映画『哀愁』の概要:戦争で生き別れた男女のラブストーリー。恋人の戦死によりバレエの踊り子から娼婦へ身を落としてしまうマイラ・レスターをヴィヴィアン・リーが演じる。彼女の前作「風と共に去りぬ」に負けずとも劣らない作品で、対照的なキャラクターを務めるリーの演技が光る。
映画『哀愁』の作品情報
上映時間:108分
ジャンル:ラブストーリー
監督:マーヴィン・ルロイ
キャスト:ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー、マリア・オースペンスカヤ、ルシル・ワトソン etc
映画『哀愁』の登場人物(キャスト)
- マイラ・レスター(ヴィヴィアン・リー)
- バレエの踊り子。ウォータールー橋で空襲から避難する最中にロイ・クローニンと出会い恋に落ちる。戦争により希望を持たない日々を送っていたが、ロイと出会った事により幸せを感じ始める。ロイの戦死を知り、娼婦に身を落としてしまう。
- ロイ・クローニン大佐(ロバート・テイラー)
- 軍人家系の出身。第一次世界大戦中にイギリスがドイツへ宣戦布告したのを受けてフランスへ向かう途中ウォータールー橋でマイラと出会う。勢い任せの一面があるが、理にかなっておりマイラに希望を与える。戦死したと伝えられたが後にロンドンへ戻ってくる。
- キティ(ヴァージニア・フィールド)
- マイラの親友。彼女がロイとの事でマダム・キーロワから責められた際に庇い、バレエ団を解雇されてしまう。機転を利かせてマイラとロイの間の懸け橋になる場面もあり、2人にとって欠かせない人物。
- マーガレット・クローニン(ルシル・ワトソン)
- ロイの母親。マイラと初めて会った際、彼女のことを快く思わなかったが、後にそれは息子の戦死が原因であったと理解する。マイラの良き理解者となり、娼婦に落ちた彼女を許して家族に受け入れることを申し出るが、それは叶わないものとなってしまう。
- マダム・キーロワ(マリア・オースペンスカヤ)
- マイラやキティが所属していたバレエ団の団長。非常に厳しく傲慢な性格で、生徒から恐れられている。
- 公爵(C・オーブリー・スミス)
- ロイの叔父であり軍の上官でもある。若い頃、踊り子にアプローチをしたが失敗したことがあり、マイラの事をすごく気に入る。軍人ではあるがひょうきんで冗談も言い、ロイの良き理解者である。
映画『哀愁』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『哀愁』のあらすじ【起】
1939年3月、イギリスがドイツへ宣戦布告し、ロイ・クローニン大佐はフランスへ赴くことになった。駅へ車で向かう途中、彼はウォータールー橋へ立ち寄る。運転手に橋の向こうで待つように告げて、歩き出すロイ。その手には幸運のお守りのビリケン人形があった。ロイはその人形を見つめ、彼がまだ大尉であった時に出会ったあるバレエの踊り子の事を思い出していた。
第一次世界大戦中のロンドン市内には空襲警報が鳴り響いていた。そんな中、ウォータールー橋でロイ・クローニン大尉はバレエの踊り子マイラ・レスターと出会う。マイラはその夜劇場での公演があり、そこへ向かう途中だったのだ。ロイは予定を変更し、マイラが出演する劇場へと足を運び、彼女の演技を鑑賞した後、食事へ誘おうと彼女に手紙を出した。しかしマイラが所属するバレエ団では団長のマダム・キーロワが目を光らせており、そういった色恋事が禁じられていたのだ。手紙の返事として食事の誘いを断る旨をマイラは書かされたが、友人キティの機転によりロイと食事が出来る事になった。
映画『哀愁』のあらすじ【承】
レストラン「キャンドルライト・クラブ」で待ち合わせたロイとマイラ。「別れのワルツ」に合わせて踊り、楽しいひと時を過ごすのだった。その帰り道で2人はもう会えないだろうと話す。その際にロイはマイラに彼女が人生に何も期待していないのではないかと問う。マイラはその理由が例え誰かを好きになったとしても結局は戦争によって離れ離れになってしまうからとロイに告げた。
