映画『さよなら歌舞伎町』の概要:新宿歌舞伎町のラブホテルに勤める主人公の1日を通して人生の悲喜交々を描いた群像劇。廣木隆一監督の演出、荒井晴彦の脚本がともに秀悦で、キャスト陣は訳ありの人々を表情豊かに演じている。2014年公開の日本映画。
映画『さよなら歌舞伎町』の作品情報
上映時間:135分
ジャンル:ヒューマンドラマ、ラブストーリー
監督:廣木隆一
キャスト:染谷将太、前田敦子、イ・ウンウ、ロイ etc
映画『さよなら歌舞伎町』の登場人物(キャスト)
- 高橋徹(染谷将太)
- 新宿歌舞伎町のラブホテル・アトラスの店長。周囲には一流ホテルで働いていると嘘をついている。実家は宮城県の塩釜。東日本大震災で父親の工場が潰れ、払えなくなった学費の140万円を沙耶の親に借金した。
- 飯島沙耶(前田敦子)
- 徹と同棲中の恋人。メジャーデビューを目指すミュージシャン。徹とは結婚を前提に付き合っているが、自分の夢も大事。徹とはセックスレス気味。
- イ・ヘナ(イ・ウンウ)
- 韓国で母親とブティックを開くため、日本に不法滞在して開店資金を貯めている。イリナという源氏名でデリヘル嬢をしているが、恋人のチョンスにはホステスだと嘘をついている。可愛くてサービスもいいので客の評判がいい。
- アン・チョンス(ロイ)
- ヘナと同棲中の恋人。韓国で日本蕎麦と日本酒の店を開くため、韓国料理店で働いてお金を貯めている。ヘナがホステスではないことに薄々気づいている。チョンスも小遣い目当てでクラブのママに体を売っている。
- 鈴木里美(南果歩)
- アトラスの従業員。レストランのシェフだった元夫は暴力男で、従業員だった康夫と恋に落ちて駆け落ちする。同棲中の康夫を献身的にかくまっているが、自分も犯人隠匿の罪で指名手配されている。
- 池沢康夫(松重豊)
- 里美の元夫に怪我をさせ、店のレジからお金を盗んだ強盗致傷の罪で指名手配されている。自分の存在がバレないように、息を潜めて暮らしている。後38時間で時効が成立する。
- 福本雛子(我妻三輪子)
- 再婚した母親から“死ね”と言われて家出した女子高生。ナゲットをお腹いっぱい食べるのが夢。
- 早瀬正也(忍成修吾)
- 風俗嬢のスカウトマン。雛子と出会って、組織を抜ける決意をする。
- 藤田理香子(河井青菜)
- 夫と幼い娘のいる叩き上げの刑事。里美が指名手配犯であることに気づく。
- 新城竜平(宮脇吐夢)
- 理香子の不倫相手のエリート刑事。妻は検察庁の審理官の娘。
- 高橋美優(樋井明日香)
- 徹の妹。保育士を目指して地元の学校へ通っていたが、東日本大震災以降は学費を払うため月に数回上京して家族に内緒でAV女優の仕事をしている。
映画『さよなら歌舞伎町』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『さよなら歌舞伎町』のあらすじ【起】
朝。ミュージシャンの沙耶はデビューがかかったライブ当日を迎え、緊張していた。同棲中の徹は最近エッチをしたがらず、沙耶は何となく物足りなかった。しかし2人の関係は概ね良好で、今朝も仲良く家を出る。
韓国人カップルのヘナとチョンスは、スーパーで買い物中。韓国でブティックを開く資金が貯まったヘナは明後日帰国するつもりだ。チョンスも一緒に帰ろうと誘うが、チョンスはまだ目標の金額を貯金できていないので無理だと答える。
里美と康夫は慎ましい朝ごはんを食べている。康夫は指名手配犯で、2人は15年も逃亡生活を続けてきた。しかしそれも後38時間で終わりだ。
徹は一流ホテルへの就職に失敗し、歌舞伎町のラブホテル・アトラスで店長をしている。それを沙耶や家族に言えないでいた。従業員はみんな訳ありで、里美もここで働いていた。
