12000作品を紹介!あなたの映画図書館『MIHOシネマ』

映画『魚影の群れ』のネタバレあらすじ結末と感想

この記事では、映画『魚影の群れ』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『魚影の群れ』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。

この記事でわかること
  • 『魚影の群れ』の結末までのストーリー
  • 『魚影の群れ』を見た感想・レビュー
  • 『魚影の群れ』を見た人におすすめの映画5選

映画『魚影の群れ』の作品情報

魚影の群れ

製作年:1983年
上映時間:135分
ジャンル:アクション、ヒューマンドラマ、ラブストーリー
監督:相米慎二
キャスト:緒形拳、夏目雅子、十朱幸代、佐藤浩市 etc

映画『魚影の群れ』の登場人物(キャスト)

小浜房次郎(緒形拳)
大間の漁師。漁師としての腕は随一だが、時に暴力をふるってしまうところがある。トキ子の父親で、頑固親父。
小浜トキ子(夏目雅子)
房次郎の娘で、俊一の妻。母がいない小浜家で、家事と父の世話をしてきた。漁師の男を支え続けて来たが、我を忘れてマグロに夢中になる漁師の気持ちは分からない。
依田俊一(佐藤浩市)
むつ市で父から継いだ喫茶店を営む男。トキ子と結婚すべく、家業を捨てて漁師になる。漁師として房次郎に憧れている。
アヤ(十朱幸代)
房次郎のもとを離れて、北海道で飲み屋と娼婦をして暮らしている。ひも男を抱えている。
エイスケ(三遊亭円楽)
かつて大間で漁師をしていた男。エイスケの乗る弁天丸と、房次郎の登喜丸はかつての大間漁港でマグロ漁に屈指の腕前を誇り、凌ぎを削っていた。

映画『魚影の群れ』のネタバレあらすじ(起承転結)

映画『魚影の群れ』のストーリーをネタバレありの起承転結で解説しています。この先、結末までのネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『魚影の群れ』のあらすじ【起】

海辺を歩きながら俊一はトキ子に、一緒になれるなら店主をしている実家の喫茶店を畳んで漁師になりたいと伝える。2人は結婚するためには俊一が漁師になる必要があると分かっている。

トキ子の父で、漁師の房次郎は自身の船・登喜丸に乗り大きなマグロを釣りあげ、ご機嫌で帰港してくる。トキ子の母は若い男と駆け落ちしており、小浜家の家事はトキ子が行っている。トキ子はむつ市で喫茶店を営んでいる俊一という婚約者がいることを房次郎に伝えるも、「町の男が漁師の婿になるのはありえないこと」と言って会おうとしてくれない。房次郎は言葉とは裏腹に、1人で喫茶店に趣き俊一に会いに行く。俊一は漁師になりたいと伝えても、房次郎は取り合ってくれない。房次郎にトキ子をもう抱いたのか聞かれた俊一は土下座して謝り、結婚を約束したことを伝えるとビンタされてしまう。房次郎は「漁師のことは聞いて身に付くものではない」と言い、俊一は「だから教えてください」と懇願するも、ついに聞いてもらえず店を出て行ってしまった。

映画『魚影の群れ』を無料視聴できる動画配信サービスと方法
映画『魚影の群れ』を無料視聴できる動画配信サービスと方法を分かりやすく紹介しています。

映画『魚影の群れ』のあらすじ【承】

俊一は漁師になる決意を固めて大間に移り住み、トキ子との同棲を始める。トキ子は俊一を連れて房次郎のもとに再び頭を下げさせに行き、俊一は房次郎と同船することを許される。しかし、町の漁師の眼は厳しく、大間の海は素人の俊一で通用するほど甘くないと言われてしまう。案の定、俊一は房次郎と海へ出ても船酔いしてしまい、漁師として無能な自分に悲嘆する。

