映画『トールマン』の概要:寂れた田舎町で発生した相次ぐ子供の失踪事件。診療所で医師をしていたヒロインは、自分の子供が攫われて犯人を追う。いつしか犯人はトールマンと呼ばれていたが、その真相は驚くものだった。
映画『トールマン』の作品情報
上映時間:106分
ジャンル:サスペンス、ミステリー
監督:パスカル・ロジェ
キャスト:ジェシカ・ビール、ジョデル・フェルランド、スティーヴン・マクハティ、ウィリアム・B・デイヴィス etc
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映画『トールマン』の登場人物(キャスト)
- ジュリア(ジェシカ・ビール)
- 診療所の医師をしており、町人からの信頼も厚い。子供を攫われ必死に追う。町の子供達の未来を憂いている。
- ジェニー(ジョデル・フェルランド)
- トレイシーの次女。14歳くらい。言語障害を患っており、言葉が話せない。絵を描く才能がある。
- ドッド(スティーヴン・マクハティ)
- 警察官。子供の失踪事件を捜査する。紳士的な人物。
- デヴィッド(ジェイコブ・デイヴィーズ)
- ジュリアの子供として屋敷にいたが、実はジョンソン夫人の子供。4歳くらい。
- トレイシー(サマンサ・フェリス)
- ジェニーの母親。夫に長女を犯されつつも、生活を共にしている。暴力的な夫に辟易している。
- ジョンソン夫人(コリーン・ウィーラー)
- 息子を攫われた母親。気が狂ったように子供を探して町内をふらついており、変人扱いされていた。ジュリアを追い詰める。
映画『トールマン』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『トールマン』のあらすじ【起】
ジュリアは医師から顔の手当てを受けていた。そこへ、刑事がやって来て報告する。捜索したが、子供達は見つからなかったと。
閑散とした田舎町コールド・ロックは、6年前に鉱山が閉鎖されて死んだ。その町を戦慄が走る悲劇が襲う。誰もが予想し得ない事件だった。
36時間前、診療所の医師ジュリアの元へ妊婦が運び込まれる。設備は整っていなかったが、彼女は無事に赤子を取り出した。逆さ子だった子供の蘇生をしたジュリア。妊婦の母親はその子を病院に連れて行かないと言った。
事情を聞く。母親トレイシーの夫は彼女の娘に目をつけていた。18にも満たない娘は父親に犯され、妊娠出産したのだった。
町では、そういった望まれない子供が時々生まれるが、その他にも子供の失踪が相次いでいた。人々は子供を攫う犯人をトールマンと呼んだ。
失踪した子供の捜査で、警察はずっと張り込みをしている。
ジュリアはトレイシーの家を訪ねる。夫は暴力的で次女のジェニーは、いつも1人で絵を描いていた。ジェニーは言葉が話せず、言語療法を行っている。普段は筆記で会話をした。彼女はトールマンを見たとジュリアに知らせる。
自宅へ戻ったジュリア。彼女には幼い1人息子がいた。住み込みの家政婦とは仲が良く、夕食を摂った後に晩酌をする。書斎で寝てしまったジュリアは、深夜に物音がして目を覚ました。キッチンのラジカセが音を鳴らしていた為、それを止める。
振り向くと家政婦が拘束され、血塗れでもがいていた。ジュリアは子供部屋へ。息子のデヴィッドが姿を消していた。
逃げ去る人影を目撃。必死になって追いかける。古い中型のトラックにしがみついたジュリアだったが、スピードが増すにつれ車から離されてしまう。
不審に思ったトラックが停車。運転席から人が降りて荷台の後ろへ入って行く。息子は助手席にいた。助けようとして犬に襲われる。彼女は殴打され、意識を失った。気が付くと荷台に乗せられ、犬に見張られていた。ジュリアは腕のロープを切って犬と格闘。運転席の人を捕まえようとする。車は横転した。
映画『トールマン』のあらすじ【承】
車から脱出したデヴィッドを抱き上げた人物が、徒歩で去って行く。ようやく車の荷台から出たジュリアは、足跡を追って森へ入る。
暗い森の中をふらつきながら息子を探す。泥沼に落下。抜け出した彼女は疲れ果てて、地面に座り込む。傷の程度を確認し後ろを振り向くと、トールマンの札がかかった立て札があった。
道路の真ん中で力尽きたジュリアを発見したのは、警官のドッドだった。一旦カフェへ。泣くだけで事情を話さない彼女を、カフェの店主は手厚く迎えた。店の裏の部屋で着替えをするジュリアは、そこで保安官と男の話を洩れ聞く。店の客達は全員がグルで、ジュリアが出て来るのを待っていたが、彼女は裏口から森へ逃げ込んでいた。
