映画『カイロの紫のバラ』の概要:貧しい生活を支えるシシリアは、映画を見ることが心の支え。最近公開中のラブコメ作品は、繰り返し見るほど気に入っている。ある日、スクリーンからその作品の人物が飛び出して来て…。その恋は夢のようで夢じゃない。ドリーミン・ラブコメディ。
映画『カイロの紫のバラ』の作品情報
上映時間:82分
ジャンル:ファンタジー、ラブストーリー
監督:ウディ・アレン
キャスト:ミア・ファロー、ジェフ・ダニエルズ、ダニー・アイエロ、エドワード・ハーマン etc
映画『カイロの紫のバラ』の登場人物(キャスト)
- シシリア(ミア・ファロウ)
- 主人公。無職の夫の代わりに大黒柱として生計を立てる。家事・仕事に追われる中、映画館での映画鑑賞が心の癒しである。ギルの大ファンで、彼の出演作は欠かさずチェックしている。年齢よりは純情で夢見がち。
- トム・バクスター / ギル・シェファード(ジェフ・ダニエルズ)
- バクスターは、ラブコメ映画『カイロの紫のバラ』に出てくる若き探検家。ギルが演じた役柄で、あくまで架空の人物である。情熱的かつ正義漢。観客のシシリアにスクリーン越しに恋心を抱き、現実世界へ飛び出してくる。ギルは脇役~準主役を務める、売り出し中の若手俳優である。分身であるバクスターを捜して、シシリアの町を訪れる。
- モンク(ダニー・エイロー)
- シシリアの夫。道楽者で毎日仲間と遊びに興じる。稼ぎ手のシシリアを見下し、苛つくと手を上げる。反面、独占欲が強く、シシリアを束縛したがる。
映画『カイロの紫のバラ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『カイロの紫のバラ』のあらすじ【起】
大戦下のアメリカ。ニュージャージー州の田舎町に暮らすシシリアは、日々ウェイトレスとして仕事に追われていた。町の映画館では『カイロの紫のバラ』が上映され、シシリアは仕事終わりに見に行く。脇役の冒険家―トム・バクスターに胸をときめかせ、シシリアは一時辛い現実を抜け出した。
シシリアの夫モンクは、働かずに酒とゲームに現を抜かしていた。ある晩、シシリアが帰宅すると、モンクは見知らぬ女を家に連れ込んでいた。激怒したシシリアは、荷物をまとめて家を飛び出す。しかし、夜の街の危うさを目にして結局引き返した。
業務で失敗を重ねていたシシリアは、とうとう仕事をクビになってしまう。生活の収入源を失い、途方に暮れたシシリアは映画館を訪れる。そして、絶賛公開中の『カイロ~』を再鑑賞して、救いを求めるように毎日映画館へ通い詰めた。
『カイロ~』の鑑賞も5回になった時、脚本通りにしか動かないはずのバクスターが、観客席を見つめた。その視線の先はシシリア。しかも、バクスターはシシリアに話しかけてくる。彼女が度々自分の作品を見ていることに気付いていて、バクスターはシシリアに興味を抱いていた。
映画『カイロの紫のバラ』のあらすじ【承】
シシリアは何が起きているか理解できなかった。バクスターは一度話そうと言い、何とスクリーンからその身を乗り出した。白黒だった身体は三次元の現実に馴染み、ハンサムな青年が現れる。そして、バクスターは戸惑うシシリアを連れて、どこかへ逃亡してしまう。前代未聞の出来事に、観客、はたまたフィルム内の人物すら唖然とするしかなかった。
人気のない遊園地に行き着くと、バクスターはシシリアに経緯を話す。シシリアが初めて作品を見た時から彼女の存在に気付いていて、画面越しに恋をした、とバクスターは愛を告白。バクスターに憧れていたシシリアも満更ではなく、胸を高鳴らせる。
シシリアは一旦帰宅し、再びバクスターの元へ行くため用意する。モンクに怪しまれるが、知人からベビーシッターを頼まれていると嘘をつき外出した。一方、映画館では警察やマスコミも駆けつけるほどの大混乱に陥っていた。そんな事態を知らないシシリアとバクスターは、夢のような時間を過ごす。
ハリウッドから、バクスターの演者で「本人」であるギル・シェファードが騒動を知って来訪していた。シシリアはコーヒーショップでギルに出会い、バクスターだと思い込んで接する。ギルだと知ると、大ファンのシシリアはいつになく興奮する。そして、ギルを彼の「分身」バクスターの元へ案内した。
映画『カイロの紫のバラ』のあらすじ【転】
ギルは同じ顔のバクスターと対面する。フィルムに戻れと促すが、バクスターは自由を欲しシシリアと幸せになることを強く望んでいた。ギルは、所詮虚像でしかないバクスターに、「実在していなければ意味がない」と言い放つ。しかし、バクスターの意思は固く、戻るつもりなどなかった。