漁に出ている房次郎と俊一のもとに、マグロがかかる。大物のマグロを相手に房次郎が格闘していると、テグスが俊一の頭に絡まってしまい重傷を負う。マグロに逃げられ、ようやく事態に気付いた房次郎は、俊一の手当てをして無線で救急車を頼む。しかし、再びマグロが餌にかかり、房次郎は我を忘れてマグロを釣り上げにいく。知らせを聞いて漁港へ駆けつけたトキ子は気が気ではない。大マグロを決死の思いで釣り上げた房次郎は、俊一が瀕死状態になっているのを見つけて我に返り、船を走らせる。

病院前のおでん屋で呑んでいる房次郎。手術が終わり、トキ子が出てくる。俊一は生死をさまよっており、人間よりマグロがそんなに大事なのか、俊一が死んだら父さんは人殺しだとトキ子に言われる。トキ子が病院に戻ろうとすると、「銭ならある」と房次郎は釣り上げたマグロで得た金をトキ子に渡す。父との別れとなることを悟ったトキ子は、ちゃんと食事を摂りなよ、漁師は体が資本なんだからと言って去っていく。

映画『魚影の群れ』のあらすじ【転】

一年後。房次郎は大間漁港の意向に背き、北海道の海に漁に出る。そこでマグロを釣り上げてしまい、北海道の漁港に厄介になる。地元の売春宿で娼婦を待っていると、やってきたのはかつての妻・アヤであった。アヤは走り去り、雨の中2人は壮大な追いかけっこをする。アヤの営む酒屋に行き、暖を取る2人。アヤはどうやら、ひも男を抱えているようである。房次郎は金を渡そうとするも、アヤはひも男に渡すことになってしまうのを分かっているので受け取らない。房次郎は店を後にする。

房次郎が登喜丸で寝ていると、アヤが訪ねてくる。身体を重ね合わせた2人はよりを戻す約束をするも船を出るとアヤのひも男が待ち伏せており、房次郎と取っ組み合いの喧嘩になってしまう。房次郎の暴力を見て、昔と何も変わってないと愛想を尽いてアヤはひも男と去っていく。房次郎は去るアヤに向かって「明日の夜まで港で待ってる」と叫ぶが、翌日の漁でマグロに糸を切られて逃がしてしまったショックで大間に戻ってしまう。その夜、アヤは登喜丸のない港にやってきて、しばらく歌謡曲を口ずさんでいた。

映画『魚影の群れ』の結末・ラスト(ネタバレ)

房次郎は大間の港で俊一とトキ子を見る。俊一は和歌山で漁師の経験を積んで大間に帰ってきたのだ。俊一が乗っている船の名前は房次郎のそれと同じ「登喜丸」だ。房次郎はトキ子に対して自慢げに、大間のマグロは強者だから厳しいぞと伝える。トキ子は父に、自分も行かないから、父も私たちのところに来ないでくれと絶縁を言い渡す。俊一の漁業は全くうまくいっておらず、その情けなさから自棄気味になっている。トキ子の腹の中は、来春産声を上げようとしている赤ん坊がいる。

職場のトキ子に電話がかかってくる。俊一が遭難してしまったようである。朝まで待っても連絡が取れないためトキ子は、房次郎のもとに行き頭を下げて俊一を探してもらう。房次郎は俊一がマグロを釣り上げようとしていると考え船を進めると、俊一はマグロと格闘していた。房次郎が切り離して港へ戻ろうとするも、俊一は許さない。房次郎がマグロを釣り上げ帰港しているとき、俊一は房次郎にトキ子の腹には赤ん坊がいて男だったら漁師にしたいと告げて息を引き取る。港で待つトキ子は無線で父から俊一の死を知らされる。死ぬ間際に男の子が生まれて来たら漁師にしたいと語っていたことを告げられ、トキ子は海に向かって「わかんねぇじゃ!」と叫ぶ。

