映画『ミュリエル』の概要:エレーヌはかつての恋人と再会し同居生活を始めるがそこに愛は見出せない。アラン・レネ監督が過去にすがりついて生きる空虚な人々を独特のタッチで描く。1963年公開のフランスとイタリアの合作映画。
映画『ミュリエル』 作品情報
- 製作年:1963年
- 上映時間:118分
- ジャンル:ヒューマンドラマ
- 監督:アラン・レネ
- キャスト:デルフィーヌ・セイリグ、ジャン=バティスト・チェーレ、ジャン=ピエール・ケリアン、ニタ・クライン etc
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映画『ミュリエル』 評価
- 点数:75点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★☆☆☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『ミュリエル』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『ミュリエル』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『ミュリエル』 あらすじ【起・承】
1960年代のフランス。エレーヌ(デルフィーヌ・セイリグ)は死別した夫の連れ子だったベルナール(ジャン=バティスト・チェーレ)と港町のブローニュで骨董商をして暮らしている。ベルナールは兵士としてアルジェリアにいたが、8か月前に帰ってきた。
エレーヌは昔の恋人のアルフォンスに“会いたい”と手紙を出していた。手紙を読んだアルフォンスは姪だと偽って愛人のフランソワーズを連れ、パリからエレーヌに会いに来る。エレーヌは2人を自宅に招いて歓迎するが、4人の歯車はうまくかみ合わない。
エレーヌにとってアルフォンスは初恋の人であり、かつて2人は熱烈に愛し合っていた。しかしエレーヌはアルフォンスとよりを戻したいと思って呼んだわけではなかった。2人は遠い過去の話ばかりをしながら、何となく同居生活を続ける。
ベルナールはアルフォンスを嫌いアトリエで寝泊まりするようになる。彼はアルジェで仲間とともに若い女性を拷問の末に殺してしまった過去に苦しんでいた。彼はその女性を“ミュリエル”と呼び、ベルナールにはミュリエルという婚約者がいると伝えていた。
映画『ミュリエル』 結末・ラスト(ネタバレ)
2年前にこの町で暮らし始めてからエレーヌはカジノにはまっており、毎晩のように出かけていく。それはアルフォンスが来てからも変わらず、借金をしてでもカジノをしないといられなくなっていた。
長期滞在をしているアルフォンスをエルネストという男が探しにくる。実は彼はアルフォンスの妻の兄で、職を探すと言って出て行ったまま帰らない義弟を探していたのだ。アルフォンスがエレーヌやこの町の人に語っていたことは全てが嘘だった。
煮え切らないアルフォンスの態度にしびれを切らしたフランソワーズは、1人でパリへ帰ると言い出す。彼女は思い出だけで生きているエレーヌやアルフォンス、そしてベルナールにも嫌気がさしていた。
エレーヌの友人も招いてパーティーをしている最中にエルネストが訪ねてくる。パーティーに参加したエルネストはアルフォンスの嘘を全て暴露し、2人は大喧嘩になる。ショックを受けたエレーヌは家を飛び出していく。
ベルナールは拷問の主犯格だったロベールを撃ち、エレーヌに別れを告げてどこかへ行ってしまう。アルフォンスはエルネストに連れられパリへ帰る途中で再び逃げ出す。
映画『ミュリエル』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ミュリエル』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
頭で理解するよりも漠然と感じる
あらすじを見てもわかるように、はっきりとしたストーリーがある作品ではない。アラン・レネ監督らしい観念的な作風で、こういう映画を見慣れていない人には少々きつい作りになっている。難解すぎて意味が全くわからないというほどではないのだが、起承転結がしっかりあるハリウッド映画や邦画などを見る感覚では見られない。詩を鑑賞するような気持ちで、意味を理解するというより漠然と感じるものがあるかないか…それだけでいい。
過去にすがりたくなる時
とにかく話がほとんど前進しない。さらに登場人物たちが成長することもない。主人公のエレーヌと昔の恋人のアルフォンスは過去の話ばかりをするのだが、その過去が何か重要な意味を持っているわけでもない。ただあの時はああだった、こうだった、私が悪いだのあなたが悪いだのと話し続けているだけだ。しかも2人とも今の暮らしはどん詰まりなので、互いに現在のことは語りたがらない。今の現実を直視するのが嫌なので、過去に逃げ込んでいるようにも見える。
過去というのはいくらでも自分に都合よくすり替えられるものであり、元カレや元カノに抱く甘い幻想もその類だ。エレーヌやアルフォンスのように“昔の恋人に会いたい!”と衝動的に思う時というのは、たいてい今がダメな時だろう。今が充実し、愛に満たされていれば、わざわざ昔の恋人に会いたいなどと面倒なことは思わないはずだから。
捨てたい過去
一方で“人を殺した”という罪を背負うベルナールの過去は重い。仲間と拷問して若い娘を殺してしまったベルナールはずっとその過去に囚われ苦しんでいる。彼はその娘に“ミュリエル”という名前をつけ、彼女のことを考え続ける。
“思い出”として他人と語り合えるような過去は曖昧で甘美だ。しかし捨てたい過去はその後もずっとその人の心をむしばみ続け、最悪の場合は生きることさえ困難にしてしまう。
最後にベルナールはエレーヌに別れを告げて姿を消す。ロベールを撃ち、海にカメラを投げ捨てたのは過去との決別を意味すると思うのだが、他の何かを消しても自分の中の過去は消えない。おそらくベルナールは生きている限り、ミュリエルから逃げられないだろう。
映画『ミュリエル』 まとめ
主要な登場人物はいい大人なのにほぼ仕事をしておらず、飲んだり食ったりタバコを吸ったりしながら今更どうにもならない過去の話ばかりしている。地に足のついた堅気の人生を送っている人が見ると“なんだこいつら?暇なの?”としか思えないかもしれない。好き嫌いがあって当然の偏った作風であることも間違いない。だから“これは無理だ”と言う人が何人いても全く驚かない。
つまり本作は好きな人にはたまらないが決して万人向けではない珍味のような作品だ。無理して食べる必要はない。ちなみに私は一応完食できるが、もう一度食べたいとは思わない派。
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