この記事では、映画『山の郵便配達』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『山の郵便配達』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『山の郵便配達』 作品情報
- 製作年:1999年
- 上映時間:93分
- ジャンル:ヒューマンドラマ
- 監督:フォ・ジェンチイ
- キャスト:トン・ルーチュン、リウ・イエ、ジャオ・シィウリ、ゴォン・イエハン etc
映画『山の郵便配達』 評価
- 点数:80点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『山の郵便配達』 あらすじネタバレ(起承転結)
映画『山の郵便配達』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『山の郵便配達』 あらすじ【起・承】
1980年代初頭の中国。湖南省西部の山岳地帯で郵便配達員をしてきた父親(トン・ルゥジュン)は過酷な労働により足を悪くし、支局長の勧めで仕事を引退する。24歳になる息子(リィウ・イェ)は父の後を継いで郵便配達員となり、初めての仕事に出る。
ずっと父親の相棒だった愛犬の次男坊は、父親の心情を察して家を出ようとしない。次男坊に促され、父親は息子と最後の配達に出発する。山の郵便配達員は3日かけて120キロの道のりを歩く。そのため父親は息子が幼い頃からほとんど家にいなかった。息子はそんな父親が理解できず、“父さん”と呼んだこともない。親子は気まずさを感じながら、黙々と歩く。
最初の村では長年郵便配達員を務めてくれた父親が引退すると知り、村人たちが集まってくる。村を出る2人を村人たちはいつまでも見送ってくれた。
父親は郵便物を届ける村人の個人的な事情まで熟知しており、目の不自由な老婆には孫からの手紙を直接届けていた。都会で成功した孫はお金を送ってくるが、手紙はいつも白紙だった。父親は孫の帰りを待ちわびる老婆を思いやり、自分で考えた孫の言葉を伝えてきた。老婆は父親のことを誰よりも信用していた。
2人が一泊するトン族の村では結婚式が行われており、息子はトン族の娘と仲良くなる。父親は若い2人の楽しそうな様子を見ながら、昔のことを思い出していた。

映画『山の郵便配達』 結末・ラスト(ネタバレ)
2日目。2人は冷たい川を越えないと先へ進めない場所へ到着する。父親が足を悪くした原因のひとつはこの冷たい水であり、息子は父親をおぶって川を渡る。父親はたくましく成長した息子の背中で、思わず涙を流す。2人で山道を行くうちに、父親へのわだかまりは消え、息子は初めて父親を“父さん”と呼ぶ。
土砂崩れのため道がなくなった場所では、急な崖を登らなくてはならない。父親はこの崖から転落したことがあり、それ以来村人は父親が来る頃になるとロープを持って崖上にいてくれた。父親はどこへ行っても山の人たちに慕われていた。
厳しいがやりがいのある山の郵便配達員という仕事に誇りを持ち、一言も愚痴をこぼさずにそれを続けてきた父親の偉大さを息子は思い知る。最初は不満を漏らしていた息子もこの仕事を続けようと覚悟を決め、今までほとんど村にいなかった父親に村で生活するためのルールを教える。父親は頼もしくなった息子の寝顔を満足そうに見つめていた。
2人は無事に仕事を終え、3日ぶりに母親の待つ家へと帰る。母親は息子にあんなつらい仕事をさせるのはしのびないと感じていたが、翌朝目を覚ました息子は配達物の詰まった重たいリュックを背負い、黙って家を出て行く。次男坊も今回は息子と出発する。父親は無言で息子を見送り、息子は一度も後ろを振り返ろうとはしなかった。
映画『山の郵便配達』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『山の郵便配達』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
父親と息子
山の郵便配達員は3日に1度しか家に帰れない。そのため父親は家族と過ごせる時間が短く、息子のことをよく知らない。息子の方も幼い頃から父親が苦手で、父親のことを“あんた”と呼んでいる。この親子ほど極端ではないにせよ、父親と息子というのはどこか気まずい関係であることは多い。もちろん相手への愛情はあるのだが、接し方がわからないのだ。
本作はそんな親子の心の機微と変化をとても丁寧に描いている。足を悪くした父親へのいたわりの気持ちを素直に表現できなかった息子が、2日目には父親をおぶって川を渡る。父親は息子の背中で黙って涙を流している。込み入った会話はなくとも、2人の心の距離が縮まっていくのがわかる。その後息子は生まれて初めて父親を“父さん”と呼び、父への感謝の気持ちを伝えている。長年家族のために歯を食いしばって働いてきた父親にとって、これ以上の贈り物はないだろう。じわじわと胸に迫る静かで感動的なシーンだ。
山里の人々と犬の次男坊