映画『魚影の群れ』の感想・評価・レビュー

緒形拳がマグロ漁師の頑固親父を描いた今作。年末年始の特番で「マグロ漁師」をテーマした番組が多く放送されていましたが、どの漁師も「人生」をかけて漁師をしていて、それを支える家族の姿や死ぬ気で海に出ていく姿がとても印象的でした。
今作で描かれているのも、そんな海に人生をかけた「漁師」たち。緒形拳の頑固親父っぷりは圧巻でした。そしてマグロ漁師の娘と結婚するにはかなりの覚悟が必要なのだと感じました。喫茶店をやめて漁師を目指すのは、なかなか出来ることじゃありません。(女性 30代)


親子であることの重さと痛みをこれほどまでに感じさせる映画は少ないと思います。緒形拳と夏目雅子、二人の圧倒的な演技が物語に現実味を与え、観ている側も息苦しくなるほどでした。漁師の世界の厳しさと、言葉にしない愛情がぶつかり合い、ラストの衝撃的な展開へと繋がる流れは見事。娘を“売る”という父の狂気に、何とも言えない人間の業を感じました。(40代 男性)


女としての生き方を選びきれなかった恵子の姿に、何度も心が締め付けられました。父への愛と憎しみ、逃げられない血のつながり、そして最後には海に沈む父を見届けるあのシーン――まさに悲劇の結晶のような映画です。夏目雅子の透明感と芯の強さがこの役にぴったりで、観終わったあともしばらく余韻から抜け出せませんでした。(30代 女性)


初めて観たとき、衝撃が大きすぎて言葉が出ませんでした。漁の場面はリアルで迫力がありましたが、それ以上に、親子関係の歪みや、貧しさゆえの価値観の違いが浮き彫りになる展開が苦しくて切なかったです。緒形拳の狂気じみた父親像が圧巻で、善悪では語れない深い人間ドラマとして記憶に残りました。(20代 男性)


社会や他者に頼れない環境の中で、家族という小さな単位が狂っていく様を見せつけられたようでした。時代背景や職業的な厳しさもあるけれど、それ以上に“男の業”のようなものを突きつけられて、とても重たく感じました。漁村という舞台も閉塞感を増幅させていて、画面から湿った風が吹いてくるような空気感が忘れられません。(50代 女性)


『魚影の群れ』はまさに、濃密で息が詰まるような人間ドラマ。漁師町という舞台で繰り広げられる親子の対立は、血縁ゆえに簡単には断ち切れず、その関係性の濃さに胸が苦しくなります。とにかく緒形拳の演技がすごすぎて、観ているだけで怖くなるレベル。夏目雅子の存在も美しく、対照的で、映像美も含めて完成度が高いです。(30代 男性)


女性である私から見ると、恵子の生き方は決して肯定できないけど、理解できてしまうところもあって複雑な気持ちになりました。自分を愛してくれない父、逃げ場のない土地、そんな中で唯一の希望だった恋人にも裏切られてしまう。最後にすべてを失ったような彼女の背中が今でも脳裏に焼き付いています。観るには覚悟が必要な映画です。(20代 女性)


父親の姿に、戦後から抜け出せない日本の男の不器用さや、時代の断絶を見たような気がしました。「愛してる」と言えない代わりに、魚の群れを追い、娘の人生をも支配しようとする。その行為が完全に間違っているとは言えないのが、この映画の恐ろしさだと思います。重苦しいテーマながら、名作として語り継がれるべき一本です。(60代 男性)


夏目雅子の透明感が、物語の暗さの中で唯一の光のように感じられました。恵子の抱える葛藤や、父からの逃れられない愛憎は、時代や場所が違っても共感できる部分があり、観ていて胸が詰まりました。緒形拳の演技はまるで本物の漁師のようで、現実と映画の境界が曖昧になる感覚すら覚えました。(40代 女性)


物語は重くて苦しいですが、映像は本当に美しいです。東北の海と空、そして魚影の群れが意味深に描かれていて、ラストの静けさと対照的でした。何も言わずに沈んでいく父を、恵子が見つめるだけのラストカット――あれがすべてを物語っていると思います。静かなのに激しい、そんな日本映画ならではの作品です。(30代 女性)

映画『魚影の群れ』を見た人におすすめの映画5選

累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『魚影の群れ』を見た人におすすめの映画5選を紹介します。

楢山節考(1983年版)

この映画を一言で表すと?

