映画『DRAGON ドラゴン』の概要:はるか昔のロシアの辺境国を舞台にした冒険ファンタジー。結婚式の最中、ドラゴンに孤島へと連れ去られたミラは、そこで同じく捕らわれの身だという謎の青年と出会う。美しく幻想的で独特な映像と、王道ながら繊細に描かれた愛の物語。
映画『DRAGON ドラゴン』の作品情報
上映時間:107分
ジャンル:ファンタジー、ラブストーリー
監督:インダル・ドジェンドゥバヴ
キャスト:マリヤ・ポエザエヴァ、マトヴェイ・ルィコフ、ピョートル・ロマノフ、イェヴァ・アンドレイェヴァイテ etc
映画『DRAGON ドラゴン』の登場人物(キャスト)
- ミラ(ミリヤ・ポエザエヴァ)
- 公爵家の次女。英雄の孫であるイーゴリとの結婚式でドラゴンに攫われてしまう。気が強く、好奇心旺盛で、古来の言い伝えであるドラゴンに憧れを抱いている。口うるさい姉のセロスラヴァとはあまり仲が良くない。
- アルマン / ドラゴン(マトヴェイ・ルィコフ)
- 孤島にひっそりと住む青年。幼年期、ドラゴンへ変容する血に目覚め、荒々しく激しい気性であるドラゴンの本能と一人孤独に戦っている。心優しく、ドラゴンの血を継承させるくらいなら、一人孤独に朽ちてしまおうと思っている。
- イーゴリ(ピョートル・ロマノフ)
- 古来の言い伝えでドラゴンを倒した英雄の孫。公爵の次女であるミラを花嫁にする為、言い伝えにある生贄の歌を結婚式の余興として歌ってしまう。英雄の孫である事を笠に着ており、傲岸不遜で自信家。ドラゴンに攫われたミラを救い、花嫁にする事で再び英雄になろうとしている。
- セロスラヴァ(イェヴァ・アンドレイエヴァイ)
- 公爵家の長女。母親代わりとして妹を思うあまり、口うるさくなってしまい、妹のミラとは反発しあっている。
- 公爵(スタンスラフ・リュープシン)
- ミラとセロスラヴァの父親。娘達をとても愛している。
映画『DRAGON ドラゴン』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『DRAGON ドラゴン』のあらすじ【起】
はるか昔、ロシアの辺境国。古来、その地にはドラゴンが生息しており、娘を生贄として捧げる事で国を守っていた。だが、生贄に捧げられた娘の許嫁の男はそれを許せず、連れ去られた娘を追いかけ住処を探し出し、とうとうドラゴンを倒した。男は国から英雄と称えられ、ドラゴンを倒せるのは英雄だけとされた。
生贄を捧げなくても良くなった国は平和となり、英雄伝は長い間、国に伝えられた。
そして現在、公爵家の次女ミラは、ドラゴンを倒した英雄の孫であるイーゴリとの結婚式当日を迎えていたが、愛してもいない男の妻となる事に不満を抱いていた。ミラが憧れるのは言い伝えにあるドラゴンの事。空を飛ぶのはどんな気持ちだろうと空想に浸る。
しかし、子供のような考えはもうやめなさいと姉と父に言い含められ、結婚するからにはイーゴリを愛そうと決心する。
結婚式は古来より伝わるドラゴンへの生贄の儀式を模したものだった。それは夫となるイーゴリがドラゴンを倒した英雄の孫であり、彼自身がそう望んだからだった。
だが、生贄を捧げる歌が歌われた後、異変が起こる。
突如強風が巻き起こり、暗雲が立ち込めた始めた式場のはるか上空から、死んだとされていたドラゴンが現れたのだ。
ドラゴンの出現に騒然となる結婚式場で、儀式の小舟に身を横たえていたミラは状況も判然としないまま、抵抗も虚しくドラゴンに攫われてしまう。
映画『DRAGON ドラゴン』のあらすじ【承】
連れ込まれたのは孤島で暗い穴倉だった。出口は上部にしかなく、恐怖に慄きながらどうにか逃げ出そうとするミラに獣が襲い掛かる。そこへ穴倉の隙間から一人の男が声をかけた。獣が去った後、ミラはその男に助けを求めるが、男は自分には助けられないと話す。
