映画『運命を分けたザイル』の概要:前人未踏の登山へアタックした、若い登山家2人が体験した遭難事故を、再現映像と共に描く。壮絶で過酷な状況の中、絶体絶命に陥り登山家の鉄則に従ったサイモンと、骨折しつつ満身創痍となりながら奇跡の生還を果たしたジョーの真実の物語。
映画『運命を分けたザイル』の作品情報
上映時間:107分
ジャンル:ヒューマンドラマ、ドキュメンタリー、アドベンチャー
監督:ケヴィン・マクドナルド
キャスト:ジョー・シンプソン、サイモン・イェーツ、ブレンダン・マッキー、ニコラス・アーロン etc
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映画『運命を分けたザイル』の登場人物(キャスト)
- ジョー・シンプソン
- 登山当時は25歳。数々の山を制覇して来た経験から自分の実力を過信。シウラ・グランデ峰難関の西壁登攀に自信があった。自信家で驕りのある、とっつきにくい性格。再現映像では、ブレンダン・マッキーが演じる。
- サイモン・イェーツ
- 登山当時は21歳。素人登山家にも優しく、人当たりの良い性格。ジョーと共に数々の山を制覇して来た経歴を持つ。再現映像では、ニコラス・アーロンが演じる。
- リチャード・ホーキング
- たまたま1人旅でリマを訪れていた際、ジョーとサイモンに誘われて山へ来た青年。登山は初心者。キャンプの留守番を頼まれる。再現映像では、オーリー・ライアルが演じる。
映画『運命を分けたザイル』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『運命を分けたザイル』のあらすじ【起】
1985年。登山家のジョーとサイモンは当時まだ20代で、世界の山に登るのが楽しくて仕方なかった。頭の中は登山のことしかなく、野心家だった2人は南米のシウラ・グランデ峰、標高6400メートルの未踏の西壁へ挑んだ。
ジョーは25歳、サイモンは21歳。前人未踏の山や新ルートに挑むことが、彼らの登山人生における原動力であった。
山の麓から6~8キロの位置にキャンプを設営し準備を行う。目指す峰は山群の向こうだ。
キャンプには、リマで会ったリチャードも同行していた。1人旅という彼を山へ誘ったのだ。ところが、リチャードは登山には素人で、場所も分からぬまま何が始まるかも不明の状態。ジョーとサイモンは、リチャードにキャンプの留守番を頼んだ。
シウラ・グランデ峰西壁に挑戦した登山家は数知れないが、登攀の成功例はなかった。故に、野心家であるジョーはサイモンよりも登攀の成功に燃えていた。
1日目、2人はザックに着替えや用具を詰め、ベースキャンプを起点に一撃で攻め上がるアルパイン・スタイルで登頂を開始。固定ロープも張らず、拠り所となるキャンプも設営しない。シンプルな登山方法であるため、小さなミスが重大な事態を呼ぶ。失敗は許されず、大怪我は死を意味する。
西壁へ到着。出だしは快調だった。ジョーとサイモンは、驚異的なスピードで300メートルを登った。氷の滝が垂直に立つ部分から、彼らは複雑な登り方を始める。互いをザイルで繋ぎ1人がルートを確保、もう一人が安全を確保するやり方だ。この登り方は、互いに技術やスキルに全幅の信頼がなければできない。そうして、1日目が過ぎていく。
2日目。高山では脱水が激しく、大量の水分補給が必要となる。酸素が薄いため、ガスで雪を溶かして飲み物を作るのに1時間もかかる。短期決戦なので、ガスもあまり持って来ていなかった。
午後になると天候が悪化。強風と吹雪に晒されながら、標高6100~6200メートル地点まで到達。彼らは暗くなってからも登り続けたが、低体温症の危険を感じ、その場に雪穴を掘って休んだ。
映画『運命を分けたザイル』のあらすじ【承】
3日目、天気は快晴。登頂部には新雪なだれが作り上げた、細かい雪ひだができていた。キノコや蛇腹状のひだが一面を覆っている。新雪が深く積もった場所では、固い部分を探してルートを確保しなければならない。危険な登攀になった。
そして、午後2時。西壁を抜けて北稜に到達。体力を使い果たし、へとへとの状態だった。
