映画『仄暗い水の底から』の概要:大ヒットホラー映画『リング』や『らせん』などの原作者である作家鈴木光司の短編集「仄暗い水の底から」に収録されている「浮遊する水」が原作。主演は黒木瞳で、監督は中田秀夫が務めた。
映画『仄暗い水の底から』 作品情報
- 製作年:2001年
- 上映時間:101分
- ジャンル:ホラー
- 監督:中田秀夫
- キャスト:黒木瞳、小日向文世、小木茂光、徳井優 etc
映画『仄暗い水の底から』 評価
- 点数:75点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『仄暗い水の底から』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『仄暗い水の底から』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『仄暗い水の底から』 あらすじ【起・承】
温かい家庭を作ることに憧れを持っていた淑美。夫との間に、一人娘郁子を設けるが、夫婦仲がうまく行かずに離婚調停をすることになった。5歳の郁子を連れ、淑美はある中古の分譲住宅に越してくるが、何故か三階の部屋なのにひどい湿気に悩まされることになってしまう。天井からの水漏れを管理人に訴えても受け入れてもらえない。また、コップに水を汲むと髪の毛が一本入っていた。真上の部屋の住人を訪ねても、何かいる気配はするものの誰も出てこなかった。
同時に郁子にも変化が現れる。独り言をぶつぶつと言っていたり、屋上で見つけた赤いかばんに執着を見せるのだ。淑美は、近所の張り紙で、上の階にかつて住んでいた美津子という少女が二年前から行方不明になっている事実を知る。美津子の境遇を知った淑美は自分の幼いころの孤独と重ね合わせるものの、郁子が高熱を出したことをきっかけに、美津子が郁子を連れ去ろうとしているのではと考えるようになる。
意を決した淑美が真上の部屋を訪ねると、鍵が開いておりそこは一面水浸しだった。管理人と不動産屋に連絡を取った淑美は、立ち入り検査をしてもらえることになって安堵するが、事態は収まらなかった。
映画『仄暗い水の底から』 結末・ラスト(ネタバレ)
奇妙な現象が続き、まだ何も終わっていないと考える淑美は、美津子が行方不明となった事件について調べ続けた。その結果、美津子が行方不明になった日、たまたま屋上にある貯水槽の定期点検の日だったことが判明。水に関わる怪異が起きるのは、美津子が屋上の貯水槽で溺死したからなのではと考える淑美。
風呂場に突如汚水があふれ、郁子が引きずり込まれそうになるのを助ける淑美。倒れ込んだ郁子を抱きかかえて部屋から逃げようとエレベーターに乗り込んだ。しかし、抱きしめていた少女は娘郁子ではなく、美津子だったのだ。美津子は郁子を連れていきたかったのではなく、寂しさのあまり母親を欲していたのだと悟る淑美は、自分が犠牲になれば郁子が助かると決意する。部屋から飛び出して泣きながら追ってくる郁子とエレベーターの硝子越しに見つめ合う。何故か水にあふれるエレベーターの中で、淑美は美津子を抱きしめて目を閉じた。
幼いころ母が行方不明になった郁子は、十年後にマンションを訪れる。そこには母の姿があり、郁子は自分を守るために母が犠牲になったことを知るのだった。
映画『仄暗い水の底から』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『仄暗い水の底から』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
ジャパニーズホラー
暗くて、湿っぽくて、グロテスクさはあまりなくて、恨みつらみが根源にある、これぞジャパニーズホラーと言える作品。とにかく最初から最後まで、暗い。水にまつわる怪異ばかりなので、なんだか見ているこちらまで湿っているような気にさせられる。また、水というのはある意味生活でなくてはならないものなので、お風呂に汚水が流れ込むだとか、コップの水に異物があるだとか、そういった生活に欠かせないところに怪異が紛れ込むのはなかなかに威力がある。個人的には、海外の派手なスプラッターよりもよっぽど怖いと感じる。肌に密接してくるような恐怖である。
それをきちんと描き切っているのが非常に良い点であり、これぞジャパニーズホラーであると胸を張って海外にも送り出せる作品なのではないだろうか。だからこそ、ハデな演出が好きな人にとっては満足できないかもしれない。美津子が最後に出てくるとは言え、本当に少しだけだし、別段ショッキングなビジュアルをしているわけでもない。地味と言えば非常に地味だ。その地味さがまた素晴らしいと思うのだが、盛り上がりに欠けると受け止める人もいるかもしれない。
母の愛
ジャパニーズホラーに欠かせないのが、憐憫というか「かわいそう」という感覚だと思う。この作品は存分に「かわいそう」である。美津子ももちろんだが、なんといっても淑美が最後に決意する、娘のために自分がここで、というのはあまりに辛い選択である。ただ怖いだけで終わらない、じっとりとした悲しい物語が日本ならではだと考えている私にとっては、辛いけれど拍手を送りたい結末だった。
映画『仄暗い水の底から』 まとめ
日本のホラーの代表作と言っていいほどの出来栄え。しかし『リング』と比べるとインパクトに欠ける。そのため、つまらないと感じる人もいるかもしれないが、最初から最後まで湿っぽい怖さがまとわりついてくるので間違いなく良作だと思う。黒木瞳の演技も記すまでもないがさすがとしか言いようがなく、少しヒステリックだが娘のために必死になる母親を熱演している。また登場人物が少なく場もほとんど動かないからこそ、日常にこんな恐怖が潜んでいたらという恐怖がぐっと迫ってくる描き方にも注目である。
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