映画『あなたになら言える秘密のこと』の概要:ハンナは誰とも口を聞かず黙々と工場の仕事を行い、平坦に日常を生きていた。そんなある日、突然工場長から1ヵ月の休暇を言い渡される。暇を持て余したハンナは、看護師を探していた男に声を掛け、油田発掘場で火傷を負ったジョゼフを看病する事になる。
映画『あなたになら言える秘密のこと』の作品情報
上映時間:114分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:イザベル・コイシェ
キャスト:サラ・ポーリー、ティム・ロビンス、ハビエル・カマラ、エディ・マーサン etc
映画『あなたになら言える秘密のこと』の登場人物(キャスト)
- ハンナ(サラ・ポーリー)
- 工場で働いていたが1ヶ月の休暇を言い渡される。暇を持て余していたが、偶然知り合った男から看護師としての仕事を請け負い、火傷を負ったジョゼフを看病する。寡黙な女性で、1人でいるのが好き。
- ジョゼフ(ティム・ロビンス)
- 油田発掘所で働く作業員。友人を助ける為に火の中に飛び込み、怪我を負う
- サイモン(ハビエル・カマラ)
- 油田発掘所で働く料理人。明るく陽気な性格。
- ヴィクター(エディ・マーサン)
- 普段は精製所で働いている。ジョゼフの看病の為に看護師を探しており、街で出会ったハンナに世話を頼む。
- シュリッツァー医師(スティーヴン・マッキントッシュ)
- ジョゼフの担当医。
- マーティン(ダニエル・メイズ)
- 海洋学者。油田発掘所で橋脚に波が当たる回数を調べ、強度を調べる仕事をしている。
映画『あなたになら言える秘密のこと』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『あなたになら言える秘密のこと』のあらすじ【起】
ハンナは工場で働いていた。着替えの時も食事の時も帰り際も、誰ともおしゃべりをする事はなかった。だが、同僚に突然腕を捕まれ慌てて補聴器を操作すると、工場長室に来るよう放送がかかっているのが聞こえた。
工場長からの話を、ハンナは俯きながら聞いていた。同僚から苦情が出ていると言われクビになるのか問いかけると、4年間勤務態度も真面目で仕事も満足しているからクビにするはずがないと言われる。だが、工場長は困った顔をしていた。そして、旅行のパンフレットを机に並べ1ヶ月の休暇を言い渡すと、好きな場所へ行けと言う。ハンナは旅行に行きたいとは思わず、戸惑いを隠せなかった。
ハンナは家に帰り、郵便受けから手紙を取り出すと部屋へと戻る。そして、同じ手紙が置いてある場所にその手紙を重ねた。手を洗いに行くと、まだ使って間もない石鹸を捨て新しい石鹸を取り出す。洗面所には大量の同じ石鹸が積み上げられていた。ハンナはとある女性に電話を掛ける。終始無言だったが、その女性はハンナからだと気付き、送った手紙は読んでいるのか問いかける。だが、ハンナは何も言わずに電話を切った。そして、冷蔵庫から食事を取り、刺繍をし、眠りについた。
ハンナはバスに乗っている時も刺繍をしていたが、降りるとゴミ箱にその刺繍を投げ捨てた。そして、ホテルに着くと、綺麗に整えられたベッドを突然ぐしゃぐしゃに崩した。ハンナがレストランで食事をしていると、看護師を探している男の会話が耳に入った。ハンナは看護師だと言って雇ってもらう。
ハンナはレストランで出会った男ヴィクターの車で移動し仕事の話を聞く。日数は数日から2~3週間、火傷をした患者が回復して陸に上がるまで。隔絶された場所だが、石油ポンプの音がうるさいとの事だった。
ハンナ達はヘリに乗って移動し油田発掘所に降り立つ。ヴィクターは精製所で働いている為、発掘所内部の事は詳しくなく、責任者のディミトリを呼びに行く。ディミトリの代わりにシュリッツァー医師が来てハンナの経歴を聞く。ハンナは火傷回復班に在籍していた事があり、火傷の患者の世話をしたことがあった。患者のジョゼフは2週間も目が見えなくなるほど重症だった。