問題は下山である。山での遭難の80パーセントは下山中に起きる。2人は登攀前に下山ルートを考えていたが、予想よりもひどい難路に苦戦苦闘。そのせいで頂上を出発後、1時間以内でルートを見失った。
当初の予定では1日で下山する予定だったが、暗くなっても2人はまだ、6000メートル上にいた。その夜、飲み物を作った時にガスが切れる。
4日目。最悪の稜線を抜け、その日中には下山する自信があったジョーとサイモン。この日はジョーが先頭を行く。しかし突然、稜線を分断する絶壁に遭遇。ジョーは氷壁を下ったが、アックスの打ち直し中に落下。どうにか留まるも、右足に激痛が走る。思わぬ骨折であった。ジョーはサイモンに骨折を知らせる。すると、彼は逡巡した後、ジョーに鎮静剤を飲ませた。
通常、高山でこのような怪我があった場合、怪我人を見捨てるのが常識である。そうしなければ、もう1人も死んでしまうからである。だが、サイモンは2人で下山することを選んだ。話し合って下山方法を考案。45メートルのザイルを1本に結んで90メートルにし、サイモンが上からジョーを先に降下させれば、90メートルずつ下山することができる。
互いに協力して降下を繰り返した。
日が暮れると嵐になる。体感温度は零下60度ほどで、吹雪は酷くなる一方だった。だが、確実に下山はしていた。あと1回、降下すれば氷河に辿り着く。そこからは、徒歩で行けるはずだ。しかしその時、最悪の事態へと陥ることになる。
降下したジョーは、地形から危険を察知して叫んだ。しかし、強風のせいでサイモンへは制止の声が聞こえず、ジョーは断崖絶壁で宙刷り状態となってしまう。彼がぶら下がる真下には、底が見えないクレバスが大口を開けていた。
ジョーは必死に体勢の維持を図ったが、零下60度の世界では指先の感覚もなく、体勢の維持に失敗。
映画『運命を分けたザイル』のあらすじ【転】
1時間半ほど、その状態を続けた2人。ジョーを支えるサイモンの確保場所が崩れ始める。絶体絶命に追い詰められた。この状況下で選べる選択肢などない。サイモンは悩んだ末、ナイフでザイルを切った。
その後、雪穴を掘り避難したサイモンは、ジョーのことが頭から離れずに1夜を明かす。
ザイルを切られ、クレバスに落下したジョー。彼は奇跡的にもクレバス内の雪棚に落下し、助かっていた。天井の穴には、まだザイルがぶら下がっている。ジョーはこの時、サイモンも落下し死んだと思っていた。だが、引っ張ったザイルには何もついて来ない。切れ端を見たジョーは、サイモンがまだ生きていることを確信すると同時に、自分の死を覚悟した。
しかし、骨折で人は死なない。ジョーは不気味な暗闇と静寂の中、恐怖に苛まれながら1夜を明かした。
5日目。辺りが白んだ頃、ジョーはひたすらサイモンを呼び始める。
その頃、サイモンはジョーのことを思いながら、下山を開始。昨夜のジョーの状況を知る。彼はクレバスの穴を見つけるが、ジョーが死んだと思い込んでいたため、クレバスを調べずに名前を呼んだだけで去った。この時、もっとクレバスを調べていれば、ジョーを救出できたかもしれない。
たった1人、クレバス内に取り残されたジョー。彼はイチかバチかの賭けに出た。クレバスの底へ向かってみることにしたのだ。足掻いて死ぬか、足掻かずに死ぬかだ。
サイモンは氷河を単独で渡り切り、キャンプへ無事に帰った。迎えてくれたリチャードに、全てのあらましを話すと、憔悴した様子で身体を休めた。
無事にクレバスの底へ降下したジョーは、出口を発見する。彼は腹ばいになり、右足を庇いつつ斜面を登った。そしてようやく、陽の目を見るのである。
外は快晴。そして、そこは氷河のど真ん中。ここから更に下山するには、悪路が延々と続く。それでもジョーは、身近な目標を立てて進んだ。
氷河の雪原には、サイモンが下山した足跡が残っている。その跡を辿って地道に進むジョー。次第に天候が悪化し、吹雪のせいで足跡が消える。
映画『運命を分けたザイル』の結末・ラスト(ネタバレ)
6日目。ジョーは道を確かめつつ氷河を抜けるが、その先からは岩場が続く。この先の道程を考え用具を捨てて、骨折した脚を防御。けんけんで進み、転んでは立ち上がる。彼は再び、身近に目標を据えて進んだ。雪がある内は雪を口に含む。孤独な戦いだった。
