映画『美しすぎる母』の概要:上流階級に生まれ何不自由なく育った青年は、何故愛する母親を殺害するに至ったのか。美しい景観を背景に、それぞれの思惑が複雑に交錯する。1972年にロンドンで実際に起きた殺人事件を元にした、母と息子の愛憎劇。
映画『美しすぎる母』の作品情報
上映時間:97分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:トム・ケイリン
キャスト:ジュリアン・ムーア、スティーヴン・ディレイン、エディ・レッドメイン、エレナ・アナヤ etc
映画『美しすぎる母』の登場人物(キャスト)
- バーバラ・ベークランド(ジュリアン・ムーア)
- 貧しい家の出身だが、結婚により上流階級への仲間入りを果たした。社交界の花形で、広い人脈を持つ。絵を描くのが趣味。息子のアントニーを溺愛している。
- アントニー・ベークランド / トニー(エディ・レッドメイン / 幼少時:バーニー・クラーク)
- バーバラの息子。何不自由ない環境で母親の愛を一身に受けて育った。精神的に不安定なところがある。両性愛者。
- ブルックス・ベークランド(スティーヴン・ディレイン)
- バーバラの夫。上流階級出身の探検家。一代で財を成した祖父を敬愛している。人嫌いで、バーバラの俗っぽい振る舞いに嫌気が差している。
- ブランカ(エレナ・アナヤ)
- トニーと恋に落ちるスペイン人の若い女性。後にトニーからブルックスに乗り換える。
- ブラック・ジェイク(ウナクス・ウガルデ)
- スペイン滞在時のトニーの恋人。
- サム・グリーン(ヒュー・ダンシー)
- 孤独な有閑マダムを相手にするコンサルタント兼ジゴロ。同性愛者。
- ニニ(アン・リード)
- バーバラの実の母親。バーバラからは名前で呼ばれている。
- カルロス・デュラン(アビル・フォーク)
- ブルックスの友人の画家。
- ピラール・デュラン(ベレン・ルエダ)
- カルロスの妻。バーバラとも仲が良い。
映画『美しすぎる母』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『美しすぎる母』のあらすじ【起】
1964年のニューヨーク。社交界の花形バーバラは、オランダの皇族を交えた会食を企画する。社交の場が苦手な夫ブルックスは、嫌々ながらバーバラに同行する。バーバラは愛息子トニーを実母のニニに預け、二人は高級レストランに向かう。
会食の席で、バーバラは見事な社交術で場を盛り上げる。ブルックスはバーバラの俗っぽい言動が気に食わない。会食後、気分が高揚したバーバラは、ブルックリンを先に帰らせて見知らぬ男と何処かへ去っていく。
先に家に戻ったブルックスは、眠れぬままバーバラの帰宅を待つ。酔ったバーバラは帰るなりベビーベッドへ向かい、むずかるトニーをあやす。
1959年のパリ。トニーは母親想いの少年に成長している。バーバラとブルックスの間には溝が生じ、バーバラは息子の存在だけが心の支えである。
ブルックスは浮気願望を抱いている。ある日、ベークランド夫妻は、友人カルロスと妻ピラール、有名作家を自宅に招待する。バーバラの過剰な社交術に、ブルックス達は辟易する。ブルックス達の態度に腹を立てたバーバラは、皆に向かって悪態をつく。呆れたブルックスは、家を出て行く。
その夜、ブルックスが宿泊するホテルにバーバラが押しかけて性交を迫る。乗り気でないブルックスは、乱暴にバーバラを抱く。
ある日、トニーは自分が両性愛者であることをバーバラとブルックスに明かす。バーバラは難なく受け入れるが、ブルックスは嫌悪感を示す。
映画『美しすぎる母』のあらすじ【承】
1967年、スペインのカダケス。21歳になったトニーは、両親の軋轢を疎ましく思いながらも家庭的な愛情に飢えている。
ある日、恋人ジャックと浜辺でくつろいでいる時、トニーはスペイン人女性ブランカに出会う。トニーとブランカは、一目で恋に落ちる。
トニーはブランカの出自を気にするバーバラに苛立つ。トニーがブランカと交際を始めて数日後、バーバラはブランカを招待し、ブルックス、トニーと共にドライブに出かける。ブルックスとブランカは初対面から相性の良さを見せる。
1968年、スペインのマヨルカ島。バーバラとブルックスは別居しており、トニーはブランカと別れている。
ある日、バーバラはコンサルタントのサムを迎えに空港へ赴いた際、バカンスでマヨルカ島を訪れたブルックスとブランカに偶然遭遇する。浮気現場を押さえたバーバラは、衆目の前でブルックスを侮辱する。