ハンナは一番医務室に近い為、ジョゼフの部屋へ案内される。音がうるさいと言われていたが、事故の為に掘削作業が止まり静かだった。しかも、再開の目途も立っていなかった。
ハンナは医務室に案内される。そこには痛みがひどい為、鎮痛剤で眠っているジョゼフがいた。ディミトリからこの国の病院で働いていたのか聞かれ、ハンナは癇に障り、関係があるのかときつく言い放つ。ディミトリは申し訳なさそうに自身の妻も外国人の為、偏見は無いと言うが、ハンナは自分にはあると言い返す。
映画『あなたになら言える秘密のこと』のあらすじ【承】
ハンナは部屋で荷物から大量の石鹸を取り出し、置いてあったジョゼフの携帯へと手を伸ばす。女性からの伝言が残されており、“ポルトガル文”の本の中にあなたを感じる、心から愛していると残されており、その言葉を戸惑いながら聞いていた。
ハンナはジョゼフの元を訪れる。ジョゼフは目覚めており、先生だと勘違いした彼に看護師だと説明し、尿瓶を持って世話をする。その間、ジョゼフは軽口を言い、名前や結婚、出身地などについて聞くが、ハンナは何も答えずにただ黙々とお世話をした。名前すら教えてくれないのかという問いにも、ジョゼフが適当に名付けたコーラで良いと返す。
ハンナはジョゼフの夕食を受け取りにキッチンへ向かう。すると大音量の音楽が聞こえてきた。そこには陽気な料理人のサイモンがおり、ハンナが口を挟む間も無く話し始め、故郷の料理を作ってあげると言われる。サイモンはその国の音楽をかけながら、いろんな国の料理を作っているらしい。ハンナは断ると、ジョゼフの夕食を持って足早に出て行く。
ハンナはジョゼフに食事を食べさせる。ジョゼフはここに居るのがもったいないほどサイモンの料理の腕は素晴らしいと褒める。ハンナは好物は何か問われチキンと答える。すると、ジョゼフは声に出し喜んだ。嘘の情報ではなく本当の事を言ってくれたのが嬉しいと言う。他に無いのかと聞かれ、ハンナは白米とリンゴと答える。
ハンナは食事を片付けに行くが途中の階段に座り込み、ジョゼフが残した料理を泣きながら無我夢中で食べた。
ハンナが海を眺めていると、ディミトリがやって来た。夕食を食べに来なかった事を言われるが、ハンナは食べたくなかったと答える。ディミトリはサイモンが食事をハンナの部屋に運ぼうとしたのを止めてくれたと言う。君は1人が好きだからと。ハンナはディミトリに感謝する。ディミトリは自分もここにいる皆も、1人でいるのが好きだからと答える。
ハンナはディミトリに洗濯場を案内してもらい、ここに何人いるのか問い掛ける。料理人のサイモン、掃除係のアブドゥル、機関室のスコットとリアム、ジョゼフとハンナ、ディミトリと海洋学者のマーティンがいると教えてもらう。
映画『あなたになら言える秘密のこと』のあらすじ【転】
ジョゼフはハンナに世話をされながら、君は尼僧ではないかと問いかける。ハンナは何も話さない為、好きなようにハンナの事を作り上げる。それを聞いてハンナは薄く笑った。ハンナはジョゼフに何故“コーラ”という名前を付けたのか問いかける。だが、ジョゼフは何一つ話さないハンナに教える気は無いと言う。それを聞いたハンナは補聴器をつけている事を打ち明け、何も聞きたくない時はスイッチを切っている事を教える。だが、補聴器をつけるようになった理由は聞かないでくれと頼んだ。そんなハンナにジョアンはコーラの名前の理由を打ち明ける。昔読んだ小説の中に出てくる看護婦の名前だった。看護婦は15歳の少年を看病していたが、少年は体を触られる事を恥ずかしがっていた。看護婦はそれに気付かず世話をしていたが、ある日、少年が合併症を起こし容態が悪化してしまう。看護婦の必死の看病も虚しく、コーラと口に浮かべて少年は息を引き取ってしまう。その時、看護婦は少年への愛に気付くのだ。ジョゼフが話す小説の内容を、ハンナは静かに涙を流しながら聞いていた。