時間が経つにつれ、精神に異常をきたし始める。妄想と幻覚が交差。とにかく渇きが酷い。水が無いのに水の音が聞こえ、地面を無暗に掘ったりする。
その頃、キャンプでは憔悴したサイモンを心配して、リチャードが帰ろうと言う。朝になったら帰る準備をすることにした。
朝になって再び立ち上がったジョー。せめて、キャンプの傍まで行きたい。道中、本物の水を発見して、ひたすら飲み続けた。もうこの際、失禁してもお構いなしだ。キャンプの近くの湖にまで到達。サイモンと別れて4日が経過していた。もう、キャンプには誰もいないだろう。
ジョーはキャンプが見える場所まで来たが、ここで限界を迎える。意識が混濁し錯乱状態に。好きではない曲が延々、頭の中で鳴り続けた。
日が暮れると、雪が降り始める。ジョーはふと、匂いに気付いた。トイレの匂いだと分かり、テントが近いと確信。彼は必死になって相棒の名前を叫んだ。これで最後だと思いながら。
リチャードとサイモンは、ジョーの声に気付いた。クレバスに落ちて生還する者などいない。しかし、サイモンは相棒の声をしっかりと耳にして、テントから飛び出す。キャンプから約200メートル先にジョーが倒れていた。信じられなかった。
サイモンとリチャードは満身創痍のジョーを救出し、テントへ。
ジョーはその場で、サイモンに感謝を述べた。自分を下山させようとしてくれたり、色々してくれたことを。そして、ザイルを切ったことについては相棒を許した。それが、奇跡の生還を果たしたジョーが、サイモンへ最初にかけた言葉だった。
その後、ジョーは2年と6度の手術後、再び登山を始め、英国に戻ったサイモンは、ザイルを切ったことで山岳界から酷いバッシングを受けた。ジョーは今も彼を擁護し続けている。
彼らの後、シウラの西壁登頂に成功した者はいない。
映画『運命を分けたザイル』の感想・評価・レビュー
ドキュメンタリーのような感じでインタビューなども含めながらストーリーが進んでいくので、好き嫌いは別れると思いますが私はインタビューでじっくり話を聞くことが出来てさらに先が気になり最後まで飽きずに観ることが出来て良かったなと思った。
自分自身インドアなので登山などはやらないがそんな人間でも分かりやすく興味を持てる作品だった。
登山には生と死が隣り合わせで存在するという事がよくわかった。(女性 20代)
日本にも若くして沢山の山に登り記録を樹立している登山家がいますが、私たちがテレビで見る彼らの映像は「ほんの一部分」しかも「良い部分」だけなのだと思い知らされました。
私たちがテレビ番組などで見るのは登山家が経験してきた過酷な登頂までの道のりの中の「見せられる部分」だけで、実際には信じられないような「自然との戦い」をずっとしているのだと知りました。
大切な仲間であっても、生きるためには「決断」しなければならないこと。とてもつらかったです。(女性 30代)
原作は『死のクレバス アンデス氷壁の遭難』。著者は奇跡の生還を果たしたジョー・シンプソンである。
本人のインタビュー映像と再現映像にて壮絶な遭難状況を描いている。飽くまでも再現映像なので、実際は再現よりもより壮絶だったと思われる。再現映像は実際にアンデス山脈で撮影されており、よりリアルさを追求しているので遭難状況がいかに酷かったかが分かる。セオリーとは言えザイルを切って相棒を見捨ててしまったサイモンの気持ちも理解できるし、骨折しつつも決して諦めず下山を目指したジョーの心の強さに胸が熱くなった。目標を決め黙々と足を進めるという方法は、個人的にも試したことがあるので、その重要性は少なからず分かるつもりでいる。彼は下山するという大きな目標のためにこつこつと身近な目標を達成して結果的に成功させたのだ。これは下山だけに通用するものではなく、普段の生活や仕事でも必要なことだと思う。今作はそういった意味でも素晴らしい作品だと思う。(女性 40代)
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