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映画『百円の恋』あらすじネタバレ結末と感想

映画『百円の恋』の概要:30歳を過ぎても実家に引きこもっていた女性がボクシングと出会って変わっていく姿を描いた2014年公開の日本映画。主演の安藤サクラは第39回日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞を受賞した。

映画『百円の恋』 作品情報

百円の恋

  • 製作年:2014年
  • 上映時間:113分
  • ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ、スポーツ
  • 監督:武正晴
  • キャスト:安藤サクラ、新井浩文、稲川実代子、早織 etc

映画『百円の恋』 評価

  • 点数:85点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★☆☆
  • 映像技術:★★★☆☆
  • 演出:★★★☆☆
  • 設定:★★★★☆

映画『百円の恋』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)

映画『百円の恋』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

映画『百円の恋』 あらすじ【起・承】

32歳になっても実家に引きこもっていた斎藤一子(安藤サクラ)は、母親が営む弁当屋も手伝わず、何もない日々をダラダラと過ごしていた。

ある日、離婚をして実家に帰ってきていた妹の二三子とささいなことで喧嘩になり、一子は家を出ていく。

安アパートで一人暮らしを始めたのはいいものの、働かなければ生活ができないことに気づいた一子は、食料品なども扱う100円ショップでアルバイトを始める。だがその店には社会的に問題のある従業員が多く、特に中年店員の野間明は何かにつけて一子にしつこく話しかけてくる男だった。

人見知りをしながらも何とか働けるようになってきた一子は、近所のボクシングジムでいつも見かける狩野祐二(新井浩文)に興味を持っていた。

そんな折、100円ショップの常連客でもある狩野から「試合を見に来い」と突然チケットを渡される一子。戸惑いながらも狩野の試合を見に行った彼女は、初めて見るボクシングに魅了される。

試合観戦の帰り、野間と食事に行った一子はそのまま帰ろうとするが、無理矢理ホテルに連れ込まれ、そこで性的暴行を受ける。

心身ともに傷つけられた一子だったが、非力な彼女にできるのは警察に通報することだけだった。

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映画『百円の恋』 結末・ラスト(ネタバレ)

その後、付き合うことになった一子と狩野は、一子の部屋で同棲を始める。

プロボクサーの定年でもある37歳を迎えた狩野は引退して豆腐屋で職に就くが、そこで出会った女性と浮気をして部屋を出て行ってしまう。

怒りのぶつけどころのない一子は引き込まれるようにボクシングジムに入り、なぜかボクシングを始める。

これまでろくに運動もしてこなかった一子は思うように体を動かせなかったが、その反面、練習をすればするほどボクシングにのめり込んでいった。

我を忘れたように練習を重ねた一子は短期間で上達し、いつしか目標となっていたプロテストを受け、見事合格する。

ついに迎えた初試合。会場には一子の家族、そして狩野の姿があった。

これまで避けてきたもの、見て見ぬふりをしてきたものと初めて向き合い、自分の全てをボクシングにぶつける一子。だが対戦相手との実力の差は大きく、結果は惨敗に終わる。

試合後、会場の前で狩野と会った一子は、泣きながら「勝ちたかった」と告げる。

映画『百円の恋』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『百円の恋』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

安藤サクラと斎藤一子の魂

映画には、演技というものが必ず付随してくる。俳優や役者と呼ばれる人たちは、映画の中で他人を演じなければならない。どんなに自分とかけ離れた人物でも、試行錯誤しながら演じる。それが仕事だからだ。

だが稀に、演技という概念にとらわれない人がいる。彼らは誰かを演じるのではなく、誰かとして生きている。それも、たぶん無意識に。

安藤サクラも、そのうちの一人だと思う。

この映画の中にいるのは、斎藤一子を演じる安藤サクラではなく、斎藤一子本人だ。

自堕落な生活を送り、社会から見放され、自分自身と向き合うことを避けて生きてきた。だが、一人の男と出会い、ボクシングと出会い、変わっていく。どんなに殴られようと、血を流そうと、叫び、立ち上がる。そこにあるのは、紛れもなく斎藤一子の魂。そして、斎藤一子に人生の一部を捧げた安藤サクラの魂だ。

安藤サクラは演技力や短期間でのカラダ作りが評価され、第39回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞したが、今作で見られるのは彼女の演技ではない。今作で見られるのは、安藤サクラと斎藤一子の魂だ。

観察眼が発揮された脚本

今作は、『第1回松田優作賞』を受賞した足立紳の脚本を基に製作された。

足立紳が生み出す物語には、日常にいそうでいない、風変わりな登場人物が多い。彼自身は口数が少なく内向的な印象を受けるのだが、実は鋭い観察眼を持っている。だから、作中の登場人物や環境は彼の経験が反映されていることが多い。

斎藤一子は彼の知人がモデルになっているし、100円ショップの店員たちも、恐らく彼自身が以前働いていた100円ショップで出会った人物がモデルになっているのだろう。その、日頃から周囲を見渡す観察眼が、設定にうまく活かされている。

引きこもりを卒業したと思ったら、今度は社会の「つまはじき者」たちと働くことになり、屈辱を受け、傷つけられ、男と出会っても裏切られる。だがそんな一子に、一筋の光が見える。ボクシングだ。ボクシングをしている時だけは、自分と向き合うことができる。

こういった設定の妙が、物語に現実味を持たせ、観客を惹きつける。その設定を生み出しているものこそが、彼の観察眼なのだ。


安藤サクラでなければここまでクールな作品にはならなかっただろう。
上手く言えないのだが、そこにいるのは女優ではなく、ほんとうにただの引きこもりのだらしのない女にしか見えなかった。それを表現できることがすごいと思う。

ボクシングに出会ってからの一子は、体型も顔つきもどんどん変わり、凄みを感じた。
リングで戦う姿にはただただ圧倒される。
物語としてはそれほど好きなタイプではなかったのだが、安藤サクラの本気を感じる、魂のこもった作品だった。(女性 40代)

映画『百円の恋』 まとめ

忘れてはいけないのは、これが恋の物語ということだ。

一子が変わるきっかけとしてボクシングとの出会いが重視されがちだが、実は違う。狩野と出会ってボクシングを知り、狩野との別れによってボクシングを始める。すべて狩野がきっかけなのだ。

本編中、一子と狩野との恋物語は意外と短い。だが、その短い部分が重要だったりする。人間同士、好きか嫌いかだけでは表せない感情もある。単純に見える気持ちが、実はすごく複雑だったり。だから狩野も、一子の試合を見に来る。試合に負けて泣いている彼女を食事に誘う。

そんな、2人の感情の変化や距離感を表現した恋の物語が今作の醍醐味でもある。

だが、もちろんボクシングと一子との関係も見逃せない。前半ではたるんでいた一子のお腹はどんどん引き締まり、表情も変わっていく。一発一発を真剣な眼差しで打ち込む姿が本当に格好良い。そして、血まみれになりながら立ち上がろうとする姿に目頭が熱くなる。

これは、自分自身と向き合えるものに出会うことができた一人の女性の、恋の物語だ。

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