この記事では、映画『めがね』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『めがね』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『めがね』の作品情報
上映時間:106分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:荻上直子
キャスト:小林聡美、市川実日子、加瀬亮、光石研 etc
映画『めがね』の登場人物(キャスト)
- タエコ(小林聡美)
- ユージが営む宿の客。生真面目で融通の利かない性格。
- ハルナ(市川実日子)
- 高校の生物教師。はっきりとした物言いをする。
- ヨモギ(加瀬亮)
- タエコを追ってユージの宿を訪れる。タエコのことを先生と呼んでいる。
- ユージ(光石研)
- 宿の店主。
- サクラ(もたいまさこ)
- 春になると、ユージが営む宿を訪れて手伝っている。春以外は何をしているのか不明。
映画『めがね』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『めがね』のあらすじ【起】
空港から出てきたサクラは、小さなバッグを手に持って歩いた。そして、住人の男性(ユージ)と女性(ハルナ)に深々と頭を下げた。
空港から出てきたタエコは、大きなスーツケースを引き摺って歩いた。地図を片手に宿に辿り着くと、宿の主人のユージと犬のコージに出迎えられる。宿の部屋は和室で、布団が敷かれていた。そして、ここでは携帯の電波が繋がらなかった。タエコは春先に訪れた宿泊客として、3年ぶりの客だった。そして、ユージが渡した地図を見て、迷わずに辿り着いた人としても3年ぶりの人物だった。ユージからこの町に暮らす才能があると言われるが、タエコは返答に困った。
ユージは作ったお弁当を持って夕食を食べに出掛けた。タエコも誘われたが、それを断った。冷蔵庫にある物を適当に食べてくれと言われるが、中を覗くと魚が一匹まるごと置かれているだけだった。タエコは外に置かれたままになっていたスーツケースを部屋に入れると、庭に出てバナナを食べた。
朝、タエコが部屋で目を覚ますと、サクラが座って微笑んでいた。驚いていると、「朝です。今日もいいお天気」と言って立ち去った。タエコは戸惑いながら二度寝をした。そして、目を覚ますと散歩に出掛けた。海辺に行くとサクラの指導の元、子供達が不思議な体操をしていた。そこにはユージの姿もあり、「メルシー体操」をしていると教えられる。タエコも誘われるが、それを断った。
タエコはサクラとユージと共に朝食を食べた。そこでタエコは先程のメルシー体操について尋ねた。メルシー体操とはサクラが考案した体操で、毎朝行っているものだった。タエコが観光する場所を尋ねると、ユージ達は顔を見合わせて怪訝な表情をした。この辺に観光する場所は無く、ここに来た観光客達は黄昏ながら過ごしていた。

映画『めがね』のあらすじ【承】
タエコは海を眺めて黄昏てみたが、早々に断念した。サクラが海辺の小さな小屋で店を開いていたので、タエコは飲み物を購入しようとした。しかし、客のハルナから、かき氷以外は無いと教えられる。サクラからかき氷を勧められるが、タエコはかき氷が苦手なので断った。
タエコは夕暮れ時の風を浴びながら、編み物をしていた。そこにサクラが来て、「黄昏中にごめんなさい。夕飯の時間です」と言われる。タエコは黄昏ているつもりはなかった。お腹も空いていなかったので、後で食べると断った。日が沈み、お腹が空いたタエコは宿へと戻った。庭ではサクラとユージとハルナがバーベキューをしていた。美味しいお肉を食べながら、“黄昏ること”についての話になった。この町の人達は黄昏ることが得意だった。タエコは夕暮れ時などに黄昏ることを話したが、それを聞いたハルナから意外と単純だと馬鹿にされる。そして、この町に何をしに来たのか聞かれ、タエコは返答に困った。
朝、タエコは昨日と同じようにサクラに起こされる。ほっといてくれと頼んだが、もうこの宿に関わる人達に耐えられなかった。タエコは朝食を食べずに別の宿に移動することを決める。ハルナに車で送ってもらいながら、サクラ達について教えてもらう。サクラは春になると小さな鞄を1つ持って宿に訪れた。だが、どこから来るのかは分からなかった。しかも、サクラとユージの関係を、ハルナははっきりとは教えてくれなかった。
映画『めがね』のあらすじ【転】