ハンナはマーティンの元を訪れ、橋脚の強度は波の数から計算しているという話を聞く。そして、橋脚に付いていた貽貝を見せてくれるが何故貝が大事なのか問いかけると、マーティンは戸惑った顔をして黙ってしまう。
ハンナは皆と食事を食べていたが、スコットとリアムがサイモンの料理について文句を言い出した。ハンナはスコットの皿から料理を取り上げると、勝手に食べ始めて最高においしいと言った。スコット達はその姿を怪訝な表情で見ていたが、サイモンは笑顔を浮かべていた。
ハンナはジョゼフの髭を剃ってあげる。頭痛がするのでジョゼフは今日は馬鹿な事を言わないと言う。ハンナはそれを残念がり、楽しくなってきたのにと返す。ジョゼフの冗談を笑顔で聞くようになっていた。ハンナは静かに眠るように話さなくなったジョゼフの顔をしばらく見ていたが、ジョゼフは起きており、今僕の顔を見ていただろうと聞かれる。見ていないと返すが、ジョゼフは嘘を付き始めたのは僕を好きになり始めたからだと話す。ハンナはその話を強張った表情で聞き、足早に医務室を去った。
サイモンは軽口を言いながらジョゼフの元を訪れ、食事を食べさせてあげる。ジョゼフはハンナの話を詳しく聞こうとするが、サイモンは話を逸らしはぐらかす。その様子にハンナに惚れたのだろうとからかうが、サイモンが君は他人の女にしか興味が無いと言うと表情が強張り、サイモンを追い出す。
映画『あなたになら言える秘密のこと』の結末・ラスト(ネタバレ)
嵐の夜、ハンナはジョゼフの元を訪れる。ハンナはマーティンの話をしようとするが、外の話を聞きたくないと言われる。ハンナは代わりに話を求め、ジョゼフが秘密の話があると言う。顔を近づけてと言われるまま寄せると、実は泳げないと言われ2人は笑い合う。
ハンナはスリッツアー先生に連絡を取り、ジョゼフの容態が回復していない事を伝える。明後日、搬送する事になる。ハンナは事故が起こった原因を聞く。海底を掘っている時にガスに命中したのが原因だった。だが、犠牲者は自ら火の中に飛び込み、ジョゼフは彼を助けようとして怪我を負ったのだ。犠牲者には妻と子供がいるので遺族にお金を残す為、皆で口裏を合わし会社には事故と報告していた。
ジョゼフはハンナに秘密を聞く。ハンナは昔は本が好きだった事を話し、“ポルトガル文”について問いかける。ジョゼフは涙を浮かべながら話し始めた。その本はジョゼフがかつて親友の妻に贈った本だった。ジョゼフは親友の妻を愛していた。そして、親友の死を嘆く姿をハンナは悲しそうに見つめていた。明日か明後日、ヘリが来ることを伝えると、ジョゼフは傍に居て欲しいと訴える。ハンナはそれに何も返せなかった。
ハンナはマーティンの元を訪れる。彼は油田により海が汚染される事を憂えていた。ハンナはその姿に感動する。
ハンナはジョゼフにクロアチアでの看護学校時代について話をする。患者達は学生に体を拭かれる事を嫌がっているのではないかと考えていたが、そんな事は無く誰でも良いから体を拭いて欲しいと感じている事に気付く。そして、学校には共に学ぶ友達がおり、自分とは正反対の明るい彼女が好きだった事を話し始める。戦争中でも共に暮らしていたが、20歳の時に学校が閉鎖され自分達の国に帰る事になった。戦争が起きていると言われても平和な毎日で気にしていなかった。ある日、友達と楽しく車で出掛けていたが、町まであと2キロの所で突然止められ同じ国の兵士にホテルに連れて行かれた。何をされるかも考えず、国連軍が来たので助かったと思った。だが、そんなことはなく兵士達がレイプしてきた。そこには15人ほどの女性達がおり、食料が無くなると母に娘を殺させた。そして、兵士達は女性達をオモチャにし体中をナイフで切る事もあった。ハンナの親友もナイフで切られ少しずつ衰弱していったのだ。手当される事も許されず、親友が苦しむ姿を間近で見なければいけない辛さを、ハンナは涙ながらに語った。ハンナは服を脱ぐと体中に残る無数の傷跡をジョゼフに触らせた。ジョゼフは泣きながら傷跡に触りハンナを抱きしめた。そして、ハンナの親友の名を問うと、ハンナはハンナと答えた。自分自身の事だった。
