映画『鉄男 TETSUO』の概要:スピード感と狂気に満ちた塚本晋也監督の意欲作。事故で頭に金属片の刺さったやつが、ひき逃げ犯の男の体を金属化させていくというサイキック・ホラー。“どうしてそうなるのか”などと難しいことは考えず、爆音のパンクロックに酔いしれる感覚で、この世界観を感じるしかない。
映画『鉄男 TETSUO』の作品情報
上映時間:67分
ジャンル:ホラー、アクション、ファンタジー
監督:塚本晋也
キャスト:田口トモロヲ、藤原京、叶岡伸、石橋蓮司 etc
映画『鉄男 TETSUO』の登場人物(キャスト)
- 男(田口トモロヲ)
- 狭いアパートで暮らす平凡なサラリーマン。しかしやつを車で轢いて逃げたため、やつの恨みを買い、体がどんどん金属化していく。
- やつ(塚本晋也)
- 足の速いランナーに憧れているらしく、肉体改造のため自らの太ももに鉄パイプを埋め込む。そこから蛆がわき、パニック状態で走っている時に男の車に轢かれる。頭部に鉄片が刺さった状態で生き続け、特殊能力で男を金属化させていく。
- 女(藤原京)
- 男の恋人。事故の時も車に同乗しており、やつの復讐劇に巻き込まれていく。
- 眼鏡の女(叶岡伸)
- やつの特殊能力で金属化してしまい、男を襲う。
- 医者(六平直政)
- 鉄片が刺さった状態のやつを診断し、“それを抜いたら即死する”と告げる。
- 謎の浮浪者(石橋蓮司)
- 理由などは不明だが、男を追っていたやつに襲いかかるホームレス。
映画『鉄男 TETSUO』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『鉄男 TETSUO』のあらすじ【起】
やつはオリンピック選手のような足の速いランナーに憧れがあるらしく、自らの手で太ももを切り裂き、そこに鉄パイプを埋め込む。しかし、傷口は腐って蛆がわき、やつはパニック状態となる。そのまま外へ走り出したやつは、道路上で車に轢かれる。
出勤前にヒゲを剃っていた男は、頰から小さな金属片が出ているのに気づく。男が無理やりその金属片を引き抜くと、頰からは血が飛び散る。
不安を感じた男は、恋人の女に電話する。男と女は何度も“もしもし”“もひもひ”のやり取りを繰り返した後、女が“あの時のことを思い出すと欲情する”といった内容のことを話す。男と女は、最近どこか野外でセックスをしたらしかった。
駅へ向かった男は、気分が悪くなってベンチに座り込む。すると、隣に座っていた眼鏡の女の様子がおかしくなり、女の手が金属化していく。それを見た男は恐ろしくなって逃げ出す。
何かに憑依されたような状態になった眼鏡の女は、怪物のような形相で男を追ってくる。眼鏡の女の体はますます金属化し、もはや人間とは思えない姿になっていた。トイレに逃げ込んだ男を眼鏡の女は天井から襲い、男はペンで眼鏡の女の首を刺して再び逃げる。
男は自動車修理工場のような場所へ逃げ込むが、眼鏡の女はしつこく追ってくる。眼鏡の女は男のような声で“さあ来い!”と男を煽ってくる。男は覚悟して戦い、眼鏡の女を殺してしまう。
映画『鉄男 TETSUO』のあらすじ【承】
眼鏡の女を殺した後、男の体に激痛が走る。男の体は自分の意思通りに動かなくなり、右腕と足首から金属化していく。様々な形のクズ鉄を無造作に組み合わせたような金属の塊は、体と同化して剥がすこともできない。その日、男は恐ろしい悪夢を見る。
悪夢から目覚めた男は、隣で寝ていた女と激しいセックスをする。しかし女が途中で痛がり、セックスは中断される。
食事をした後、再び2人が抱き合っていると、男の股間から鉄のドリルが生えてくる。男はこんな姿を女に見られたくなくてトイレに隠れる。心配になった女は“たいがいのことには驚かないから”と何度も声をかけ、ドアを開けるよう説得する。
毛布で体を隠した男を女は抱きしめ、“私をひとりにしないで”と甘い言葉を囁く。しかし、金属化した男の顔や体を見て、さすがの女も悲鳴をあげる。男の股間のドリルはぐるぐると回っており、男は女にそれを突き立てようとする。女は必死で男から逃げ、熱したフライパンや包丁で男に反撃する。
