映画『殺し(1962)』の概要:「暗殺の森」や「ラストエンペラー」で知られるイタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督のデビュー作。娼婦殺人事件の容疑者たちが取り調べを受けるという構成で、当時のローマが抱えていた社会問題やそこに暮らす人々の荒んだ心が浮き彫りになっていく。
映画『殺し』の作品情報
上映時間:92分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
キャスト:フランチェスコ・ルイウ、ジャンカルロ・デ・ローザ、アルフレード・レッジ、アレン・ミジェット etc
映画『殺し』の登場人物(キャスト)
- ルチアーノ(フランチェスコ・ルイウ)
- 19歳の少年。ずっと失業しており、悪い仲間と窃盗を繰り返している。
- ブステッリ(アルフレード・レッジ)
- 30歳の男。窃盗などで17回も起訴され、刑務所に3年あまり収監された過去がある。母親と高利貸しをしているエスペリアのヒモ。
- コンセンティーノ(アレン・ミジェット)
- 女に飢えた孤独な兵士。ニヤニヤしていて薄気味悪い男。
- ナタリーノ(レナート・トロイアーニ)
- どんなに寒くても裸足に木のサンダルを履いている。嫌な目つきをしている。
- ピピート(ロマーノ・ラバーテ)
- 16歳の少年。いつもお金がなくて腹を空かせている。
- フランコリッキオ(アルヴァロ・デルコーレ)
- ピピートの友人。ピピートと似たような境遇。
映画『殺し』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『殺し』のあらすじ【起】
1960年頃のイタリア。ローマ市内のパオリーノ公園近くの河岸で、中年女性の遺体が発見される。被害者は、殺害される前にパオリーノ公園で目撃されており、警察はその夜公園にいた人物の取り調べを始める。
ルチアーノは、ローマ生まれの19歳。父親とは死別し、貧困家庭に育った。もう長く無職の状態が続いており、生活は困窮している。ルチアーノは、事件当日も友人2名と待ち合わせして、職探しに出かけたと話す。
しかしルチアーノが友人たちと出かけたのはパオリーノ公園近くの雑木林で、そこはカップルの逢引場所として有名だった。ルチアーノは、夢中で抱き合っているカップルのバッグや所持品を盗む窃盗グループの一員だった。
当日は思うような収穫がなく、通り雨にも降られる。雨が上がり、ルチアーノはあるカップルのラジオを盗もうとするが、男に見つかって殴られる。友人にも腰抜け呼ばわりされ、仲間外れにされてしまう。
1人になったルチアーノは、暗くなってからパオリーノ公園に到着する。しかし、ただ通り過ぎただけのルチアーノは、女1人と2人の少年を見ただけだった。
映画『殺し』のあらすじ【承】
次に呼ばれたのは前科持ちのブステッリだった。3年ほど刑務所で過ごし、2年前に出所したブステッリは、事件当日は女と会っていたと供述する。
確かにブステッリは最近できた恋人と会っていたが、彼にはエスペリアという別の女がいた。ブステッリは、母親と高利貸しをしているエスペリアのヒモだった。
恋人と1時間後に約束して、ブステッリはエスペリアの家へ戻る。エスペリアの母親は、ブステッリを“寄生虫”と罵り、母と娘は壮絶な喧嘩を始める。エスペリアは母親に悪態をつき、ブステッリと金の回収へ向かう。
エスペリアは気性の激しい女で、ブステッリの言うことも聞かない。2人は、雨宿り中に喧嘩となり、そのまま別れてしまう。ところが恋人との待ち合わせ場所にエスペリアが現れ、ブステッリは刺されそうになる。恋人は、恐ろしいエスペリアの姿を見て、先に帰っていた。その後ブステッリは夜の公園を訪れたが、ただ通り過ぎただけで特に何も覚えていない。公園の外に止めた車にはエスペリアが乗り込んでおり、ブステッリは茂みに隠れて、どうしようか考えていた。