タエコが新しく決めた宿は、朝から畑仕事を行い、夜には勉強会を行うことが決まっていた。宿の女主人から笑顔で宿のコンセプトを語られるが、タエコにはついていけそうもなかった。急いでスーツケースを引き摺りながら、宿を飛び出した。携帯も繋がらないので、長い砂利道をひたすら歩くしかなかった。タエコが空腹と疲労でスーツケースの上に座り込んでいると、サクラが自転車に乗ってきた。そして、サクラは少しだけ先に進むと、振り返ってニヤッと笑った。タエコはスーツケースをそのまま道に置いて、小さな鞄を持って荷台に座った。
朝、タエコは目を覚ましたが、そこにサクラの姿は無かった。歯を磨きながら庭先でなんとなく覚えていたメルシー体操をしていると、ハルナにその姿を見られる。タエコは気恥ずかしくなって誤魔化した。朝食の時間になり、タエコは迷惑をかけたことを皆に謝罪した。皆で和やかに食べていると、ハルナからメルシー体操への参加を勧められる。タエコはそれを断った。そして、なぜ客でもないハルナが一緒に朝食を食べているのか尋ねた。だが、ハルナはそれに答えず、何をしに来たのかタエコに尋ねた。タエコは携帯電話が繋がらないところに来たかったのだと話した。ハルナはそれだけが理由なのかと突っ掛るが、ユージが穏やかに間を取り持った。ハルナは時計を見て、慌ただしく出掛けていった。ハルナは高校で生物の教師をしており、始業の時間が過ぎていたのだ。
ユージの宿に1人の青年(ヨモギ)が訪ねてきた。ヨモギはタエコの知り合いで、タエコのことを先生と呼んだ。昼食はユージが友人から貰ったイセエビを、皆で食べた。ハルナからヨモギは誰なのか聞かれるが、タエコは知らないふりをした。その後、タエコはヨモギと海辺に行って並んで座ると、他愛のない話をした。ヨモギは飽きるまで帰るつもりがなかった。そして、この場所で飲むビールと黄昏は最高だと言った。
映画『めがね』の結末・ラスト(ネタバレ)
タエコは黄昏るコツをユージに尋ねた。ユージは昔のことを懐かしんだり、誰かのことをじっくり考えることだと答えた。ユージが黄昏るときは、たた過ぎる時間を待っていた。そして、サクラのかき氷に出会わなかったら、ここには居ないと笑った。
ユージに勧められ、タエコはかき氷を食べに出掛けた。すると、その場にヨモギも現れ、2人並んでかき氷を食べることになる。サクラが作るかき氷は、下に小豆が敷かれ、透明なシロップを掛けたシンプルなものだった。そこに、ハルナも訪れる。真面目に仕事をしていても休憩は必要だと言ってかき氷を食べた。タエコもその意見に同意する。そして、ユージまで訪れ、サクラも含めた皆で黄昏ながらかき氷を食べた。
タエコはかき氷の代金を支払おうとするが、氷屋から貰った氷だったので料金はタダだった。しかし、食べた人達は何かしらの贈り物をしていた。タエコは何も贈る物が無くて戸惑う。ハルナとユージはマンドリンの演奏を行った。
次の日、サクラは宿で小豆を煮ていた。小豆を煮るコツは焦らないことだと話し、タエコに1匙の小豆を渡した。その姿をハルナが見ていた。海辺でタエコが編み物をしていると、ハルナが来て何時まで居るのか問い掛けた。ハルナはタエコとサクラの関係に嫉妬しているのだ。タエコは特に帰る日を決めていなかった。そして、編み物の話になり、ハルナはきっちり揃っていて綺麗な編み目だと褒めた。だが、タエコはきっちりとした網目がつまらなくて気に食わなかった。だから、編み物をほどこうとしたが、ハルナがつまらなくないと言って必死にタエコを止めた。その必死さが嬉しくて、タエコは声を上げて笑った。
タエコはメルシー体操に参加した。その後、ガーデニングをしているハルナに声を掛け、サクラは何をしている人なのか聞いた。だが、ハルナは何も知らず、春以外のサクラに興味がなかった。そして、サクラの自転車の荷台に乗ったタエコはずるいと拗ねた。
タエコが町を歩いていると、サクラを自転車の荷台に乗せたユージが現れる。そして、皆でビールを飲むことになる。タエコはヨモギから、旅は永遠には続かないと言われる。タエコにもそれは分かっていた。そして、ヨモギは先に帰っていった。
タエコはサクラの小屋に行き、この町に来る前は「地球なんて無くなってしまえばいい」と思っていたことを話した。タエコは何も無いこの町に癒されていた。そして、宿に戻ると、かき氷のお礼に編み物が入った袋をサクラに渡した。
雨が降る日、サクラは町を出て行った。朝食を食べたタエコも、帰ることを決める。ハルナに車で送ってもらい、ユージの分かり難い地図を頼りに進んでいく。ユージが言っていた3年前に地図を理解した客は、ハルナのことだった。タエコが窓から街並みを眺めていると、うっかり眼鏡を落としてしまう。でも、取りに戻ろうとは思わなかった。
タエコがユージとハルナと一緒に海辺の小屋の準備をしていると、タエコがあげた赤くて長いマフラーを巻いたサクラが訪れた。後ろには、ヨモギの姿もあった。そして、サクラは静かにユージ達に頭を下げた。