暗い穴底で一人途方に暮れていると、しばらくして岩の隙間から男が薬を差し出してくれた。それをきっかけに二人は話し始める。男は自分の名前を忘れたと言い、島からの脱出は不可能だと話す。ミラは彼にアルマンと言う名前をつけ、二人で協力しようと握手を求める。アルマンは戸惑いながらもミラの手を握り返すが、そこへ再びドラゴンが現れ、アルマンも姿を消す。
またも一人残されたミラは恐怖と寂しさから脱出を試みるも失敗。やみくもに壁を石で叩きつけていると、偶然にも壁が壊れ、奇しくも外への脱出が叶った。
一方その頃イーゴリは、ドラゴンに攫われたミラを救い出す為、祖父から伝えられたドラゴンの住処へと続く秘密の航路へと辿り着いていた。
だが、待てど暮らせど、道は開かない。
穴から脱出したミラは暗闇の中、唯一の知り合いアルマンを探すもドラゴンに見つかってしまい、命からがら逃げ出す。だが、辿り着いた先は足場の狭い突出した崖だった。
そこへアルマンと獣が現れ、助けようと声をかけるも、ミラは恐怖と疑心暗鬼にかられ崖から落ちてしまう。
ミラを助けようと飛び降りたアルマンだったが、落下中に彼の身体に異変が生じる。アルマンはドラゴンへと変身し、彼女を助けたのだった。
ドラゴンと共に海へ落ちたミラは暗闇の海へ助けを呼ぶが、返答は無く。獣に乞われ、案内について行きつつ、意識を失った裸身のアルマンを連れ、不満や愚痴を述べながら崖の上へ運んで行く。
やがて夜が明け、島の様子が見えるようになると、そこは何とも言えない自然の美しさで溢れていた。
島には様々な物が流れ着いていた。一人用の小さな舟も。これに乗れば逃げられるかもしれないと希望を抱くも、突然天候が変わりやむなく断念する。
一人で屋根を作り、アルマンの手当てをして子守唄を歌う。辺りはいつの間にか暗くなり、人ならざるアルマンに寄り添いながら眠りにつく。
目が覚めると、食べ物と毛布が傍にあった。アルマンが目を覚ましたのだ。
映画『DRAGON ドラゴン』のあらすじ【転】
アルマンは獣と海辺で魚を捕っていた。ミラは彼に自分を生かす理由を問う。初め頑なだったアルマンはミラの説得に溜息をつきつつ、その理由を話し始める。
アルマンは父親と共にこの島で暮らしていた。アルマンが、流れ着いた人間の持ち物に郷愁を感じドラゴンへの変身を拒んでいた頃、島に船が現れた。一人の男が上陸し、彼の父親を殺した。アルマンは激しい怒りと復讐への渇望でついにドラゴンへと変身する。それと同時に、彼は先祖の記憶をも受け継ぐことになった。
アルマンは生贄という残虐な儀式を好きになれず、尚且つ先祖からの記憶で自分が乙女を殺したかのように思った。父親も怪物なら自分も怪物である。彼はもう二度とドラゴンの姿を見せまいと誓ったのだった。その為にはドラゴンの本能に抗い続けるしかない。
ドラゴンをほぼ制御出来るようになった頃、あの儀式の歌が聞こえた。アルマンは制御が間に合わずドラゴンへと変身しミラを攫ったのだ。
ドラゴンはミラの存在を感じ取る事が出来る。アルマンに触れてもドラゴンが目覚める。だからミラを家へと帰す事が出来ない。アルマンは英雄が助けに来るのを待てと言った。
島はドラゴンの亡骸から出来ており、目には見えない結界が張ってある。英雄が島へ上陸するには、彼を信じて待つ乙女の心が必要だ。それは道しるべのように英雄を導く。
イーゴリはきっと助けに来ると話しながら、ミラは孤独で心優しいアルマンへ心が惹かれて行くのを感じていた。
ドラゴンを克服するために人間らしい事をしようと話し、島の上部へミラの部屋を用意して、二人で協力し合い居心地の良い場所を作り始める。そうして過ごす内にアルマンも心を開き、ミラへと心を寄せるようになっていく。楽しく、笑い合いはしゃぎ合う二人。