デリヘル嬢をしているヘナは今日が最後の出勤日だった。ヘナがただのホステスではないことに気づいていたチョンスは、ヘナのバックから彼女の名刺を盗む。
アトラスでAVの撮影があり、徹は宅配されたピザを部屋まで届ける。そこでメイクをしてもらっていたAV女優は、何と徹の妹・美優だった。東日本大震災で家計が苦しくなり、学費を稼ぐためにAVへの出演を決めたという妹の話に、徹はショックを受ける。しかし美優は現実的でこの仕事も楽しんでいた。妹の喘ぎ声を聞きながら、徹はただ無性に腹が立つ。
映画『さよなら歌舞伎町』のあらすじ【承】
夕方。徹は妹の初体験がAVの撮影ではないことを確認しておきたかった。美優は笑顔で初体験はちゃんと好きな人としたが、その人は津波に流されたのだと答える。
アトラスに雛子と正也がやってくる。未成年の家出少女・雛子は援助交際をして生き延びていた。正也はそんな少女を風俗店に売る組織のスカウトマンで、雛子もそうするつもりだった。雛子は再婚した母の家庭で肩身の狭い思いをしてきて、最後には母から“お願いだから死んでくれる”と言われて家を出た。死ねと言われたから何をやってでも生き抜いてやるのだと泣きながら語る雛子の健気さに、正也は胸を打たれる。
仕事で疲れたヘナは、チョンスの働く店へ行く。“俺たちこれで終わりなのか”と聞くチョンスに、ヘナは“もう言わないで”と答える。ヘナは何度も“おいしい”と言いながらチョンスの作ったキムチハンバーグを食べ、涙を流す。
23時頃。アトラスにレコード会社の竹中とギターを担いだ沙耶が姿を見せる。フロントにいた徹は沙耶の顔を確かめに行く。沙耶は徹がラブホの従業員だったことや自分の枕営業を止めないことに怒り出す。徹は逆ギレしている沙耶にも情けない自分にも嫌気がさす。
映画『さよなら歌舞伎町』のあらすじ【転】
正也は雛子のために組織を抜ける決意をして、雛子を置いてホテルを出る。正也が出たことでお金のない雛子は事務所に呼び出されるが、約束してくれたから正也は必ず戻ると言い張る。警察を呼ぼうとする従業員を、里美が止める。その頃正也は組織の幹部にヤキを入れられていた。
沙耶は迷っていた。しかし帰ろうとする竹中を見て、自ら服を脱ぎ始める。深夜。傷だらけの正也が戻ってくる。正也の姿に触発された徹は沙耶のいる部屋に向かうが、竹中はことを済ませて帰るところだった。そして徹は何も言えない。
理香子と新城の不倫カップルはアトラスで情事を楽しんでいた。刑事の理香子はさっき下で会った里美が15年前康夫に暴行されたシェフの妻であることを思い出し、すぐに署へ連絡しようとする。しかし新城は2人の不倫関係がバレることを恐れて理香子を止める。
隣のホテルで殺人事件があり、アトラスの周辺にはパトカーが集まる。徹は殺されたのが今朝口論をした年増の売春婦だったことを知り、やるせない気持ちになる。
映画『さよなら歌舞伎町』の結末・ラスト(ネタバレ)
チョンスはヘナの客になってアトラスで彼女を待つ。真っ暗な部屋でヘナに目隠しをして、チョンスはヘナの体を優しく洗う。ヘナは最後の客がチョンスだと気づいて泣き出す。2人はお金のために汚れた体を洗い流し、互いを許しあう。
理香子は里美を逮捕するが、新城は付き合いきれないと言って帰ってしまう。里美はトイレへこもって康夫へ逃げるよう連絡して、携帯を破壊する。
恥辱プレイ好きの変態カップルに呼び出された徹はついにキレてしまい、心の澱をぶちまけて、非常ベルを鳴らす。その騒ぎに紛れて里美は逃げ出す。徹は部屋から出てきた沙耶に別れを告げ、アトラスから飛び出していく。
朝。里美は徹からもらった自転車で康夫を拾い、時効成立まで逃亡を続ける。自宅近くの神社で徹を見つけた沙耶は“帰ろう”と声をかけるが、徹は沙耶を置いて歩き出す。家で歌を歌い出した沙耶は涙が止まらない。チョンスはヘナにプロポーズして、一緒に韓国へ帰ることにする。雛子と正也は仲良く山盛りのナゲットを食べていた。
