映画『アナザー・カントリー』の概要:イギリスの特権階級にいた若者が共産主義に傾倒してスパイになった理由は伝統を重んじるパブリック・スクールにあった。同性愛の学生を演じたルパート・エヴェレットの美しさが話題となった1984年公開のイギリス映画。
映画『アナザー・カントリー』の作品情報
上映時間:92分
ジャンル:ヒューマンドラマ、青春、ラブストーリー
監督:マレク・カニエフスカ
キャスト:ルパート・エヴェレット、コリン・ファース、ルパート・ウェンライト、マイケル・ジェン etc
映画『アナザー・カントリー』の登場人物(キャスト)
- ガイ・ベネット(ルパート・エヴェレット)
- イギリスの名門パブリック・スクールのエリート学生。上流階級育ちの秀才で自由奔放な美青年。同性愛者。
- トミー・ジャド(コリン・ファース)
- ベネットの同級生で親友。レーニンの思想に傾倒する共産主義者。学校の伝統教育や特権階級を嫌い、独自の主義を貫いている。
- ハーコート(ケアリー・エルウィズ)
- ベネットが一目惚れした美少年。ベネットとは別のガスコイン寮の寮生。
- バークレイ(マイケル・ジェン)
- ベネットが属すロングフォード寮の代表。リベラル派だが特権階級の身分は捨てられない。
- デラヘイ(ロバート・アディ)
- 過去にベネットと肉体関係を持ったことがある。バークレイと同じく代表。
- メンジース(フレデリック・アレクサンダー)
- ベネットの同級生で自治会の幹事。次期代表の座を狙っている。
- ファウラー(トリスタン・オリヴァー)
- 軍国主義の自治会幹事。堅物でベネットの自由さを嫌っている。
映画『アナザー・カントリー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『アナザー・カントリー』のあらすじ【起】
1983年。モスクワへ亡命中のガイ・ベネットはアメリカ人女性記者のインタビューを受ける。イギリスの特権階級にいたベネットは共産主義に傾倒してスパイ活動をしていた。老人となったベネットは自分の学生時代から語り始める。
1930年代のイギリス。ベネットは上流階級の子供だけが入学できる名門パブリック・スクールの上級生だった。10年もこの寄宿制の学校で過ごしてきたベネットは色チョッキの着用を許される寮の自治会幹事の代表になることを目指している。親友のジャドは共産主義に傾倒しており、そんなベネットを冷ややかな目で見ていた。
戦争で死んだ学生の追悼会の場で、ベネットはガスコイン寮のハーコートという美少年に一目惚れする。同じ頃、ベネットと同じロングフォード寮のマーチンは体育倉庫で別の寮の学生と肉体関係を持っている現場を舎監に見つかってしまう。マーチンは自分の将来を悲観して校内で首吊り自殺を図る。
ロングフォード寮の現代表であるバークレイは他の自治会幹事から風紀の乱れの責任を追求される。右腕のデラヘイは祈祷会を開くことにして、その場をおさめる。
映画『アナザー・カントリー』のあらすじ【承】
ベネットは誰にも悟られないようにハーコートへ“一緒に食事をしたい”というメモを渡す。土曜日にベネットは母親と義父のアーサー大佐が出席する式典パーティーに招待されており、その後高級ホテルのレストランでハーコートと食事をするつもりだった。母親の再婚相手であるアーサー大佐をベネットは嫌っており、反抗的な態度をとる。心配する母親に“自分は次期代表になる”と告げ、母親を安心させる。
ハーコートは寮を抜け出し、レストランへ来てくれた。2人は酒を飲みながらゆっくりと食事を楽しむ。ベネットはこれまでも男と寝ていたが、ハーコートには特別なものを感じていた。それはハーコートも同じで、2人は恋に落ちる。
マーチンのことがあって学校の評判に傷がつき、幹事のデヴニッシュは親から退校を迫られる。舎監は堅物の軍国主義者ファウラーを寮長にしたがっていた。それを阻止するにはジャドに幹事を引き受けてもらう必要があったが、ジャドは“支配体制に協力はできない”とその話を断る。ベネットを嫌うファウラーが寮長になれが、自分が代表になる望みもなくなるため、ベネットもジャドの説得を始める。
映画『アナザー・カントリー』のあらすじ【転】