教会でシシリアとバクスターが逢瀬中、モンクがシシリアの噂―若い男と懇意にしている―を聞きつけて乱入してくる。モンクはシシリアをぶとうとするが、バクスターに阻止される。男たちは喧嘩を始めるが、バクスターが負ける。シシリアは連れ戻そうとするモンクに抵抗し、バクスターの元に留まった。
分身の扱いに手を煩わせていたギルは、シシリアの家を訪ねていた。ギルは分身問題に限らず、俳優としてなかなか芽が出ないことを悩んでいた。シシリアはそんなギルを誉め立て、激励する。二人はしばし演技話に花を咲かせ、意気投合した。ギルは、自分の演技をポジティブに評価するシシリアを気に入っていた。
暇を持て余していたバクスターは、偶然出会った女性に色香漂う店に連れられていた。バクスターはそこがどんな所か判っていなかったが、無邪気さで女性たちを魅了する。彼女らから誘惑されても、シシリアへの一途な愛を貫いた。
シシリアはギルと成り行きでデートしていた。ギルはシシリアにウクレレを贈り、甘い雰囲気の中キスをした。シシリアの純粋さに惹かれたギルは、バクスターと表現は違うもその想いを伝える。シシリアは、同一人物なのに対照的な二人の間で揺れ始めた。
映画『カイロの紫のバラ』の結末・ラスト(ネタバレ)
身を隠していたバクスターだが、シシリアと共に映画館へ戻る。そして、シシリアを連れてスクリーンの中に入り込んだ。シシリアは登場人物たちに加わり、劇中の世界を楽しんだ。
ギルが映画館に乗り込んできて、バクスターたちの邪魔をする。ギルは改めてシシリアに愛を告白し、一緒にハリウッドに来てくれと願う。同じ顔をした二人は、シシリアをめぐって火花を散らせる。シシリアの心中は、バクスターは所詮虚構で、気持ちは現実のギルに傾いていた。そして、夢は見続けられないから、とギルを選ぶ。バクスターは自嘲気味に笑い、一人スクリーンに戻った。
現実の幸せを掴みかけたシシリアは、慌てて荷造りをして、「今度こそ」モンクの元を去る。待ち合わせ場所の映画館に着くと、いるはずのギルの姿は見られなかった。事件解決後、ギルは制作関係者と共にハリウッドへ発ってしまっていた。シシリアは呆然とし、行く当てもなく劇場に入る。
その日上映されていたのは他の作品だった。美しいオーケストラの演奏を背景に、一組の男女が踊るシーン。影が差していたシシリアの瞳に光が宿る。一方、飛行機ではギルが寂しげに窓を見つめていた。現実と夢の間で傷ついたシシリアは、再び映画に安らぎを見出したのだった。
映画『カイロの紫のバラ』の感想・評価・レビュー
古き良きラブロマンス・コメディ映画。短い時間でテンポが良く、それでいていろいろな要素が詰まっています。同一人物の2人から同時に迫られる展開は、非常にロマンがあり良かったです。目を輝かせて共通の趣味を語り合ったり、映画の世界でデートしたりと、見とれてしまうシーンが多かったです。また、出演俳優たちが止まった映画で演技が止まりふて腐れたり、映画業界人が振り回されたりするシーンは笑って観ていました。ラストは何とも切ないですが、夢が見れるのは映画の中だけじゃないということでしょうか。(男性 20代)
心が踊る夢のようなストーリーにワクワクしながら鑑賞しましたが、ラストの展開が本当に切なく「夢」だったら良かったのにと思ってしまいました。
無職の夫に変わって、生活のために働く女性の元へ現れたのは、大好きな映画のあの俳優。しかも映画の役のままの男性が実在しているのです。そして自分のことを好きだと言います。こんな夢のような展開にニヤニヤしながら見てしまいます。
しかし、そんな夢のようなストーリーは長くは続きませんでした。ラストは切ないですが最高にキュンキュンできる作品なので、沢山の女性におすすめしたいです。(女性 30代)
数年前に日本で妻夫木聡主演の「キネマと恋人」という舞台を観たのだが、まさか本作をリメイクしていたとは観るまで気づかなかった。改めてその脚本の面白さを伝えてくれた。そして「映画」の魅力をもっと教えてくれる作品だ。
ストーリーは勿論スクリーンと現実世界が繋がるという非現実的なファンタジーなのだが、そこにウディ・アレン味が加わると一気に人生というものの深みだったり虚無感だったりが不思議と自分との共感に導いているからこんなにも身近に感じる作品になっているのだ。(女性 20代)
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