塩釜行きの長距離バスに乗り込んだ徹は、歌舞伎町から遠ざかる景色を見ながらいつしか眠り込む。同じバスの中で疲れた顔の美優も眠り込んでいた。
映画『さよなら歌舞伎町』の感想・評価・レビュー
歌舞伎町のラブホテル、アトラスを舞台に様々な思いや悩みを抱えた人達が行き来していくストーリーだが、かなりリアルに描かれていた。店長を勤める徹と、その彼女でありミュージシャンを夢見る沙耶との関係や、お互いの貯金のために体を売っていたヘナとチョンス、指名手配中の里見と康夫、自分の為に家出をし生き延びる雛子とスカウトマンの正也、刑事同士で不倫をしている理香子と新城、AV女優の仕事をしている徹の妹の美優など、事情が深すぎる人達が絡み合う場面も見所である。(女性 20代)
歌舞伎町のラブホテルを舞台に、人生をもがきながら生きている幾人もが織り成す群像劇です。
ジャケットのイメージから、染谷将太と前田敦子が物語の主軸になっているかと思いきや、彼らの日常のドロドロはそこまで描かれていなかったのが、少し残念でした。けれど、韓国人の少女が、将来の夢のために身体を売ってお金を稼ぐ話は、純粋に彼女のことを応援したくなりました。
新宿の雑踏のどこかに、彼らは本当に存在しているんじゃないか?と、リアルに感じさせられる部分も多かったです。(女性 20代)
別に脱げる女優が偉いわけではないと思うが、ヌードになるのが自然な映画で脱がないのはちょっと女優としてどうなんだ。前田敦子のことである。彼女の演じる役割はそもそも脱がない役だったのだろうし、かたくなに嫌がったかはわからないが、必ずこうした意見が出ることが想像できるこの役割を与えられたことに彼女は何を思ったのだろうか。性産業に身をやつす役のほかの女優たちが体当たりの演技ながら、みじめに見えず懸命さが際立って見えるために彼女の役割はより悲惨になる。別に脱がなくてもいいが、こんな損な役回り断っても良かったのではないか。(男性 30代)
今まで前田敦子が出演する作品を好んでその多くを拝見してきたが、どの役どころでも前田敦子の演技には”いいな”と思わせる魅力を感じる。自然体で、役が馴染んでいて、目が離せないのだ。
本作は歌舞伎町のラブホテルを舞台に、色んな事情を抱えた年齢も職業もバラバラのカップルたちの物語が交差していき、現代社会の闇を見事にリアルに描いている。
韓国人カップルと時効のカップルの話が心にじんわりときて、応援したくなった。(女性 20代)
ヘナとチョンスなど他のカップルが上手くいく中、別れてしまった徹と沙耶が切ないなと思った。心をむき出しにしてぶつかり合う姿に、見ている自分の色んな感情が揺さぶられる作品だった。全員ハッピーエンドとはいかないところが、リアリティがあって良かったと思う。里美と康夫が何十年も一緒に逃亡生活を送っている設定に驚いた。番外編みたいな感じで、この二人の逃亡生活の日々がちょっと見たくなった。松重豊さんがこじんまりと座っている姿が、なんだか可愛かった。(女性 30代)
友人に徹のような人がいるので思わず笑ってしまった今作。職業はホテルの支配人の言いつつ、ただの田舎のラブホテルの店長をしている友人を思い出しながら鑑賞しましたが、ラブホテルで働く人、ホテルを利用する人など様々な人達の人間ドラマが描かれた面白い作品でした。
徹の彼女を演じた前田敦子の演技がなんともお粗末で、他にもっといい人がいたのではないかと思ってしまいました。
ストーリーやキャラクターは面白く、どのカップルも応援したくなってしまうようなほっこりする雰囲気を持ち合わせた作品です。(女性 30代)
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