、汗まみれで笑う彼女の顔が最高に美しく、歳を重ねても戦える気持ちになりました。(40代 女性)
ボクシングというジャンルへの本気感が痺れます。プロでもアマでもない、〈百円〉の覚悟で立ち上がる主人公に、理屈を超えた説得力を感じました。恋も仕事も失敗ばかりの人生に、救いの光を与えてくれたのはパンチだった。弱さのままのスタートなのに、その弱さすら魅力に変える描写が素晴らしい。(40代 男性)
すごくシンプルなのに、そこがまた良い!無職・貯金100円、そんな彼女が拳と共に運命を変えていく。始まりはお金の問題なのに、やがて自分の価値観や生き方に向き合う姿に涙が止まらなかった。思春期に見たら人生が変わっていたかも、と思うほど深い余韻のある作品でした。(10代 女性)
「ダメな自分でも戦えるんだ」と思えた映画。まるで体育館の隅で見ているような質感の映像がリアルすぎて、主人公と一緒に呼吸してしまうようでした。最後の試合のパンチの音が内臓に響くようで、映画館でゾクッとしました。見終わった後、グローブを握りたくなるような一作です。(20代 男性)
絶望から再起をつかむ映画なのに、重くない。むしろ心地よくて、強くて切ない。競技だけが主題じゃなくて、人間としての「立ち直り方」を誰よりも丁寧に描いてくれた傑作です。やり直しに遅いなんてない。齢39ですが、私にも「もう一度」ができる気がしました。(50代 男性)
映画『百円の恋』を見た人におすすめの映画5選
あゝ、荒野
この映画を一言で表すと?
魂をむき出しにして拳を交える、不器用な男たちの心の再生劇。
どんな話?
ボクシングを通して、自分の存在価値を問い直す2人の青年の成長を描いた濃密な青春映画。ぶつかり合い、傷つきながらも、少しずつ未来を切り開いていく姿に心が揺さぶられます。
ここがおすすめ!
菅田将暉とヤン・イクチュンの演技合戦は圧巻。肉体と精神がぶつかり合う濃密なボクシング描写に加え、孤独を抱えた者同士の不器用な友情が深く刺さります。社会の片隅にいる人にこそ響く作品です。
彼女がその名を知らない鳥たち
この映画を一言で表すと?
愛と執着の境界線を揺さぶる、濃密で毒のあるラブサスペンス。
どんな話?
自堕落な日々を送る主人公・十和子が、最低な恋人と奇妙な同居人の間で揺れ動きながら、過去と向き合っていく物語。ミステリーと恋愛が交差する濃密な心理劇です。
ここがおすすめ!
蒼井優と阿部サダヲの圧倒的な演技力が物語を牽引。嫌悪感すら抱かせるキャラクターたちが、ラストには切ないほど愛おしく見える展開が見事です。感情の深みを味わいたい方におすすめ。
ヒメアノ〜ル
この映画を一言で表すと?
日常が一瞬で崩れる衝撃のサイコスリラー。
どんな話?
ごく普通の青年の視点で始まるラブコメのような物語が、元同級生との再会をきっかけに予想外の展開へ。笑っていたはずが、いつの間にか背筋が凍る展開に巻き込まれます。
ここがおすすめ!
森田剛の狂気的な演技が圧巻で、「人の内面に潜む闇」を突きつけてきます。ラブストーリーとしての側面とサスペンスとしての落差が強烈で、強い印象を残す作品です。
パレード
この映画を一言で表すと?
見えない孤独が交差する、静かな衝撃を持つ群像劇。
どんな話?
シェアハウスに暮らす4人と1人の男。彼らの一見平和な日常に潜む秘密と、そこに忍び寄る不穏な影。人と人との距離感や心の闇に切り込むサスペンス・ドラマです。
ここがおすすめ!
登場人物全員が「何かを隠している」緊張感が最後まで続きます。青春の光と影を巧みに描きながら、ラストで見せる一撃が鮮烈。静かながら深く心に残る一作です。
リンダ リンダ リンダ
この映画を一言で表すと?
青春の一瞬を掴み取る、音楽と友情の瑞々しい記録。
どんな話?
文化祭直前に結成された即席ガールズバンドが「リンダリンダ」を演奏するために奮闘する数日間を描いた、さわやかで少し切ない青春群像劇。
ここがおすすめ!
大きなドラマはないけれど、だからこそリアル。片言の日本語を話す留学生ソンの存在が、物語に温かみと風通しの良さを加えています。観終わった後、音楽が聴こえてきそうな心地よさ。
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