親子が訪れる山里の風景も美しいが、そこで暮らす人々の素朴な表情がまた素晴らしい。みんな日焼けした顔でニコニコと笑っており、少し照れくさそうな子供たちの様子も可愛い。山深い村で慎ましく暮らす人々の純朴さが、その表情から伝わってくる。
そして本作には父親と息子以外にもう1匹の主役がいる。それが父親の愛犬・次男坊だ。次男坊は大きなシェパードで実に賢い。120キロもの山道を黙々と歩く間、隣に次男坊がいてくれるだけで父親はどれほど心強かっただろう。次男坊は父親の複雑な心情を誰よりも深く理解している心優しい相棒だ。原題を直訳すると「あの山 あの人 あの犬」になるそうで、そのタイトル通り次男坊は物語の中で重要な役割を果たしている。最初の出発では息子に着いて行こうとしなかった次男坊が、最後のシーンでは息子を追いかけて行く。この次男坊の変化は、息子を一人前だと認めた父親の心の変化を表している。とてもうまい演出だ。
映画『山の郵便配達』 まとめ
父親と息子が2人で郵便配達をする3日間を淡々と追いながら、少しずつ変化していく親子関係を静かに描いた秀作。世代交代していく親子を通して、自分の仕事に誇りを持って生きることの素晴らしさも教えてくれる。不器用で心優しい父親を演じたトン・ルゥジュンと健康的で屈託のない息子を演じたリィウ・イェの静と動のバランスも絶妙だった。盲目の老婆を演じたゴン・イェハンの演技も胸に迫る。
日本人の私が見てもどこか懐かしさを感じるようなしみじみとした味わいのある優しい映画で心が洗われるようだった。
山あいの村々を歩いて郵便を届ける父と、その後を継ごうとする息子の姿に、静かに心を打たれました。父が無口に仕事を続ける姿の中に、息子への思いやりや誇りが滲んでいて、最後に二人が心を通わせる瞬間は涙がこぼれました。山道の景色も美しく、言葉よりも表情や間で語られる演出がとても素晴らしいです。(50代 女性)
風景描写がとにかく美しく、心が洗われるような気持ちで観ました。親子の関係が少しずつ変化していく過程もとても丁寧に描かれていて、最後の「父さん、お疲れさまでした」という一言がすべてを包んでいた気がします。静かな映画だけれど、その分余韻が深く、観終わったあともしばらく心が温かかったです。(30代 男性)
都会での生活に疲れていたときにこの映画を観て、本当に救われた気持ちになりました。親子のすれ違いと和解、山間部の静かな暮らし、それぞれが心に染みてきます。息子が父の背中を見て成長していく姿に、自分の家族を重ねてしまいました。穏やかな時間の流れの中で描かれる、普遍的な親子の愛の物語です。(40代 女性)
初めて観たときは退屈かと思いましたが、じわじわと良さが染みてきました。父と息子が一緒に郵便を届けながら、互いに少しずつ歩み寄るその空気感がリアルで、言葉は少ないのに想いが伝わる描写がとても好きです。山道を一歩ずつ踏みしめる姿は、まさに人生そのもの。心がほっとする一本でした。(20代 男性)
一見地味な作品ですが、観終わったあとには確実に何かが心に残ります。父と息子の無言のやりとり、そして代々受け継がれてきた「道」の重みが、じわじわと胸を打ってきます。自然との共生、人と人とのつながりの大切さを、あらためて感じさせてくれる映画です。ゆっくり味わってほしい一作。(60代 男性)
親の仕事を理解すること、それを尊敬することって、年を取らないと気づけないんだなと感じました。息子が父の苦労や信念に触れて、少しずつ変わっていく様子が静かに描かれていて、本当に良かったです。映画全体がとてもやさしく、山の風景とともに心に沁みわたってくるようでした。(30代 女性)
学生時代に観て、正直あまり印象がなかったけれど、社会人になって改めて観たらまったく違う感情が湧いてきました。父が長年歩いてきた道に、息子が敬意を持って立つラストは本当に泣けました。派手さはないけれど、人生で何度も観返したくなる、そんな映画だと思います。(20代 男性)
父の背中から何を感じ取るか――その問いに、見事に答えてくれる作品です。息子が「ただの仕事」と思っていた配達の旅が、実は父の人生そのものであったと知る過程が胸を打ちました。演出も演技も過剰ではなく、だからこそリアルに響く。静かな山道を歩きながら、人の心が近づいていく感じがとても良かったです。(40代 女性)
この作品を観て、親の苦労やその背中の重みについて考えさせられました。台詞は少ないけれど、その分映像と演技で語られる父の人生に、心が揺さぶられます。自然の美しさと厳しさ、そこに生きる人の誠実さ。中国映画ですが、普遍的なテーマが描かれていて、誰にでも刺さると思います。(50代 男性)
派手な展開は一切ないけれど、心に静かに沁みてくる映画でした。父と息子の関係性って、どこか照れがあって素直になれないものだけど、一緒に旅をすることでその距離が少しずつ縮まっていく過程がとても丁寧に描かれていました。父の「道」を継ぐというラストに感動。心が温まる名作です。(20代 女性)
映画『山の郵便配達』を見た人におすすめの映画5選
父と暮せば
この映画を一言で表すと?