映画『めがね』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
本作の醸し出す空気感がとても心地よく、楽な気持ちでぼーっと観ていられる安定感が落ち着く。
『かもめ食堂』に通じるものを感じた。そこに余計なものはなくて、人生の荷物は少なくて充分だというミニマルな感じが頭を空っぽにさせてくれる。
蘇ったら、与論島の砂浜でメルシー体操という謎の体操をしてみたい。
終始ゆったりとした時間が流れるので、時折眠気を誘うが、映画を感じながら漂っているかのような気持ちになった。(女性 20代)
恐らくものすごく好き嫌いが分かれる一本。自分で観てもその日の気分で「これもありだな」と思う日もあれば「これはないだろう」と思う日もある。お馴染みのメンバー、お馴染みの作風なのだがこれは確信犯なのだろうか。今作では特に多くの何かのメタファーかと思わせるアイテムが散りばめられているのでつい深読みもしたくなるが、他の作品同様になんとなく観て、なんとなくいい気分になるのが良いのだろう。憧れの生活だが、あれで生活費稼げるならいいよなぁと思ってしまうのはこちらに余裕がない証拠か。(男性 40代)
『かもめ食堂』と同じく、静かに心を癒してくれる作品。公開当時に観たとき、自分はまだ20代だったので「氷ありますよ」の台詞と「メルシー体操」が印象に残ったくらいで、それほど思うことはありませんでした。40代になった今あらためて観ると「たそがれるって大事だなあ」とじんわり心に染みてきます。
この作品に出てくる人たちのような生活はできないけれど、何もしないでボーっと過ごす時間があってもいいんだと心の片隅に置いておくことは大事だと思う。時間に追われて疲れたときに観たい映画です。(女性 40代)
「何もしない贅沢」を体感できる、まさに静寂と癒しの映画でした。都会の喧騒に疲れた心に、じんわり染み込んでくるような空気感が心地よくて、観終わった後しばらく余韻に浸っていました。登場人物たちの会話は少なく、それが逆にこの作品の魅力。桜庭ななみさん演じるタエコの変化がさりげなく描かれていて、ラストで見せる微笑みにじーんときました。心を整えたい時にまた観たい作品です。(30代 女性)
最初は「地味だな」と思ったけど、見続けるうちにどんどん引き込まれました。何気ない日常、ゆるやかな時間の流れ、そして“たそがれ”というキーワード。観ているうちに自分のペースまでゆっくりになっていく不思議な映画です。タエコが島の人々に心を開いていく過程がとても自然で、押しつけがましさがなくてよかった。日々の忙しさを忘れたいときにぴったりです。(20代 男性)
この映画を観て、「休むこと」の価値をあらためて感じました。物語らしい物語はないけれど、だからこそ感じ取れることがたくさんある。もたいまさこさん演じるサクラさんの穏やかさと包容力が素晴らしく、何も語らなくても“生き方”が伝わってきました。派手な演出はないけれど、心をじんわり温めてくれるような優しい作品でした。(40代 男性)
「めがね」は五感で味わう映画だと思います。音楽も最小限で、風の音や波の音がすごく心地よい。時間に追われる日常を一度手放して、ただ「在る」ことの大切さを思い出させてくれました。淡々とした展開の中で、気づかないうちに癒されている感覚があり、観終わった後の静かな感動が忘れられません。心が疲れたときにそっと寄り添ってくれる一本。(50代 女性)
旅先で何かを“得よう”とするのではなく、何も得なくていい。ただ、そこにいることが大切。そんなメッセージが込められたような作品でした。都会の生活にどっぷり浸かっていたタエコが、ゆっくりと島の時間に身を委ねていく様子がリアルで、自分自身にも重ねてしまいました。見終わった後、無性に「たそがれ」に出かけたくなりました。(30代 男性)
おしゃれで、静かで、深い。『かもめ食堂』と同じ監督だと知って期待していましたが、期待以上の余韻がありました。淡い色彩と静かな映像に包まれて、物語が進むというより「流れる」感覚が心地よかった。自分を見つめ直すきっかけにもなるような、スローライフの美しさが詰まった映画です。ちょっと疲れたときに観ると心が整います。(20代 女性)
特にドラマチックな事件は起きない。でも、それが逆に癒される。何もしないこと、ただそこにいること、空を見上げること、そういう時間の豊かさを思い出させてくれました。登場人物たちの自然体の演技も良くて、特にもたいまさこさんの存在が心強かったです。日々忙しい社会人にこそ観てほしい、静かで優しい映画。(40代 女性)
映画『めがね』を見た人におすすめの映画5選
かもめ食堂
この映画を一言で表すと?