「老いと命の重みを、極限の美しさで描いた静かな衝撃作」

どんな話?

貧困と掟に縛られた山村で、70歳になると山に捨てられる“姥捨て”の風習。老女・おりんは自ら進んで山へ向かう決意をし、息子とともに最後の旅に出る。極限状況での親子愛と人間の尊厳が静かに描かれる名作です。

ここがおすすめ!

『魚影の群れ』と同様に、自然と人間の原始的な関係、そして親子の葛藤が濃密に描かれます。美しい映像と静かな演出が、かえって人間の本質を際立たせる傑作。観る人の価値観を揺さぶる力を持った一本です。

北のカナリアたち

この映画を一言で表すと?

「20年越しの秘密と贖罪が、北の大地で静かに交錯する人間ドラマ」

どんな話?

北海道の離島でかつて教師をしていた女性が、教え子の事件をきっかけに20年ぶりに島を訪れる。過去の悲劇と、再会した教え子たちの心の傷に向き合いながら、再生への道を探していく群像劇です。

ここがおすすめ!

過酷な土地で生きる人々の内面を丁寧に描いた点が『魚影の群れ』と共通。静かに進む展開の中で、人物たちの苦悩や葛藤が少しずつ明かされていく構成が秀逸。吉永小百合の静かで力強い演技も見どころです。

海炭市叙景

この映画を一言で表すと?

「閉塞感の中で生きる人々の、静かな絶望と希望を綴った叙事詩」

どんな話?

北海道・函館をモデルにした“海炭市”を舞台に、職を失った中年男性、老夫婦、若い兄妹など複数の視点で描かれる日常の断片。地方都市の寒さと孤独が、心に静かに沁み込んでくる群像劇。

ここがおすすめ!

『魚影の群れ』のように、地方の閉塞感や人々のもがきを静かに描く作品です。派手な展開はないものの、観る人の心にじわりと残る余韻が深い。現代の日本の縮図とも言えるような、社会派映画の秀作です。

しあわせのかおり

この映画を一言で表すと?

「孤独な女性と頑固な老店主が、料理を通して通わせ合う心の物語」

どんな話?

仕事一筋で生きてきた女性が、ある日出会った小さな中華料理店の味に心を打たれ、弟子入りを志願する。店主との交流を通じて、自分の人生や価値観が少しずつ変化していく、優しくも力強い人間ドラマ。

ここがおすすめ!

『魚影の群れ』ほどの激しさはないものの、世代間のぶつかり合いや、人との関係の再構築というテーマが重なります。映像も美しく、温かさと孤独のバランスが見事。人生の再出発を感じさせてくれる映画です。

父と暮せば

この映画を一言で表すと?

「原爆で父を失った娘と、幽霊になった父が交わす、静かな鎮魂の対話劇」

どんな話?

広島で被爆し、父を失った娘・美津江の前に、亡き父の幽霊が現れる。父との対話を通じて、失った時間、罪悪感、未来への希望がゆっくりと浮かび上がっていく。朗読劇をベースにした深い対話の物語。

ここがおすすめ!

『魚影の群れ』と同じく、父と娘の絆、そして断絶を描いた作品です。こちらは静謐な語り口で戦争と死を背景にしていますが、心の深い部分を見つめ直す力があります。宮沢りえと原田芳雄の二人芝居が圧巻です。

この記事の編集者
影山みほ

当サイト『MIHOシネマ』の編集長。累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家です。多数のメディア掲載実績やテレビ番組とのタイアップ実績があります。平素より映画監督、俳優、映画配給会社、映画宣伝会社などとお取引をさせていただいており、映画情報の発信および映画作品・映画イベント等の紹介やPRをさせていただいております。当サイトの他に映画メディア『シネマヴィスタ』の編集長も兼任しています。

影山みほをフォローする
アクション映画ヒューマンドラマ映画ラブストーリー映画

みんなの感想・レビュー