ハンナはジョゼフの手を握り締め、ヘリでの移送を見守った。だが、地上に戻るとハンナは何も言わず荷物を持って立ち去る。ジョゼフはただハンナの名を叫び続けた。
ハンナはまた工場で働き日常へと戻る。ジョゼフも病院での治療を頑張っていた。ジョゼフは退院する時、見覚えのない鞄を渡される。その中にはハンナ宛の手紙と大量の石鹸が入っていた。ジョゼフは親友の妻に会い、ポルトガル文の本を返される。そして、石鹸を1つ使い、1人で思い悩む時間を過ごす。
ジョゼフはハンナの手紙を頼りにある場所に赴く。そこには、ハンナを担当したカウンセラーの女性がいた。ジョゼフはハンナから話を聞いた事を伝え一生共に居たい事を訴えるが、カウンセラーは馬鹿にしたような態度だった。耐え難い苦しみを生きたハンナは1人になる事を望んでいるのではないかと問い掛ける。そして、ハンナは生き延びた事を恥じており、それは一生消えない傷だと伝える。
ジョゼフはハンナの元を訪れ、彼女の鞄を返す。すぐに帰ろうとするハンナを呼び止め、掘削所が閉鎖した事とチリの現場に誘われた事を話す。だが、ジョゼフはチリよりも君とどこかに移り住みたいと言う。ハンナはそれを断り、きっといつか泣き出す涙で2人共溺れてしまうと話す。その言葉にジョゼフは泳ぎ方を覚えると返す。2人は見つめ合うとキスをした。
ジョゼフと2人の子供達が出掛けてハンナが1人になった時、ハンナは言いようのない不安に襲われる。だがそんな時、彼女の元に子供達が帰ってくる。
映画『あなたになら言える秘密のこと』の感想・評価・レビュー
本作は、人との関わりを避けてきた一人の女性が少しずつ心を開き、自分のことを打ち明ける姿を描いた物語。
工場の職場で働きすぎを理由に、突如工場長から一か月の休暇を貰った主人公ハンナは、偶然知り合った男から看護師の仕事を貰う。ジョセフを看護するハンナは始めは心を閉ざしていたが徐々に心を開いていき、自分自身の抱える秘密を打ち明け始める。
彼女の背負ってきた過去が予想に反して壮絶で、衝撃的だった。
思いの外とても重みのある内容だった。ハンナには少しでも幸せになってほしいと願うばかりだ。(女性 20代)
正直に言って、この作品は邦題が大失敗です。『あなたになら言える秘密のこと』なぜこんな軽い、ラブコメを思わせるようなタイトルにしてしまったのでしょう。タイトルを軽くすることで、ストーリーの重さを軽減させる意図があるとしても、この内容には全く合っていないと感じました。
誰しもが「秘密」を持って生きていますが、この作品に出てくる女性が持つ「秘密」や「過去」はとても、重く苦しいものでした。
とてもリアルな描写に、胸が締め付けられる思いです。(女性 30代)
あまり周りに心を開かないハンナ。物語は彼女の過去に触れず、偶然の成り行きで出会った人たちとの交流が描かれている。油田発掘所は絶海の孤島で、どこか寂しさが立ち込めるも独特な絆が生まれていた。従業員たちも家族がいる程度の情報しか分からない。料理で喧嘩したりライブしたりと、仲が良いのか悪いのか掴みどころが無い。視聴者もハンナの目線だったのだと思う。2週間で知れることはこれくらいなのだ。作品で自分をさらけ出したのはハンナとジョセフだけ。それも中々重い過去を。他の人物にもきっと抱えているものがあるのだろう。考えるほど深みのある映画になる。(男性 20代)
みんなの感想・レビュー