男の生身の肉体からは血が噴き出すが、その部分もどんどん金属化し、男の体は鉄くずの塊のようになっていく。首にナイフを突き立てられ、男の動きは一旦止まるが、女はドリル化した男の股間を自分で挿入し、流血して死亡する。
男は雄叫びをあげ、風呂に入ってみる。しかし金属化した体は風呂に入ってどうこうなるようなものではなかった。
映画『鉄男 TETSUO』のあらすじ【転】
一方、事故の後、クズ鉄工場のような場所でもがき苦しんでいたやつは、徐々に復活していた。やつの頭には鉄片が突き刺さったままになっており、やつはその状態で医者を訪ねていた。医者はどうしてやつがこの状態で生きているのか不思議がり、“もしその金属を引き抜けば即死するよ”と告げる。強い憎しみによって特殊な能力を手に入れたやつは、自分を轢いた男への復讐を誓う。
男は死んだ女も風呂に入れてみる。女の体からは金属の花が咲く。その時、男の部屋の電話が鳴る。電話の相手はやつだった。やつは、“僕から逃げられない、死ね!”と憎しみの言葉を吐く。そして男はあの事故のことを思い出す。
男はやつを車で轢いたひき逃げ犯だった。事故の後、男は“大丈夫ですか?”と声をかけたが返事はなく、やつは死んだものと思い込んだ男は、やつを車のトランクに積み込み、山へ遺棄する。車には女も同乗していて、興奮した2人はそこでセックスをする。やつは、その一部始終を見ていた。
その後やつは復活し、特殊能力で男を金属化させていく。やつが元気になればなるほど、男の金属化は進み、今ではクズ鉄ロボットのような姿になっていた。自由に動けるようになったやつは、高速で走り出す。
やつが近づいてきたらしく、男の家の金属製品がおかしくなっていく。金属製品は強烈な磁気によって集まり始め、大きな金属の塊になっていく。飼い猫までが、金属の中に飲み込まれる。そしてついにやつが家の中までやってくる。
映画『鉄男 TETSUO』の結末・ラスト(ネタバレ)
やつは金属化した男を見て喜び、“もうすぐあなたは脳まで金属になる”と不敵に笑う。そして、やつが言うところの「ニューワールド」の映像を男に見せてくれる。そこはすべてのものが金属化した奇妙な世界だった。
恐ろしくなった男は外へ逃げ出す。やつもすぐにその後を追う。男とやつは車のように高速移動し、謎の追いかけっこを始める。やつはランナーのような格好をしており、ゼッケンには「X」と書かれていた。
その時、路地裏にいた謎の浮浪者が金属の棒を持ってやつを追い詰めていく。浮浪者はやつを“坊や”と呼び、金属の棒でやつを殴り始める。やつはひどく苦しみながら、浮浪者に殴られ続ける。やつが“やめろ!”と叫んで倒れた時、逃げていた男の動きも止まる。
男は古いクズ鉄工場のような場所にいた。そこへやつがやってくる。やつは強大なパワーで金属や機械を動かし、男は身動きができないほど巨大な金属の塊になっていく。そしてやつの体も金属化していく。
男とやつの体は同化していき、何がどうなっているのかわからない状態になっていく。完全に同化した塊の中で、人間の姿をしたやつと男が対面し、2人は最終的に一心同体の巨大な金属の怪物と化す。男は、今まで味わったことのないような気分の良さを味わう。
やつは、“こうなったら世界中を鋼鉄の塊にしてしまおう”と言いながら道を走り出す。自分たちの愛情で世界中を燃え上がらせるという野望に燃え、やつは“やりまくるぞ!”と叫びながらピストルを鳴らす。そして猛スピードで走り出す。
映画『鉄男 TETSUO』の感想・評価・レビュー
めちゃくちゃ攻めているので、何を見せられているのだろう…なんでこうなるの…?と余計なことを考えずに、ただ感じて欲しい作品です。
もともとは、速く走りたかった男と彼を車で轢いてしまった男のイザコザなのですが、どちらもやばいんですよね。速く走りたいから鉄の棒を脚に埋め込むって何!?ってなりますよね。蛆が湧いてパニックになる前に気づいて欲しかったですが、そんな彼を轢いてしまった男も運が悪かったなと思います。
自分がまさか金属の塊になってしまうなんて誰が想像したでしょう。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
すごい男だ···