しかしジャドは自分が幹事になれば、これまで貫いてきた自分の主義も疑われることになるとなかなか説得に応じない。ベネットはジャドの嫌う軍国主義と戦う姿勢を見せるため、軍事教練の時にファウラーをからかうことにする。
イギリス軍のお偉方が出席する軍事教練でファウラーは学生の代表を務めていた。ベネットはわざと軍服をだらしなく着こなし、汚れた靴を履いていく。学校の不名誉になることをしたベネットは代表に呼び出される。ファウラーはベネットに鞭打ちの罰を与えるべきだと騒いでいた。ベネットは“罰するなら舎監に自分と関係のあった者の名前を全部バラす”と代表のバークレイとデラヘイを脅し、お咎めなしにしてもらう。
ベネットとハーコートは人目を忍んで夜の密会を続けていた。そのため寝過ごすことが多くなり、規律を重んじるファウラーはますますベネットに怒りを募らせる。しかしベネットはファウラーのことを舐めきっていた。
ジャドは親友のベネットのために条件付きで幹事を引き受けることにする。ベネットはそれを聞いて大喜びし、ジャドに感謝する。
映画『アナザー・カントリー』の結末・ラスト(ネタバレ)
ベネットは下級生にハーコートへ逢引のメモを渡してくれるよう頼む。しかしこのやり取りをファウラーが盗み見ており、下級生はファウラーにメモを奪われてしまう。ジャドは幹事のメンジースに幹事になることを伝えに行くが、途中でファウラーがメンジースにベネットのメモを見せに来て、話は中断してしまう。
メモを見たメンジースはベネットを裏切り、デヴニッシュに“ベネットの代わりに君が代表になるなら学校に残れるか”と聞きに行く。デヴニッシュは“代表になれるなら親も納得してくれる”と喜んでその話を受ける。
ベネットは幹事と代表の集まる部屋に呼び出される。デラヘイはみんなの前で思い切りベネットのお尻を鞭で打つ。ベネットは痛みと屈辱にじっと耐えていた。
ジェドはデラヘイたちとの肉体関係も舎監にバラせばいいと言うが、ベネットはハーコートを巻き込みたくないと考えていた。ベネットは自分が同性愛者であると認め、女は一生愛さないとジェドに告げる。追い討ちをかけるようにデヴニッシュが次期代表になることもわかり、ベネットは絶望する。ベネットはその時から共産主義に傾倒していき、スパイへの道を歩み始める。
その後ジェドはスペイン内戦でファシストに殺され、母国を裏切ったベネットはソ連に亡命した。“母国には何の未練もないが、クリケットはしたい”と老人のベネットは語る。
映画『アナザー・カントリー』の感想・評価・レビュー
本作は、実在するスパイ団の一人「ケンブリッジ・ファイブ」のイーストン校時代を基盤とした戯曲を映画化した青春ラブストーリー作品。
画面に映る全ての映像がただただ美しく、ファッションや建築といった1930年代の上品なイギリスの雰囲気にうっとりした。
中でも、青年たちの美しさには終始目が離せなかった。
伝統的で閉ざされた環境下で、共産主義者や同性愛といったテーマを描いていて、美しさだけでなく内容も重厚で硬派で見応えを感じた。(女性 20代)
同性愛やLGBT。昨今ニュースで話題になることも多いですよね。話題になること自体おかしな話なのですが、2020年の今の時代になってもまだまだ理解に乏しい人もいるようです。
この作品の舞台は、同性愛への偏見が現代よりも強かったと思われる1930年代のイギリス。パブリックスクールに通う男子学生の同性愛を描いています。とにかく「美少年」ばかりで本当に美しい。とても綺麗で品のある作品です。
この年代の時代背景を理解していると、より楽しめる作品だと思います。(女性 30代)
イギリスの同性愛について描かれた90年代以前の有名な作品では「モーリス」があるだろうが、本作はそれ以前に製作されていることが意外な点だった。現在では多く作られるようになったLGBTQ作品だが、約40年前にもそのテーマ性が大切にされていたんだと歴史を実感させてくれる。
もちろん美青年たちの境遇は切なすぎるし美しいシーンも胸が締め付けられるが、特にこの作品はイギリスという国特有の階級制度や戦後のコミュニズム論争に巻き込まれていく若者たちの様子も描かれているので、新たなイギリスの側面を知れる作品でもあって面白い。(女性 20代)
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