日常の美しさを、ゆっくりと味わわせてくれる北欧スローシネマ。
どんな話?
フィンランド・ヘルシンキで小さな食堂を開いた日本人女性が、少しずつ地元の人々や旅人と交流しながら、おだやかな日々を築いていく。派手な展開はないけれど、心温まる時間が静かに流れる物語。
ここがおすすめ!
『めがね』の監督・荻上直子の代表作でもあり、静けさと優しさに満ちた空気感がそっくり。食事の描写や登場人物の会話も心地よく、観るだけで癒される。“何も起こらない贅沢”をまた味わいたい方にぴったりです。
しあわせのパン
この映画を一言で表すと?
心にやさしくしみこむ、人と人のつながりを描いた北海道の四季の物語。
どんな話?
北海道・洞爺湖畔のパンカフェを営む夫婦のもとに、さまざまな事情を抱えた客たちが訪れる。パンとコーヒー、そして季節の風景が心を静かに癒していく。
ここがおすすめ!
『めがね』同様に、美しい自然と食事の風景が印象的。会話の少ない静かな演出と、人間関係のささやかな変化が心を揺らします。人生に疲れたとき、ただそっと寄り添ってくれるような優しい映画です。
南極料理人
この映画を一言で表すと?
極寒の南極で、食とユーモアが心の温もりをつなぐ異色のほのぼのドラマ。
どんな話?
南極観測隊の食事を任された料理人が、隊員たちの心と胃袋を支えるために奮闘する。閉ざされた空間でも人は笑い、食べて、生きる。そんな日常をユーモアたっぷりに描いた群像劇。
ここがおすすめ!
“特別なことは何も起こらないけど大切な日常”というテーマは、『めがね』と通じるものがあります。のんびりしたテンポと食事シーンに癒されたい人にぴったり。観終わったあとに、温かいスープが飲みたくなります。
ペンギン・ハイウェイ
この映画を一言で表すと?
子どもの視点で世界の不思議と向き合う、静かで優しいファンタジー。
どんな話?
ある日、突然街に現れたペンギンたち。その謎を探る小学生のアオヤマくんと、不思議な力を持つ“お姉さん”の交流を通して描かれる、成長と別れの物語。
ここがおすすめ!
『めがね』のように、明確な説明や展開ではなく“感覚”で楽しむタイプの映画。幻想的な世界観と、心にやさしく触れるような物語が魅力。観る人の年齢によって感じ方が変わる、奥深いアニメ作品です。
リトル・フォレスト
この映画を一言で表すと?
手作りの暮らしと自然の恵みが織りなす、四季を味わう丁寧な時間。
どんな話?
都会の生活に疲れた女性が、故郷の山村に戻り、自給自足の暮らしを始める。季節ごとの料理と風景の中で、自分の心と静かに向き合っていく姿を描く。
ここがおすすめ!
まさに『めがね』と同じく「生き方を問い直す映画」。言葉数は少なくても、自然と食事、日常の繰り返しの中に豊かさが詰まっています。忙しい毎日に疲れたときに、そっと寄り添ってくれる映像詩です。
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