町人達が総出で狩りを始める。保安官は1人、署へ戻った。パトカーの後部座席に隠れていたジュリアは、建物内へ隠れる。奥へと進み誰かの居住区域に入った。逃げ出して行く人影を見た彼女は、更に後を追う。廊下の先に息子の姿を見つけた。必死で追う彼女は、黒づくめのジョンソン夫人に殴られて意識を失った。
デヴィッドはジョンソン夫人をママと呼んでいた。
映画『トールマン』のあらすじ【転】
ジョンソン夫人は語る。彼女はトールマンを探して森を進み、ジュリアの家に辿り着いた。そこで、自分の息子の姿を見る。夫人はカフェの店主に事情を話して協力を煽いだ。店主と店の客は夫人の話を信じて、ジュリアを貶めようとしたが、計画は失敗。
ジョンソン夫人はジュリアに詰め寄る。今まで攫った子供はどこへ。ジュリアは観念して子供はトールマンへ渡したと言った。ジュリアは近付いてくる夫人を蹴り上げて、拘束を解く。
子供の名を呼びながら、探し回るジュリア。そこへ、ジェニーが現れて子供を捕まえる。彼女は子供をジュリアへと渡し、2人は車で逃走。自宅へ戻ると家政婦が子供を室内へ。ジュリアはジェニーを帰そうとする。すると、ジェニーは自分もトールマンの元へ連れて行って欲しいと懇願。しかし、ジュリアは聞かなかった。
子供を自宅の地下へ連れ込んだジュリア。玄関口にいるジェニーに、トールマンとの事を伝えて帰宅させた。
疲れ切ったジュリアは、書斎のソファで横になる。町人が家へ押しかけていた。
夜が明ける。逮捕された彼女は自宅を出る際に、首を吊った家政婦を見る。外では怒りに沸いた住民が押しかけ、騒動になっていた。
ドッドは家の地下へ入る。そこは作業場だった。家の下には立て坑があり、抜け道になっている。元が鉱山なので、地下は穴だらけだった。警察は立て坑を捜査するが、何も発見出来なかった。
そうして、ドッドはジュリアへと報告に行ったのだ。
映画『トールマン』の結末・ラスト(ネタバレ)
ジュリアの夫は町でも評判の人物だった。街のまとめ役を担っていた夫は、鉱山が閉鎖され活気を失った町で、子供が犠牲になっている事に心を痛めていた。
ジュリアと夫の間には子供が出来ず、彼女は18人もの子供達を攫ったのだった。
子供の行方は分からず仕舞い。ジョンソン夫人が呼ばれ、ジュリアと話す事になった。
ジュリアは夫人に、子供の未来を守りたいと切々と語る。だが、国の体制は変わらず、どんなに訴えても応えてはくれない。だから、子供を攫い保護しようとしたのだった。ジュリアは夫人に、子供は坑道の至る場所にいると教えた。
トレイシーは夫と喧嘩し暴力を振るわれた。ジェニーは暴行を止めようとして、父親に突き飛ばされる。母親は激怒して夫に反撃したが、夫婦はなぜか笑い合っていた。ジェニーは家を飛び出す。1人になると彼女は突然、男に連れて行かれる。座席の下へ隠され、車は出発した。
車は夜が明けても走り続ける。行先は大都市だった。ジェニーは戸籍を変えて、里親の元へ送り出される。トールマンはジュリアの夫だった。攫われた子供は戸籍を変え、裕福な家庭に貰われていたのだ。
数カ月後、田舎町は静けさを取り戻していた。トレイシーの元にドッドが訪れる。母親は娘を探し続けているが、未だ見つからず。ジュリアは裁判で死刑を求刑されるとの事だった。
ジェニーは新生活にも慣れ現状に満足していたが、貧乏で荒れていても本当の家族と過ごす方が良いのか、裕福で教育の行き届いた家庭で育つ方が良いのか、その幸せの規定は未だに分からない。
映画『トールマン』の感想・評価・レビュー
鬼才パスカル・ロジェ監督作品。観る前と後で作品のイメージが一変するという監督の異質さを感じることができる。
序盤は子供の誘拐事件として描かれているが、徐々に真実が明らかになり後半では見方がまるっきり逆転する。しかも、巧妙に描かれているので物語自体、崩壊することもない。そこが、さすがの鬼才監督の手腕と言ったところ。今作のテーマは貧困や虐待であり、ヒロインとその夫が行っていることはもちろん犯罪である。夫婦は犯行に手を染める前まで、まっとうな方法で政府に訴えていたが、政策は変わらずやむを得ず犯行に手を染めている。実親から引き離され、養子として何不自由なく暮らすことが幸せなのか、そうではないのか。そこは観る側の判断に委ねられるのだろう。ホラー作品と見られがちだが、そうではなく社会に訴えかけるものがきちんと確立された素晴らしい作品だと思う。(女性 40代)
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