次は、公園のベンチで目撃された兵士のコンセンティーノが呼ばれる。彼は女を求めてローマの街をうろつき、夜には疲れて公園のベンチで眠り込んでいた。1時間半ほどうたた寝し、公園を出る時、木のサンダルを履いた嫌な目つきの男を目撃する。
映画『殺し』のあらすじ【転】
その男はナタリーノという名で、その夜のことは何も覚えていないと話す。しかし警察の追求は厳しい。ナタリーノは、6時半に仕事場を出て公園内をフラフラ歩き回っていたらしい。その時、公園を横切っていくルチアーノと茂みにいたブステッリ、ベンチで眠るコンセンティーノを目撃している。さらにナタリーノは、顔見知りの少年2人が、見知らぬ男と話をした後、公園にいた被害者と何処かへ行ったと証言する。
警察に連行された少年のピピートは、怯えて泣いていた。彼は食事を作る金が必要で、公園をぶらついていたのだと話す。
ピピートと一緒にいたのはフランコリッキオという友人で、2人はその日2人組の女の子と知り合っていた。若者同士は意気投合し、女の子たちの知り合いの女性の家へ行く。その女性が、“友達と来るなら食事を作ったのに”と残念がったので、4人は翌日に女性の家で食事会の約束をする。女性は、希望するメニューに必要な材料を書き出し、ピピートとフランコリッキオに買ってくるよう頼む。しかし、その食材を揃えるのには、2000リラほどのお金が必要だった。
一文無しのピピートとフランコリッキオは、とりあえず公園をぶらつく。すると、同性愛者らしき男が、2人に声をかけてくる。その男は2人にタバコをくれ、金のライターで火をつける。ピピートとフランコリッキオは、金のライター目当てで男についていく。
男は2人を河岸に誘い、コートを脱いで茂みの中へ入っていく。ピピートは隙を見て男のコートを奪い、フランコリッキオと逃げる。
翌日、警察が来たのを見て、ピピートとフランコリッキオは逃亡する。警察は殺人事件のことで話を聞きに来たのだが、2人は盗みのことだと勘違いして必死で逃げる。どうしても捕まりたくなかったフランコリッキオは、流れの早い川へ飛び込み、溺死してしまう。警察は、ピピートとフランコリッキオも犯人ではないと判断する。
映画『殺し』の結末・ラスト(ネタバレ)
あの夜の真実はこうだった。ナタリーノは、公園にいた被害者の女性の顔も覚えていないと話していたが、それは全て嘘だった。ナタリーノは、“サンダルで寒くないのか”と女に声をかけられ、話をする。女は娼婦で、ナタリーノを誘ってきたのだ。ナタリーノは女の誘いに乗り、彼女の後をついていく。
女は自ら河岸の茂みへ行き、商売を始めようとする。ナタリーノは、女のバッグを奪って逃げるつもりだったが、彼女はバッグを握りしめていた。ナタリーノが強引にバッグを奪おうとすると、女は“助けて!”と悲鳴をあげる。ナタリーノは、女を黙らせるため一発殴り、さらに何度も殴打する。そして女は絶命し、ナタリーノは彼女のバッグを奪って逃走する。その一部始終を、あの同性愛者の男が目撃していた。
後日。警察は同性愛者の男に同行してもらい、ナタリーノの逮捕へ向かう。彼は恋人とダンスホールで踊っていた。男は、木のサンダルの靴音でナタリーノを発見する。警察に捕まったナタリーノは、“俺は何もしていない!”と最後まで暴れていたが、それは無駄な抵抗だった。ナタリーノの恋人は、彼の名前を何度も叫んで泣き崩れる。
映画『殺し』の感想・評価・レビュー
容疑者が1人ずつ取り調べされていく様子を描いているので、鑑賞しながらこの人は怪しいとか、この人は犯人じゃなさそうだなどと考えながら見ることが出来るのでとても面白かったです。
こんな治安が悪い街はゾッとしますが、この時代にはよくある事だったのかなと思いました。
ラストは犯人が明らかになりますが、その犯人にも愛する人がいて愛が引き裂かれてしまう様子は見ていて辛くなりました。最後まで飽きずに見られる作品でした。(女性 30代)
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