翌日、雨が降りしきる中、マイラが窓の外を見るとフランスへ向かったはずのロイの姿が目に入る。驚いた彼女は大慌てで支度をし、ロイの元へ駆け寄る。彼はフランス行きが2日延期になったことを告げ、マイラに結婚しようと話す。急な事でためらうマイラをよそに自分の気持ちはもう決まっているとロイは伝える。ロイの上官である叔父の許可を得て教会へと赴くが法律によってこの日の結婚は叶わず、式は翌日行うことを約束した。しかし、マイラが家に着くとロイからの連絡が入り、ロンドンを急に発つことが告げられた。バレエの公演には行かずウォータールー駅へと向かうマイラ。ロイとは一目しか会えず、悲しみの中、公演所へと赴く。そこでマイラは彼女を庇ったキティと共にマダム・キーロワから解雇を言い渡されてしまう。
映画『哀愁』のあらすじ【転】
バレエが出来なくなったマイラとキティは何とか収入を得ようと仕事先を探していた。そんな時、ロイの母マーガレット・クローニンから会いたいという手紙が届く。緊張しながらマーガレットを待つマイラは新聞の戦死者欄に目を落とすと、そこには恋人ロイの名前があった。気絶して目覚めた後でもマイラは動揺し、ロイが戦死したことをまだ知らないマーガレットと会うが「ロイのことを話す必要ない」という態度を取ってしまう。マーガレットはそんなマイラを好ましく思わず、またの機会にと告げてその場を去る。
希望を失い貯金が尽きてきたマイラはキティがどの様にお金を稼いでいるのか疑問を抱いた。ロイの事があってから調子が優れなかった彼女の為にキティが娼婦として稼いでいた事を知ったマイラは、自分自身が死んでしまえばと思うようになるまでに気が滅入ってしまっていた。そしてキティと共に娼婦へと徐々に身を落としていく。
ウォータールー駅でいつもの様に客を探していたマイラは、そこで戦死したはずのロイと出会う。幸せの中抱き合う2人。しかしマイラには娼婦になったという影が付きまとい、ロイにその事を言えずにいた。
映画『哀愁』の結末・ラスト(ネタバレ)
ロイはマイラを屋敷に招待し、母マーガレットや執事、そして叔父の公爵に会わせる。マイラはロイの家族の優しさや暖かさに触れ、次第にクローニン家へ受け入れられていくのを感じていた。夜には舞踏会が開かれ、思い出の曲「別れのワルツ」の中、ロイとの幸せを強く噛みしめた。しかし、過去を拭い切れず、優しくされる一方で罪悪感を募らせていく。そして舞踏会の晩、マイラはマーガレットに全てを打ち明ける。マーガレットはそんな彼女を受け入れようとするも、マイラはロイに置き手紙を残し屋敷を去ってしまった。
マイラを追ってロンドンに戻ったロイは彼女の下宿先を訪ねる。しかしそこにマイラの姿はなく、彼女の友人であるキティと再会する。そしてロイはそこで彼の戦死を知ってからのマイラの話を聞き真実を知る。ショックを隠せないロイはそれでもマイラを探し続けた。マイラは当てもなく歩いた後、ロイと初めて出会ったウォータールー橋に来ていた。その目にかつて抱いた希望の光はなく、吸い込まれるように彼女は道路を走る車の列に身を投げた。
「私が愛しているのは、これからもずっとあなただけ。それが真実。」という彼女の言葉を最後に思い返すロイ。貰った幸福のお守りを手に、マイラとの思い出の場所であるウォータールー橋を後にする。
映画『哀愁』の感想・評価・レビュー
物語をドラマチックにするためにご都合主義に陥るパターンは多いが、「哀愁」に至っては誰が見ても各キャラクターの行動に説得力があり、「そうするしか無かったよね・・・」と思わせてくれる。ウディ・アレンはこの系譜にあるような気もする。
ラストのトラック前に飛び込む女の顔とトラックの全面のパパパッ!という切り返しは、今でこそ古びた表現に見えるのかもしれないが、さすがパイオニアとあって非常に鮮やか。(男性 30代)
第一次大戦下のロンドン。イギリス将校のクローニンと、バレエダンサーのマイラ。格差のある2人の悲しくて儚い恋の物語です。
真面目で、とにかく純粋なマイラ。幸せが約束されていても、どうしても自分の良心に嘘をつけなかった。今を生きているとこの当時の恋愛が、どれほど辛く悲しいものだったのかはわかりませんが、純粋すぎるのにも程があるなと。自分の幸せのために生きても良かったのでは…と思ってしまいました。
主人公の2人が美男美女でストーリーに夢を持たせてくれました。(女性 30代)
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