空港を飛び出したバーバラは適当なタクシーに乗り込み、運転手を誘って路肩のモーテルで性交する。運転手と別れて一人になったバーバラは、惨めさの余り泣きじゃくる。
映画『美しすぎる母』のあらすじ【転】
帰宅したバーバラは、自室でジャックと戯れているトニーに、ブルックスとブランカの浮気を伝える。バーバラは動じないトニーに八つ当たりをする。
その夜、サムがバーバラの家に到着する。サムは、バーバラが社会復帰できるよう、再び絵を描くことや交友関係を活かすことをアドバイスする。サムの存在により、バーバラは多少気が晴れる。
ある日、トニーはサムに、バーバラへの尽力への礼を述べる。自分の心情を理解してくれるサムに対し、トニーは親愛の情を覚える。トニーとサムは肉体関係を持つ。トニーは、人生で初めて心から甘えられる相手を見つける。
トニーはブルックスへの手紙を綴る。手紙を直接渡す勇気が出ないトニーは、ブルックスの家の庭に手紙を隠す。トニーが来たことに気付きながらも声をかけられないブルックスは、その様子を家の中から見つめている。
バーバラは再び絵を描き始めるが、以前のように上手くいかない。鬱憤を晴らすため、バーバラはサムと性交する。母親の精神状態を助けようと、トニーは二人の肉体関係に参加する。サムはバーバラとトニーを同時に抱く。
三人の蜜月の後、バーバラとの仕事を終えたサムは去っていく。
映画『美しすぎる母』の結末・ラスト(ネタバレ)
1968年、社会復帰を目指してパリに移ったバーバラは、睡眠薬で自殺を図る。容色も衰え精神的に疲弊した母親の世話を、トニーが一身に背負う。トニーは母親を愛する反面、疎ましく思っている。トニーの精神状態が不安定になり始める。
バーバラの知人の葬儀の場で、トニーはブルックスとブランカを目撃する。ブルックス達はトニーの存在に気付きつつも、声をかけようとはしない。失望したトニーは一人その場を後にする。
1972年、ロンドン。バーバラは、念願の個展を前に準備で忙しい。
ある日、友人宅から帰宅したバーバラに、トニーは思い出の品の首輪の在り処を訪ねる。幼少期に可愛がっていた犬がつけていた首輪を、トニーはずっと大切にしている。ロンドンに越してから首輪が見つからず、トニーは苛立っている。
トニーの新調した服に触れたバーバラは、突如息子に情欲を覚える。トニーも母親を受け入れ、二人は性交をする。
体を離した後、トニーは首輪が見つからないことでバーバラを責める。家中を探し回った末、首輪は食器棚の奥から出てくる。トニーはバーバラが隠したと思い込み怒鳴り散らす。実は、トニー自身が食器棚に首輪を仕舞い、本人はそのことを忘れていたのである。
バーバラとトニーは口論になる。トニーはキッチンにあったナイフでバーバラの腹部を刺す。絶命して崩れ落ちたバーバラを前に、トニーは落ち着いている。トニーは警察に自ら通報し、電話で宅配の食事を注文する。
駆けつけた警察は、バーバラの遺体の前で食事をしていたトニーを連行する。トニーは逮捕されたことに安らぎを覚えている。
映画『美しすぎる母』の感想・評価・レビュー
エディ・レッドメインが演じる主人公トニーは非常に美しく、時折女性のようにも見える。邦題だけを見ると、トニーが母バーバラに魅了され、依存していくストーリーに思えるが、実際は全くの逆である。
確かにトニーはバーバラを愛しているが、依存するまでとはいかない。むしろトニーは一人の人間として母から自立をしたい気持ちがあったが、バーバラは彼の純粋な思いを尊重することはなかった。それどころか、バーバラはトニーが自立することを激しく拒み、それが母子関係の悪化の原因となってしまう。
子離れ出来ない親はどこにでもいるが、彼女ほど息子に執着し、依存する母親は稀であると言えるだろう。(女性 20代)
エディ・レッドメイン目当てで鑑賞しましたが、かなり過激で軽い気持ちで見た事を後悔した作品です。
この作品、実話ベースだそう。信じられないようなストーリーにこれが実話なんて有り得ないと思ってしまいますが、実際の事件を調べてみると今作で描かれる内容よりもっと酷かったみたいです。
不倫、近親相姦、殺人。とにかくハードな内容すぎて見ている間、ずっと眉間に皺を寄せていた気がします。好き嫌いが分かれる作品だとは思いますが、私はすごく好きです。(女性 30代)
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