ドラゴンであるアルマンは風を見る事が出来る。彼はミラへ風を見せる為に、花びらを空へ舞い踊らせる。美しく神秘的な光景と雰囲気に二人の心が寄り添う。
そんなある夜、ミラはアルマンへオカリナを贈る。これで子守唄を鳴らし、心を静め生まれ変われるようにと。
そのお返しにアルマンはミラへ花火を贈る。夜空に開く天空の花だ。
ミラはその夜、ドラゴンに触れる夢を見る。だが、ドラゴンは怒りミラを襲う。
ドラゴンが怖いと言うミラに対し、アルマンはドラゴンは絶対にミラを傷つけないと宥める。そうして二人は信頼関係を深め、やがてはお互いに愛し始める。
だがそんな折、アルマンの中のドラゴンがとうとう目覚める。
映画『DRAGON ドラゴン』の結末・ラスト(ネタバレ)
ミラを傷つけまいと必死にドラゴンを制御しようとするアルマンだったが、一人用の小舟を見つけてしまう。アルマンはミラにドラゴンの子供の作り方を語る。乙女をドラゴンの炎で燃やし、その命から子供を生み出すのだ。ミラを脅し逃がす事で、ドラゴンの脅威から引き離す為だった。
ミラはアルマンの言葉を否定し、共に居ようとするが、アルマンから頑なに拒否されて酷く傷つき、一人小舟へ乗り込む。そして、泣きながら島を後にする。
その頃イーゴリは、航路で立ち往生していた。一族の名誉を守ると言い、ここまで来たが諦めて戻ろうとする。そこへ、花火が上がり小舟に乗ったミラを発見する。
イーゴリは傷心のミラを連れ国へ帰った。
国へ帰るとイーゴリとの結婚式をやり直すことになり、ミラは再び花嫁衣装を着る。結婚式は厳かに行われたが儀式の歌は無かった。
その頃、アルマンはミラの幸せを祈り、自らの死を望み崖に立ち尽くしていた。ミラからの贈り物であるオカリナを握り、彼女の幸せを祈りながら。そうして崖下へと飛ぶ。自分の中のドラゴンを抱きつつ。
ミラは小舟に横たわりながら、自分の想いを見つめ直す。自分が愛しているのはアルマンだと確信し一人小舟の上に立ち上がり、あの儀式の歌を唄った。
静まり返る式場に響き渡る歌声。声は次第に大きくなり、朗々と歌い終わるが異変は起きない。
彼は、ドラゴンはやって来ないのかと諦めかけた時、緩やかな風が吹く。
彼がやって来たのだ。ドラゴンはミラを優しく迎え、連れ去っていく。
静かに大事に島へとミラを運んだドラゴンだったが、歌を唄ったミラを責め立てるかの如く荒々しく咆哮する。
ミラは怒れるドラゴンへ口づけをした。
アルマンであるドラゴンをも愛する事を誓うと、ドラゴンは静かに近寄り、ミラへ信頼と愛情を示した。
数年後、二人の間には小さな女の子が生まれていた。
二人は娘を寝かしつけた後、父と母から恋人同士へと戻る。ドラゴンの背へ乗り、そうして広大で美しい夕日の空へデートに出かけるのだった。
映画『DRAGON ドラゴン』の感想・評価・レビュー
遥か昔、ロシアの辺境を舞台にドラゴンと乙女の恋を描いたダークファンタジー。
映像が非常に美しく幻想的で、衣装や小道具、音楽など徹底しており全体的に暗めだが、その色使いがまたストーリーにとても合っている。
ドラゴンを身の内に抱える青年と本能に抗えず攫ってしまった少女の触れ合いが、繊細に描かれ徐々に心が寄り添い合っていく様子が描かれている。この2人に比べ、結婚相手となる英雄の子孫の方が打算的に見え、将来的に考えても異形ではあるが、ドラゴンの青年と一生を共にした方が幸せになれるだろうとすぐに分かる。ある意味、王道のストーリーではあるが、それに余りある映像と違和感のないストーリー展開、衣装や音楽、色使いの全てが総合的に一致し、素敵な恋物語になっている。(女性 40代)
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