父娘の対話を通じて戦争の傷と向き合う、静かな愛と再生の物語。
どんな話?
原爆投下から3年後の広島。父を亡くした娘・美津江の前に、亡き父の霊が現れ、ふたりは日常の中で語り合う。語られるのは愛情、後悔、そして生きることの意味。演劇的な構成ながら、心に深く訴えかける作品です。
ここがおすすめ!
『山の郵便配達』と同じく、親子の距離がゆっくりと縮まる描写が感動的。会話を通して心を通わせていく静かな展開が、じんわりと胸にしみます。生きることに優しく寄り添ってくれるような、大切に観たい作品です。
おくりびと
この映画を一言で表すと?
死と向き合いながら生を見つめる、美しく繊細な人間ドラマ。
どんな話?
チェロ奏者の夢を断たれた男が、ひょんなことから納棺師の職に就き、最初は戸惑いながらも、人との別れを通して人生を見つめ直していく物語。生と死、そして家族の在り方がしみじみと描かれます。
ここがおすすめ!
無言の中にも想いが溢れるような演出が、『山の郵便配達』と通じる部分があります。人間関係の機微を繊細に描いた点も魅力。人生の意味を優しく問いかけてくれる、日本映画屈指のヒューマンドラマです。
海よりもまだ深く
この映画を一言で表すと?
小さな日常に潜む切なさと優しさを描いた、是枝裕和監督の傑作。
どんな話?
元作家で今は私立探偵をしている男が、母と元妻、そして息子との距離に悩みながら生きる姿を描く。台風の夜、家族が偶然集まり、少しだけ心が近づいていく。家族とは何かを考えさせる静かな物語です。
ここがおすすめ!
派手な事件はないけれど、日常の中にある感情の揺れが丁寧に描かれており、観る人の心に寄り添います。『山の郵便配達』が好きな方には、きっとこの静かで温かな空気感が心地よく感じられるはずです。
しあわせのパン
この映画を一言で表すと?
北海道の自然と、人々の心を癒すパンカフェを舞台にした優しい映画。
どんな話?
洞爺湖のそばにある小さなカフェで、夫婦が営む日々の暮らしに訪れる人々との交流を描く。パンと食事を通じて、訪れる人の心が少しずつほぐれていく様子が、静かに優しく描かれます。
ここがおすすめ!
自然の美しさや、時間の流れが穏やかに描かれていて、観ているだけで心が癒やされます。『山の郵便配達』のように、ゆっくりとした空気感と丁寧な人間描写を求める方にぴったりの一本です。
そして父になる
この映画を一言で表すと?
血か、育ての絆か。父としての在り方を問う深く心揺さぶるドラマ。
どんな話?
6年間育ててきた子どもが、実は出生時に取り違えられていた——という衝撃の事実を前に、ふたりの家族がそれぞれの“父性”と向き合う。家族とは、親子とは何かを深く掘り下げたヒューマンドラマです。
ここがおすすめ!
『山の郵便配達』が描いた父と子の距離感と愛情の変化に共感した方には、この作品の葛藤と成長のドラマが強く響くはずです。是枝監督らしい静かで重層的な語り口も魅力の一つです。
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